雨漏りは火災保険で補償されるのか? 適用条件と注意点を総ざらい!

2021年6月16日公開(2022年6月16日更新)
福崎剛:フリージャーナリスト

ゲリラ雷雨や豪雨が増えた現代では、家屋の雨漏りなどが起きるリスクも増えているが、火災保険で保険金をもらえるケースも意外と多い。申請の対象だと知らずにそのまま自費で修理していることもあるようだ。そこで、今回は雨漏りを事例に、火災保険で補償されるケースの判断や火災保険金の請求に必要なことを解説しよう。(フリージャーナリスト:福崎剛)

雨漏りで、火災保険の保険金はもらえるのか?

 雨漏りが起きた場合、保険金がもらえるのだろうかと疑問を持つ人もいるだろう。火災保険の補償範囲をよく知らないため被害に遭ってもそのままになっていたり、保険申請の手続き時には時間が経過しており、保険金請求を諦めたりする人も多く、以下のような声が聞かれる。

火災保険でも雨漏りは補償される
火災保険でも雨漏りは補償される(出典:PIXTA)
  • 「台風や大雨で雨が壁伝いに染み込んでも保険金がもらえるの?」
  •  
  • 「どのくらいの雨漏りなら保険がおりるの?」
  •  
  • 「雨漏りって原因がわからなくても保険金がもらえるの?」
  •  
  • 「近くの工務店に修理してもらったけど、今からでも保険金がもらえるの?」

 雨漏りを訴えるケースはさまざまで、火災保険が適用されるかの判断がつきにくいのが現状だ。

 では、家屋の雨漏りの原因について考えてみよう。雨漏りは、台風や大雨、大雪などの後に起きやすい。

 例えば、強い風が吹いて屋根瓦やスレートが少し浮いて隙間ができたり、大量の雨や積雪で雨どいが外れる被害もあれば、大きな雹(ひょう)が降ったことで天窓がひび割れしたり、瓦屋根の漆喰(しっくい)が崩れて雨がつたい落ちることもある。

 また、それが原因で室内に水が入り込み、壁やクロスが水浸しになるといったことも、雨漏り被害の一つだ。竜巻で何かが飛んできて屋根に当たって屋根や壁が破損、ひび割れすることも考えられる。こうした自然災害に起因する雨漏りであれば基本的に補償対象になり、保険金がおりるのだ。

<参考>火災保険の基本的な補償内容は?
1)火災リスク:火災、落雷、破裂・爆発を含むリスクに対して補償する。
2)風災リスク:風災、雹(ひょう)災、雪災を含む。なお融雪水の漏入もしくは凍結、融雪洪水または除雪作業による事故を除く。
3)水災リスク:水災と呼ばれ、床上浸水や地盤面より45cmを超える浸水、または損害割合が30%以上の場合に補償。なお、床上浸水とは、居住の用に供する部分の床(畳敷きまたは板張り等のものをいい、土間、たたきの類を除く)を超える浸水をいう。
4)盗難・水濡(ぬ)れ等リスク:空き巣などによる盗難・給排水管などからの水濡れ等、建物の外部からの物体の衝突、労働争議等に伴う破壊行為等を対象に補償する。
5)破損等リスク:1〜4のリスクを除く偶然な破損事故等。うっかり窓ガラスを割ったり、テレビを倒して壊してしまった場合など。
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雨漏りで保険金がおりないケースとは?

 では、雨漏りが発生しても保険金が出ないケースとは、どういう場合だろうか。自然災害に起因する雨漏りでも、地震によって外壁にひびが入ったり、屋根瓦がずれて浮き上がるなどの被害は火災保険では補償されない。地震による被害は、地震保険での補償となる。

 もうひとつは、経年劣化による老朽化が原因では補償対象にならないことだ。つまり、家屋の築年数が古くなったことが原因だと判断されれば、雨漏りが起きても保険金がおりない。新築住宅の場合は、引き渡しの日から最低10年間にわたって「瑕疵(かし)担保責任」を負わなければならないことになっている。この期間中に住宅の欠陥や不具合などがわかったときは売り主または請負人に対して無償での修繕や損害賠償の請求ができるため、火災保険では補償されない。

 また、修繕やリフォームの直後に雨漏りした場合は施工不良の可能性が考えられるため、保険金がおりない場合がある。

 一方、修繕やリフォームから数年たって雨漏りが起きた場合は、風災(雹災、雪災を含む)による原因が考えられるため補償されるケースもある。保険金がおりるかどうかの最終的な判断は保険会社になるが、自然災害が原因であれば認められる可能性は高い。

火災保険金での修理を持ちかける業者には要注意

 最近、「保険金を使って住宅を修理しませんか」という勧誘がきっかけでトラブルになっているケースが増えているという。全国の消費生活センターには、住宅の修繕に関わる相談件数の増加傾向が続いており、2017年度は2008年度に比べて30倍以上になっている。その手口のひとつが雨漏りの修繕工事なのだ。出典:国民生活センターの「『保険金を使って住宅を修理しません』がきっかけでトラブルに!

 例えば、自宅に訪問してきた業者から「台風で破損した屋根を保険金の範囲内で修理しないか。契約している損害保険会社への申請は当社が代行する」と勧誘されるケースがある。風災による補償を狙ったやり口である。

 最も警戒すべきは「保険金の範囲内で修理するから自己負担はない」など「無料」を強調して、保険金の請求代行から住宅修理サービスまで一連の契約を結ばせようとしていることだ。

 火災保険でおりる保険金を目当てに工事業者が、詐欺まがいの契約内容で工事代金を請求するのである。なかには悪質な業者もあり、「損傷は経年劣化によるものだが、保険会社や共済には自然災害が原因という理由で申請するよう」にと強引に迫るケースも国民センターに寄せられたという。

 台風や大雪などによる自然災害が起きた直後を狙って、工事業者が火災保険を目当てに修理の工事契約を獲得しようと営業することはこれまでにもあった。すべての工事業者が悪徳ではないが、保険金がおりる前に工事契約を迫るような業者は信用できないので断るべきだ。

 相談者からは「契約時に契約書面に署名したが、控えをもらえなかった」「解約すると言ったら、保険金の50%を請求された」「代金として保険金全額を前払いしたのに着工してくれない」などのトラブルが報告されている。

自己負担額によって保険金額が変わる

 台風で屋根が傷んで雨漏りした場合、その修繕工事費用が10万円であれば保険金は10万円支払われる。つまり、修繕工事に関して自己負担することはない。この自己負担する免責金額を設定するかしないかで保険の掛け金が変わってくる。当然、免責を設定すれば保険料も変わり、免責なしのときよりも保険料は割安になる。

 ただし、保険金請求で10万円、免責金額1万円としていた場合は、10万円マイナス1万円で、9万円の損害保険金がおりることになる。これが「免責方式」と呼ばれる方法で、免責金額を超えた損害額は保険金としておりる。

 一方、「フランチャイズ方式」と呼ばれるタイプもあり、こちらは設定した金額を超えた場合に限り全額が支払われる。もし自己負担額が10万円の場合、損害額が9万円なら、保険料は0円で支払われない。しかし11万円の損害額であれば全額支払われる。

 損保会社によって、免責方式、フランチャイズ方式が選べる場合もあればどちらか一方しか扱っていない場合もあるので、確認しておくことが肝要だ。免責金額も自己負担額を0円から3000円、5000円、1万円、5万円、20万円などとするパターンがあり、その設定金額も異なっている。

 また、東京海上日動のように風災と水災に関してだけ免責金額を10万円や20万円に設定することもできる。例えば、台風などの被害が少ない地域に住んでいる場合なら、免責金額を高めに設定して保険料を安くすることもできるし、逆に洪水が起きやすい地域なら免責金額をゼロにして損害額分の保険金をもらうようにもできる。自分が住んでいる地域の災害リスクを考慮して免責金額を決定することで、保険料の節約にも役立てられるわけだ。

 免責金額によって、どのくらいの保険料の節約になるのかは一口では説明できないが、ある戸建ての火災保険(約9万円/5年契約・年払い)では免責金額を設定することで、免責をつけない場合よりも年間2000円〜7000円程度も割安になったという。免責金額を高めに設定することで、保険料は下がるので、詳細は各損保会社や保険代理店に問い合わせてみよう。

保険金を請求する際の流れ

 雨漏りによる保険金を受け取るには、以下の手続きが必要になる(他のリスクが起きた場合でも手続きはほぼ同じだ。近年、保険請求代行業者が横行しているが、基本は自分で請求することが重要。決して難しい手続きではないので、ぜひ自分で請求してみてほしい)。

雨漏りしている場所がわかれば、スマホなどで写真を何枚か撮影する。
(住宅全景、雨漏りしている部位、雨漏りした跡の写真など、3、4点あるとよい。表札の撮影も忘れずに)
保険会社または代理店に連絡する。
保険金請求について問い合わせて確認する。「保険金請求書」の書類を取り寄せる(またはホームページよりダウンロード、もしくは保険会社からメールで申請書類を受け取る)。「事故状況説明書」という書類が必要な保険会社もある。
保険金請求の書類に必要事項を記入し、送付する。
被害のあった部分の写真も提出する。
修理業者から無料で工事見積書を出してもらう

 以上の3つの手順で保険金の請求は簡単にできる。不明なことや気になることがあれば、まず最初に保険会社もしくは代理店に直接聞いてみるといいだろう。

 最終的には保険会社が補償の判断をするので、保険金の申請をしたら連絡を待つことだ。また、修理業者は1社だけでなく、2社以上から見積もりを取り寄せると比較できるのでいいだろう。工事内容や部材について詳細な内訳があるかを確認し、どういう部材かを聞いておこう。その際に「工事一式」などの見積もりになっている場合は、どんぶり勘定の業者なので仕事そのものがいいかげんだと想像できる。

 保険会社もしくは代理店から保険金額の振り込みに関しての連絡が来たら、修理工事の依頼をする。保険金が入金されるまで、工事契約は結ばないように注意しよう。
【関連記事】>>火災保険の請求はどうやる? 事故発生から支払いまでの流れと、保険金申請のコツを紹介!

被災から3年以内は保険請求が可能

 雨漏りが起きていても、すぐに気づくかどうかわからない場合もあるだろう。だからといって諦める必要はない。被災から3年以上過ぎていなければ、さかのぼって保険金の請求ができるのである(保険法第95条の消滅時効)。

 また、風災リスクで補償されることを知らずに、被災した場所をすでに自費で修理した場合でも、あとから保険金の申請が可能だ。その場合、工事前の被災状況がわかる写真、修理後の写真などがあれば申請もスムーズになる。

 いずれにしても火災保険の補償対象になるかどうかを疑問に思ったら、まずは保険代理店に質問してみることだ。

まとめ

・自然災害が原因による雨漏りは、火災保険の風災リスクで補償され、保険金がおりる。ただし地震や建物の老朽化、建築時やリフォーム施工の不良による場合は補償の対象外となる。
・もし、知らずに雨漏りの箇所を修理した場合でもあとから保険金の申請が可能。被災して3年以内であれば請求できる。
・雨漏り修理をする場合、必ず保険金が支払われたあとで工事契約を行うこと。また保険金で修理代金がまかなえると主張して、保険金の支払い前に工事契約をせかす業者は悪徳業者の可能性が高いので相手にしない。

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