竜巻被害は火災保険で補償される? 補償内容の確認事項や注意点を解説!

2025年11月19日公開(2025年11月19日更新)
平野雅章:横浜FP事務所 代表

2025年9月5日、静岡県の牧之原市を中心に発生した観測史上最大クラスといわれる竜巻が現地に大きな被害を与えました。本記事では、竜巻被害が火災保険で補償されることと、その補償に関するチェックポイントなどについて解説します。(ファイナンシャルプランナー・平野雅章)

静岡県内で起きた竜巻による住宅の被害状況

 気象庁の現地調査によると、静岡県牧之原市から同県榛原郡吉田町にかけて、電柱の折損や鉄骨系店舗の外壁材の飛散といった状況が確認されています。

 このことから、風速約75m/sと推測される竜巻が発生し、また、同日、掛川市でも推定風速約55m/sの竜巻が発生した可能性が高いと判断されています(※1)

 静岡県がまとめた住宅の被害状況は表1の通りです。なお同県では、当日、台風第15号の影響で線状降水帯による非常に激しい雨が降り続いていたこともあり、被害原因を竜巻と大雨等で分けていない数字となっています。従って、主に住宅の損壊が竜巻の被害を表していると想定するのが妥当と思われます。

表1 静岡県 住宅被害の状況 (単位:棟数)

 住宅の損壊棟数だけを見ると、牧之原市が1,338棟、吉田町が411棟と突出しており、竜巻による被害数の多さが伺い知れます。

 とくに、牧之原市では住宅の損壊全体(1,344棟数)に対し、全壊が全体の5.4%(73棟数)、半壊が19.9%(268棟数)と、損壊の規模の大きさがほかの市町村と比べ突出しており、同市での竜巻の威力を想像できます。

竜巻などの発生箇所は非常に分散している

 この牧之原市での竜巻被害の情報に接しても、「自分の住む地域では竜巻なんて起きないだろう」と感じる人は少ないかもしれません。

 気象庁によると、1年当たりの竜巻発生確認数は、約20件(2007年から2024年、海上竜巻を除く)とさほど多くはありません(※2)

 ただし、同庁の「突風分布図 (1961〜2025)」では、竜巻以外も含めた突風が発生する場所は全国に分散しています(※3)。そのため、竜巻に関して安心と断言できる地域は存在しないと考えるべきでしょう。

※1 参考:気象庁 報道発表資料「令和7年9月5日に静岡県牧之原市、掛川市及び吉田町で発生した突風について~気象庁機動調査班による現地調査の報告~
※2 参考:気象庁「<竜巻等の突風データベース>年別の発生確認数
※3 参考:気象庁「<竜巻等の突風データベース>突風事例一覧(突風分布図)

竜巻で自宅が被害にあった場合、火災保険で補償されるのか

竜巻被害は火災保険で補償される
竜巻被害は火災保険で補償される(出所:PIXTA)

 住宅所有者向けの火災保険では、基本補償の範囲を以下の6つから組み合わせたプランが用意されています。契約者は、それらのプランを選択するタイプが主流となっています。

  1. 1.火災、落雷、破裂・爆発
  2. 2.風災、ひょう災、雪災
  3. 3.水災
  4. 4.盗難
  5. 5.建物外部からの物体の落下・飛来、給排水設備の事故による水濡れ、騒じょう等による破壊等
  6. 6.破損・汚損
     
  7. 1、2、5の複数の項目がセットになっている補償は、保険会社によって一部の補償が独立したり、ほかの補償とセットになっているケースがあります(※4)
    ※4 参考:東京海上日動 ​火災保険の補償内容、損保ジャパン 個人用火災総合保険『THE すまいの保険』補償内容

 竜巻被害は火災保険の基本補償で、2の「風災」を補償範囲としていれば補償されます

 風災とは、台風や暴風、突風、竜巻などによって建物などが損害を受けた場合に補償されるものです。多くの保険会社では、もっとも補償範囲が狭い基本プランでも、1と2はセットで含まれています。

 そのため、現在、火災保険に加入していれば竜巻による損害も補償される可能性が高いといえます。

【関連記事】>>火災保険の風災補償とは? 補償を受け取れるケースと契約の見直しポイントを解説!

注意が必要なのは「自由設計型」の火災保険

 前述のとおり、火災保険の通常のプランでは風災の補償は含まれている可能性が高いです。

 しかし、多くのネット通販型の火災保険と一部の代理店型の火災保険は、前述の基本補償の6つの範囲を原則、自由に組み合わせることができる「自由設計型」と呼ばれるタイプとなっているものもあります。その場合、2の風災、ひょう災、雪災の補償を外すことも可能になります。

 この「自由設計型」に加入している場合、竜巻による損害が補償されない可能性があります

 以前、マンションの場合は風災で損害を受ける可能性は低いとして、「自由設計型」にして、2の風災、ひょう災、雪災の補償を外すことがちょっとした流行になった時期がありました。

 しかし、マンションにおいても、窓ガラスが竜巻による飛来物で破損するケースもあり、そこから雨水が部屋の内部に吹き込む。あるいは竜巻によりマンションの屋上のシート防水が破損し水漏れが発生し、壁紙や家財に被害が発生するなどがあります。これらは風災を補償範囲としていないと、補償を受けられないことになります。

【関連記事】>>マンションも風災補償が必要な時代に! 台風や強風・竜巻の増加で、風災被害のリスクは増している

風災補償の免責金額について

 火災保険の保険金は、実際の損害額から「免責金額(自己負担額)」を引いた金額が支払われます。最近の火災保険では、この免責金額を「なし」から「20万円」までの範囲で契約者が選べるケースが多いです。

 ただし、築年数が古い建物では、保険会社から一定額以上の免責を設定するよう求められることが増えています

 風災補償に関しては、以前の火災保険では「フランチャイズ方式」と呼ばれる方式が一般的でした。これは、一定の金額までは全額自己負担で、一定の金額を超えたら全額保険金が支払われる仕組みで、金額設定は20万円が一般的でした。

 その後、フランチャイズ方式は減少し、最近の火災保険では自動車保険の車両保険のように契約時に契約者が免責金額を選ぶ方式がほとんどとなっています。

 免責金額については個人の考え方で設定するものです。免責金額が大きいほど保険料は安くなりますので、保険会社やその代理店とよく相談しましょう。

まとめ

 今回の静岡県内の竜巻は、私たちに火災保険の風災補償の重要性をあらためて考えさせてくれます。加えて住まいがマンションの場合は風災補償を外していて大丈夫かを再認識するきっかけとなります。

 竜巻による被害が火災保険で補償されるための注意点と保険証券のチェックポイントは以下のとおりです。

  • ・竜巻による損害は、火災保険の基本補償の「風災」で補償される
     
  • ・保険証券で基本補償の範囲に「風災」が含まれているかを確認すること。とくに「自由設計型」で補償を選んで加入した人は要注意

  • ・保険金の支払いがフランチャイズ方式、または免責金額が設定されていないか、設定されていれば、その金額を保険証券で確認しておくこと

 今回の竜巻被害をきっかけに、火災保険の補償内容を見直し、「風災補償」がしっかりと含まれているかどうかをいま一度確認しておくことが、将来の備えにつながります。

【関連記事】>>専門家が選ぶ、マンションのおすすめ火災保険

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