住宅には欠かせない火災保険。2019年10月の値上げに続いて、2021年1月にも再び火災保険料が値上げされます。多くの地域で保険料が値上げとなるだけでなく、地域によっては最大31%も値上げとなります。保険会社の資料から分かった値上げの実態と、保険の見直しの方法を解説しましょう。
火災保険の参考純率を4.9%引き上げ
2019年10月、損害保険料率算出機構が「火災保険の参考純率を平均4.9%引き上げた」と発表しました。この参考純率というのは、近年どのような災害があってどのくらいの保険金が支払われたか、といったデータをもとに算出され、各保険会社が設定する保険料率の基礎となるものです。
4.9%アップくらいなら大した影響はないのでは、と思いがちですが、この数値はあくまでも平均値であり、実際には都道府県や建物構造によって大きく異なります。場合によっては熊本県・H構造(戸建・非耐火構造)のケースのように、改定率が+31%になるエリアもあるのです。
◆参考純率の改定率(すべての築年数の契約を平均) ※2019年10月改定 |
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M構造 (マンション) |
T構造 (戸建・耐火構造) |
H構造 (戸建・非耐火構造) |
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都道府県 | 改定率 | 都道府県 | 改定率 | 都道府県 | 改定率 | |
三大都市圏 | 東京都 | +1.4% | 東京都 | +4.9% | 東京都 | +0.1% |
大阪府 | +8.9% | 大阪府 | +16.6% | 大阪府 | +14.9% | |
愛知県 | +4.2% | 愛知県 | +11.0% | 愛知県 | +10.9% | |
最大 | 熊本県 | +24.1% | 宮崎県 | +24.7% | 熊本県 | +31.3% |
最小 | 静岡県 | ▲3.8% | 福岡県 | ▲6.8% | 福岡県 | ▲15.9% |
出所:損害保険料率算出機構。保険金額を建物2000万円、家財1000万円とした場合実際の保険会社の保険料は、各社が決定するが、上表を参考にして決まる
一方で、参考純率は、築浅住宅を対象とした割引(建物のみ)を導入するとしています。築5年未満は平均28%の割引、築5年以上10年未満は平均20%の割引となります。水濡れ損害は建物の老朽化による影響が大きいため、築浅の住宅について保険料をかなり割引することになります。
その結果、築10年以上の建物については、以下のような参考純率となりました。熊本県のH構造(戸建・非耐火構造)は、なんと35%の値上げです。
◆参考純率の改定率(築10年以上) ※2019年10月改定 |
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M構造 (マンション) |
T構造 (戸建・耐火構造) |
H構造 (戸建・非耐火構造) |
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---|---|---|---|---|---|---|
都道府県 | 改定率 | 都道府県 | 改定率 | 都道府県 | 改定率 | |
三大都市圏 | 東京都 | +6.3% | 東京都 | +9.6% | 東京都 | +1.9% |
大阪府 | +14.1% | 大阪府 | +21.7% | 大阪府 | +17.3% | |
愛知県 | +9.2% | 愛知県 | +18.1% | 愛知県 | +15.4% | |
最大 | 熊本県 | +30.3% | 宮崎県 | +34.1% | 熊本県 | +35.0% |
最小 | 静岡県 | +0.8% | 福岡県 | ▲0.8% | 福岡県 | ▲13.9% |
保険会社は2021年1月に値上げ
火災保険料は、損害保険料率算出機構が算出したこの参考純率と、保険会社が設定した付加保険料の合計をもとに設定されます。今回の参考純率の改定に伴い、損害保険会社は、2021年1月に火災保険料を引き上げます。2019年10月に火災保険料を引き上げたばかりなのに、再び値上げをするのです。
「それくらいのパーセンテージならまあ許容範囲かな」と思いがちですが、この数値はあくまで平均値であり、都道府県や建物構造、契約プランによっては先程示した31%以上高くなるケースもあるでしょう。つまり、10万円だった保険料が、13万円以上になってしまうケースもあるのです。
さらに追い打ちをかけるように、2021年1月には地震保険の保険料も値上がりすることが決定しています。全国平均で5.1%の引き上げです。加入者にとっては「ダブルパンチ」となります。
【関連記事はこちら】>>2021年には地震保険が最大14.7%の値上げ!
なお、各都道府県ごとの値上がり・値下がり幅はかなり差があります。値上げだけでなく、値下がりする都道府県もあるのです。以下の図は、2019年10月の保険料見直し時の値上げ・値下げ状況ですので、参考にしてください。

※この改定幅はある大手損害保険の保障充実タイプを都道府県ごとに図解したものです。改定幅は保険会社や契約プランによって異なります。
いちばん気になる「自分はどれくらい上がるのか?」については、保険会社によって、また居住する都道府県や建物構造、築年数、契約プラン、特約、保障条件の内容によって大きく違ってきます。10万円値上がりになる人もいれば、ほとんど変わらない人もいるし、1万円値下げになる人もいます。
確実に言えることは、全体的には値上がりになるケースが多い、ということです。2021年1月以降、次回更新時に自分の保険料がどれくらい変わるのかに関しては、まずは一度、現在契約している保険会社に問い合わせをしてみることをお勧めします。おそらく、2020年の年末ごろになると、具体的な保険料が分かるでしょう。
こんな人はぜひ見直しを検討しましょう
火災保険は、住宅購入時になんとなく勧められるがまま入ったきり、そのままにしている人が多いものです。今回の火災保険・地震保険の値上げを機に、見直しを考えてはいかがでしょうか。
以下のような人は、見直しにより保険料が安くなる可能性が高そうです。
(1)直近1年以内に契約更新を迎える人
(2)マンション/戸建・耐火構造に住んでいる人
(3)短期契約、分割支払いをしている人
(1)直近1年以内に契約更新を迎える人
直近1年以内に更新時期を迎える人は、現在が保険の見直しをするチャンスです。見直し方法は以下の通りです。
2020年12月末までに、現在の契約を解約し、新しい契約に入り直すのです。保険料は2021年1月以降、値上げとなる人が多いので、現在の安い保険料が適用されるうちに新契約を結ぶのです。
現在の契約を解約すると損をしてしまう気もしますが、実は解約払戻金が戻ってきます。ただし、解約払戻金は日割りで細かく戻ってくるわけではなく月割りで計算する会社が大半です。
なお、本当に値上げになるかどうかは、各社の保険料の設定によります。そのため、2020年末が近づいてきたら、保険会社に、
①2020年末に入り直した保険料
②2021年以降の保険料
を出してもらい比較しましょう。「①2020年末に入り直した保険料」のほうが安ければ、すぐに入り直しをするべきでしょう。
(2)マンション/戸建・耐火構造に住んでいる人
先ほどの表の通り、M構造(マンション)やT構造(戸建・耐火構造)、特に築年数が10年以上経過している場合には、ほぼ確実に保険料が値上がりとなります。一度値上げ幅を保険会社に確認してみるとよいでしょう。
その上で、2020年末までに現在の保険を解約して、再契約したほうがお得なのであれば、乗り換えましょう。
(3)短期契約、分割支払いをしている人
保険契約は、入り方によって保険料が大きく違います。保険会社やディベロッパーに勧められるがまま、契約すると、割高な契約になっていることがあります。
まず「契約期間」。現在、火災保険の保険期間は最長10年、地震保険の保険期間は最長5年となっていますが、おすすめされるのは1年契約、5年契約がほとんどです。10年契約にするだけで、長期割引が適用となります。
「支払い方法」も注意しましょう。ほとんどの人が、年払いでの支払いにしています。実は、契約時にすべての支払う「一括支払い」という制度があり、かなり割引率が高いのです。10年契約にしていても、毎年支払う場合と、「10年一括払い」などの長期契約では、トータルの保険料が2割近くも違うのです。
以下はある大手保険会社の「長期一括割引」です。
2年契約(一括払い)5.25%割引
5年契約(一括払い)14.0%割引
10年契約(一括払い)18.0%割引
※長期一括割引の一例。なお、「年払い」など分割の場合は逆に、割増保険料(5%程度)が加算されることがある。
現在の金利情勢を考えると、この「長期一括払い」は明らかに割安な商品です。保険代理店やディベロッパーは、自分たちの販売手数料が低くなる、長期一括契約を、わざわざ勧めてくれることはありません。10年分の保険料を支払う余裕があるのであれば、必ず自分から、「10年一括払いにしたい」と申告しましょう。
もしも現在の契約が5年契約、10年契約である人は、見直しには注意が必要です。長期契約をしている人の場合、保険料は契約当時のままなので、その後保険会社が値上げをしているのであれば、すでに保険料が割安なっています。2020年末に契約を入り直すと、高い契約に乗り換えることになってしまうので、必ず見積もりをもらうようにしましょう。
まずは問い合わせを!
今回の保険料改定に伴い、各保険会社も引き続き契約を更新してもらうために、保障内容をより充実させたり、特約の新設、新たな割引を導入するなど、さまざまな取り組みを行う予定です。とはいえ、値上げに見合った保障内容の充実があるかというと疑問です。
今回の保険料率引き上げは、自身の保険を見直すにはとても良いタイミングです。
見直しの流れは以下のようにするといいでしょう。
・2020年1月以降に更新した場合、自分の保険料がどう変わるのかを現在契約中の保険会社に確認
・大幅な値上がりになるとわかった場合には、2020年末までに、契約し直すことでお得になるのかを診断してもらう
・その際、契約プラン、保障内容を見直したり、他の保険会社で見積もりをとって比較検討してみてもよい
保険は「なんとなく」入って「なんとなく」そのままにしてしまいがちです。最近は、火災保険の一括見積もりなど便利なサイトも増えているので、ぜひこの機会に自身の保険を見直してみてはいかがでしょうか。
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運営会社 | SBIホールディングス(東京都) | |
デメリット | 希望とは異なる保険内容で見積もりが提供されることがある。 | |
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紹介する保険会社数 | 最大9社(楽天損保、SBI損保、東京海上日動火災など) | |
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