火災保険において「水濡れ」とは、主に水が原因となった損害のこと。給排水設備の事故で室内が水浸しになったり、マンションの上の階の住人が起こした水漏れなどが該当する。こうした事故の場合、火災保険の「水濡れ」補償に加入していれば保険金が支払われるが、水が原因の事故なら何でもいいというわけではない。水濡れ補償は、どういったケースに保険金が下りるのかを整理しよう。(住宅・不動産ライター 椎名前太)
「水濡れ(みずぬれ)」による損害は、
火災保険で補償ができる
普段通りに生活していても、給排水管などが突然破裂して室内が水浸しになったり、家具・家電・衣類にまで被害が及ぶことがある。また、マンションやアパートなどの集合住宅に住んでいる場合は、上の階からの水漏れ被害などもあり得る。
こうした損害について、火災保険では「水濡れ(みずぬれ)」と呼んでおり、火災保険の「水濡れ補償」に加入していれば、保険金が受け取れる。具体的には、以下のような事故は水濡れにあたる。
・凍結で水道管が破裂して室内が水浸しになり、電化製品が壊れた
・風呂の排水管の詰まりが原因で部屋に浸水。床や壁を張り替えることになった
・マンションの上階が水漏れを起こし、自分の部屋の天井クロスまで浸水した
実は、水濡れ損害に対する保険金の支払いは、近年増加傾向にある。損害保険料率算出機構の「火災保険・地震保険の概況」によると、2013年では178億円だったが、2017年には285億円と1.6倍にもなっているのだ。
水濡れ補償とは、「給排水設備などの破損」または「他の住戸で起こった水漏れ事故」が原因となって生じた損害を補償するものだ。
ただし、補償される事故は「予測ができず突発的なもの」に限っている損保会社がほとんどだ。そのため、給排水設備の老朽化が原因となっていたり、以前から故障していることを知っていたのに、応急処置だけして配管の交換をしていなかった、というケースは補償されない。
注意が必要なのは、「給排水設備が原因となって生じた事故」が補償対象なので、事故の要因となった給排水設備自体の修理代に対しては補償されないという点。これらの補償をするのは、「凍結水道管修理費用保険金」「水道管修理費用」といった特約や費用保険金だが、損保会社によっては用意されていないこともある。
配管系:水道管、排水管、給水管 など
タンク:貯水タンク、給水タンク など
機器・設備など: ガス湯沸かし器、太陽熱温水器、洗濯機、トイレの水洗用設備、浄化槽、スプリンクラー設備・装置 など
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水に関する事故には「水災」もある。どちらも水が原因となって発生している事故なので混同している人も多いが、火災保険では「水濡れ」と「水災」は、まったく違う事故として扱われる。
「水災」は、集中豪雨や台風などの自然災害が原因となっている水の被害を指す。集中豪雨や台風が原因となって発生した、洪水や土砂崩れ、土石流といったものによる被害のことだ。
・台風で近くの川が氾濫し、床上浸水して家財が水浸しになった
・集中豪雨により土砂崩れが発生、家が押し流された
これらの被害は、「水災補償」に加入していなければ補償されない。また、ほかにも「水濡れ損害」と間違いやすいものがある。たとえば隣家が火事となり、消防車の放水によって自分の家が被害を受けた場合は、「火災」として保険金が支払われる。
【関連記事】火災保険の「水災補償」は必要? 水災と水濡れ被害の違いと、加入すべきケースを紹介!
集合住宅では、原因が何か?
どこが被害を受けたか?によって対応が違う
アパートやマンションなど集合住宅だと、被害が広範囲にわたってしまうケースも多くみられる。上の階からの浸水はもちろん、自分の部屋で起きた水漏れで下の階が浸水することも考えられる。
しかし、単にすべての被害を水漏れ補償でまかなうわけではない。また、持ち家と賃貸では、対応が違うケースがあるので確認しよう。
① 自宅の水漏れが原因で、自宅が損害を受けた場合
持ち家の場合は、自分が加入している火災保険の水濡れ補償で対応する。賃貸の場合には、給排水設備の経年劣化が原因であれば管理側の責任となり修理費用を負担することになる。突発的な事故の場合には借主側の保険で補償する。
② 自宅の水漏れが原因で、他人に損害を与えた場合
水漏れが広範囲になり、下の階まで被害を与えてしまった場合は、どうなるだろうか。自宅の損害については水漏れ補償で対応するが、下の階の人へは「個人賠償責任補償」で補償することになる。
個人賠償責任補償とは、日常生活における不測の事故などで、他人に損害賠償を支払わなくてはならなくなってしまった場合に、保険金が支払われるものだ。下の階への浸水以外にも、自転車による加害事故や、その他の理由で他人に損害を与えてしまったときにも利用できる。
ただし、補償額は新品価格(再調達価額)ではなく時価(現在の価値)になる。たとえば、5年前に購入したテレビが水濡れによって壊れたとしたら、5年分を差し引いた中古価格しか支払われない。
なお、個人賠償責任保険に関してはこちらの記事(火災保険に特約は必要なの? 個人賠償責任特約、弁護士費用等補償特約などに加入すべきかを解説!)でくわしく解説している。
③ 他人の住戸内で水漏れが起き、自宅が損害を受けた場合
上の階の住人が水濡れ事故を起こして、自分の住戸の天井や壁、さらに家具・家電などの家財に被害が及んだとする。その場合、上階の住人が「個人賠償責任保険」に加入しているのなら、その保険から補償を受けることができる。
もし、上の階の住人が保険に入っていなかった場合は、自分が水濡れ補償に加入していれば、そこから保険金が支払われる。ただし、保険金として受け取れるのは、どちらか片方のみ。両方の保険金を同時に受け取ることはできないので覚えておこう。
④ マンションやアパートの共用部分が損害を受けた場合
事故の発生場所が住戸ではなく、廊下やエントランスといった共用部分の場合は、個人で加入している火災保険からは補償されない。賃貸住宅の場合はオーナーが、分譲(持ち家)の場合は管理組合が「賠償責任保険」に加入しているので、そちらの保険で対処することになる。
水濡れ損害の補償対象とならないケース
一方で故意や過失(うっかりミス)、つまり事故ではない水濡れは、補償の対象外になることがある。具体的には次のようなことが考えられる。
【水濡れ補償の対象にならないケース】
・洗濯機の排水ホースが外れたことによる漏水
・窓枠や屋根の劣化による雨水の侵入
・浴槽にお湯をためていたことを忘れてあふれたことによる漏水
洗濯機の排水ホース(固定されていないもの)は給排水設備として認められないことが多い。また、給排水設備であっても老朽化が進んでおり、破裂・故障が予見できる場合も、補償対象から外れて、保険金が支払われないことがある。浴槽のお湯をあふれさせてしまったのは過失にあたり、補償対象外となる。
火災保険は補償対象を理解して選択しよう
戸建てかマンションか、持ち家か賃貸かにかかわらず、「水濡れ補償」は必須だろう。給排水設備がない住宅はあり得ないからだ。さらに戸建ての場合は、外壁や外構が自分のものなので「風災」「水災」などの、自然災害による損害の補償もつけておきたい。
一方で賃貸か分譲かを問わず、マンションの高層階に住んでいる場合は、「水災」は必要ないだろう。専有部分に対する洪水被害は考えられないからだ。
なお、「水濡れ損害」の補償対象は、あくまで建物と家財だ。それらを修理する間にかかる仮住まいのホテル代や残骸の片づけにかかる費用は対象外となる。それらも対象としたいのなら「費用保険金」特約を付けるようにしよう。
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