火災保険は火事や自然災害、盗難による損害など、補償範囲の広い保険ですが、補償対象外となるケースもあります。この記事では、補償対象外となる主なケースを解説していきます。(ファイナンシャルプランナー・平野雅章)
火災保険の補償範囲はどこまで?

出典:PIXTA
まず、火災保険の基本補償で補償される損害を確認しておきましょう。
- 火災、落雷、破裂、爆発
- 風災、ひょう災、雪災
- 水災
- 建物の外部からの物体の落下、飛来、衝突など
- 給排水設備に生じた事故による水濡れ
- 盗難
- 騒擾(集団による騒ぎや秩序の乱れ)または労働争議に伴う暴力行為もしくは破壊行為
- 不測かつ突発的な事故による破損、汚損
1、2まではほとんどの火災保険で補償されますが、3以降は加入するプランによって補償の有無が異なります。また最近では、7を補償対象外とする保険会社も少なくありません。
自分の必要とする補償が補償対象外となっている可能性がありますので、保険証券などで確認しておきましょう。
火災保険の補償対象とは?
補償対象の種類
火災保険の補償対象は「建物」「家財」「建物+家財」から選べます。建物のみを選択すると、家財の損害は補償されません。10数年前までは家財を補償対象としない契約も一般的だったので、とくに加入から時間が経っている人はチェックしておきたいポイントです。
家財補償の対象外
また、補償の対象に家財を選んでいても、補償の対象外となるものがあります。代表的なものを挙げてみましょう。
- 自動車(自動車保険の車両保険で「一般型」「エコノミー型」のどちらでも火災は補償されます)
- 通貨、小切手、印紙、切手、銀行通帳、ATMで使うキャッシュカード、乗車券など(盗難による損害が発生した場合のみ補償の対象となります)
- データ、ソフトウェア、プログラムなど
- 動物や植物などの生物
保険会社により、補償対象外となるものは多少異なることがあります。また、自動車は補償対象外ですが、敷地内に置かれた自転車および原動機付き自転車(いわゆる原付やモペット)は補償対象となるのが一般的です。
【関連記事】>>自転車事故も対象になる火災保険の個人賠償責任特約を解説! 保険金を受け取れるケースや確認しておきたいポイントは?
異常事態による補償対象外(戦争、地震、噴火など)
次は異常危険について確認しましょう。非常に多大な損害が発生する戦争や内乱、核燃料物質に起因する事故、そして地震、噴火による損害は、火災保険の補償対象外となっています。また地震や噴火またはこれらによる津波による損害も、原則、火災保険の補償対象外です。
さらに重要なのは、地震や噴火が原因の火災も補償されない点です。周囲から延焼した場合も同様です。地震時に自宅が出火しなくても、周囲から延焼すれば火災保険からの補償は原則として受けることができません。
地震保険を火災保険に付帯することで、地震などによる火災は補償されますが、保険金額(補償額の上限額)は火災保険の50%までしか設定できません。最近では、一部の保険会社の火災保険で、地震補償を50%上乗せできる「地震危険等上乗せ特約」の付帯が可能になっています。
また、火災保険で自動付帯されていることが多い「地震火災費用保険金」では、地震などによる火災で所定の状況を満たす損害を受けた場合、火災保険の保険金額の5%が支払われます。一部の保険会社では支払い割合を5%だけでなく30%や50%も選択でき、地震保険と併せ地震などによる火災で保険金額100%の補償の確保が可能となります。
【関連記事】>>火災保険では、地震による火災は補償対象外! 能登半島地震で分かった地震保険の必要性
経年劣化などによる補償対象外
損害保険は偶然で突発的な事故によって生ずる損害を補う保険とされています。そのため、次のような通常発生するような事態による損害は補償の対象外となっています。
- 補償の対象の自然の消耗や劣化
- 性質による変色、変質、さび、かび、腐食、浸食、ひび割れ、はがれ
- ねずみ食い、虫食いなど
- 使用または管理で通常生じ得るすり傷、かき傷、塗料のはがれ落ち、ゆがみ、へこみなどの外観上の損傷または汚損で、機能の喪失または低下を伴わない損害
風、雨、雪による補償対象外
建物の外側の破損がない場合(雨、風の吹き込み)
建物の外側の部分(外壁、屋根、開口部など)の破損を伴わない、風、雨、雪、ひょうなどの吹込みによる損害は補償の対象外となります。
たとえば、閉め忘れた窓があり、そこから強風による雨の吹き込みで家電が壊れてしまったというようなケースは保険金が支払われないということになります。
水災における補償対象外
台風、暴風雨、豪雨などによる洪水、融雪洪水、高潮、土砂崩れ、落石などによって、建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmを超える浸水を被った結果、保険の対象に損害が発生した場合、または保険の対象である建物、家財に再調達価額の30%以上の損害が発生した場合、水災として補償対象となります。
つまり、床下浸水は補償対象外となりますが、最近では上述の条件を満たさなくても敷地内の屋外設備を補償する特約を付帯できる保険会社もあります。
雪災における補償対象外
屋根に溜まった雪解け水が軒先などで凍結し堤防状になることで、屋根上に雪解け水が溜まり、屋根材の隙間から室内に入ったり、軒先などを腐食させたりする現象を「すが漏れ」と言いますが、「すが漏れ」による損害は雪災の補償対象外となります。
雪により生じた住宅の損壊でなく、構造上もとから住宅に隙間があることにより損害が生じたのであれば、それは偶然とは言えないからです。
また、河川の流域の積雪が気温上昇により大量の雪融け水となり発生する洪水(融雪洪水)は「雪災」ではなく「水災」の補償対象となります。
保険契約者または被保険者の重大な過失などによる損害
保険契約者または補償の対象となる人の故意、重大な過失(たとえば、てんぷら油を入れた鍋を火にかけたまま長時間その場を離れて放置し火災になったケースなど)、または法令違反によって生じた損害を補償の対象とすることは、公序良俗に反します。したがって、補償対象にはなりません。
破損、汚損における補償対象外
前述の基本補償8の不測かつ突発的な事故による破損、
- 携帯電話、スマートフォンなどの携帯式通信機器、ノート型パソコン、タブレット端末などの携帯式電子事務機器およびこれらの付属品
- ドローンその他の無人航空機および模型航空機およびこれらの付属品
- 眼鏡、コンタクトレンズ、補聴器、義歯、義肢などの身体補助器具
- 船舶、航空機
保険会社により違いがあり、たとえばノート型パソコンは補償される保険会社もありますので、契約時に渡された「重要事項説明書」などで一度、
まとめ
最後に、ここまで見てきた火災保険で補償を受けられない主な損害のケースを整理してみましょう。
- 基本補償の内容として選んでいなかった
- 補償の対象(建物、家財、その両方)として選んでいなかった
- 補償対象外のものだった(例:自動車、ソフトウェアなど)
- 異常危険とされる戦争、戦争、内乱や、核燃料物質に起因する事故、そして地震、噴火による損害
- 自然の消耗もしくは劣化、または性質による変質など、使用で通常生じ得る機能の低下を伴わない外観上の損傷または汚損
- 建物の外側の破損を伴わない風や雨等の吹込みによる損害
- 保険契約者または被保険者の重大な過失等による損害
- 個々の補償で定められた補償対象外の損害
意外に補償対象外のケースも多いのだなと心配になった方は、まず保険証券で基本補償の範囲の確認から始めてみましょう。
【関連記事】>>火災保険に「特約」は必要? どんな特約があるのか、必ず付けた方がいい特約はどれなのかを解説
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