高市早苗氏が自民党の新総裁に選出。高市氏は「金利を上げるのはあほ」と発言したこともある利上げ慎重派です。一方、連立を離脱した公明党の動き次第では、国民民主党の玉木雄一郎代表が首相に就任する可能性も取り沙汰されていますが、玉木氏も財政出動を重視する立場であり、日銀への基本姿勢は高市氏と大きく変わりません。では、今後の日銀の金融政策と住宅ローン金利はどう動くのか。本記事で解説します。(住宅ローン・不動産ブロガー 千日太郎)
※この記事は首相指名選挙前に作成したもので、高市早苗氏が首相に任命されることを想定して執筆しています。
高市早苗氏が自民党の新総裁に決まり、利上げはどうなる?

こんにちは。公認会計士の千日太郎です。
本記事では、利上げに慎重な高市早苗氏が自民党の新総裁に決まったことで、「日銀の金融政策はどうなるか」、そして「住宅ローン金利が今後どう動くのか」を深掘りして解説します。
利上げの方向性は?
高市氏は総裁選出直後の記者会見で「しっかりとやはり財政政策にしても金融政策にしても責任を持たなければいけないのは政府だ」と述べています。
この発言は2通りの解釈ができ、エコノミストやアナリストの間でも意見が分かれています。
1つ目は、政府が決める「方向性」とは景気や物価安定の目標(緩和を基調としつつ家計と企業を守る)という大枠であり、政策金利の利上げ・利下げ、上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)などの日銀保有資産の処分といった具体的な「手段」の選択は日銀に任せる、という解釈です。
目的を政府と日銀で共有しており、手段については日銀の独立性を尊重するというもの。私は基本的にこちらの理解です。
2つ目は、政府の「方向性」が利上げ・利下げの決定にまで踏み込む、という解釈です。こうなると、日銀の金融政策の正常化ペースは政治の影響を受けることになります。
高市氏の1年前の総裁選での「金利を今、上げるのはあほやと思う」発言が鮮明なイメージとして残っており、一部の報道では日銀内には政治的圧力への警戒が根強いともいわれています。
ただ、今回の就任直後の記者会見では、利上げの是非には直接触れず、日銀と対話する姿勢を示しており、少なくとも現時点で日銀の金融政策への介入までは考えていないようにも見えます。
いずれにせよ、10月29、30日の金融政策決定会合、もしくはリーク情報などから政府の責任と日銀の独立性のかみ合わせ具合が見えてくるのではないでしょうか。
10月の日銀会合での利上げは後退する?
元日銀審議委員で経済学者の木内登英氏は、自身のコラムの中で高市氏が総裁選で勝利したのを受けて、「少なくとも10月の利上げは見送られる可能性がある」という見立てを示しています。
個人的には高市氏の勝利以前から、10月の利上げの可能性は五分五分くらいの局面であったと見ています。
今回、高市政権の発足後に「政府の意向はどうなのか」「データをもう少し見てはどうか」という空気がやや強まることで、10月の利上げは一歩後退しているように思います。会合のテーブルに載る判断材料に「待つ合理性」が加えられたというニュアンスです。
植田日銀の姿勢を読む上では過去の歴史も重要です。2000年8月、速水体制がゼロ金利の解除に踏み切った際、当時の審議委員だった植田和男氏は反対票を投じています。
デフレ再来のリスクを強く意識し、拙速な利上げに反対しました。「焦って金利を上げて景気を壊すくらいなら、出遅れるほうがマシ」という判断基準で、今も昔も植田氏の筋は通っているのです。
利上げを急いでデフレ圧力を呼び戻すのはもっとも避けたい展開なのです。この「方向性」において、高市政権と植田日銀に見解の相違はないと見ています。
日銀の基本的な利上げ姿勢は変わらない
一方で、日銀の大きな方向性は「継続的な利上げによる金融正常化」です。政策金利はいまだ低すぎる水準にあり、将来の景気後退局面で利下げ余地を確保するには「上げるべき時に上げておく」必要があるわけです。
この考え方は変わりません。つまり、方向性は維持しつつタイミングには慎重ということです。1年前の高市氏の「今利上げするのはあほ」発言が鮮烈であったために、少しお互いに出方を見合うような状況となっていますが、米国のような対立にはならず、政府と日銀が協調して金融政策を進めていけるように思います。
なお、仮に今後の政局の流れで玉木政権が誕生した場合でも、金融政策の方向性に大きな違いはないでしょう。玉木代表も「積極財政による経済再生」と「持続的な賃上げ」を政策の柱に掲げており、日銀に対しては当面、緩和的スタンスを維持する構えを見せています。
したがって、政府が高市氏か玉木氏のどちらであっても、日銀の利上げペースは当面穏やかで、住宅ローン金利の見通しに大きな変化は生じないと考えられます。
高市政権が誕生したら住宅ローン金利の動向はどうなる?
高市政権になった場合の変動金利、フラット35、民間の固定金利の動向を見てみましょう。
変動金利:ワンチャン、利上げストップも
10月時点の追加利上げは五分五分からやや後退、というのが現実的な見方となっています。
ただ、今後の判断を後ろにずらせばずらすほど、米欧の景気減速に巻き込まれる「待つコスト」が積み上がり、結果として利上げできなくなるリスクもあります。
日銀の経済・物価情勢の展望で、2026年度には物価が2%を下回る局面を想定しているため、後ズレするほど利上げしにくくなり、結果として利上げストップの可能性も、なきにしもあらずです。
ちなみに、10月の変動金利は適用金利を上げた銀行と下げた銀行が混在していますが、全体で横ばい~やや低下の動きが見られます。
みずほ銀行は他行に6カ月遅れで追随する運用となり、基準金利を0.25%引き上げました。
SBI新生銀行は、変動金利のキャンペーン終了により上がったように見えますが、「SBIハイパー預金」の開設者を対象にキャンペーン金利を維持するなど、住宅ローンの変動金利を下げることで預金者を増やす試みは健在です。
PayPay銀行は新たなキャンペーンで0.63%まで下げたのに加えて、ソフトバンクユーザー向けの金利引き下げを行っており、基準金利は横ばいとしつつも、引下げ幅の拡大を利用したやり繰りが中心となっています。
【関連記事】>>住宅ローン変動金利ランキング132行比【最新版】
フラット35:赤字状態の低金利を続けやすくなる
フラット35は機構債の表面利率に対して貸出金利を低く据え置く、住宅ローンの赤字提供を続けています。
たとえば、10月時点で住宅金融支援機構(以下、機構という)は2.12%で資金調達し、私たちに貸すフラット35「買取型」の金利は1.89%という構図です。この金利差による損失分は機構が被っているのです。
本来なら長期金利上昇に対応してフラット35の金利も上がるところですが、「住宅金融の円滑化」という設立目的から、機構はしばらく金利を上げないと見ています。
そして、高市氏の財政積極派の政権色も、さしあたって逆ザヤの維持を容認する方向に働くでしょう。
さらに、「保証型」(スーパーフラットなど)では頭金を2割以上用意すれば「買取型」より金利が低くなり、さらに「子育てプラス」の対象となる人なら、当初の期間は最大▲1.0%の恩恵が受けられます。
初期の10年間は民間の変動金利と同じか、それ以下の金利負担で全期間固定できるケースもあるのでおすすめです。
【関連記事】>>フラット35の金利、手数料を徹底比較【最新版】
民間の固定金利:上げる銀行と下げる銀行に分かれる
民間の10年固定金利は、銀行の営業方針によって上げる銀行と下げる銀行に分かれると見ています。
高市政権のもとで赤字国債の増発観測が強まれば、長期金利には上向き圧力がかかります。一般的に固定金利は長期金利と連動するため上げやすくなります。
一方、住宅ローンを入り口にして預金獲得に動く銀行は、思い切って金利を下げる選択を取ることがあり得ます。
実際、高市氏が総裁に決まる前から、auじぶん銀行のように0.5%(10年固定金利)も大胆に引き下げた例が出ています。したがって「どの銀行で、いつ申し込むか」で適用金利が大きく変わる可能性が出てくる局面です。
複数の銀行で審査を通しておき、実行月の直前まで引き延ばす作戦がおすすめです。
ただし、民間の20年~35年固定型はおすすめしません。一部で小幅の下げが見られても、前述のフラット35と比べれば高すぎます。長期固定金利型なら、フラット35を軸に検討するのが合理的です。
【関連記事】>>住宅ローン35年全期間固定金利ランキング!132銀行を比較【最新版】
高市政権下の住宅ローン戦略
高市政権が誕生すれば10月の利上げは一歩後退すると見る人が多いようですね。さらに、この一歩の遅れによって利上げが止まるシナリオも考えられます。
ただし、それでも植田日銀の金融政策の正常化方針は維持されるでしょう。高市氏の「責任を持つ方向性」と日銀の「独立性」。この関係がどうかみ合うか?10月30日の日銀会合に注目です。
今のところ住宅ローンの選択としては、ワンチャン利上げ停止なら変動金利が得になるかもしれない。低金利で固定したいのなら、フラット35「子育てプラス」で機構債が逆ザヤのうちに実行する。民間の10年固定は金利を下げた銀行から選ぶ。という三本立てで審査を通しておくことをおすすめします。
【関連記事】>>住宅ローンの金利推移(変動・固定)は? 最新の動向や金利タイプの選び方も解説
132銀行を比較◆住宅ローン実質金利ランキング[新規借入] |
132銀行を比較◆住宅ローン実質金利ランキング[借り換え] |
![]() |
![]() |
【金利動向】おすすめ記事 | 【基礎】から知りたい人の記事 |
【今月の金利】 【来月の金利】 【2025年の金利動向】 【変動金利】上昇時期は? 【変動金利】何%上昇する? |
【基礎の8カ条】 【審査】の基礎 【借り換え】の基礎 【フラット35】の基礎 【住宅ローン控除】の基礎 |
新規借入2025年10月最新 主要銀行版
住宅ローン変動金利ランキング
※借入金額3000万円、借入期間35年で試算
- 実質金利(手数料込)
- 0.722%
- 総返済額 3387万円
- 表面金利
- 年0.590%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%
- 保証料
- 0円
- 毎月返済額
- 79,074円
①保証料など0円サービスが充実
②新規借入の場合は自己資金10%以上で金利優遇あり
③最大3億円まで借入可能


住宅ローン 全期間引下げ(新規借入)・変動金利
- 実質金利(手数料込)
- 0.762%
- 総返済額 3410万円
- 表面金利
- 年0.630%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%
- 保証料
- 0円
- 毎月返済額
- 79,611円
①低金利の上、がん50%団信無料
②無料で全疾病保償&12カ月の就業不能保償を付帯
③金利+0.1%で、がん100%団信も付帯OK


- 実質金利(手数料込)
- 0.782%
- 総返済額 3421万円
- 表面金利
- 年0.650%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%
- 保証料
- 0円
- 毎月返済額
- 79,880円
①店舗相談でも、低金利商品あり
②新規借入なら、注文住宅で必要な「つなぎ融資」に対応!
③3大疾病の50%保障が無料付帯!
③無料で、3大疾病50%保障&就業不能保障&就業不能保障を付帯する


-
住宅ローン利用者口コミ調査の詳細を見る
-
今回作成した「住宅ローン利用者口コミ調査」の調査概要は以下のとおり。
【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
有効回答数:822人
調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とするアンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。
【アンケートの設問】
Q1.金利の満足度は?
Q2.諸費用・手数料等は妥当でしたか?
Q3.団体信用生命保険には満足しましたか?
Q4.手続き・サポートには満足しましたか?
Q5.審査について、満足していますか?
Q6.借り入れ後の対応に満足しましたか?
Q7.他の人にも現在の銀行を勧めたいと思いますか?
【回答の配点】
・各設問は5段階で回答してもらい、Q1なら以下のように配点。平均値を求めた。
満足している(5点)
どちらかといえば満足している(4点)
どちらともいえない(3点)
どちらかといえば不満である(2点)
不満である(1点)
・総合評価については、各項目の平均値を全て合算。読者が重視する「Q1金利の満足度」については点数を3倍、「Q3団信の満足度」の点数を2倍として、点数の合計を50点満点とし、10で割ることで5点満点の数値を求めた。
保証料や団信などの諸費用がほとんど無料 |
132銀行の住宅ローンを比較 >>返済額シミュレーションで、全銀行の金利を一気に比較・調査
|
- 年収に対して安心して買える物件価格は?
-
- ・年収200万円で妻が妊娠中の家族の上限は1600万円!?
- ・年収250万円の単身者の上限は1800万円!?
- ・年収300万円の4人家族の上限は1800万円!?
- ・年収350万円の2人家族の上限は2100万円!?
- ・年収400万円の単身者の上限は2500万円!?
- ・年収450万円の4人家族の上限は2000万円!?
- ・年収500万円の4人家族の上限は3000万円!?
- ・年収600万円の3人家族の上限は3500万円!?
- ・年収600万円の40代独身の上限は3000万円!?
- ・年収700万円の共働き夫婦の上限は5000万円!?
- ・年収800万円の3人家族の上限は4500万円!?
- ・年収1000万円の30代4人家族の上限は5000万円!?
- ・年収1000万円の40代4人家族の上限は3500万円!?
- ・年収1000万円の50代夫婦の上限は3000万円!?
※サイト内の金利はすべて年率で表示
プロの評判・口コミ
淡河範明さん
SBI新生銀行の住宅ローンは、10年固定、15年固定、20年固定といった金利が低い点が特徴です。
商品も特徴的で、介護状態を保障する団信や、長く借りていると金利が下がっていく「ステップダウン金利」があるのも主要銀行ではここだけです。
審査はオーソドックスに行なっている感じです。住宅ローン処理センターで集中審査しているので、窓口のかたの力量があまり問われず、公平に審査されるという印象です。
なお、相談から審査、契約の手続きまでネットで完結できるようになりました。不安な方には、ビデオ通話で自宅から気軽に相談ができるので、コロナ禍の現状では最適な方法が用意されているようです。