不動産の価格査定をするとき、大まかな相場を知っておくことで、不動産仲介会社に足元をみられる、ということがなくなります。また、物件を見ずにざっくりとした査定を行う「簡易査定」は、複数の不動産仲介会社に依頼し、2~3社に絞ってから、本格的な「訪問査定」にのぞむことをおすすめします。
不動産の相場を、スマホやパソコンで調べておく
一般の個人の方が売却する不動産には、定価というものがありません。価格は需要と供給のバランスで決まります。人気があれば高く売れる可能性があるし、そうでなければ売りづらくなります。
不動産をできるだけ高く売るためにも、不動産仲介会社にごまかされたり騙されたりしないためにも、自分が売ろうとする物件のだいたいの価値は知っておきたいものです。
物件がどのくらいの金額で売れるかを知る最も確実な方法は、専門家による査定ですが、自分でもスマホやパソコンを使って調べ、ある程度、合理的な価格を予想することができます。
ざっくりとでも相場の見積もりができていると、不動産仲介会社と話すときも、早めに資金計画を立てるにも、なにかと動きやすくなりますので是非やってみてください。
取引事例や、類似の売り出し中の販売価格が参考に

自分の物件と似た不動産の最近の取引事例や、いま売りに出ている不動産の販売価格を見ると、自分の物件もだいたいこのくらいかなとわかります。
実際の不動産取引の成約事例は、「レインズ・マーケット・インフォメーション」(*1)や「土地総合情報システム」など公的機関が運営するサイトで、簡単に見ることができます。地域や物件の種別で絞り込んで調べられますから、以下のような条件を比較して、自分の物件と条件が似ているものを探してみましょう。(*1「レインズ・マーケット・インフォメーション」は、一般の消費者が安心して売買できるよう、不動産の成約価格などを公開しているサイト)
① 近隣の地域であること
② マンション、戸建て、土地の種別
③ 築年数
④ 木造、鉄筋コンクリートなど構造の種別
⑤ 床面積
条件が類似する他物件の成約金額や、販売価格をいくつも見ていくと、いろいろなことがわかってきます。
例えば、「うちとよく似た条件のこの家は、西向きで3千万円か。うちは南東角だから、もう少し高く売れるかも」「条件はあのマンションと似ているけれど、うちの場合、大通りの騒音がどう評価されるかだな」といったように、だいたいの相場やどのような点がマイナス評価されるのかも理解できるようになります。
床面積や間取りだけではなく、建物内の採光や通風、駅からの距離、環境、暮らしの利便性なども、販売価格に影響します。
一方、相場を調べるにあたり、間取り、環境、駅からの距離、バスの便など、さらに細かく絞り込んで比較することも可能です。また、現在売り出し中の物件価格を参照するなら、たくさんある不動産売買のポータルサイトが便利です。
相場を知る賢い売主は、不動産仲介会社の担当者に一目置かれる
不動産仲介会社によっては、査定の後で破格の売り出し金額を提示してくることがあります。
「うちに任せてくれたら、こんなに高く売り出してあげますよ」と言って喜んだ売主と媒介契約さえ結んでしまえば、後からいくらでも理由をつけて値段を下げ、最終的に、不動産仲介会社が売りたい買手にとって有利な価格で売ることもできてしまいます。
そういう不動産仲介会社にとって、なんでもかんでも自分で調べて勉強する売主は、とても煙たいお客さんです。
だいたいの相場を知っている売主に対して、契約を取らんがために根拠なく高い売り出し金額を口にすると、売主に「なんでそんなに高いの?」と不審がられたり、問い詰められたりするのがオチでしょう。なめてかかるとマズい売主だとわかれば、不動産仲介会社の担当者も襟を正さないわけにはいきません。
たしかに売主のなかには、無関係な情報や、間違った知識をインターネットで仕入れてしまう方もいて、不動産仲介会社の担当者からすると、そうした誤解を解くのにひと苦労ということも正直あります。
それでも、不誠実な業者に騙されたり、損をさせられたりするリスクを思えば、売主自身が不動産取引の基本的な仕組みを知っておくに越したことはありません。
「このお客さま、よく勉強しているなあ。よし、こっちもプロとしてもっとがんばるぞ!」
そう不動産仲介会社の担当者が奮い立つような、賢い売主さんが増えれば、ウソやごまかしはどんどん通用しなくなっていくに違いありません。
大まかな簡易査定後に、詳細な訪問査定という2段階方式
売却を検討している物件を、さまざまな角度から調査して、「売却できそうな価格」を不動産仲介会社などに算出してもらうのが査定です。
査定には、簡易査定(机上査定)と訪問査定(詳細査定)の2種類があります。
簡易査定は物件を見ないで行う大まかな査定で、立地、築年数、面積、近隣の類似物件の取引事例、公示価格・路線価といった情報をもとに、売れそうな金額を見積もります。ネットで申し込むことができる一括査定サービスの内容も簡易査定です。
簡易査定は必ず複数の会社に依頼しましょう。
1社だけだと、出てくる査定価格が高いのか、安いのかわかりません。3〜5社くらいに査定してもらえば、「まあ、誰が見てもこのくらいかな」という価格帯が見えてきます。
名前が知れている大手不動産会社、地域に強い会社、新しいやり方を取り入れている若い中小の会社と、多少バリエーションを意識して依頼してみてください。各社の特徴や強みがよくわかると思います。
その後、簡易査定の結果をもとに、2~3社に絞り込んで訪問査定を依頼します。
訪問査定では、間取り図や分譲時のパンフレットを用意
訪問査定は、不動産仲介会社の担当者が現地に足を運び、実際に物件を見て行うものです。
物件固有の状態をもとに、精度の高い査定ができることから、売り出しの前には訪問査定が不可欠です。
同じ不動産仲介会社が出す簡易査定と訪問査定の結果が、著しく変わることは稀ですが、実際の販売活動では、査定額よりだいぶ値引きしないと売れないこともありますし、逆に査定額より高く売却できる幸運なケースもあります。
少なくとも、査定価格イコール売却価格ではないことは、知っておきましょう。
訪問査定の際は、間取り図、権利証、住宅ローンの残高証明、固定資産税の納税通知書ほか、戸建てなら、測量図や建設業者への支払い金額がわかる書類、マンションなら、耐震性、仕様、共用施設などの情報が書かれている、分譲時のパンフレットなども用意します。
こうした物件入手時の書類があると、不動産仲介会社の担当者がよりよく物件について理解できますから、それが販売活動にも反映されて、結果的に高額売却につながることが期待できます。
査定後のしつこいセールスは断ってよい
インターネット上には、不動産会社の一括査定サイトがいくつもあって盛況です。
売却を検討している物件の住所、築年数、面積などの簡単な情報を、オンラインフォームに入力するだけで、複数の不動産仲介会社から査定がとれるので、よく利用されています。
ただ、不動産仲介会社からすると、無料査定を行うのは、つまるところ媒介契約獲得のためです。査定をきっかけに、「購入したいというお客さまがいます!」というウソのアピールを含めた、しつこいセールス攻勢に悩まされるケースが後を絶ちません。
査定を頼んだからといって、契約の義務はありません。
最初から売るつもりのない物件の査定を気軽に頼むのは考えものですが、査定をしてもらった不動産仲介会社と、この先お付き合いするつもりがなければ、はっきりと断ってかまいません。
【関連記事はこちら】>> 不動産一括査定サイト&仲介業者25社で比較! メリット・デメリット、掲載不動産会社、不動産の種類で評価しよう
まとめ
・不動産の取引事例や売り出し中の販売価格が参考になる
・地域や築年数など、条件が似た物件を比較
・はじめに簡易査定。2~3社に絞ってから訪問査定
・簡易査定は複数の不動産仲介会社に依頼する
・物件入手時の書類があると不動産仲介会社の担当者が売りやすい
◆ミライアスの売却査定(不動産一括査定サイト) | ||
対応物件の種類 | マンション、戸建て、土地 | |
相談実績数 | 2万7411件 | ![]() |
サービス開始 | 2018年 | |
運営会社 | ミライアス株式会社(東京都渋谷区) | |
営業エリア | 東京都、神奈川、埼玉、千葉県 | |
【ポイント】平均成約日数33日のスピード成約を誇るだけでなく、売り出し価格と売却価格の乖離率も4.5%と低い(2020年3月実績)。売り手も買い手も喜ぶ、最大750万円の建物・設備補償は、大手に引けを取らない充実ぶり。 | ||
シリーズ「不動産売却の秘訣」
・不動産会社の選び方
・不動産売却の流れと費用
・売り時
・不動産の価格を調べる
・売り出し中の宣伝
・問い合わせが入らない
・購入希望者がみつかった後の手続き
・どの購入希望者にいくらで売るべきか
・物件タイプ別 売却時の注意点
・売れなさそうな物件、売主に事情がある物件
・譲渡所得が出た場合の確定申告
・売却時に活用したい控除
【注目の記事はこちら】 【査定】相場を知るのに便利な、一括査定サイト&業者"25社"を比較 【業者選び】売却のプロが教える、「不動産会社の選び方・7カ条」 【査定】不動産一括査定サイトのメリット・デメリットを紹介 【業界動向】大手不動産会社は両手取引が蔓延!? 「両手比率」を試算! 【ノウハウ】知っておきたい「物件情報を拡散させる方法」 |
<不動産売却の基礎知識>
相場を知るために、まずは「一括査定」を活用!
不動産の売却に先駆けて、まずは相場を知っておきたいという人は多いが、それには多数の不動産仲介会社に査定をしてもらうのがいい。
そのために便利なのが「不動産一括査定サイト」だ。一括査定サイトで売却する予定の不動産情報と個人情報を一度入力すれば、複数社から査定してもらうことができる。査定額を比較できるので、不動産の相場観が分かるだけでなく、きちんと売却してくれるパートナーである不動産会社を見つけられる可能性が高まるだろう。

ただし、査定価格が高いからという理由だけでその不動産仲介会社を信用しないほうがいい。契約を取りたいがために、無理な高値を提示する不動産仲介会社が増加している。
「大手に頼んでおけば安心」という人も多いが、不動産業界は大手企業であっても、売り手を無視した手数料稼ぎ(これを囲い込みという)に走りがちな企業がある。
なので、一括査定で複数の不動産仲介会社と接触したら、査定価格ばかりを見るのではなく、「売り手の話を聞いてくれて誠実な対応をしているか」、「価格の根拠をきちんと話せるか」、「売却に向けたシナリオを話せるか」といったポイントをチェックするのがいいだろう。
以下が主な「不動産一括査定サイト」なので上手に活用しよう。
【注目の記事はこちら】 【業者選び】売却のプロが教える、「不動産会社の選び方・7カ条」 【査定】相場を知るのに便利な、一括査定サイト&業者"主要25社"を比較 【査定】不動産一括査定サイトのメリット・デメリットを紹介 【業界動向】大手不動産会社は両手取引が蔓延!? 「両手比率」を試算! 【ノウハウ】知っておきたい「物件情報を拡散させる方法」 |
■相場を知るのに、おすすめの「不動産一括査定サイト」はこちら! |
◆SUUMO(スーモ)売却査定(不動産一括査定サイト) | ||
対応物件の種類 | マンション、戸建て、土地 | |
掲載する不動産会社数 | 約2000店舗 | ![]() |
サービス開始 | 2009年 | |
運営会社 | 株式会社リクルート住まいカンパニー(東証一部子会社) | |
紹介会社数 | 最大6社 | |
【ポイント】 不動産サイトとして圧倒的な知名度を誇るSUUMO(スーモ)による、無料の一括査定サービス。主要大手不動産会社から、地元に強い不動産会社まで参加しており、査定額を比較できる。 | ||
◆HOME4U(不動産一括査定サイト) | ||
対応物件の種類 | マンション、戸建て、土地、ビル、アパート、店舗・事務所 | |
掲載する不動産会社数 | 1500社 | ![]() |
サービス開始 | 2001年 | |
運営会社 | NTTデータ・スマートソーシング(東証一部子会社) | |
紹介会社数 | 最大6社 | |
【ポイント】 強みは、日本初の一括査定サービスであり、運営会社はNTTデータグループで安心感がある点。提携会社数は競合サイトと比較するとトップではないが、厳選されている。 | ||
◆イエウール(不動産一括査定サイト) | ||
対応物件の種類 | マンション、戸建て、土地、投資用物件、ビル、店舗、工場、倉庫、農地 | |
掲載する不動産会社数 | 1600社以上 | ![]() |
サービス開始 | 2014年 | |
運営会社 | Speee | |
紹介会社数 | 最大6社 | |
【ポイント】 強みは、掲載する会社数が多く、掲載企業の一覧も掲載しており、各社のアピールポイントなども見られる点。弱点は、サービスを開始してまだ日が浅い点。 | ||
◆LIFULL HOME'S(不動産一括査定サイト) | ||
対応物件の種類 | マンション、戸建て、土地、倉庫・工場、投資用物件 | |
掲載する不動産会社数 | 2399社 | ![]() |
サービス開始 | 2008年 | |
運営会社 | LIFULL(東証一部) | |
紹介会社数 | 最大6社 | |
【ポイント】強みは、匿名査定も可能で安心であるほか、日本最大級の不動産ポータルサイト「LIFULL HOME'S」が運営している点。弱点は大手の不動産仲介会社が多くはないこと。 | ||
◆イエイ(不動産一括査定サイト) | ||
対応物件の種類 | マンション、戸建て、土地、投資用物件、ビル、店舗、工場、倉庫、農地 | |
掲載する不動産会社数 | 1700社 | ![]() |
サービス開始 | 2007年 | |
運営会社 | セカイエ | |
紹介会社数 | 最大6社 | |
【ポイント】 強みは、サービス開始から10年以上という実績があるほか、対象となる不動産の種類も多い。「お断り代行」という他社にないサービスもある。弱点は、経営母体の規模が小さいこと。 | ||
◆マンションナビ(不動産一括査定サイト) | ||
対応物件の種類 | マンション | |
掲載する不動産会社数 | 900社超、2500店舗 | ![]() |
サービス開始 | 2011年 | |
運営会社 | マンションリサーチ | |
紹介会社数 | 最大9社(売却・買取6社、賃貸3社) | |
【ポイント】 強みは、マンションに特化しており、マンション売却査定は6社まで、賃貸に出す場合の査定は3社まで対応している点。弱点は、比較的サービス開始から日が浅く、取り扱い物件がマンションしかない点。 | ||
◆おうちダイレクト「プロフェッショナル売却」(不動産一括査定サイト) | ||
対応物件の種類 | マンション、戸建て、土地、一棟マンション、一棟アパート、店舗、事務所 | |
掲載する不動産会社数 | 9社 | ![]() |
サービス開始 | 2015年 | |
運営会社 | ヤフー株式会社、SREホールディングス株式会社(ともに東証一部子会社) | |
紹介会社数 | 最大9社 | |
【ポイント】ヤフーとソニーグループが共同運営する一括査定サイト。不動産会社に売却を依頼後も、ヤフーとおうちダイレクトのネットワークを使い、購入希望者への周知をサポートしてくれる。 | ||