火災保険の「破損・汚損」補償は必要? 補償内容や、保険金が下りるケース・下りないケースを紹介

2024年3月5日公開(2024年3月5日更新)
平野雅章:横浜FP事務所 代表

個人向け火災保険の補償の中でも「破損・汚損」については、具体的にどんなことを補償してくれるのかが分からないという方も多い補償です。そこで、この記事では破損・汚損がどんな補償か、どのようなケースで保険金を受け取れるのかを見ていきたいと思います。(ファイナンシャルプランナー・平野雅章)

火災保険の破損・汚損について解説
(出典:PIXTA)

火災保険の「破損・汚損」とはどんな補償?

 個人向け火災保険は、現在最長5年契約ですが、2015年までは最長36年の長期契約ができたということもあり、契約途中で補償内容の見直しをする人はほとんどいない保険です。そのため、加入してから時間がたつと、説明を受けたつもりでも補償内容を忘れてしまいます。

 特に内容を忘れがちなのが「破損・汚損」の補償です。他の補償(火災補償、水災補償など)は名称から想像もつきやすいですが、破損・汚損は具体的にどんな内容を補償してくれるのか、よく分からないものです。

破損・汚損は「不測かつ突発的な事故による損害」を補償

 多くの保険会社では火災保険の基本補償として、以下の補償を組み合わせたプランを用意しています。

・火災、落雷、破裂・爆発
・風災・ひょう災・雪災
・水災
・建物外部からの物体の落下、飛来、衝突
・給排水設備の事故等による水濡れ
・盗難
・騒じょう※1、労働争議に伴う暴力・破壊行為
※1:集団によって起こされた騒ぎや秩序の乱れ

 そして、破損・汚損は「上記以外の不測かつ突発的な事故による損害を補償する」と説明されていますが、実のところ何を補償するのか、分かりにくい内容になっています。

破損・汚損補償の保険金受け取り事例

 破損・汚損の補償内容を理解するには、多くの保険金受け取り例を知ることが最も近道だと思います。

 火災保険の補償対象は「建物」と「家財」とに分かれていますが、それぞれ、破損・汚損補償が適用されたケースを見てみましょう。

【建物】保険金受け取り例

1.物を運んでいる時にバランスを崩してドアにぶつかり、ドアが破損した
2.子どもが家の中でボール遊びをしていて窓ガラスを割ってしまった
3.陶器製の洗面台に硬いものを落として割れてしまった
4.窓ガラスが直射日光の熱の影響でひび割れした

【家財】保険金受け取り例

5.子どもが誤って液晶テレビに物をぶつけてしまい、画面が破損してしまった
6.コーヒーを誤ってこぼして、家電が壊れてしまった
7.椅子を運んでいる時に転んでしまい、椅子が壊れてしまった

 また、損保ジャパンによると「自宅で自動掃除機がキッチンの引き出しに当たり引き出しが破損した(建物)」という場合の支払い事例もあるそうです。

 つまり、火災や雪災、水災といった自然災害に該当しない、「不測かつ突発的な事故による損害」が破損・汚損の対象なのです。想像している以上に補償範囲が広いと思われたのではないでしょうか。

【コラム1】意外と多い、窓ガラスの"熱割れ"

ちなみに、4の事例は「熱割れ」と言われ、窓ガラスに直射日光が当たりガラス温度が急激に上昇、周辺部分との温度差が生じたことにより、窓ガラスのささいな傷や弱い部分から割れてしまう現象です。私のお客様の中にも、ときどき窓割れに見舞われる人がいます。

マンションでは窓ガラスは共用部分のため個人向け火災保険の補償対象外ですが、一戸建てでは補償の対象になります。熱割れも破損・汚損の補償対象になりますが、大手メーカーの窓ガラスは通常10年間の保証がついているため、保証期間内であれば免責金額がある破損・汚損補償よりメーカー保証の利用を優先した方がいい可能性が高いです。

破損・汚損で補償されないケース

 この通り、補償範囲が広い破損・汚損補償ですが、補償されないものを各保険会社で決めています。代表的なものは次の通りです。

1.義歯、コンタクトレンズ、眼鏡その他これらに類する物
2.スマートフォン、タブレット端末、ノート型パソコン等の携帯式電子事務機器
3.自転車および原動機付自転車
保険会社によっては、コーヒーをこぼしたノート型パソコンも補償の対象に
保険会社によっては、コーヒーをこぼしたノート型パソコンも補償の対象になる(出典:PIXTA)

 しかし、ノート型パソコンは補償される保険会社もあり、ドローンを補償されないものに加えている会社もあります。

 また、同じ会社でも契約時期により変わっていることもあります。保険会社によってかなり異なる部分なので、パンフレットや重要事項説明書、契約のしおりなどで確認しましょう。

 また、破損・汚損補償が含まれるプランを選ぶ場合、補償対象として建物に加え、家財を対象とするかを選べる保険会社が多いです。契約時に家財を対象としていなければ、当然、補償されませんので、補償内容を確認するときはこの部分も注意しましょう。

破損・汚損は「免責金額(自己負担額)」が付いているのが一般的

 また、火災保険では、一部の補償に免責金額(自己負担額)が設定されています。免責金額というのは、それ以下の金額までは補償の対象にならず、自分で負担する一定の金額のことです。

 免責金額が設定されている補償では、保険金は損害額(修理費)から免責金額を差し引いて支払われます。免責金額以下の損害額であれば、当然、補償されないということになります。

 これまで、破損・汚損では免責金額を数千円から設定できる会社が多かったのですが、2022年10月の改定以降の契約から、破損・汚損の免責金額を一律5万円とする保険会社が大手を中心に増えてきました。つまり、5万円を切るような損害であれば、破損・汚損補償を使うことができないというわけですね。

【関連記事】>>火災保険の「免責」とは何? 損害を受けても保険金を受け取れないケースや、免責金額の設定でどれくらい保険料が安くなるかを解説!

火災保険の「破損・汚損」補償は必要か?

 現在販売されている火災保険は、基本補償についてさまざまな組み合わせのプランが選べるようになっています。また、プランを選んだうえで、破損・汚損補償は特約として付けるかどうかを選択する会社もあります。つまり、破損・汚損補償の付帯については、自由に選べることがほとんどなのです。

 破損・汚損補償を付けると、もちろんその分の保険料が上乗せされます。保険料を安く抑えたいという人は、破損・汚損補償を省きたいと考えるかもしれません。

破損・汚損補償は、支払い件数が多いが…

 火災保険に含まれるさまざまな補償の中でも、保険金の支払い件数が多いのが破損・汚損です。三井住友海上※2によると、事故種類別・支払い件数の割合は、破損・汚損が全体の30.7%にも上ります。

 日常において、破損・汚損の対象となる事故が頻繁に発生していると言えます。(※2参照:三井住友海上「GK すまいの保険(すまいの火災保険)補償内容」(お支払い件数の割合 「GK すまいの保険」の2018年度~2020年度当社支払実績)

 ただし、保険は本来、「発生確率は低くても発生すると損害が高額となる可能性があるリスク」に向いています。破損・汚損はそれほど高額な損害が考えにくいため、火災保険の基本補償の中では、比較的必要性が高くない補償だと考えられます。

今の火災保険に、破損・汚損が含まれているかチェックするには

 自分が加入している個人向けの火災保険に破損・汚損補償が含まれているかを確認するには、まず保険証券を見て保険種類を確認しましょう。

 「住宅火災保険」または「住宅総合保険」であれば、破損・汚損補償はありません。それ以外の名称(例:個人用火災総合保険、家庭総合保険など)であれば、ご自身で選んだプランによるため、「基本補償」または「主契約」と書いている部分を見て破損・汚損補償が入っているかを確認しましょう。

 保険証券で破損・汚損補償が含まれているかを確認する時に注意が必要なのは、保険会社により同補償の名称が異なることです。代表的な例として次のようなものがあります。

・破損・汚損等
・不測かつ突発的な事故
・破損・汚損損害等補償特約(特約の場合) 

 また、同補償は主契約ではなく特約としている保険会社も一部ありますので、併せて特約の記載部分も確認することが必要です。

【コラム2】昔契約した火災保険には、破損・汚損補償が含まれていない?

「住宅火災保険」と「住宅総合保険」以外の保険が販売され始めた1998年〜2000年以前に火災保険に加入した人は、破損・汚損補償が含まれていない可能性が非常に高いです。ただし、「住宅火災保険」と「住宅総合保険」はその後も販売は続けられていたため、それ以降に加入した人も保険証券で保険種類がこれら2つでないかをまず確認しましょう。

まとめ

破損・汚損補償は、子どもの予測不可能な事故に備えることができるのがメリット
破損・汚損補償は、子どもの予測不可能な事故に備えることができるのがメリット(出典:PIXTA)

 破損・汚損補償は、自然災害による損害よりイメージがしにくいため、加入していることを忘れていることが多い補償です。建物や家財が、不注意などで壊れてしまったとき、実は破損・汚損補償が使えるのに、保険金を申請しなかった…という話もよくあります。

 また、付けるかどうかの自由度が高い補償なので、これから火災保険に入るという人は、必要の度合いによって検討するのがおすすめです。

 保険金の受け取り事例を見てもわかるように、特に子どもが原因の事故が多いため、小さなお子さんがいる世帯では補償があると安心感はあるでしょう。また、日当たりのよい窓ガラスが多い戸建て住宅で窓ガラスの保証期間が切れていれば、熱割れ対策として検討するのもいいのではないでしょうか。 

 ですがやはり、原則的に保険というのは「頻度は低いが、発生すると損害が大きいリスク」に備える商品です。破損・汚損の損害は、そこまで額が膨らまないケースが多いので、火災保険の各種補償中でも優先度は低いものとなります。

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