湾岸タワーマンションを相場より高く売るには? 買い叩かれず利益を出す4つのポイントをプロが解説!

2024年1月21日公開(2024年1月19日更新)
ふじふじ太:不動産コンサルティングマスター

自宅のタワーマンションを売るなら、少しでも高く売って売却益を得たいところです。しかし、タワーマンション、特に湾岸エリアにおいては、その商品の特殊性から一般のマンションに比べて高く売ることが難しくなります。今回は、湾岸タワーマンション市場で長らく取引をしている筆者が、不動産売却というものの要素分解をしながら、高値売却を目指せるポイントを解説します。(ふじふじ太:不動産コンサルティングマスター)

タワーマンションを相場より高く売るのは難しい

湾岸エリアのタワーマンションを高く売る方法は?(出所:PIXTA)

 まず大前提として、「中古不動産」という商品はその特性上、相場より高く売却をするのが難しい商品であるということを理解しましょう。

 その証拠に、「中古の不動産マーケティング(不動産の売り方)」に関する学術的な研究は驚くほど進んでおらず、大学院で不動産マーケティングを研究していた私も、その先行研究の少なさに驚きました。

 それはなぜか。不動産売却はマーケティングの影響を受けにくく、その効果検証も難しいためです。

 特に中古不動産は、差別化しにくい商品です。不動産の価格は相場が決まっており、経済の変動やトレンドによって価格が大きく左右され、一期一会で同じ条件の取引が存在しないという点で、成約価格に対するマーケティングの効果検証が困難だとされています。

 ましてや、湾岸エリアのタワーマンションであればなおさらです。タワーマンションは大規模であるがゆえに、常に一定の成約数があるため一般消費者でも相場を理解しやすい商品であり、プロと消費者の情報格差がなくなってきています。

 それが高い流動性に貢献している半面、高値で売却をすることを難しくしている要因とも言えます。私の感覚的には、湾岸タワーマンションの成約相場の変動率は最大でも3%前後ほどの印象です(買取再販のリフォーム物件を除く)。

 例えば、現在の相場が8000万円の部屋があったとして、考え尽くせるマーケティング手法をすべて講じたとしても、9000万円になることはまずないでしょう。高く売れたとしても、8200万〜8300万円くらいが限度という印象です。

 「いやいや、うちは湾岸タワマン相場が8000万円の部屋が、8500万円で売れました!」という経験をされた売主さんも中にはいるとは思いますが、それはマーケティングが良かったのか、ただ景気が上向きで相場が追い付いてきただけなのか定かではありません。

まずは基本的な不動産売却のポイントを抑える

 最近の傾向として「高層階・眺望が抜ける・角部屋」などの特徴的な強みがあるハイスペックなお部屋の方がより高額で売れるという傾向が目立つのですが、それも含めてマーケティングとは関係なく、市況の流れ・トレンドの範囲を超えてはいません。

 逆に言うと、市況・トレンドをキャッチするという点も、売却において大変重要な要素です。その市況・トレンドを読み違えて募集価格を間違えないことが、高値で売却をするポイントのひとつと言えます。

 よくある失敗事例が、仲介手数料が安いからといって、そのエリアの市況や取引事情に全く詳しくない仲介会社に依頼してしまい、半年前の成約価格を参考にして募集をした結果、今の相場と全く異なり、募集後申し込みが殺到するという例が少なからずあります。

 マンションにもよりますが、相場上昇が著しい湾岸エリアにおいては、3カ月前の成約価格ですら、もはや参考になりません。

 高値でマンションを売却されたいのであれば、必ずそのエリアに詳しい担当者に依頼をするのが鉄則です。

 前述の例でも、そのエリアに詳しい担当者が、売却施策をしっかり講じることで、8000万円のお部屋を8200万〜8300万円で売ることができるかもしれません。マーケティング効果は3%にも満たないレベルかもしれませんが、それでも200万円も高く売れればすごいことだと思います。

湾岸タワーマンションを相場より高く売却する4つのポイント

 では、具体的にどうすればいいのでしょうか。高く売るというのは、「なるべく募集価格から買いたたかれないように隙を見せない」と同意義です。

 ここでは、マンションが売れない要因を理解し、それを改善することで結果的に高値売却できるようなポイントを解説します。

 現在ご自宅を売却されている方は、以下の「マンションが売れない代表的な4つの理由」に該当するものがないか確認をしてみましょう。

<マンションが売れない代表的な4つの理由>
① 価格が高すぎる
② 部屋が汚い
③ 荷物が多い
④ 広告が弱い

 上記4つの問題点に対する解決策について、以下で解説いたします。

売れない理由① 価格が高すぎる

<解決策>
マーケットアウトしないぎりぎりの募集価格の設定にする

 あっけないかもしれませんが、売れない一番の代表的な理由は価格が高すぎることです。湾岸タワーマンションの場合は成約件数が多いため、相場がある程度確立されているというのは前述の通りです。

 高く売りたいからといって相場が8000万円の物件を、10%以上高い9000万円で募集しても売却するのは無理でしょう。特に湾岸エリアの購入検討者は情報収集能力が高く、相場にもマンションにも詳しい方が多いため厳しいです。

 内見に行く意欲すら湧かない金額で募集をしても、他の物件の踏み台扱いで終わるだけです。

 では、いくらが適正か。それはお部屋にもよるので、少しずつ探っていくしかありません。毎週1件〜2件内見が入ることを目安に、マーケットアウトしないぎりぎりの募集価格に設定することが重要です。

 「ちょっと高い気もするけど、内見行ってみようかな」と思ってもらえるイメージです。そのためには、募集担当者と密にコミュニケーションを取りながら売却を進めていきましょう。

 また、価格が高いというのは「価格に納得感がない」とも言い換えられます。高くても買いたいと思ってもらえるような合理的な理由を提供することも重要です。

 後述の②、③の要因とも絡みますが、代表的な理由としては、他の標準的なお部屋に比べて内装をリフォームしていたり、室内オプションを追加していたり、お部屋の強みを明確にアピールしたり、第三者機関による設備チェック・設備保証を入れて取引の安心感を演出したり、といった具合です。

 高く売るための取り組みや理由もなしに、ただただ高く募集して、あとは仲介会社の営業頼りにするのは売主さんの傲慢(ごうまん)です。

売れない理由② 部屋が汚い

内見時に部屋が汚いとマイナスイメージに(出所:PIXTA)
<解決策>
クリーニングをして部屋の第一印象を良くする

 キーワードは「期待値」です。高く売りたいのであれば、内見時に買主さんの期待値を上回る必要があります。

 買主さんがタワーマンションに抱く期待値は、他の一般的なマンションよりも高いです。タワーマンションは憧れの住まいのひとつなのです。

 特に湾岸タワーマンションは豪華でハイグレードな共用部も特徴的ですので、必然的に室内へ抱く期待値も非常に高くなってしまいます。買主さんは内見時にワクワクしながら、ピカピカの内装をイメージしてくるものと考えましょう。

 その買主さんの期待に応えるような室内状態にすることは、売主さんがやるべき最も重要なタスクと言えます。売り物であるという自覚を持ちましょう。

 室内状態を良くするというのは商品性アップという観点で、他の業界では当たり前のことですが、この当たり前を軽視している方が多いのが不動産売却です。ホコリだらけで使用感のある汚いお部屋を欲しいと思う人はいません。

 せっかく憧れのタワーマンションを見に来たのに室内が汚かったら、それだけで買主さんのテンションは急降下です。

 ポイントとしては、特に水回りはきっちりピカピカにしておきましょう。キッチン、お風呂、トイレが汚いと、それだけで印象が悪くなってしまいます

 「そんなの、入居後買主さんがリフォームや掃除すれば問題ないだろ! そもそも現況引き渡しが一般的な売買のルールだし!」という方もおりますが、それはプロの意見です。

 多くの購入検討者は合理的な判断などできず、感情や印象で行動が決定されることが多いです。新築のモデルルームがまさにそうです。よって、お部屋の第一印象には十分配慮しましょう。

 ご自身でクリーニングが難しければ、プロにクリーニングサービスを依頼したり、明らかに第一印象を悪くするような傷などがあれば、部分補修をされることも有効です。最近は仲介会社の売却サービスの一部で上記サービスを利用できることも多いので、仲介担当者に相談をしましょう。

【関連記事】>>ホームステージングは売却に効果あり!? 実際のマンションで実践してみた結果は?

売れない理由③ 荷物が多い

<解決策>
買主さんが内見しやすいように荷物を減らす

 上記②と類似しているのですが、若干ニュアンスが異なります。

 掃除は行き届いてピカピカだったとしても、お荷物が多いというのはデメリットになります。荷物が多いと内見できる箇所が必然的に少なくなり、意思決定の邪魔となってしまいます。

 生活をしている以上どうしようもない部分もあるのですが、可能な範囲で荷物は減らしましょう。

 居住中で売るよりも空室の方が高く売りやすいという定説がありますが、しっかり荷物を減らして整理整頓をしてモデルルームのようにできれば、むしろ家具のイメージも湧くため、そこまでデメリットにはなりません。

 最近、勝どきの築浅タワーマンションで似たお部屋が3部屋募集されており、同日にすべて内見をしたのですが、ある一部屋については荷物が非常に多く整理整頓もされておらず乱雑で、その時点で買主さんのテンションが下がり、募集条件は良いものの即検討外となってしまいました。

 その時の買主さんのコメントは、「あの部屋、売る気あるのかな?」でした。第一印象という点に配慮するのであれば、せめてリビングだけでも荷物をできる限り減らして整理整頓をすると効果的です。

 お花を置いたり、気の利いた小物を置いたり、BGMをかけたり、アロマをたいたり、見た目だけではく五感全体で好印象を醸し出しましょう。

 リビングをきれいにした代わりに、そのシワ寄せが洋室にいって、そこの荷物が少々増えても構いません。繰り返しになりますが、まずは第一印象優先で、最も大事な部分はリビングです。

 どうしても荷物を減らせないということであれば、トランクルームを借りるなどの「荷物預かりサービス」を活用することも効果的です。

売れない理由④ 広告が弱い

<解決策>
囲い込みをしない業者に任せる

 上記、②、③については内見体験の部分で商品性アップに貢献する話でしたが、まずは多くの方に知られなければ意味がありません。

 ネット広告が主流の現在、湾岸エリアにおいては消費者も仲介会社も情報感度が高いため、各種ポータルサイトに掲載し、東日本不動産流通機構(レインズ)にしっかり広告を載せれば、どの仲介会社に依頼をしてもそれほど広告力に差は出ません。

 タワーマンションに限らず広告のポイントとしてよく言われることは、「室内写真にこだわる」「広告文でお部屋の強みをしっかりアピールする」などは当たり前のことですので、お部屋の魅力を最大限に引き出すような広告を作成することも重要です。募集会社を選ぶ際、広告の細かい部分にもこだわっているかを事前に確認しましょう。

 また、湾岸エリアはSNSのオンラインコミュニティーが充実しているという側面もあるため、SNSを活用するという点も効果的です。「X(旧ツイッター)で話題になっている物件を見て即日申し込みました」という方も珍しくありません。

 ただ、私が考える湾岸タワーマンションの売却時の広告における最も大きな問題点は、仲介会社の忖度(そんたく)です。つまり、囲い込みです。

 この囲い込みによる売主のデメリットは重大です。囲い込みは不動産広告とは若干ニュアンスが異なりますが、情報を隠す・偽るという点で平等に多くの人に適切な情報が提供されなくなり、広い意味で広告の阻害要因と言えます。

 今、湾岸エリアのタワーマンションは在庫不足で、圧倒的に売り手市場です。よほどチャレンジ価格で募集していない限りは、相場で募集をすれば1~2週間以内で売れるというすさまじい市況となっております。

囲い込みによる売主のデメリットは大きい!

 売り手市場になると、売主というより売主側の仲介会社が強気になるので、必然的に囲い込みが起きやすくなります

 私も現場で営業しておりますが、大変巧妙に囲い込みが行われております。12月中は内見できないと言われた物件があったので、怪しかったため直接お客様から問い合わせをしていただいたところ、すぐに内見できたそうです。

 他にも、満額で申し込みを入れたものの同時に他の方からも申し込みが入ったと断られ、後から成約登録を見たところ、200万円価格が減額されて成約されているということがおとぎ話ではなく現実社会で行われております。

 そういう業者に任せると、売主さんにとってはマイナスでしかありません。高く売りたいのに仲介会社の忖度で減額されるなどあってはならないと思います。

 よって、信頼できる、囲い込みをしない業者に任せることも、高く売るためには重要なポイントです。

【関連記事】>>大手不動産仲介は「囲い込み」が蔓延?!  不動産売却時は「両手比率」が高い会社に注意を

湾岸タワーマンションを相場より高く売るためのポイントまとめ

 以上、私が考える湾岸タワーマンションを高く売るための方法をお伝えしました。まとめると以下の通りです。

・不動産市況やトレンドをキャッチする
・マーケットアウトしないぎりぎりの募集価格に設定する
・クリーニングや部分補修をして室内状態を良くする。特に水回りはピカピカに
・荷物を減らす。特にリビングの第一印象にこだわること。イメージは新築モデルルーム
・広告における室内写真にこだわること
・お部屋の強み・差別化ポイントを自覚し、明確にアピールする
・各種ポータルサイト、レインズ、SNSを活用し、情報を広く拡散する
・囲い込みをしない業者に任せる

 ただし、今後テクノロジーの進歩により、不動産売却の形もどんどん変わっていくことが予想されるため、これが完全無欠な売却の方法であるとは言い切れません。より良い不動産売却とは何かについて、これからも私自身、試行錯誤しながら追求していきたいと思います。読者の皆さんの不動産売却の成功を願っています。

【関連記事】>>「湾岸2024年問題」で中古マンション価格は下落する? 損をしない購入・売却のタイミングはいつ!?

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