「火災保険料の相場はいくら?」と聞かれて即答できる人は少ないだろう。それだけ普段は関心が薄い火災保険。だが、賃貸や一軒家を問わず火災保険には必ず加入したいので、ある程度の相場を知っておくべきだ。一体、火災保険料の相場はいくらなのか? 大手とネット系損害保険会社、それぞれの火災保険料の相場を比較した。
そもそも、火災保険とはどんなもの?
火災保険は、火災や自然災害によって住宅が受けた損害を補償するための保険です。万一の事態でも私たちの暮らしを守っていくためにも、マンションや一戸建てにかかわらず、必ず加入しておきたいものです。
【火災保険の対象】
火災保険の対象は「建物」「家財」の2種類で分けられています。
「建物」とは一戸建てやマンションの外壁、ビルといった建物の基礎部分のこと。戸建てだと、塀や門、車庫なども建物扱いとなります。また、基礎部分に直接備え付けてある冷暖房設備、浴槽、キッチン、畳や建具なども対象です。
一方、「家財」とは建物の中にある家財道具のことで、家具や家電製品、食器、日用品などが対象になります。保険会社によっては、家のなかにある貴金属や宝飾品が、保険対象に含まれることもあります。
火災保険の対象は、「①建物のみ」「②家財のみ」「③建物+家財の両方」という3種類から選ぶことができますが、一般的には「③建物+家財の両方」を保険対象にすることが多いです。
ちなみに賃貸の場合は、建物部分は大家の持ちものにあたるので、入居者が加入する火災保険の対象は、必然的に「家財のみ」となります。
火災保険料はどうやって決まる?
火災保険を含む損害保険とは、「将来、損害が発生したときに保険金が支払われる」という商品。未来に起こりうるリスクに備えるものなので、一般的な商品とは異なり、契約した時点では「支払われる保険金が定まっていない」のが大きな特徴だ。そのため、保険料を決めるには独自の計算方法がある。
保険料とは、事故が発生したときに保険会社が支払う保険金の原資となる「純保険料」と、保険会社の人件費や利益となる「付加保険料」の合計によって金額が決まっている。

純保険料は、損害保険料率算出機構が提示する「参考純率」という数値をもとに決まっている。損害保険料率算出機構では、毎年、会員保険会社35社から過去の契約や支払保険金に関する膨大なデータを収集し、これから予見される自然災害や社会状況を加味したうえで、その年の参考純率を発表している。
付加保険料は、保険会社の経費や人件費、代理店への手数料など保険会社を運営する上で必要な費用となる部分。この付加保険料率は、各社が独自に設定しているが、原則は「合理的」「妥当」「不当に差別的でない」という料率三原則に基づいて決められている。
火災保険料を決定づけるさまざまな条件
個人が支払う火災保険料を決定づける条件は複数あるのだが、主なものを紹介しよう。
①建物の構造
火災保険において建物は以下の3種類に分けられる。
- M構造:鉄筋コンクリート造のマンションなど
- T構造:鉄骨造やツーバイフォー構造の一戸建てなど
- H構造:木造の一戸建てなど
燃えにくい構造であるほど、火災保険料は安くなる。そして、燃えにくいのは「M構造」、「T構造」、「H構造」の順番だ。木造一戸建ての火災保険料が、マンションの火災保険料よりも高いのはこのためだ。火災保険料の金額に最も大きく影響している要素である。
②建物の延べ床面積
建物は大きいほど災害時の被害も大きくなる。そのため、延べ床面積の広い建物ほど保険料は高くなる。
③建物の所在地
災害リスクは地域によって異なっている。住宅密集地は延焼被害を受ける可能性が高いし、河川の近くは水害の可能性が高くなる。台風の被害が多いかどうかも、地域によって異なる。そのため、所在地によって火災保険料は異なっている。
④補償対象の範囲や、特約の追加
火災保険の補償対象は基本的に「火災」「落雷」「破裂・爆発」「風災」「雹(ひょう)災」「雪災」だ。これに、補償範囲を「水災」まで広げたり、「失火見舞費用特約」といった特約を付帯させることができるのだが、補償対象や特約を増やせば増やすほど、保険料は上がっていく。
⑤建築年や耐震性能、そのほか+αによる割引
地震保険を付帯する場合、築年数や建物の耐震制度によっては、地震保険料の割引がある。
新耐震基準が施行されたのは1981年6月1日。それ以降に建築確認を受けた建物は、新耐震基準を満たしているとして地震保険料割引の対象となる。また、国が定めている耐震等級で新耐震基準を上回っている等級2・3の建物は、さらに割引率がアップする。
このほか、損害保険会社が独自の割引設定を行っているケースもある。
ネット系損害保険会社の特徴
火災保険を取り扱う損害保険会社は、おもに2種類ある。
一つは以前からある財閥系などの大手損害保険会社。そしてもう一つは、新規参入してきたネット系損害保険会社だ。ネット系損害保険会社とは、インターネット上で見積もり請求から契約まで行える会社だ。その特徴には以下のようなものがある。
24時間・365日申し込みができる
従来の火災保険は、代理店の担当者と直接対面したり、申込書類を取り寄せたりと自分のペースで手続きを進めることが難しいといえる。一方でネット系損害保険会社ならば、インターネット環境さえあれば24時間・365日申し込みができる。忙しい人にはうれしい仕組みだろう。
商品の内容がシンプルで分かりやすい
従来の火災保険は、補償対象や免責金額といった選択肢が非常に多くて分かりにくい。それゆえ代理店担当者からの説明が必要になる。
一方でネット系損害保険会社の火災保険は、サイト上ですべて理解できるようにシンプルな商品設計になっている。ちなみに、ほとんどのネット系損害保険会社は、電話相談窓口を設けているので、分からないことは気軽に聞くこともできる。
「自分のペースで契約を進めたい」「自分自身でとことん調べて判断できる」といった人には、ネット系損害保険会社の火災保険が向いているといえるだろう。
逆に、大手損害保険会社の魅力は、手厚いサポートだ。自宅まで代理店の営業担当者が来てくれて、手取り足取り教えてくれる。代理店担当者から保険商品について説明を受けることもできるし、申込書もヒアリングの上で作成してくれて、契約者はサインをするだけで契約可能だ。
大手損害保険会社と、ネット系損害保険会社の
保険料相場の比較
では、いよいよ火災保険料の相場を検証しよう。相場といっても、上記のように建物の所在地や補償範囲によって、保険料は大きく異なる。
また、大手とネット系損害保険会社の相場は分けて考えるべきだろう。そこで、以下の条件のうえで補償対象をほぼフルオプション(「火災」「落雷」「破裂・爆発」「風災」「雹(ひょう)災」「雪災」「水濡れ」「盗難」「水災」「破損・汚損」「地震」)として、大手2社とネット系2社の見積もりを見比べてみた。
所在地:東京都
建物の構造:H構造(木造)
延べ床面積:100㎡
建築年月(2020年1月=新築、新耐震基準)
保険期間:5年間
支払い方法:長期年払
保険金額:建物2000万円、家財1000万円(どちらも免責金額0円)
地震保険割引:建築年割引(新耐震基準)
■大手損害保険会社の火災保険料の相場は?
・三井住友海上:年間10万9290円(地震保険なし:年間5万6790円)※1
・損保ジャパン:年間10万4090円(地震保険なし:年間4万5740円)※2
このケースだと、損保ジャパンの方が若干安いという結果になった。ただし、損保ジャパンの事故時諸費用特約は損害保険金の10%で100万円限度と、三井住友海上の20%、300万円よりも限度額が低くなっているので、横並びに比較することはできない。
実は、大手損害保険会社の火災保険料は、条件が同じならばどこもほとんど変わらない。代理店の対応力などで選ばれているのが実情だ。したがって、相場は年間11万円前後(地震保険なしだと5万円前後)と考えればいいだろう。
契約プラン:「フルサポートプラン」
補償内容:火災、落雷、破裂・爆発、風災、ひょう災、雪災、水濡れ、盗難、水災、破損・汚損等
特約、オプション等:事故時諸費用特約あり(損害保険金の20%・300万円限度)、地震火災費用特約あり(保険金額の5%・300万円限度)、破損・汚損等補償特約なし(通常補償に含まれる)、日常生活賠償特約なし、類焼損害・失火見舞費用特約なし、「暮らしのQQ隊」サービス付帯
※2 損保ジャパン見積もり詳細 (出典:損保ジャパン クイック試算)
契約プラン:「ベーシック(I型)」
補償内容:火災、水災、落雷、破裂・爆発、風災、ひょう災、雪災、建物外部からの物体の落下・飛来・衝突、水濡れ、盗難による窃取・破損・汚損、騒じょう・集団行為等に伴う暴力行為、不測かつ突発的な事故(破損・汚損等。※免責1万円)
特約、オプション等:臨時費用保険金あり(支払割合10%、100万円限度) 、地震火災費用保険金あり(建物が半焼以上、または保険の対象である家財が全焼した場合。保険金額の5%)、破損・汚損等補償特約なし(通常補償に含まれる)、個人賠償責任補償特約なし、類焼損害特約なし、残存物片づけ費用保険金あり(実費、損害保険金額×10%限度)、凍結水道管修理費用保険金あり(保険の対象に建物が含まれる場合のみ。実費。1回の事故につき、1敷地内ごとに100万円限度)、損害防止費用あり(保険金額限度)
■ネット系損害保険会社の火災保険料の相場は?
・セコム安心マイホーム保険:年間9万3310円(地震保険なし:年間4万810円)※3
・ソニー損保:年間9万9083円(地震保険なし:年間4万6583円)※4
ネット系損害保険会社の火災保険料の相場は、年間9万から10万円前後(地震保険なしだと4万円台後半)となるだろう。ネット系損害保険会社2社は、大手の1~2割安といったところだ。
ところが、特約やオプションの内容については大手よりも少々見劣りする部分がある。たとえば、セコム損保の場合だと、「破損・汚損損害等補償特約」に建物・家財ともにそれぞれ3万円の免責金額が設定されている。先述した大手2社(三井住友海上、損保ジャパン)の場合、どちらも全額補償される。
また、ソニー損保では、「破損・汚損損害等補償特約」について、WEB見積もり上では類似した項目を選択することもできなかった。「事故時諸費用特約」についても、両社とも損害保険金の10%(100万円限度)となっており、三井住友海上の20%、300万円限度に比べると低額だ。
相場が1~2万円安いからといって、必ずしもお得だとは言い切れないのだ。
なお、ネット系損害保険会社の場合は、独自の特約や割引設定を行っているケースもある。たとえば、セコム安心マイホーム保険ではホームセキュリティーやオール電化の導入が割引の対象となる。
契約プラン:「ワイドプラン」
補償内容:火災、落雷、破裂・爆発、風災、ひょう災、雪災、盗難(通貨などの盗難)、建物外部からの物体の落下・飛来・衝突等、給排水設備の事故等による水濡れ、騒じょう・労働争議に伴う暴力・破壊行為、水災
特約、オプション等:臨時費用保険金補償特約あり(損害保険金×10%、1事故につき100万円が限度)、地震火災費用保険金補償特約あり(保険金額×5%、1事故につき1敷地内ごとに300万円が限度)、破損・汚損損害等補償特約あり(建物:保険金額と同じ保険金、免責3万円。家財:保険金額50万円、免責3万円)、個人賠償責任補償特約なし、類焼損害補償特約なし
※4 ソニー損保の見積もり詳細(出典:ソニー損保 新ネット火災保険見積もり)
補償内容:火災、落雷、破裂・爆発、風災、ひょう災、雪災、水災、水濡れ、外部からの物体の衝突など、盗難
特約、オプション等:臨時費用保険金補償特約あり(損害保険金×10%、1事故につき1敷地内ごとに100万円まで)、地震火災費用あり(保険金額の5%または1敷地内ごとに300万円いずれか低い額)、破損・汚損損害等補償特約なし、個人賠償責任補償特約なし、類焼損害・失火見舞費用補償特約なし、残存物取片づけ費用あり(損害保険金×10%相当が限度)、水道管修理費用あり(実費、1敷地内ごとに10万円限度)、損害防止費用あり
相場を意識しつつ、
自分のニーズに合った火災保険を選ぶことが大事
一般的な一戸建て住宅の火災保険を、地震保険込みのフルオプションで加入すれば、大手損害保険会社で年間11万円前後、ネット系損害保険会社で9万から10万円前後といったところが相場になるだろう。
しかし、必要な補償対象や特約は人それぞれ。マンションの上層階に住んでいれば水災の補償は必要ないし、破損・汚損は必要なければ外せる損害保険会社も多い。
要するに火災保険選びにおいてもっとも重要なのは、自分のニーズに合った商品を選ぶことだ。そのためにプロ(営業担当者)の意見を聞きたいのであれば大手損害保険会社、自分自身で調べる自信があるのならネット系損害保険会社を選ぶのが得策だろう。
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火災保険の相場は年間いくら? 質問 FAQ
- Q火災保険の年間相場はいくら?
- A
建物構造や種類、床面積、築年数、所在地、補償内容によってさまざまです。都内新築一戸建て(木造100㎡)のケースだと、基本補償すべてと地震保険を付けて、大手損保:年間10万円程度、ネット系損保:年間9万円程度になります。
- Q年間契約と長期契約(10年・5年など)はどっちがお得?
- A
ほとんどの火災保険には「長期割引」があるので、単年契約よりも長期契約の方が保険料が割安になります。契約年数は最長で10年間です。
- Q地震保険はいくらぐらい?
- A
建物の所在地や床面積によって異なりますが、都内新築一戸建て(木造100㎡)のケースだと、年間約5万円です。地震保険は、どの保険会社で契約しても、保険料は変わりません。
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