地震保険料が10月1日から改定され、全国平均で0.7%の値下げとなる。ただし、地震保険料は都道府県ごと、建物の構造ごとに異なるため、今回の改定で値上げとなるケースもあるので注意したい。また、5年契約の長期割引率が引き下げられ、実質的な値上げとなることも分かっている。(フリージャーナリスト:福崎剛)
2022年10月、地震保険料改定のポイント
地震保険料が2022年10月1日から改定される。今回の改定のポイントを確認しよう。
【2022年10月 地震保険料改定ポイント】
それぞれ、詳しく見ていこう。
地震保険料の基本料率は、全国平均0.7%引き下げ
10月1日から火災保険料が改定されるのと同じタイミングで地震保険も改定される。今回の地震保険の基本料率の改定では、全国平均で0.7%引き下げとなる。それに伴って、地震保険料も引き下げとなり、さまざまな物価の値上げラッシュが続く中、よろこばしいニュースだろう。
地震保険料はなぜ値下げとなるのか?
まず今回の改定の背景について見ておこう。
地震保険料は、これまで2017年(全国平均+5.1%)、2019年(全国平均+3.8%)、2021年(全国平均+5.1%)と3度にわたって値上げされてきた。
この短期間で段階的に保険料を引き上げた理由は、地震保険は赤字であったため、本来必要な保険料水準に近づける必要があったからだ。この引き上げは、財務省の有識者会議「地震保険制度に関するプロジェクトチーム」の議論を取りまとめた方針にほぼ沿った形である。
ただし、2022年10月の改定においては、一転して、地震保険料は全国的な値下げとなる。なぜなのだろうか?
まず、地震保険を契約する世帯が増えたことが影響している。東日本大震災以降、日本全国で地震が頻発しており、国民の多くが地震リスクへの意識が高くなっている。そして、地震が原因の損害については、火災保険ではなく地震保険でしか補えない。
その地震保険の重要性が少しずつ認知され、2021年度には加入契約の付帯率が70%に迫っている。契約者が増えれば、保険商品としても安定性が増すため、保険料を値下げすることができる。
さらに、耐震住宅が増えている状況も、地震保険料の値下げにつながっている。地震による建物の倒壊リスクが以前よりも少なくなったということだ。
今回の改定で、都道府県や建物構造によっては値上げとなるケースも
今回の改定で、全国平均0.7%の値下げとはなるものの、地震保険料は都道府県ごとに異なっている。そのため、全国一律の引き下げではないので要注意だ。都道府県によっては保険料が値上がりするケースも出てくる。
実際の改定率を見ていこう。
イ構造(マンションなどが対象)では、全国平均で1.7%の値下げとなっている。
値上げとなるのは、茨城県、埼玉県、徳島県、高知県、福島県の5地域。そのうち福島県を除く4県は、+29.9%の大幅な値上げとなる。なお、全国で最も値下げ幅が大きい大分県では、38.1%の値下げとなる。
次に、 ロ構造(木造建築物など)の地震保険料改定率を見ていこう。ロ構造では、全国平均7.7%の値下げ。
値上げとなるのは、茨城県、埼玉県の2地域で、値上げ幅は12.3%だ。そのほかの都道府県では値下げとなり、値下げ幅が最も大きい大分県では47.2%と約半額程度まで値下がりする。
長期契約(5年契約)割引率の縮小
そして3つめのポイントは、長期契約の割引率が縮小するということ。
地震保険は2年〜5年契約で一括払いの場合、契約年数によって割引になるのだが、今回は最長5年契約に限って割引率が変更され、実質の値上げとなっている。長期契約の保険料を算出する長期係数が引き上げられたためだ。
長期契約一括払いの場合、保険料は「1年間の保険料」×期間年数に応じた「長期係数」で計算する。2年から4年の長期係数はこれまでと変わらないが、最長5年契約の場合、係数が0.05高くなり4.70となる。
つまり、5年契約に関しては実質値上げとなる。どういうことなのか、具体的に説明しよう。
【5年間分の地震保険料】
※年間保険料が10000円の地震保険に5年間加入する場合
・1年間契約(年間払い)を5年間更新:10,000円×5年=50,000円
・5年契約(一括払い):10,000円×4.65(長期係数)=46,500円
これまでは、一括で5年契約すると、年間契約を5回更新するよりも、保険料が3,500円割引になっていたのだ。しかし、今回の改定では長期5年契約のみ長期係数を変更したため、下記のようになる。
・5年契約(一括払い):10,000円×4.7(長期係数)=47,000円
改定後はこの事例のように、3,500円の割引が、3,000円の割引になってしまう。保険料が大きくなれば、この差額はさらに広がり、これまでよりも割引される金額が小さくなるというわけだ。
ところで、すでにご存じの人も多いだろうが、地震保険は、火災保険とセットで契約となる。地震保険単体では加入できないのだ。
また、保険金額についても火災保険の保険金額の30〜50%の範囲内(ただし、居住用建物は5,000万円、家財は1,000万円が限度)で設定することとされている。地震保険は損保会社で保険料が変わることもないため、複数の見積もりを比べる必要がない。
そのため、地震保険が未加入の場合は、いま加入している損保会社の火災保険とセットにして契約してみてはいかがだろう。
まとめ
・2022年10月1日から地震保険料が改定される。全国平均で0.7%の引き下げだが、都道府県、建物の構造によって値上げとなる地域もある。
・地震保険は火災保険とのセット加入が前提。保険料は各損保で同じになるため、相見積もりで比較する必要も手間もいらない。未加入であれば火災保険の見直しと同時に検討するのがいいだろう。
・長期契約の最長5年契約の場合、保険料算出のための長期係数が4.70になり、実質の値上げになる。居住する都道府県や建物の構造など総合的に考えて契約期間を決めることも考えたい。
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