災害時に重要になるのは、地域の人達と協力して支え合いながら復興を目指していくことです。そこで今回は、「互助(共助)」の重要性についてお伝えします(優益FPオフィス 代表取締役:佐藤 益弘)
「互助」とは地域ぐるみの助け合い
災害対策をするためには、実現可能な計画と、その計画を考え実行するための知識や情報、そして一定の費用(=経済的な基盤)がどうしても必要になりますが、基本的に災害対策というのは個々人の自助努力で行うことになります。
ただ、自助努力にも限界があります。被災後に経済負担を緩和する手段である公的なサポート(公助)や、これからお伝えする互助(共助・協助・近助=助け合い)は、復興において必要不可欠だといえます。
災害における「互助・共助」には下記のような活動が含まれています。災害前、災害後問わず、周囲の人と協力する活動を指します。
・地域の防災訓練や避難訓練
・災害発生時の声かけ、安否確認
・避難所の運営
・自治体と協力して防災マップを作成する など
若い世代を中心に、助け合いを重要視する人が増えている
事前の災害対策については、自助で行うことが多くの割合を占めるかもしれません。ところが、災害の発生直前直後には、互助機能がその力を発揮します。災害の発生直後から数カ月は、行政の対応である「公助」が追い付かない場合があるからです。
避難所の運営ももちろん、復旧しなければならない作業があれば、地域住民の協力を得ながら徐々に復旧作業をしていくことになります。もちろん、大きな被害に遭った際には、自分だけで復旧作業をすることは非常に困難になるでしょう。
東日本大震災においては、
「津波で自宅が流されたが、流れ着いた場所が地域のコミュニティの集会所だったため、2時間かけて救出してもらった」
「近所の方が大声で警告してくれたことにより、避難することができた」
「近隣の避難所では、リーダーとなって避難所を運営。周囲と協力して、掃除や清掃を行った」
という事例がありました。そのような経験を踏まえてか、近年は一般的にも「互助・共助(近隣との助け合い)」の重要性が評価されてきています。
内閣府の調査によると、重点を置くべき防災対策について「互助・共助」だと答える人が24.5%いることが分かっています。平成14年や、平成25年に行われた同調査に比べると、近隣との助け合いが重要だと考える人が多くなっているといえるでしょう。
また、内閣府の別の調査※1では、18~39歳といった年齢の若い層ほど互助・共助を重要視する傾向にあることが分かっています。また、地域の防災活動を推進する「自主防災組織」も年々増加※2しており、現在は全国に15万以上の団体が存在するなど、互助意識の高まりは実際の活動として顕在化しています。
※1 出典:内閣府「防災に関する世論調査」
※2 出典:内閣府「共助による地域防災力の強化」図表13:自主防災組織の推移
マンションの防災対策は、管理会社に任せておけばいい?
では、具体的に互助について考えていきましょう。例えば、都市部で多いマンションで災害に遭った場合、どのような互助が期待できるでしょうか。
実態を調査するため、マンション管理戸数の多い大手管理会社数十社を対象に、「災害時のサポートについて」という取材を申し込んでみました。ところが、実際に取材を受けてくれたのは、5本の指に入る程の数でした。
「(保有しているマンションの災害対策を)何もしていない」と答える管理会社は流石にありませんでしたが、「対策をしている」と答えた会社でも、下記のような簡単なことのみ対応しているようです。
・災害対策マニュアルを入居者に配布
・火災保険や地震保険の紹介
・総会や理事会のタイミングで、マンション管理組合(居住者)に災害対策の必要性の周知徹底を伝えている
中には、「担当者マターで対応しているので全社的には情報を把握してない」「独自のノウハウがあるのでお答えできない」という管理会社もありました。
管理会社はあくまで管理業務を受託している立場なので、管理の主体である管理組合から問い合わせや依頼がない以上、積極的に防災対策を講じることは難しいといった側面があるのかもしれません。
ただ、この回答だけを見ると、管理会社は「災害に対してどのくらいの知識や情報を持っているのか?」「どのぐらいのサポートをしてくれるのか?」という点には不安が残ります。
この結果を見れば「マンションに住んでいるのだから、何事も管理会社が準備してくれているだろう」と考えるのは、間違いだということがはっきり分かります。
万が一に備える意味でも、「災害サポートの善し悪し」「ノウハウの多寡」が、今後は管理会社を選定する際の指標の1つになることになるでしょう。
防災意識の高い管理会社が行っている対策とは
取材をしていくと、数ある管理会社の中でもしっかりと防災対策をしていると感じた会社が2社程ありましたので、簡単ですがその内容をご紹介します。
まず、両社とも、東日本大震災を契機に活動を開始したということですから、マンションの災害対策は地震を念頭に置いて対応されていると思って、まず間違いありません。
1つ目の管理会社は、社歴的にも防災に長く向き合っている会社でした。
ハード面では、かなり早い段階から備蓄倉庫などの共用スペースを確保。防災用の備蓄品の管理も管理業務の中に取り込んで、定期的な入れ替えなどを行っているそうです。ソフト面では、定期的に発行しているマンション住民&管理組合向けの冊子に防災に関する情報提供を行いつつ、担当者の業務レベルの向上や、最新情報や知識の共有を行い、理事会を通じて啓蒙活動を行っているとのことでした。
もう1つの会社は、会社の合併を機に防災に関する担当部署を設置し、積極的に防災に向き合っている会社でした。
社内研修も定期的に行っており、社員に「防災士」という資格の保有者も複数名いるなど、社内的にもマインドの高さを感じました。特にソフト面では、住民間のコミュニケーションを図るための工夫もされています。管理組合設立総会時に防災に関する情報提供を行うだけでなく、マンション管理組合ごとに防災セミナーを開催、防災機器の実地でデモンストレーションを行う力の入れようでした。
マンション住民同士のコミュニケーションは、防災上とても重要
住民間のコミュニケーションを普段から円滑にしておくことは、防災上も非常に重要です。災害発生時には、住民同士の意思疎通の良しあしで、防災効果が変わってくるからです。また、この管理会社では、入居時には非常用リュックなどを各戸に無償配布し、使い方の説明もしているようです。
「マンションは管理を買え」と言われて久しいですが、個々人の住宅や生活、住宅という資産を守るためにも、管理組合として協力し合いながら、災害対策について積極的に関わる必要があります。
戸建て住宅エリアでの互助活動について
では、戸建ての場合はどうでしょうか? 町内会や自治会などもマンション管理組合と同様で、災害が起きた場合には、互助の仕組みに頼ることになります。
基本的にはマンション管理組合と同様の対応が必要ですが、戸建ての場合はマンションと違って共有部分がない分、個人として独力で対応する度合いが大きくなります。人付き合いを億劫に思う方もいらっしゃるとは思いますが、災害対策のことを考えれば、横の繫がりを持ち、お付き合いすべきです。
ここ数年、互助に関する意識が高まっていることもあって、地域で意欲的な防災活動を行っている町内会や自治会、マンション管理組合といった団体に対して、自治体が認定を出すケースが増えています。こうした自主防災組織の活動を強化するために、自治体から補助金が出ることもあります。
東京都では、平成23年から町会や自治会、PTA、青年会、企業、商店街、学校などの地域内の様々な主体を「東京防災隣組」として認定し、互助(共助)の活動を積極的に行って、都民に広く伝えるという取り組みをしています。
前回のコラムの「公助」も財政面や人的な側面から限界があるので、この「互助」の仕組みを活用しようというスタンスになってきていることが分かります。
【関連記事はこちら】>>大震災や自然災害によって自宅が崩壊して、住宅ローンだけが残ったらどうする?【第3回】災害の規模が大きいほど、後から支援策が出る?!
まとめ
このように、マンション・戸建てどちらにしても、災害直後にはご近所との意思疎通(=近助)ができるかどうかが、迅速な対応のカギになります。
マンションであれば、管理組合が主催する防災訓練には積極的に参加することや、どんな人が同じ建物に住んでいるのか知っておくことが大切になります。また、管理会社がどのような取り組みをしているのかも確認しておきましょう。
戸建ての場合は、マンションに比べると「自助」の要素が大きくなるとはいえ、住宅が損壊したときなどは近所の人の協力を仰ぐケースが増えてきます。先に紹介した東日本大震災の例のように、自治体など近隣住民とのお付き合いをきちんとしておくことで、いざという時に声を掛け合って助け合うことができます。
防災対策は「自助」的な要因が大きいことは事実ですが、いざという時に近隣の人たちと助け合えるような関係づくり(=互助・共助・協助・近助)をしておくことも、ひとつの対策として考えることができるでしょう。
災害対策コラムのリンク集 |
1.命と住まいを守る「リスクマネジメント」とは? 2.「リスクマップ」を使って災害対策の優先度を知ろう 3.給付金など、災害後に受けられる6つの「公助」を紹介 4.災害発生時に頼りになるのは、助け合いの精神 5.もしもの備えには「生活費6カ月分」の預貯金が必要! |
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