火災保険にはどのような割引制度があるのだろうか? 火災保険の割引制度の多くは各社横並びの状態だが、なかには損害保険会社独自の割引制度もある。また、火災保険の契約の場合、たとえ制度が利用可能であっても、契約時に自分で申し込まなければ適用されない。つまり、どの火災保険にどのような割引制度があるのか契約前に知っておくことが重要だ。(住宅・不動産ライター 椎名前太)
火災保険の割引制度は、
自分で申請しないと適用されない!?
当たり前のことだが、火災保険の保険料は、同じ内容ならば安ければ安いほどいい。そこで着目したいのが、損害保険会社各社が提供している、火災保険の割引制度だ。
火災保険の割引制度は、各社ほとんど横並びの状態だが、適用条件(建物の構造、築年数)や割引率に多少の違いがある。また、独自の割引制度を打ち出している損害保険会社もある。
また、重要なのが、割引制度は「口頭での申告では利用できない」という点。割引適用の条件を満たしていたとしても、損害保険会社に割引制度を利用する旨を申請し、書類を揃えて提出しなければ、利用できないのだ。
そのため、どの火災保険にどのような割引制度があるのかを、契約前に知り、利用の準備を進めておくことが重要だ。
ほとんどの火災保険に共通する割引制度
まずは、ほとんどの火災保険に共通する割引制度を紹介しよう。繰り返すが、これら割引制度は、たとえ自宅が適用対象の建物であっても、自分から契約時に申し込まなければ適用されないことが多いので注意が必要だ。
割引の種類 | 割引の内容、条件など |
---|---|
長期契約割引 | 1年ごとに更新するのではなく、3年や5年といった長期で契約をすることで受けられる割引。割引後の保険料は、年間保険料×長期係数で算出する。 |
新築割引 | 保険開始日が建物の新築年月から11カ月後の月末までにある建物の契約に適用。割引率は、保険期間や補償内容、建物構造、所在地などによって変動するが、数%~十数%の間であることが多い。 |
築浅割引 |
火災保険の契約の始期日時点で「築10年未満」としている会社が多い。割引率は、保険期間や補償内容、建物構造、所在地などによって変動するが、数%~十数%の間であることが多い。 |
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長期契約割引
多くの火災保険は、1年から5年まで1年刻みで契約できる。そして契約期間が長ければ長いほど保険料は割引される。割引後の保険料は、年間保険料×長期係数で算出する。長期係数とは、長期契約において用いられる割引係数のこと(損害保険会社によって、長期係数は微妙に異なる)。
また、長期契約の保険料は、年払いよりも一括払いの方が割引率は高い。なお、地震保険は火災保険のオプションという扱いで、契約年数は最大5年まで、割引の対象となるのは一括払いのみだ。
新築割引
保険開始日が新築年月から11カ月後の月末までにある建物の契約に適用される割引制度。割引率は保険期間や補償内容によって変動することが多いが、数%~十数%程度割り引かれる。多くの保険会社が、新築割引もしくは築浅割引のどちらかを採用している。
築浅割引(築年数別割引)
建物の築年数が浅ければ浅いほど保険料が安くなる割引制度。多くの損害保険会社が築10年前後までを対象としているが、損害保険会社によって異なる。新築割引と同様、保険期間や補償内容によって割引率が変動するケースが多く、数%~十数%程度割り引かれる。多くの場合、先述した新築割引と、この築浅割引のどちらかが採用されている。
長期係数割引については、ほとんどの保険会社が採用している。パンフレットやホームページ上では「割引制度」として紹介されていないケースも多いが、2年~5年単位で契約すると、保険料は割り引かれて算出される。また、支払い方法には、年払いと一括払いがあり、一括払いの方が保険料が割安になる。
新築割引と築浅割引は、火災保険会社各社が独自で行っている割引制度だが、ほとんどの会社でどちらかを採用している。築数年がたっている物件だと、新築割引の対象外になってしまうので、検討している損害保険会社に築浅割引があるのかどうか、事前に確認したほうがいいだろう。
地震保険の商品内容は、どの保険会社も同様
火災保険とセットで加入する地震保険には、次の4つの割引が用意されている。ただし、複数の割引を重複して適用することはできない。
なお、地震保険は、「地震保険法」に基づいて国と保険会社が共同で運営している制度なので、どの損害保険会社で加入しても補償内容や保険料は同じだ。そのため、割引制度も各社に違いはない。
割引の種類 | 割引の内容、条件など |
---|---|
免震建築物割引 | 「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に規定された免震建築物に該当する場合(割引率50%) |
耐震等級割引 | 耐震等級 1~3 に該当する場合の割引(割引率 等級1:10%、等級2:20%、等級3:30%) |
耐震診断割引 | 地方公共団体等による耐震診断または耐震改修の結果、改正建築基準法の耐震基準に該当し、現行の耐震基準に適合していることが確認できる書類を提出した場合(割引率 10%) |
建築年割引 | 1981年(昭和56年)6月1日以降に新築された建物に該当すると割引率10%が適用 |
免震建築物割引
建物が「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)に規定された免震建築物に該当する場合、50%割引される。
耐震等級割引
耐震等級とは国が定めた耐震性能の等級。「3」がもっとも耐震性が高く、「1」が建築基準法をクリアするレベル。申請には登録住宅性能評価機関などが作成する証明書などの書類が必要だ。各等級の割引率は次のようになっている。
耐震等級3:50%
耐震等級2:30%
耐震等級1:10%
耐震診断割引
公的機関による耐震診断または耐震改修の結果、建築基準法の新耐震基準を満たすと証明された場合、10%割引となる。
建築年割引
1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認を受けた建物は、新耐震基準を満たしているとして10%割引の対象となる。
大手7社の火災保険で利用できる
主な割引制度を紹介
では、各損害保険会社の主な割引制度を確認してみよう。
会社名 | 【商品名】割引制度 |
---|---|
東京海上日動 |
【トータルアシスト住まいの保険】 契約開始日時点で築年数が10年未満である場合に適用される。割引率は、保険期間、所在地、建物構造、補償内容に応じて変動する。 |
三井住友海上 |
【GK すまいの保険】 |
損保ジャパン |
【THE すまいの保険】
・建物+家財セット割引
・長期分割割引 保険期間が2~5年、かつ支払い方法が年払い・月払いである場合に割引が適用される。数%~10数%程度の割引になる。 |
AIG損保 |
【ホームプロテクト総合保険】 ・築浅割引 契約開始日時点で、築年数が10年未満の場合に適用。割引率は、築年数や保険期間、補償内容によって異なる。
・Web申込割引
その他、住宅の耐火性能に応じて割引が適用される。 |
ソニー損保 |
【ソニー損保の新ネット火災保険】 契約開始日時点で築年数が10年未満であった場合に適用。最大20%の割引率だが、築年数や諸条件によって異なる。
・証券ペーパーレス割引 |
セコム損保 |
【セコム安心マイホーム保険】
・長期年払割引 保険期間が2~5年で保険料の払込方法を年払いにした場合、保険料が約6%~10%割り引かれる。ただし、次年度以降は口座振替が必須。
そのほか、建物の建築年数に応じて保険料が変動する。 |
楽天損保 |
【ホームアシスト(家庭総合保険)】
・長期一括払い、長期年払い割引 |
日新火災海上保険 |
【住自在(すまいの保険)】
・新築・築浅割引
・S評価割引 マンション管理適正化診断サービス(一般社団法人日本マンション管理士会連合会が実施)において、最優良評価である「S評価」を得たマンション(M構造・T構造)では、火災保険料に対して5%が割引となる。 |
あいおいニッセイ同和損保 |
【タフ・すまいの保険】 |
新築割引や築浅割引、長期契約割引を除いた、独自の割引制度があるのは、損保ジャパン、AIG損保、ソニー損保、セコム損保だ。
損保ジャパンは、「建物+家財セット割引」がある。建物と家財を同時に契約、さらに、保険期間は10年で、かつ評価基準・支払い基準が、新価・実損払いであること、「安心更新サポート特約※」をセットした場合、家財保険に割引が適用される。※安心サポート特約とは、契約更新を忘れてしまった場合に備えて、補償が途切れないように自動更新するという特約。保険期間10年の契約にセットできる。
AIG損保では、「Web申込割引」「オール電化住宅割引」「消火設備割引(併用住宅のみ)」がある。Web申込割引は、専用のWebサイトで契約を申し込むだけで保険料が10%割り引かれるというもの。AIG損保を検討している人は、この割引制度を利用するのが、手軽でいいだろう。ただし、契約期間は2年以上、かつ代理店から「Web契約予定内容確認書兼ログインID・仮パスワード通知書」を受け取っておく必要がある。
ソニー損保は「証券ペーパーレス割引」と「マイページ新規申込割引」があるが、どちらも割引率はそう大きくない。証券ペーパーレス割引では、保険証券を発行せず、保険内容の詳細をWebサイトで閲覧するようにすると、保険料が最大500円割引。マイページ新規申込割引は、ソニー損保の医療保険・自動車保険に契約している人が、専用のWebサイトから申し込みをすると、基本補償の保険料から6%(最大1000円)割引となる。
セコム損保は、「ホームセキュリティ割引」「オール電化住宅割引」を用意。ホームセキュリティ割引は、自宅でセキュリティシステムに加入しており、常時有効に機能している場合に、保険料を割り引くというもので、セコムらしい割引制度だ。所在地や建物構造によって割引率が変わるが、
・M構造(マンションなど):約9%~42%
・T構造(耐火構造、鉄骨造りなど):約6%~29%
・H構造(木造など):約5%~28%
と、最大42%も保険料が割り引かれる。オール電化住宅割引も同様、所在地と建物構造によって割引率が変わり、M構造:約5%~24%、T構造:約3%~17%、H構造:約3%~16% と、最大24%保険料が割り引かれる。
東京海上日動火災保険と三井住友海上については、築年数に応じた割引(築浅割引)のみであった。楽天損保は、築年数割引の表記はなかったが、建築物の構造に応じて保険料が割り引かれるようだ。しかし、これらは他社も同じような割引制度を持っているので、特筆すべき点ではない。
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火災保険の割引制度を利用しようと思ったら、いくつかの条件を満たさなければいけないことがほとんどだ。どの割引も条件が当てはまらない……という人も、保険料の節約をあきらめる必要はない。基本補償、特約ともに、「免責金額」を設定することで、保険料をいくらか抑えることができる。
免責金額とは、事故発生後に支払われる保険金から差し引かれる金額のこと。つまり自己負担となる金額だ。
一般的には、建物と家財のそれぞれに対して0円、1万円、3万円、5万円、10万円といった選択肢が用意されており、高く設定すればするほど保険料が安くなる代わりに、事故が起こった際の負担額が多くなる。割引制度とは異なる性質のものだが、保険料を抑えたいなら知っておきたい仕組みだ。
最終的には補償内容のバランスや、
見積書を比較して決定を
以上のように火災保険は、損害保険会社によっては、独自の割引制度が用意されている。特にネット系の火災保険を検討する際は、代理店からの説明がないので見逃さないようにしたい。
とはいえ、いくら割引制度が充実していても結果的に保険料が高ければ意味がない。また、割引によって保険料が安くなっても必要な特約(オプション)を付けられなければ本末転倒だ。
そのため、最終的には必要な補償内容がそろった見積書を作成してもらい、横並びで比較する必要があるだろう。
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