2022年10月 火災保険の値上げ率を調査! 築15年木造は、全国平均1.2倍、大阪は約1.5倍に大幅値上げ!

2022年8月26日公開(2023年10月25日更新)
福崎剛:フリージャーナリスト

2022年10月、火災保険料の改定が近づいている。編集部の調査によると、築15年木造だと全国平均1.2倍、最も値上げ幅が大きかった大阪府では、約1.5倍の値上げとなることが分かった。さらに今回は単なる値上げではなく、大きな契約内容の改定も含まれているため、この改定前に現在の契約内容を見直すことをおすすめする。(フリージャーナリスト:福崎剛)

2022年10月、火災保険の保険料と契約内容が大幅改定!

 火災保険の値上げがいよいよ10月に迫っている。

 2021年6月16日に「損害保険料率算出機構」が発表した「火災保険参考純率」(以下、参考純率)の改定が関係している。火災保険料は、この参考純率をもとに各損保会社で算出している。

 損害保険料率算出機構は、住宅総合保険の参考純率を、全国平均で10.9%引き上げた。これを受けて、損保各社が保険料改定に向けて準備していたが、その改定時期が2022年10月なのだ。

 なお、保険料の改定が行われるこのタイミングで、契約内容の大幅な改定も行われる。

 それぞれ、簡単に説明しよう。

1.火災保険料の改定

 まず、「火災保険料の改定」についてだが、全国一律の値上げではない。損保会社によって改定率が異なるだけでなく、都道府県や建物の種類によって値上げも値下げもある。

 今回の保険料改定では、築年数が古い物件ほど、大幅値上げとなることが予想されている。古い物件ほど損壊リスクが高いためだ。一方、新築で頑丈な造りをしている物件は、保険料が値下げとなることもある。

2. 契約期間の短縮(最長10年から最長5年へ)

 次に、「契約期間の短縮」。これまで最長10年契約だったものを5年に縮小する。最長契約期間を5年に縮小するのは、自然災害が年々増えて、長期にわたるリスクへの対応が難しいと各損保会社が判断したためだとされている。

 火災保険には、長期割引といって、1年ごとの契約よりも長期で契約する方が保険料が安くなるという割引制度がある。

 例えば、1年ごとに更新して10年間支払う保険料(今後の値上げはない前提として)と、10年の長期契約で一括払いした場合の保険料は約18%も差があり、契約期間が長いほど基本的にはお得だ。最長が5年契約となれば、長期契約の割引率も下がってしまう。

 これは、実質的な値上げと言ってもいいだろう。

3.自己負担額(免責金額)の引き上げ

 この改定で、保険料が大幅値上げとなれば、家計に響くのは明らかだ。そこで、大手損保の中では、急激な保険料の値上げを抑えるために「自己負担額(免責金額)を引き上げる」といった動きがある。

 これまでは自己負担金額を0円に設定することもできたのだが、強制的に3万〜5万円まで引き上げるというものだ。その代わり、自己負担額0円の場合の保険料よりも、保険料は割安となる。対象となるのは、「破損・汚損」「水濡れ」「盗難」「暴力・騒擾(そうじょう)」といった、火災や風災以外の補償範囲が主だ。

 これには、別の目的もある。近年増えている、室内での破損・汚損といった少額の保険金請求に発生する事務手続き作業の削減だ。自己負担額が5万円に引き上げられれば、5万円以下の損害に関しては免責となり保険金の請求はできない。

実際に、火災保険料はどのぐらい上がるのか?

 火災保険は、同じ補償内容だったとしても、住んでいる都道府県や物件の種類によって保険料が異なる。参考純率は、全国平均で10.9%の引き上げとなったが、実際の火災保険料は、大きく引き上げられる地域もあれば、引き下げられる地域もある。

 では、新保険料はどのくらい上がるのだろうか? 実際に、SBI損保で見積もりをとり、これまでの保険料と比較したので確認してみよう。

SBI損保 火災保険料の上昇・下落率(新築、2022年10月〜)

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都道府県名

M構造
(マンションなど)

T構造
(鉄骨・RC造など)

H構造

(木造など)

北海道 +7% +17% +17%
青森 +5% +17% +16%
岩手 +6% +16% +16%
宮城 +6% +16% +15%
秋田 +5% +17% +16%
山形 ー1% +12% +12%
福島 +5% +14% +15%
茨城 +3% +20% +23%
栃木 ー1% +11% +11%
群馬 0% +19% +22%
埼玉 +5% +16% +16%
千葉 +8% +25% +26%
東京 +7% +17% +16%
神奈川 +8% +24% +26%
新潟 +2% +13% +14%
富山 +2% +13% +13%
石川 +2% +13% +13%
福井 +1% +13% +14%
山梨 +5% +18% +16%
長野 +5% +13% +14%
岐阜 +1% +13% +14%
静岡 +6% +15% +16%
愛知 +4% +14% +15%
三重 +3% +13% +12%
滋賀 +4% +14% +15%
京都 +6% +15% +16%
大阪 +8% +26% +32%
兵庫 +6% +15% +16%
奈良 +2% +8% +7%
和歌山 +3% +9% +7%
鳥取 +6% +17% +16%
島根 +5% +15% +15%
岡山 +5% +15% +15%
広島 +4% +14% +16%
山口 +2% +8% +7%
徳島 +6% +15% +16%
香川 +6% +16% +16%
愛媛 +6% +16% +16%
高知 +6% +15% +16%
福岡 0% +7% +6%
佐賀 ー3% +4% +4%
長崎 ー3% +5% +5%
熊本 ー3% +11% +18%
大分 0% +6% +6%
宮崎 ー3% +11% +18%
鹿児島 ー3% +11% +17%
沖縄 +1% +14% +12%
全国平均 +3% +14% +15%

※SBI損保「無料見積もり」で試算。

【試算条件】築年数:新築、保険金額(建物)M構造:1000万円、T構造・H構造:2000万円、

保険金額(家財):600万円、契約期間5年間、地震保険:なし

 構造別に値上げ率を見てみよう。

各構造の全国平均値上げ率(新築の場合)
・M構造:+3%
・T構造:+14%
・H構造:+15%

 T構造とH構造に関しては、新築であっても、各都道府県いずれも新保険料は値上げとなる。

 特に値上げ率が高いのは大阪府で、T構造は26%、H構造が32%の値上がりだ。他に値上げ率が高い都道府県は、茨城県、千葉県、神奈川県で、T構造・H構造いずれも20%を超えている。

 一方、新保険料で値下げになる都道府県もある。いずれもマンションなどのM構造で、栃木県、山形県、九州5県(沖縄県、0%の福岡県、大分県をのぞく)ではがわずかに値下げになる。 

 次に、築15年ではどのくらいの値上げ率になるのか見てみよう。

SBI損保 火災保険料の上昇・下落率(築15年、2022年10月〜)

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都道府県名

M構造
(マンションなど)

T構造
(鉄骨・RC造など)

H構造

(木造など)

北海道 +16% +29% +28%
青森 +11% +32% +30%
岩手 +11% +23% +23%
宮城 +11% +19% +19%
秋田 +10% +32% +29%
山形 +5% +26% +26%
福島 +10% +18% +19%
茨城 +9% +29% +33%
栃木 +4% +15% +15%
群馬 +6% +35% +40%
埼玉 +10% +23% +23%
千葉 +13% +35% +37%
東京 +12% +21% +20%
神奈川 +13% +34% +36%
新潟 +7% +21% +21%
富山 +7% +17% +17%
石川 +7% +17% +17%
福井 +7% +22% +24%
山梨 +11% +33% +30%
長野 +10% +23% +23%
岐阜 +7% +22% +24%
静岡 +10% +21% +22%
愛知 +9% +20% +21%
三重 +8% +23% +23%
滋賀 +9% +20% +22%
京都 +10% +22% +23%
大阪 +15% +39% +49%
兵庫 +11% +22% +23%
奈良 +7% +15% +13%
和歌山 +8% +15% +13%
鳥取 +11% +24% +24%
島根 +10% +19% +19%
岡山 +10% +19% +19%
広島 +10% +21% +22%
山口 +7% +14% +13%
徳島 +11% +21% +22%
香川 +11% +20% +19%
愛媛 +11% +20% +19%
高知 +11% +21% +23%
福岡 +5% +13% +12%
佐賀 +2% +11% +11%
長崎 +2% +12% +11%
熊本 +4% +23% +36%
大分 +5% +13% +12%
宮崎 +3% +23% +36%
鹿児島 +3% +23% +35%
沖縄 +7% +27% +27%
全国平均 +9% +22% +23%

※SBI損保「無料見積もり」で試算。

【試算条件】築年数:15年、保険金額(建物)M構造:1000万円、T構造・H構造:2000万円、

保険金額(家財):600万円、契約期間5年間、地震保険:なし

 新築では値下げになるケースもあったが、築15年ではいずれの構造物でも大幅な値上げになることが分かった。構造別の平均値上げ幅を見てみよう。

各構造の全国平均値上げ率(築15年の場合)
・M構造:+8%
・T構造:+22%
・H構造:+23%

 M構造(マンションなど)では平均で約+8%。値上げ率が最も高かったのは、北海道の+16%、続いて大阪+15%になる。

 その他、10%超の値上げをする都道府県も多く、東北4県のほか関東甲信では千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、関西の兵庫県、さらに四国4県。そのほかでは鳥取県が10%を超える値上げ率になる。

 T構造(耐火構造・鉄骨造など)では、全国平均で+22%の値上げ率となり、30%を超える値上げ率の都道府県は青森県、秋田県、群馬県、千葉県、神奈川県、山梨県、大阪府だ。

 H構造(木造など)では、全国平均で+23%の値上げになる。特に大阪府は+49%、約1.5倍ともなり値上げ率が最も高い。次に高いのは群馬県が+40%。さらに千葉県は+37%、神奈川県が+36%だ。また九州の熊本県、宮崎県も+36%、鹿児島県も+35%の値上げ率で高い。

 値上げ率が高い地域は、過去に自然災害による被害が大きかったことが要因だ。

火災保険料の値上げが続いている理由

 ここ数年、毎年のように火災保険料の値上げが報じられる。「どうして値上げが続いているの?」と疑問を持つ人も少なくない。

 その理由は、想定以上の自然災害で被害が出ており、多額の保険金を支払っているためだ。近年目立つのは、風水災害による被害だ。

保険金支払い事例
写真を拡大 出典:損保協会 「令和4年度税制改正に関する要望」(※色付きの箇所は、平成30年・令和元年に発生した災害)

 例えば、損保協会が発表した「巨大自然災害の保険金支払事例(地震除く)」によると、第1位が2018年の台風21号による大阪、京都、兵庫を中心にした風水災害で、その支払保険金は、1兆678億円と桁違いだ。実は、2018年にはこのほかに台風24号や7月豪雨もあり、合わせて約5000億円の追加支払いも発生している。

 第2位が2019年の台風19号による東日本広域の被害で、保険金支払額は5826億円。同じ2019年には台風15号による関東中心の被害もひどく、4656億円の保険金支払いがあった。

 火災などさまざまな事故の補償をする火災保険は、これまでにも風水災害による被害に対して多大な補償金を支払ってきた。これは災害リスクを鑑みての準備金(異常危険準備金)を用意して対処しているが、年々増える自然災害による被害額は想定を上回ることも起きている。そのため、どうしても保険料を値上げせざるを得ないというわけだ。

値上げが続く火災保険料、少しでも負担を軽くするには?

 先ほど確認したように、今回の改定では、全体的に値上げとなるケースがほとんど。もう値上げは避けようがないが、保険料を少しでも節約するとすれば、9月中に現在の火災保険を解約して、すぐに最長10年契約を結ぶことで、値上げに対処できる人が多い。

 そのためには、まず9月中の保険料と10月からの新保険料の見積もりを取って比べてみたい。各代理店に依頼すれば、新旧の保険料の見積もりを出してくれるだろう。

 いま加入している火災保険を一度解約して、9月中に加入すれば割安の保険料で済む人が多い。なお、途中解約しても返戻金があるので、未経過分の保険料を無駄にすることはない。新保険料になれば、最長5年の契約しか結べないうえ、長期契約割引も10年契約の場合と比べて割引率は下がる。

 保険代理店に9月中に加入した場合の保険料と解約返戻金を確認し、新料金の保険料がいくらになるのかを提示してもらい、そのうえで納得できるほうを選ぶと間違いはないだろう。

改定時期は、火災保険契約自体を見直すいい機会でもある

 火災保険は、基本となる大きな補償部分は各社とも似ているが、損保会社によってそれぞれ違いがある。「火災保険なんて、どれも同じ」だと思っている場合は、この機会にぜひ、複数社で見積もりを取ってみよう。

 例えば、以下のような場合は、一度契約を見直してみた方がいいだろう。

築年数が古い住宅(築15年以上)

 今回の改定では特に、築年数を重ねた住宅の場合は引き上げ率が高いことから、この機会に一度見直した方がいいだろう。

 また、まれにではあるが、保険金を「時価額」で契約しているケースがある。特に、1998年以前に契約した火災保険は注意しよう。

 時価額での契約になっていると、新築時3000万円だった評価でもその後2000万円の評価(時価評価)になっていれば、最大2000万円までしか保険金は支払われないことになる。つまり3000万円の補償で保険料を支払っているにもかかわらず、時価評価額が年々下がっており、補償されない分の保険料を払っている計算になる。いわゆる無駄な“超過保険”を掛けているのである。

 超過保険の無駄を発生させないためには、築年数が古くなっても、再び同等の住宅を取得するときに必要な保険金が支払われる「再調達価額」に、切り替えておくと安心だ。

1年ごとに契約更新をしている場合

 繰り返しになるが、火災保険は2年以上の長期契約にすると保険料が割り引かれる。1年ごとに契約更新しているような場合は、ぜひ見直すことだ。

 9月中であれば最長10年契約が可能なので、一括払いをすることで約18%の割引が受けられる(損保会社で割引率は異なる)。

 また、数社の保険を扱っている保険代理店なら、各社の保険料の違いもわかるので、最もニーズに合った火災保険を選べるメリットもある。つい同じ損保会社の保険を更新しがちだが、保険料改定を契機に見直してみるのもいいだろう。

 見直しもせずにもし被害が発生してしまえば、不満の残る補償しか受けられないことになりかねない。火災保険を役立てるために、面倒くさがらずぜひ見直しをしておきたい。

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