被災後、地震保険や義援金などの現金が入ると、残っているローンを返してしまいたくなるのが人情。だが、生活再建のためにはある程度のお金が必要で、現金を使い果たしてしまうと後でたいへんな苦労をすることになる。今回も第2回に続いて、「個人債務者の私的整理に関するガイドライン(個人版ガイドライン)」の運用で見えてきた被災ローンへの対応方法を考えてみたい。被災直後は難しいかもしれないが、重要なのは「焦って返済してしまわない」ことだった。(ジャーナリスト・木野龍逸)
連載「震災で、住宅ローンだけが残ったらどうなる?」
【第1回】返済が苦しければ、私的整理ガイドラインで減免を
【第2回】申し込んでも、債務免除できたのはわずか4分の1!
【第3回】災害の規模が大きいほど、後から支援策が出る?!
【第4回】50%しか補償できない地震保険で不安なら?
いったん住宅ローン返済をリスケジュールすると、
その後の生活が苦しくても債務免除への意欲が落ちる
前回も指摘したように、東日本大震災で、住宅ローンの返済に困った人を救済する減免制度、個人版ガイドラインの利用数は、金融庁の想定ほどは増えなかった。その要因の一つとして、日本弁護士連合会(日弁連)は「金融機関による条件変更契約が進んだ」ことをあげている。下図を見てほしい。
個人版ガイドラインの運用開始は2011年8月下旬。しかし金融庁の発表によると、住宅ローンの返済を一時停止した人は11年5月末に6664人だったのが、8月末には4572人に減り、個人版ガイドライン運用開始から1年後の12年8月末には573人になっている。
返済の一時停止が減るにつれて、住宅ローンの契約条件の変更(リスケジュール)をした人は急増。11年5月末に984人だったのが、12年8月末には6337人に達していた。ところがその間、個人版ガイドラインでの債務整理は70件しか成立していない。つまり、銀行・金融機関による、住宅ローンのリスケジュールが進んだ結果、本来ならば、個人版ガイドラインで債務整理ができたはずの人まで、無理に返済を続けているという可能性があったのだ。
このため日弁連は12年5月18日、金融庁に対して個人版ガイドラインの周知徹底を要請した。それを受けて、金融庁は12年7月と13年12月に金融機関に対して個人版ガイドラインの利用促進を要請。東北財務局も12年10月に同様の要請を行ったが、それでも利用者数は大きく伸びなかった。
一方でリスケジュールは、順調に数を増やしていた。15年9月から16年9月まで、個人版ガイドラインの件数がほぼ横ばいなのに対し、リスケジュール件数は大きく増えている。
当初は、いったん銀行とリスケジュールで合意してしまうと、その後で個人版ガイドラインを使えなかった。しかしそれは問題が多いことから、後にはリスケジュールをしても、遡って個人版ガイドラインを適用できるようになった。ただ、「一度リスケジュールをすると債務整理のモチベーションが落ちる」と指摘する弁護士もいる。また、すべて返済してしまう、つまり完済してしまうと、さかのぼって個人版ガイドラインを使うことはできなくなってしまう。
自身も債務者の相談に当たった官澤総合法律事務所の小向俊和弁護士は、「震災後の早い時期に地震保険や義援金で数千万円が入った時、銀行にいわれて繰り上げ返済した人もいる。中には、それで手元資金がほとんどなくなってしまった人もいるが、被災ローンの減免ができていれば手元に数百万円は残ったはず」だという。そして、「震災時に受け取る義援金などを、すぐに住宅ローンの返済にあてないほうがいい」と強調する。
熊本地震で弁護士が銀行員と勉強会を開催し、
自然災害ガイドラインの活用を訴えた
では、その後に策定されて熊本地震などに適用されている「自然災害ガイドライン」ではどのような状況になっているのだろうか。
個人版ガイドラインの経緯から初動が重要だと考えた熊本県弁護士会の鹿瀬島正剛弁護士は、「まずは銀行員の意識を変えようと思った」と話す。
「震災後すぐ、今は被災者の支援が重要だと説いてまわって、まず第一地銀から協力を取り付けて、銀行・金融機関と合同で相談会や勉強会をしたりしてきた。銀行の窓口で『そんなの(自然災害ガイドライン)は知らない」とか『そんなムシのいい話があるか」って言われてしまって諦める人をなくしたかった」
熊本地震の場合、月払いの人が延滞になってブラックリストに載るということがないように、どこの金融機関も3カ月程度は支払いを猶予していた。ただ、その間に支援金や保険金が入ってくるため、「もういいから払ってしまおう」という気持ちも出てくる。被災者の心情としては、ひとつでも問題を解決したいからだ。
「でもその前に、まずは相談をしてくださいという呼びかけをしていた。制度が使えるのに使わないという人が出るのは防ぎたかった」(鹿瀬島弁護士)
そして鹿瀬島弁護士も、小向弁護士と同じように、減免制度が使えなくなるので、「あわててローンを返さないようにしてほしい」と訴える。
被災して不安が大きいのは間違いないが、
それでもローン返済を急ぐべきではない
ちなみに被災者支援の枠組みは、自然災害の規模が大きくなるほど、現行制度に上乗せする形で新たな支援策が出てくる可能性も高くなる。東日本大震災をきっかけにして生まれた個人版ガイドラインは、まさにそうした上乗せの支援策だった。
最初から追加制度を期待するわけにもいかないが、鹿瀬島弁護士は熊本地震の経験から、「地方で大きな地震があったら、とりあえず“大”地震って言っておいた方がいいかもしれない」と感じている。「熊本地震は“大”がついてない。この違いが、制度の細かいところで影響を受けている感じがする」(鹿瀬島弁護士)。インターネットなどで被災状況を発信するときには、とりあえず“大”をつけて訴えかけるのも、身を守るためのひとつの手段かもしれない。
というわけで、大規模だと感じる災害に直面したら、不安が大きいのは間違いないが、それでもまずはあわてずに、自然災害ガイドラインの利用などを検討し、無料相談会などで専門家に相談すべきだ。また、一時的に手元にお金が入ったからといって返済を急ぐべきではないことは、覚えておいてほしい。
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今回作成した「住宅ローン利用者口コミ調査」の調査概要は以下のとおり。
【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
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調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とするアンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。
【アンケートの設問】
Q1.金利の満足度は?
Q2.諸費用・手数料等は妥当でしたか?
Q3.団体信用生命保険には満足しましたか?
Q4.手続き・サポートには満足しましたか?
Q5.審査について、満足していますか?
Q6.借り入れ後の対応に満足しましたか?
Q7.他の人にも現在の銀行を勧めたいと思いますか?
【回答の配点】
・各設問は5段階で回答してもらい、Q1なら以下のように配点。平均値を求めた。
満足している(5点)
どちらかといえば満足している(4点)
どちらともいえない(3点)
どちらかといえば不満である(2点)
不満である(1点)
・総合評価については、各項目の平均値を全て合算。読者が重視する「Q1金利の満足度」については点数を3倍、「Q3団信の満足度」の点数を2倍として、点数の合計を50点満点とし、10で割ることで5点満点の数値を求めた。
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