投資家が敬遠する「定期借地権付きマンション」とは? 今後の展望や本当にお買い得なのかを解説

2024年9月19日公開(2024年11月5日更新)
高田一洋:一心エステート株式会社代表取締役CEO

マンションを探していると、定期借地権付きとなっていることがあります。定期借地権付きマンションは、一般的な物件と何が違うのでしょうか。今回は、定期借地権付きマンションとは、いったいどのようなものなのか、都内で人気の物件や不動産として魅力的な選択肢になり得るのかについて解説します。(一心エステート株式会社代表取締役:高田一洋)

定期借地権付きマンションとは

定期借地権付きマンションの特徴(出所:PIXTA)
定期借地権付きマンションの特徴(出所:PIXTA)

 定期借地権付きマンションとは、期間を決めて借り上げた土地の上に建てられたマンションのことです。土地の所有権は地主が保有したまま、一定期間(一般定期借地権の場合は50年以上)土地を借りて建てられています。

 最大の特徴は、その期間が終了すると、原則として建物を取り壊して更地にし、土地を返還する必要があることです。

 定期借地権制度は、平成4年の借地借家法改正によって導入されました。この制度の目的は、土地所有者の権利を守りつつ、土地の有効活用を促進することでした。それ以前の借地権は、事実上半永久的に続くものでしたが、定期借地権では期間が明確に定められています。

定期借地権付きマンションのメリット

 まずは、定期借地権付きマンションにはどのようなメリットがあるのかについてご説明します。

価格の安さ

 定期借地権付きマンションの最大のメリットは、なんといってもその価格の安さです。通常のマンションと比べて、7~8掛けくらいの価格で購入できることが多いです。これは、土地の取得費用が不要なため、その分が価格に反映されて安くなっていることが理由です。

 例えば、5,000万円の所有権マンションと同等の物件が、定期借地権付きだと3,500万~4,000万円程度で手に入る可能性があるわけです。これは、特に都心の高額物件を狙っている人にとっては大きな魅力になりますね。

固定資産税の軽減

 次に、固定資産税の軽減が挙げられます。定期借地権付きマンションでは、土地分の固定資産税は地主が支払うため、所有者の負担が軽くなります。毎年の維持費を考えると、これも大きなメリットといえるでしょう。

立地の良さ

 そして、何といっても立地の良さです。都心の一等地に住める可能性が高くなります。通常なら手が届かないような場所に、比較的手頃な価格で住めるのは魅力的ですよね。

優れた共用施設や管理体制を享受できる

 多くの場合、定期借地権付きマンションは大規模マンションとして開発されるため、充実した共用施設や管理体制を享受できることも大きなメリットです。プール、フィットネスジム、パーティールームなど、通常のマンションでは見られないようなぜいたくな設備が整っていることも多いでしょう。

定期借地権付きマンションのデメリット

 次に、定期借地権付きマンションのデメリットについてご説明します。

期限付きの所有権である

 最大のデメリットは、期限付きの所有権であることです。借地期間が終了すると、原則として建物を取り壊して土地を返還する必要があります。つまり、「子や孫に残せる」という不動産の大きな魅力の一つが失われてしまいます。

資産価値の低下

 次に、資産価値の低下が挙げられます。借地期間の残りが少なくなるにつれて、資産価値が急激に低下する可能性があります。特に、残存期間が35年を切るあたりから、その傾向が顕著になるといわれています。

住宅ローンの制限

 住宅ローンの制限も重要なポイントです。借地期間によっては、長期の住宅ローンが組みづらい場合があります。例えば、残存期間が40年のマンションに35年ローンを組むのは難しいかもしれません。

将来の不確実性

 将来の不確実性も考慮する必要があります。定期借地が満期を迎えたマンションというのは、まだありません。つまり、定期借地権が終了して更地になったといった事例がないのです。

 借地期間終了後どうなるのか。現在のコンクリート造りのマンションならメンテナンス次第で建物は100年以上持つかもしれず、借地期間を延長できるかもしれませんし、本当に更地にして返還するのかもしれません。これらの点については、契約内容をよく確認する必要がありますし、将来の法改正などによって状況が変わる可能性もあります。

都内で人気の定期借地権付きマンション

 では、具体的に都内でどんなマンションが人気なのでしょうか。いくつか例を挙げてみましょう。

シティタワー品川

 まず、「シティタワー品川」(2008年竣工・定期借地72年)です。このマンションは、2010年頃に3,200万~3,500万円で分譲されましたが、現在は8,000万円程度で取引されています。わずか15年ほどで2倍以上、価値が上昇しています。

 この価格上昇の理由は、立地の良さはもちろん、大規模タワーマンションならではの充実した設備にあります。また、開発が著しい品川という地域の将来性も評価されています。

パークホームズ南麻布ザレジデンス

 「パークホームズ南麻布ザレジデンス」(2013年竣工・定期借地50年)も人気です。港区の高級住宅街に立地し、常に人気を集めているマンションです。麻布十番や六本木へのアクセスの良さ、閑静な住宅街という環境が評価されています。

ブリリアシティ西早稲田

 「ブリリアシティ西早稲田」(2022年竣工・定期借地72年)も注目の物件です。文教地区に立地し、若い世代にも人気があります。早稲田大学に近いという立地が学生や若い家族に支持されています。

 これらのマンションに共通するのは、立地の良さはもちろん、大規模マンションならではの充実した共用施設や管理体制、そして何より通常の所有権マンションと比べて割安な価格です。

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人気の理由や特徴、注意すべきポイントとは⁉

新築の定期借地権付きマンションは今後も増える

 さて、そういった定期借地権付きマンションですが、今後も増えていくと考えられます。特に、大企業や法人が所有する都心の一等地で、このタイプのマンションが増えていくでしょう。

 例えば、最近では渋谷区の「パークタワー渋谷笹塚」(2028年3月下旬入居予定・定期借地70年)や、文京区の「リビオシティ文京小石川」(2027年3月中旬入居予定 ・定期借地70年)などが話題を集めています。これらのマンションは、かつて企業の社屋や工場があった跡地に建設されています。

 企業にとっては、土地を売却せずに長期的な収入を得られるメリットがあります。一方で、デベロッパーや購入者にとっては、通常では手に入れられないような一等地に住むチャンスになるわけです。

 この傾向は今後も続くと予想されます。特に、土地不足で都心部での新規マンション供給が難しくなっている現状を考えると、定期借地権付きマンションは重要な選択肢の一つになっていくでしょう。

不動産のプロは定期借地権付きマンションを買う?

 まさに一長一短がある定期借地権付きマンションですが、私なら購入するでしょうか。正直なところ、条件次第です。立地が良く、価格も魅力的であれば、十分に検討の余地があると思います。ただし、購入する際には以下の点を特に注意深く見ます。

残存期間

 まず、残存期間です。少なくとも40年以上の残存期間があることが望ましいでしょう。35年を切るとかなりリスクが高くなります。これは、将来の売却(リセール)や資産価値の維持を考えてのことです。

立地

 次に、立地です。将来的な価値の維持や上昇が期待できる場所かどうかを見極めます。例えば、再開発計画がある地域や、交通アクセスの改善が見込まれる場所であれば購入する価値があります。

管理体制

 管理体制も重要なポイントです。大規模マンションならではの充実した管理体制があるかどうか。これは、長期的な資産価値の維持に直結する問題です。

価格

 そして、何より価格です。通常の所有権マンションと比べて本当にお得な価格設定になっているかを慎重に検討します。単に安いだけでなく、将来的な価値も含めて総合的に判断する必要があります。

定期借地権付きマンションの売買は面倒?

 私自身、売り主側と買い主側の両方で定期借地権付きマンションの取引を経験しています。印象としては、書類作成がやや面倒で、定期借地権の内容を詳細に説明する必要があります。

 例えば、ある取引では、借地期間や地代の改定条件、期間満了時の取り扱いなどを、通常の取引以上に丁寧に説明しました。買い主の方は、最初は定期借地権について不安を感じていましたが、詳しく説明することで理解を深め、最終的には購入を決断されました。

 定期借地権付きマンションを敬遠する買い主も少なくありません。「結局、自分のものにならないんでしょ?」という声をよく聞きます。特に、資産形成を目的とする投資家の方々には、正直あまり人気がありません。

 興味深いのは、外国人の購入検討者の反応です。彼らは、所有権にこだわる傾向が強いため、ほとんど興味を示しません。特に中国人投資家は、自国の不動産制度(70年の使用権制度)との類似性から、敬遠する傾向があります。

 誤解を恐れずに言うならば、定期借地権付きマンションの購入者は、ほとんどが自己居住用の日本人であることが多いです。そういった生活環境を望まれている方が購入されることもあったりします。

定期借地権付きマンションの今後の展望

 定期借地権付きマンションの市場は、今後どうなっていくのでしょうか。まず、都心部での新規マンション供給が難しくなっている現状を考えると、定期借地権付きマンションの需要は増えていく可能性が高いです。特に、一等地での開発案件では、このスキームがより多く採用されるでしょう。

 また、最近の傾向として、借地期間の長期化が見られます。50年だった借地期間が70年、場合によっては90年といった具合に延びています。これは、購入者の不安を軽減し、より魅力的な選択肢とするための工夫と言えるでしょう。

 借地期間満了時の取り扱いについても、柔軟な対応が増えてきています。例えば、期間満了時に建物の残存価値に応じて補償を行うといった条件を付けるケースもあります。

 一方で、懸念点もあります。現在の定期借地権付きマンションの多くは、まだ借地期間の前半にあります。今後、借地期間の終盤に差しかかるマンションが増えてくると、新たな課題が浮上する可能性があります。例えば、大規模修繕の是非や、資産価値の急激な低下などが問題になるかもしれません。

定期借地権付きマンションは魅力的な選択肢になる

 定期借地権付きマンションは、一概に「お得」とは言えません。しかし、立地や価格次第では非常に魅力的な選択肢となり得ます。実際、「シティタワー品川」のように、大幅な価格上昇を見せている物件もあります。

 ただし、購入を検討する際は、残存期間や将来の資産価値の変動、そして自分のライフプランとの整合性をしっかりと見極める必要があります。「ここに住みたい」という思いと「資産として持ちたい」という思いのバランスを、よく考える必要があるでしょう。

 「定期借地権付きマンション=損」という先入観は捨てて、個々の物件をしっかりと吟味することをおすすめします。優れた立地、充実した設備、適正な価格設定。これらの条件がそろえば、定期借地権付きマンションは十分に魅力的な選択肢になり得るのです。

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