火災などによる住宅の損害に備えるため、民間の「火災保険」に加入する人は多い。一方、似たような制度に都道府県共済やJA共済、コープ共済などの非営利団体が運営する「火災共済」があるのだが、いったいどんな違いがあるのだろうか? 補償内容や保険料などを比較して、どちらが自分に向いているのか確認しよう。(住宅・不動産ライター 椎名前太)
火災共済と火災保険の違いとは?

マンションや一戸建てにかかわらず、住宅を購入したら、損害があった場合に備えて「火災保険」や「火災共済」への加入が必要だ。どちらも、火災やその他の災害での損害を補償してくれるものだが、火災保険と火災共済では、補償(保障)内容や保険料(掛け金)、使われている用語などに違いがある。火災保険と火災共済の違いを知ったうえで、どちらに加入した方がよいか比較しよう。
■運営母体の違い
火災保険と火災共済の違いのひとつ目は、運営母体だ。
火災保険は民間の損害保険会社が運営している。当然ながら、民間企業は利益を追求して活動しているので、火災保険の保険料には利益も上乗せされている。
一方、火災共済は「都道府県民共済」「全労済」「CO・OP共済」「JA共済」といった非営利団体が運営している。火災共済は利益追求を目的とするのではなく、「お互いに助け合う」という理念の下に、組合員がお金を出し合って、万一の事故に備える仕組み。そのため、火災共済の掛け金は、火災保険の保険料よりも安い傾向にある。
また、保険会社は他社との競争があるため、商品開発に力を入れている。そのため、火災保険は多様な商品展開がされており、細かな補償内容が選べるなど、サービスが充実している傾向にある。火災共済の方は、最低限の保障を受けるための商品設計になっていて、火災保険と比べると手厚いものとは言いがたい。しかし、その分毎月の掛け金は低いというものだ。
■使われている用語の違い
火災保険と火災共済では、監督官庁が違う。火災保険は金融庁が監督しており、火災共済は厚生労働省が監督している。そのため、使われている用語も少しずつ違っており、火災保険においての「保険金」「保険料」「補償」は、共済ではそれぞれ「共済金」「掛け金」「保障」となる。
■契約対象者の違い
火災保険は広く一般に向けて提供されているが、火災共済は原則的に、その組織の組合員やその家族である必要がある。しかし、1000円程度の出資金を支払えば誰でも組合員になれるといった条件なので、実際には火災共済に加入するハードルはそれほど高くない。
■地震保険の扱いの違い
地震保険には、「火災保険とセットでないと加入できない」という条件がある。そのため、火災共済を選ぶと、必然的に地震保険には加入できないことになる。ただし、ほとんどの共済では「地震特約」「自然災害共済」などが用意されているので、地震への備えはそちらでカバーできる。
地震保険は国と保険会社との共同運営のため、どの保険会社で契約しても、保険料と補償内容は同一だが、地震特約や自然災害共済は、それぞれの共済団体が独自に提供しているものなので、料金や保障内容は団体によって異なっている。
【関連記事】>>専門家が選ぶ、おすすめ火災保険【火災共済版】
それぞれのメリット・デメリットは?
先述した通り、一般的な火災保険と火災共済では、補償(保障)内容の選択肢の有無と、保険料(掛け金)に違いがある。
民間の火災保険のメリット・デメリット
火災保険は、保険会社が事故や災害の発生率といったリスクなどを分析し、商品ごとに利益が出る保険料を算出している。そのため、保険料は火災共済に比べて高いが、リスクに応じたきめ細かい商品ラインナップとなっている。
火災保険の基本的な補償対象は「火災」「落雷」「破裂」「爆発」「風災」「ひょう災」「雪災」で、オプション(特約)として「水災」や「地震」を付けることが多い。また、不要だと思う補償対象を外して、その分保険料を下げることも可能だ。つまり、加入者のニーズに合わせたカスタマイズができるのだ。
火災共済のメリット・デメリット
一方で火災共済のほとんどは、「火災」「落雷」「破裂」「爆発」「水漏れ」「落下物」といった被害に対する保障がワンセットになっており、オプションの用意がない。「自分は水害の多い河川の近くに住んでいるから」といって「水災」に対する保障を追加することはできないのだ。
ただし、火災共済は、「水災」や「地震」に対して見舞金を用意しているケースが多い。これは通常の掛け金を支払うだけで「水災時は最高600万円まで」、「地震時は加入額の5%まで」といったように、火災保険の保険金よりは少ないものの共済金が出る仕組みだ。
火災共済は、このように細かなカスタマイズができない分、火災保険よりも掛け金(保険料)が安い。これが火災共済の最大のメリットといえるだろう。
火災保険と火災共済の保険料(掛け金)を比較
では、火災保険と火災共済の保険料(掛け金)はどれくらい違うのか比較してみよう。
今回は、損保ジャパンと千葉県民共済のサイトを利用した。建物の面積などの条件は下記になる。なお、損保ジャパンでは地震保険、千葉県民共済では地震特約を付けることができるので、これを加えた保険料(掛け金)も紹介する。
物件所在地:千葉県
建物:新築戸建て(木造・H構造)
延べ床面積:100㎡
家族人数:4人
建物の価格:2170万円
家財の金額:1000万円
契約期間:1年間
【損保ジャパンの保険料と補償対象(標準プラン)】

・地震保険なしの保険料(年払い):4万3470円
・地震保険ありの保険料(年払い):10万5130円
・補償対象:火災(消火活動のために費消・損傷した物の再取得に要する費用含む)、落雷、破裂・爆発、風災・ひょう災・雪災、水災、落下物等、水漏れ、盗難、暴力行為
・地震保険の補償内容:火災保険額の50%
(出典:損保ジャパン クイック試算)
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【千葉県民共済の掛け金と保障対象】
・地震特約なしの掛け金(年払い):2万5360円千葉県民共済 ホームページ
・地震特約ありの掛け金(年払い):4万8184円
・保障対象:火災、落雷、破裂・爆発、落下物等、他人の住居からの水漏れ、暴力行為(損害額が5万円以上の場合)、消防活動による汚損等、車両の衝突
・地震特約の保障内容:火災共済加入額の15%
(出典:千葉県民共済 掛金シミュレーション)
ちなみに、各種共済は掛け金の体系が簡素であるため、一覧表を提示した。添付の画像は「都民共済の掛け金早見表」だが、坪数と掛け金の相場を知るための参考になるだろう。
このように火災共済は、地震特約のあり・なしの両方とも、火災保険の半額前後の掛け金で加入することができる。ただし、比較するには補償(保障)内容が異なることを理解しなければならない。
この例での火災保険では、火災共済にない「風災・ひょう災・雪災」「水災」「盗難」が補償される。一方で火災共済では、火災保険にない「車両の衝突」が保障される。
また、地震保険(特約)に関しては大きな違いがあるので注意しよう。損保ジャパンはオプションで火災保険額の50%の地震保険を付けることができる。一方、千葉県民共済は、地震に対して標準で5%の保障が付いており、それにプラスして15%の地震特約を付けることができるので、合計20%の保障が受けられる。
この例で言うと、地震によって全壊した場合、火災保険では1585万円(家財含む)支払われるが、火災共済では634万円(家財含む)しか支払われないことになる。
掛け金の安さで選ぶか、補償内容の手厚さで選ぶか
火災共済の掛け金(保険料)は、火災保険に比べて圧倒的に安い。単純に火災に対する保障を求めるなら火災共済を選ぶ価値は十分あるだろう。
ただし火災共済は、前述の地震保険のように、運営組織によって保障内容が大きく異なることがあるので、検討する際は複数の商品をよく比較して選びたい。
また、多くの火災共済は水災と地震に対する共済金(見舞金)が、火災保険に比べてかなり少ない。昨今の流れから「もっとも危惧する自然災害は水災と地震だ」という人は多いはず。「大きな河川の近くに住んでいる」「いつ大地震が起こるか心配」といった人は、火災保険に加入して地震・水災のオプションを付けるべきだろう。
【関連記事】>>専門家が選ぶ、おすすめ火災保険【火災共済版】
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- Q県民共済・都民共済のメリットとは
- A
掛け金が安く、保険金が余った場合には割戻金がある点です。できるだけ安い保険料、最低限の補償をで受けたいという人にはおすすめです。
- Q県民共済・都民共済のデメリットとは
- A
民間の火災保険と比べて、カスタマイズ性に劣り、補償範囲に制限があります。また、地震で被害を受けた場合には「見舞金」という形でお金が支払われますが、民間の火災保険とセットで加入する地震保険と比べると、非常に少ない金額となります。
- Q民間の火災保険と、共済の違い
- A
運営母体が違います。一般的な火災保険は、民間企業が運営していますが、火災共済は非営利団体が運営しています。そのため、火災共済の方が掛け金が安い傾向にあります。一方、民間の火災保険は、商品開発に力を入れているため、補償内容が手厚くなる傾向です。
- Q火災共済にはどんな種類があるの?
- A
「都道府県民火災共済」「全労済(CO・OP共済)」「JA共済」などがあります。火災共済に加入するには、その団体の組合員になることが必要ですが、1000円程度の出資金を払えば組合員になることができます。
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デメリット | 情報入力後は、必ず電話にて対応が必要 |
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