「晴海フラッグ」板状棟の転売住戸の募集が開始されました。価格は新築時の約1.5倍となっており、購入を迷っている方もいるのではないでしょうか? 本記事では、その結論と晴海フラッグ転売住戸の購入・売却時の注意点を解説します。(ふじふじ太:不動産コンサルティングマスター)
「晴海フラッグ」即転売住戸を買ってもいいのか!?
東京オリンピック選手村として話題になった「晴海フラッグ」の板状棟※ですが、ついに転売住戸の売り出しがスタートしています。
※板状棟とは、横長の板のような形状のマンションで中層タイプに多い。晴海フラッグにはこの板状棟とタワー棟がある。
新築販売時は、近隣相場に対してかなり割安感があったことから多くの投資家も参入し、異常な倍率になったという点で賛否両論を巻き起こしたマンションであることは記憶に新しいところです。
結論として、筆者の意見は、転売・新築関係なく条件に合うなら迷わず購入された方がよいと考えております。
晴海フラッグは良くも悪くも日本一注目されていると言っても過言ではない新築マンションです。その一挙手一投足が話題になり、筆者にとってはそれがやや滑稽に見えるほどです。
晴海フラッグに限らず、新築マンションの転売はある
新築マンションの即転売というのは決して珍しいものではなく、「パークタワー勝どき」でも「白金ザ・スカイ」でも同様に数千万円上乗せをした即転売住戸があり、引き渡し前に成約している例も複数件ございます。
一方で「晴海フラッグ」だけは即転売住戸が異常にSNSやメディアなどで話題になり、「そんなことが許されるのか?」という雰囲気があります。
新築販売時から価格が安すぎたということと、申し込み規制のない販売方法も相まって、投資家たちの投資対象となり、買いたくても買えない実需層の反感がたまってしまったことは否めません。
ただ、厳しいことを承知で言いますが、利益最大化が根底にある資本主義社会である以上、価格のゆがみがあれば注目されるのは必然であり、この結果は仕方がないことだと思います。
投資家が価格を上げて募集することが問題なのではなく、マーケットに対して安く販売せざるを得なかった構造自体が問題だと感じます。
新築時から数千万円値上がりしているマンションを買いたくないという気持ちもわかりますが、需要と供給によるマーケットから形成される価格こそが相場であり、それが適正値と考えるべきでしょう。
晴海フラッグ板状棟は、立地の問題はあるものの、広さを確保できているという点でテレワークの普及など新しい生活スタイルのニーズにマッチしているマンションです。
損得感情に縛られることなく、未来のご自身とご家族の豊かな暮らしのための最善の選択をしてほしいと思います。
さて、晴海フラッグ転売住戸を選択肢の一つとして検討する際に、実務上の取引の観点における注意点があるのでご紹介いたします。
晴海フラッグ転売住戸の注意点①
相場が形成されていない
最も気になる点は、やはり価格です。まだ相場が形成されておらず、適正価格がわかりにくい状況です。
現状(2023年7月中旬時点)で確認できている晴海フラッグの募集数は17件あり、募集坪単価は400万〜550万円とかなりばらつきがあります。
平均すると、坪単価約450万円前後で募集をしているお部屋が多いようです。
転売住戸の成約事例として公になっているものは、2023年7月中旬時点で確認できません。
新築時の晴海フラッグ板状棟の平均販売坪単価は約300万円でした。平均すると新築時よりも約1.5倍の金額で売りに出されていることがわかります。
募集金額で換算すると、晴海フラッグ板状棟は広さ80㎡で7,000万円前後の売り出しが多かったため、約3500万円上乗せされた形で、1億500万円前後で募集をしているお部屋が多いというイメージです。
※以下はライフルホームズ掲載の現在の売り出し価格(募集がない場合は表示されません)
なかなかのインパクトですが、これはあくまで売主さんの言い値の価格であり、まだ成約していないことから、今の募集価格が相場になるとは思いません。
現在、新築販売中の「晴海フラッグタワー棟」の平均坪単価が430万円前後であり、近隣エリアの立地の良い中古タワーマンションでも、坪単価430万〜450万円前後となります。
したがって、晴海フラッグの駅遠立地かつ板状棟で坪単価450万円というのは、なかなかのチャレンジ価格であるという感覚です。
また、晴海フラッグ板状棟の良いところは、前述の通り80㎡を超える広いお部屋が多いことです。
そのことから、主に子育て世代やリタイア世代、コロナ禍によるテレワーク部屋のニーズ拡大など「より広い部屋へ住み替えたい」というニーズの受け皿になることが予想されます。
最近のマンションは専有面積が狭めのものが多いため、広いということだけでも十分魅力的です。
果たして相場はいくらに落ち着くのか、今後の動向に注目です。
今の過熱した市況を考慮すると、筆者の感覚としては、近隣のタワマンより1割程度安く、坪単価300万円台後半〜400万円前後が成約のボリュームゾーンとなり、条件の良いお部屋についてはそれ以上の単価で売れてもおかしくないと予想しております(※あくまで個人の感想です)。
晴海フラッグ転売住戸の注意点②
引き渡し時期が不透明
晴海フラッグの転売住戸は、売買契約後の引き渡し時期(決済日)に注意が必要です。実際に住むことができる日が想定より遅れる可能性が高いです。
手続き上、売主さん(新築デベロッパーから購入された方)から所有権の移転を受けるためには、まずは売主さんが所有者である証明書が必須となります。それが「登記簿謄本」や「登記識別情報」というものです。
上記書類がなければ、実務上、決済を行うことはできません。さらに言うと、買主さんが住宅ローンをご利用になるのであれば、住宅ローンの本審査を進めることもできません。
問題は何かというと、総戸数2,500戸を超えるという非常に大規模なマンションゆえに、所有権移転の登記手続きに時間がかかり、上記の書類が売主さんの手元に届くのが想定より遅れる可能性が高いということです。
では、どのくらいの期間を要するかというと、売主さんが晴海フラッグの購入の決済をしてから、約3カ月〜6カ月程度かかる可能性が高く、状況によってはそれ以上かかる可能性もあり、販売担当者に確認をしても何とも言えないという状況のようです。
一般的な中古マンション売買であれば、1〜2週間程度で登記手続きは完了するのですが、その感覚で考えてはいけません。他の新築大規模タワーマンションの例でも、登記手続きに3カ月程度かかる例はございます。
例えば、売主さんが晴海フラッグの引き渡しを受けるのが2024年2月であれば、次に転売で購入をした方が売主さんから引き渡しを受けることができるのは、住宅ローン本審査の期間も考慮すると、少なくとも同年6月〜9月前後以降ということになりますが、正確な時期はわかりません。
いつ引き渡しを受けられるかわからないという点は、転売住戸を買う上での買主さんのデメリットとなります。
よって、来年早々に急ぎで引き渡しを受けたい、引越しを急いでいるという方にはおすすめしにくいためご注意ください。
登記手続きの進捗はお部屋によって異なり、状況によっては3カ月未満で登記手続きが完了する可能性もあります。
転売で売却される売主さんは、新築の担当者に可能な範囲で確認をしながら、トラブルにならないように慎重に、余裕をもって決済日を決めておくとよいでしょう。
晴海フラッグ転売住戸の注意点③
住宅ローンの懸念
晴海フラッグの場合、住宅ローンの仮審査に通っても、ほかの物件よりも本審査で結果が覆る可能性があるというのが懸念点です。これは、物件の担保評価に起因するものです。
前述の通り、晴海フラッグはまだ相場が形成されておらず、銀行からしても価格の妥当性を見いだしにくいという点で、担保評価が伸びない可能性があります。
担保評価の算定は銀行によって様々ですが、中央区で駅から徒歩20分前後の物件という事例自体が少なく、新築価格と比較した時に価格が3〜5割ほど上がり、数千万円単位で価格が上昇しているという点も、銀行によって評価にばらつきが出ると考えます。
筆者の懇意にしている銀行代理店の担当者にヒアリングしたところ、あまりに価格が値上がりしている、価格上昇率が高いと銀行も警戒する可能性が高いとのことです。
さらに、売主・買主間で何かしらの共謀がされているのではないかと銀行サイドが懸念を示す例もあるそうです。
晴海フラッグという立地的にも経緯的にもやや特殊なマンションに対して価格妥当性があると銀行が判断するのかどうか、一つのポイントになるかもしれません。
とはいえ、昨今のマンション価格の上昇という背景は、十分銀行も認識しており、晴海フラッグは大手財閥系デベロッパーが結集して企画された認知度の高いブランドマンションです。
そのため、担保評価については柔軟に対応してくれるのではないかと考えております(※あくまで個人の感想です)。
湾岸エリアの中古タワーマンションも数年で3割以上価格が上昇していますが、担保評価が原因でローン本審査において融資額が減額になったという例は、今のところ筆者は経験がありません。
最近はネット銀行が普及した背景もあり、事前審査において担保評価を見ない銀行が増えてきております。
ネット銀行に限らず、大手メガバンクでも事前審査の段階で担保評価を見ない銀行もございます。正確に言うと、事前審査の段階では物件名・広さ・構造だけを簡易的に確認して、本格的な評価は本審査で行うというイメージです。
そうすると事前審査は通っても、担保評価を考慮した結果、本審査で結果が覆るという結果も考えられます。
売主(転売する側)にもリスクがある
これは買主だけでなく、売主側にとっても大きなリスクとなります。
注意点②で説明した通り、住宅ローンの本審査は「登記簿謄本」がなければ進めることができません。
つまり、今年中に売買契約をしても、買主さんが本審査を開始できるのはまだまだ先となります。
売買契約上、解除条件として「ローン解除特約」が付与されることが一般的ですので、ローンが通らなければ契約はさかのぼって無かったこととなります。
売主さんからすると早めに売れて安心したと思ったら、2024年5月から本審査を開始したところ買主さんのローンが通らず解除され、募集から仕切り直しという残念な結果になってしまいます。
そうならないように、晴海フラッグにおいては念のため、事前審査の段階から可能な範囲で担保評価まで含めて審査をして進めることをおすすめします。
以上が、晴海フラッグ転売住戸の注意点です。ご覧いただきありがとうございました。
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