不動産購入申込書や条件交渉の注意点を解説! 購入希望者に物件をいくらで売ればいい?シリーズ「不動産売却の秘訣」

2021年3月4日公開(2023年10月23日更新)
山本健司:ミライアス株式会社 代表取締役

不動産購入希望者が現れたとき、つい有頂天になってしまいますが、ここからが本当の正念場です。物件をいくらで売るのか、購入希望者は住宅ローンの「事前審査」が済んでいるか、引き渡しの期日はいつを希望しているか、などを厳しくチェックしましょう。ここで気を緩めると、今までの努力が水の泡になります。

「不動産購入申込書」を見て、条件交渉に入るかどうかを決める

不動産購入申込書
出所:PIXTA

 不動産の購入希望者が現れると、不動産会社の担当者から、電話、メール、訪問のいずれかの方法で、「あなたの不動産を買いたい方から連絡がありましたよ」と報告が入ります。胸が踊る瞬間ですが、「売却先が決まった!」と喜ぶには早いのです。まだ売却が確約されたわけではありません。

 まずは売主として、購入希望者から提出される「不動産購入申込書」をチェックしましょう。「不動産購入申込書」は、買付証明書と呼ばれることもあります。特に決まった書式はありませんが、購入希望価格以外にも、重要な内容が含まれています。後日、売買条件として協議すべき内容や、売買契約書に反映される内容も多いので、購入申込書の段階から、注意深く吟味しておきましょう

 そのうえで、条件交渉に進むか、申し込みを断るかを判断します。 条件交渉に進むかを判断するときに特に気を付けるべき項目には、次のようなものがあります。

  • ・購入希望金額

 売り出し価格より低い金額が書かれている場合は、購入希望者が「指値」(値下げ要求)をしているということです。取引でよく出てくる「指値」とは、購入希望者が指定する購入価格のこと。たとえ「指値」が入っても、それが売主さんの希望価格以下なら、もう少し上げるよう価格交渉に入ります。

 あまりにも法外な値引き要求なら断ることもできます。査定価格より10%も低い価格だとしたら、交渉に時間をかけても、契約成立に至る可能性は低いと言えるでしょう。

・手付金の金額

 売買契約締結後に購入希望者が手付金を放棄することで、契約は解除できてしまいますから、売買金額の5%を下回る金額が書かれていたら、手付金の値上げを交渉する必要があります。

・住宅ローン利用の有無と借入金額

 ほとんどの買主さんが住宅ローンを利用しますが、不動産購入申込書を提出した時点では、住宅ローン利用はまだ確約されていません。支払いに関する重要項目ですので、もう少し詳しく後述します。

・売買契約締結予定日

 買主さんの希望時期で、購入申し込みの日から、3~10日後くらいの日付を書く人が多いです。条件交渉の日数も必要ですが、理想としては購入申し込みから10日以内、遅くとも2週間以内の契約締結を目指しましょう。

・引き渡し予定日

 いつ物件を引き渡すかは、最も重要な項目のひとつです。売主さんにも買主さんにも都合があるので、しばしば交渉が難航します。特に売主さんが住み替えをする場合は、引き渡しの猶予についても話し合うことになります。

購入希望者の住宅ローン事前審査は済んでいるか?

出所:PIXTA

 「不動産購入申込書」には、購入資金として利用するローンの有無、借り入れ予定金額、借り入れ予定銀行も記載されています。しかし、その購入希望者が、本当に住宅ローンを利用できるかどうか(代金を支払う能力があるかどうか)は、まだ分かりません。 住宅ローンの審査には、「事前審査」と「本審査」の2段階があり、ふつうは売買契約前に「事前審査」を受け、売買契約を締結したのち「本審査」に臨みます。

【関連記事はこちら】>>住宅ローンの仮審査で基準となる21項目を徹底解説! 本審査までの流れや必要な書類とは 

 そこで購入希望者の多くは、「ローン特約あり」で申し込みをしてきます。ローン特約は、万一、審査に落ちて住宅ローンが利用できない場合は、売買契約を白紙解約できるという特約です。

 「事前審査」を無事通過した人は、9割以上の確率で「本審査」に通過し、住宅ローンを組むことができます。一方、「事前審査」を受けていない相手との交渉や契約は、かなりリスキーです。結局支払い能力がないことが後で分かったり、そのせいで売買契約が白紙解約になる危険もあります。

 「不動産購入申込書」を受け取ったら、「この方は、住宅ローンの事前審査に通過していますか?」と、必ず担当者に聞きましょう。答えがイエスなら、交渉を始めてもよいでしょう。そうでなければ、事前審査を受けていただくほうが先です。

 なお、ネット銀行の事前審査は個人信用情報の確認なしで行うため、いわゆる“ブラックリスト”に載っている人でも、簡単に事前審査を通過できてしまいます。フラット35の事前審査も、「留保」という曖昧な回答が出る場合があるので、この2つの場合は注意してください。

条件交渉に進んだら、価格、期日、諸条件の3つに注意する

 以下は、不動産売却で覚えておきたい売却決断の公式です。

 ①価格×②期日×③諸条件

 ①「価格」は、3つの要素のなかで最重要です。買主との交渉で、できる限り高額での売却を目指しましょう。

 次に重要なのが引き渡しの②「期日」です。売主さんの新居の完成予定が半年後なのに、3カ月後の引き渡しを要求されても、ふつうは無理です。しかし、売却代金を新居の代金に充てなければならないとか、半年以内にこの物件を売却しないと、税金特例が利用できないといった事情がある場合、間違いなく売れるという確実性を優先して、3カ月後の引き渡しに応じることもあるでしょう。このように「期日」は、あなたの事情次第で、売却の決断に大きく影響します。

 最後に③「諸条件」です。たとえば売主さんが新居で使おうと思っていた家具を置いていってほしいと要求された場合、どう判断するか。あるいは、一定条件をクリアしないと、解約になるおそれがある特約付きの契約は、進めるべきか否か。

 確実性の判断が難しいケースもありますが、3要素のバランスを踏まえて判断することが重要です。

売値交渉の際に知っておくべき、査定金額と売値の乖離率の目安は?

 誰に、どのタイミングで売却するか、正しい判断をするためには、一般の買主に間違いなく売却できるだろう「査定金額」、別の言い方をすれば「下限価格」を押さえておきます。査定価格を把握していれば、その乖離率を目安に、価格面での落としどころを冷静に判断し、交渉に臨んだり、売却したりすることができます。乖離率の目安は以下のとおりです。

査定価格の100%:一般の買主に間違いなく売却できるでしょう。これが下限価格です。
査定価格の103~105%:売却に応じてよい、通常の成約価格帯です。
査定価格の105~108%:一般的な不動産では好条件価格帯です。
査定価格の110%以上:角地・角部屋・めったに出ない立地など、条件によっては実現可能な価格帯です。

 実際の交渉に当てはめてみましょう。

 査定価格2700万円の物件を、3000万円で売り出しました。ところが、買いたいという人からの購入希望価格は、2500万円です。売主さんが売却に応じてもOKな価格帯は、査定価格の103~105%。金額にして2781万円〜2835万円くらいです。

 この線を押さえたうえで、まずはより高価格での成約を狙い、2916万円前後(査定価格の108%)まで歩み寄ってもらえないかと、買主に打診します。そこから折り合える価格を探っていきますが、査定金額を押さえておくことで、現在時点の適正最大価格での売却を実現することができます。

 ただし、このキャッチボールは、2回までにしておきましょう。3回以上の往復交渉を行うと、逆に決裂してしまうケースが多く見受けられます。大金をめぐるやりとりのなかで、互いに不信感が増してしまうのかもしれませんね。不動産取引はギャンブルではありません。交渉自体にのめりこんでしまうのは危険です。

購入申し込みの順番は、関係ない!

 自宅マンションを5000万円で売りに出したところ、同日にAさんとBさん2組の内覧があり、直後にAさんから、購入価格4900万円の不動産購入申込書が提出されました。数日後、今度はBさんから、5000万円の不動産購入申込書が届きました。先に申し込んだAさんを断るのは、失礼でしょうか?

 不動産業界用語に、「番手」という言葉があります。この場合はAさんが「1番手」で、Bさんは「2番手」です。1番手のAさんには、優先的な交渉権がありますが、最終的に売却先を決めるのは売主さんですから、2番手のBさんに売却することは可能です。

 ただ、両者の価格以外の条件が同じなら、5000万円でのオファーがあることを伝えて、Aさんに購入希望価格の再検討を促すほうが親切です。Aさんが検討した結果、やはり5000万円まで値が上がらなければ、誠実に筋を通したうえで、Bさんへの売却が実現できます。申し込みの順番は順番として、価格、条件、融質の確実性(事前審査に通過済みか)などを比較し、あなたにとってベストな買手を選ぶことが大切です。

 また、番手の判定は不動産会社が行いますが、悪い業者にあたると、自社顧客を1番手として優先する囲い込みが起きる場合もあるので、注意してください。

【関連記事】>>大手不動産仲介は「囲い込み」が蔓延?! 不動産売却時は「両手比率」が高い会社に注意を

まとめ

・「不動産購入申込書(買付証明書)」は「手付金の金額」「住宅ローン利用の有無と借入金額」「売買契約締結予定日」「引き渡し予定日」をよく確認する

・条件交渉相手は、住宅ローン事前審査に通過している人に絞る

・条件交渉時は、「価格」「期日」「諸条件」の3要素を軸に考える

・査定価格を下限に、価格交渉に臨む

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