葛飾区の洪水ハザードマップから水害の危険性を読み解く! 水害の歴史や川辺の住環境も紹介【完全版】

2023年9月13日公開(2024年2月29日更新)
藤本惣平:フリーライター

葛飾区は、荒川や江戸川など6つの河川が流れる自然豊かなエリアですが、同時に水害リスクも存在するエリアです。ここでは、葛飾区の洪水ハザードマップや駅の標高などから、浸水の危険性を探ります。また、川辺の住環境についても紹介します。葛飾区内で不動産購入を検討されている方は参考になさってください。(ライター・藤本惣平)

葛飾区の地域、河川、駅の標高

 川はわたしたちにたくさんの恵みをもたらしてくれます。また河川周辺の地域は、河川敷や公園などが整備されており、子育て世代にも多大な人気があります。ただし、近年頻発する集中豪雨などによる水害リスクについて、よく知っておく必要があります

 本企画では、東京都内23区の川の流れや歴史を追うことで、水景に刻まれた都市の物語を読み解くとともに、水害リスクについても紹介していきましょう。第1回「北区」第2回「世田谷区」に続き、第3回目となる今回は、葛飾区です。

 葛飾区は東京都内23区の北東部に位置し、都内では城東地域に分類されます。北は大場川を境として埼玉県八潮市・三郷市に、東は江戸川を境に千葉県松戸市に向かい合い、西は足立区・墨田区、南は江戸川区に接しています。

 葛飾区の総面積は34.80km²で23区内7位、23区の総面積(627.53km²)の5.55%を占める区です。

葛飾区の地域と河川の位置関係

 葛飾区内は7つの地域(水元地域、金町・新宿地域、柴又・高砂地域、亀有・青戸地域、南綾瀬・お花茶屋・堀切地域、立石・四つ木地域、奥戸・新小岩地域)に区分けされています。

 また、葛飾区には、江戸川、荒川、綾瀬川、中川、新中川、大場川の6河川が流れています。

 図表1に、各地域に含まれる町丁目と流れる河川を示し、図表2に、河川の位置図を示します。

【図表1】葛飾区の7地域と流れる河川
地域名
(タップで各地域の詳細へ)

 

町丁目

 

流れる河川

水元地域 西水元 水元 東水元 南水元 水元公園 中川、大場川
金町・新宿地域 金町2丁目〜6丁目 金町浄水場 新宿 東金町 江戸川、中川
柴又・高砂地域 金町1丁目 鎌倉 柴又 高砂 細田 江戸川、中川、新中川
亀有・青戸地域 亀有 西亀有3丁目〜4丁目 白鳥4丁目 青戸2丁目〜8丁目 中川
南綾瀬・お花茶屋・堀切地域 堀切 東堀切 お花茶屋 宝町2丁目 小菅 白鳥1丁目〜3丁目 荒川、綾瀬川
立石・四つ木地域 青戸1丁目 宝町1丁目 立石 東立石 東四つ木 四つ木 中川、荒川、綾瀬川
奥戸・新小岩地域 奥戸 新小岩 西新小岩 東新小岩 中川、新中川、荒川
※上記地域分けは「葛飾区都市計画マスタープラン 平成23年」(P.97)に準拠している
※南綾瀬は、東京府南葛飾郡にかつて存在した町で、現在の葛飾区の西北部に位置しており、葛飾区立南綾瀬小学校などにその名をとどめている。

 【図表2】葛飾区の7地域と流れる河川の位置図

葛飾区の地域と河川位置図
地図を拡大 「葛飾区の7地域と流れる河川の位置図」
※ダイヤモンド不動産研究所編集部が作成
※河川の幅員はイメージで実際の幅員とは異なります。

 各河川の流路の詳細については、参考資料として「葛飾区を流れる河川の概要」を記事下部に掲載しています。

葛飾区内を走る鉄道

 葛飾区の鉄道網は、区の北部にJR常磐線、南部にJR総武線、中央部に京成電鉄本線・押上線、京成高砂駅から北総鉄道北総線京成金町線が走っています。

 なお、葛飾区は東京23区で唯一、地下鉄と地下駅が存在しない区です。参考資料として「各駅所在地の標高一覧」を記事下部に掲載しています。

「水元地域」の川辺の住環境や水害の歴史

【水元地域】
西水元(大場川・中川)、南水元(中川)、水元公園(小合溜・大場川)、水元・東水元(河川なし)

 水元地域は、葛飾区の北東部に位置しています。中川、大場川、江戸川の幾度かの氾濫による氾濫低地と、中川、大場川、小合溜(旧 小合溜井)沿いに形成された自然堤防の微高地からなっているのが特徴です。

 水元公園内の中央公園の標高は約2.9m。水元地域の東西南北各端を加えた平均標高は約1.84mと葛飾区内ではもっとも標高の高い地域です。なお、水元地域に鉄道路線は走っていません。

 下図に、水元地域を流れる河川の位置関係を示します。

【図表3】水元地域の河川の位置図

【水元地域を流れる河川の流路をたどる】

 水元地域には、中川と大場川の2つの河川が流れます。

大場川の閘門橋
西水元七丁目の閘門橋は水害による中川からの逆流を防止するために設けられたもので、葛飾区登録文化財に指定されている。(出所:photoAC)

中川
埼玉県羽生市内から発し、葛飾区西水元4丁目から区内に流入。その後、西水元の西端に沿って足立区との区境を南下し、飯塚橋を越えたあたりで南水元へと進みます。

大場川
埼玉県吉川市内から発し、水元公園の東端あたりから区内に流入し、小合溜と並行して西に進み、西水元7丁目の閘門(こうもん)橋を過ぎた西水元4丁目付近で中川に合流します。

水元地域の川辺の住環境

 水元地域には中川、大場川の2つの河川と江戸時代(1729年)に作られた小合溜(こあいだめ)(旧 小合溜井)が流れています。

 「溜井」とは、河川をせき止めて作った用水池のことで、小合溜は当時の50あまりの町村の水源であったことから、この地を「水元」と呼ぶようになったとされています。1991年に準用河川に指定されています。
※準用河川とは、河川法の規定の一部を準用し、市町村長が管理する河川を指し、一級水系,二級水系,単独水系にかかわらず設定される。

水元公園
水元公園は町全体が水郷景観を持った自然公園で、四季折々の水景が楽しめる。 (出所:PIXTA)

 小合溜は葛飾区と三郷市の境で水元公園を囲むように広がっており、西端は「水元小合溜水質浄化センター」で、溜井内の水はこちらで浄化・循環させています。

 東端は金町・新宿地域の東金町8丁目河川敷で江戸川に向けて開かれています。

 水元公園の総面積は約96万㎡で、東京都内唯一の水郷景観を持った自然公園です。春は桜、梅雨時は花ショウブなど四季折々の花が咲き、園内の釣り堀「釣仙郷」は多くの釣り客でにぎわっています。

 また水害防止として、小合溜井に沿って桜土手が築かれており、都内でも有数の花見の名所となっています。

水元地域の水害の歴史と危険性

 東京都建設局の「区市町村別水害データ(葛飾区)」では、1974年以降のこの地域における水害はすべて大量の降雨による内水氾濫※1で、河川のいっ水※2による被害は記録されていません
※1 内水氾濫とは、堤防から水が溢れなくても、河川へ排水する川や下水路の排水能力の不足などが原因で、降った雨を排水処理できなくて引き起こされる氾濫のこと
※2 いっ水とは、堤防がない川などの水があふれ出ること。堤防のある川の水があふれる出る場合は「越水」という

 浸水被害も大きなものはまれであり、これまでの治水事業の備えに負うものです。しかし、甚大な被害をもたらした2019年の台風19号以降、水害対策の見直しが図られており、新たなハザードマップが発行されています。

 中川氾濫時のこの地域における浸水は想定されていませんが、江戸川の氾濫では浸水の恐れがあります

 また、930hPa以下の大型台風が接近した場合、高潮による浸水が発生する恐れもあり、情報収集に努める必要がある地域といえるでしょう。

「金町・新宿地域」の川辺の住環境や水害の歴史

【金町・新宿地域】
金町2丁目〜6丁目・金町浄水場(江戸川)、新宿(中川)、東金町(江戸川・小合溜)

 金町・新宿地域は、葛飾区の中央東部寄りに位置しています。金町駅周辺は微高地となっていますが、それ以外はほぼ氾濫低地で占められています。

 金町・新宿地域東端の東金町8丁目近辺の標高は約2.9m。中央に位置する京成金町駅の標高は2.5m、西端の新宿2丁目の標高は約1.4m、南端の金町2丁目は約1.1mと、西南に緩やかに傾斜しているのが特徴です。

 下図に、金町・新宿地域を流れる河川の位置関係を示します。

【図表4】金町・新宿地域の河川の位置図

【金町・新宿地域を流れる河川の流路をたどる】

 金町・新宿地域には、江戸川と中川の2つの河川が流れます。

金町浄水場
三角屋根、ドーム型屋根の2基の取水塔から表流水を取り入れて金町浄水場内へ導水している。(出所:photoAC)

江戸川
茨城県と千葉県境界付近で利根川から分流し、葛飾区東金町8丁目付近から都内に入ります。千葉県松戸市を対岸に南下し、金町浄水場取水塔を越えたあたりで、柴又・高砂地域へ流れ込みます。

中川
埼玉県羽生市内から発し、葛飾区内の水元地域に流入。新宿6丁目近辺で金町・新宿地域に入り、ゆるやかに蛇行しながら南下する。新宿1丁目児童遊園を越えたあと、柴又・高砂地域へ流れ込みます。

金町・新宿地域の川辺の住環境

 金町・新宿地域には江戸川、中川の2つの河川と江戸時代(1729年)に作られた小合溜(旧 小合溜井)があります。

 水元公園に沿う小合溜は、その南端付近で水元地域と金町・新宿地域の境を東に向かい、東京外環自動車道の下を抜けたあたりから東金町8丁目へ入り、河川敷の先で江戸川に向けて開かれています。

金町・新宿地域の水害の歴史と危険性

 東京都建設局の「区市町村別水害データ(葛飾区)」では、1974年以降のこの地域における水害のほとんどが江戸川と中川両河川によるものです。ただし、いっ水は少なく、河川沿いの内水氾濫となっているのが特徴です。

 また、2000年〜2009年にかけて、東金町8丁目近辺の江戸川沿いの高規格堤防整備事業により、堤防の高さ6mの約30倍の幅をもった190mのスーパー堤防が完成しました。

 水元地域と同様、中川氾濫時のこの地域における浸水は想定されていませんが、荒川および江戸川の氾濫では浸水の恐れがあります

 また、930hPa以下の大型台風が接近した場合は高潮による浸水が発生する恐れがあり、情報収集に努める必要がある地域です。

「柴又・高砂地域」の川辺の住環境や水害の歴史

【柴又・高砂地域】
柴又(江戸川)、高砂(中川・新中川)、細田(新中川)、金町1丁目・鎌倉(河川なし)

 柴又・高砂地域は、葛飾区の東南部に位置しています。金町・新宿地域と同様に駅所在地は微高地となっていますが、それ以外はほぼ氾濫低地が占めています

 地域内鉄道駅所在地および江戸川寄りの平均標高は約2mと比較的高く、西南に向かうほど0m台へと低くなるのが特徴です。

 下図に、柴又・高砂地域を流れる河川の位置関係を示します。

【図表5】柴又・高砂地域の河川の位置図

【柴又・高砂地域の河川の流路をたどる】

 柴又・高砂地域には江戸川、中川、新中川の3つの河川が流れています。

江戸川
茨城県と千葉県境界付近で利根川から分流し、葛飾区東金町8丁目付近から都内に入ります。金町浄水場取水塔を越えたあたりから、柴又・高砂地域の柴又東端沿いを経て、江戸川区へ流れ込んでいきます。

新中川通水記念公園
中川(手前)と新中川(奥)の分流地点にある新中川通水記念公園。(出所:PIXTA)

中川
埼玉県八潮市から葛飾区内の水元地域に流入。金町・新宿地域と亀有・青戸地域の間を南下し、新宿1丁目児童遊園を越えたあたりで、柴又・高砂地域に入ります。高砂の西端沿いを進み、新中川通水記念公園近辺で新中川を分流した後、立石・四つ木地域と奥戸・新小岩地域の間を流れていきます。

新中川
柴又・高砂地域の高砂1丁目にある新中川通水記念公園近くで中川から分流し、高砂、細田、奥戸・新小岩地域の奥戸の間をゆるやかに南下し、江戸川区内へと流れ込んでいきます。

柴又・高砂地域の水害の歴史と危険性

 東京都建設局の「区市町村別水害データ(葛飾区)」では、1974年以降のこの地域における水害の発生の多くが、中川流域の内水氾濫によるものです。ただし、いっ水は少なく、ほとんどが河川沿いの内水氾濫です。

 また、1989年から1994年にかけて「寅さん記念館」のある柴又公園の整備と一体で行われた高規格堤防整備事業により、現況堤防の高さ7mの10倍を超す、幅90mのスーパー堤防が完成しています。

 柴又・高砂地域は葛飾区東部に位置するほかの地域と同様、大雨による中川の氾濫での浸水は起きないとされています

 ただ、江戸川の氾濫や、930hPa以下の大型台風が接近した場合は、高潮などによる浸水が発生する恐れがあるため、情報収集に努める必要があるでしょう。

「亀有・青戸地域」の川辺の住環境や水害の歴史

【亀有・青戸地域】
亀有・青戸2丁目〜8丁目(中川)、西亀有3丁目〜4丁目・白鳥4丁目(河川なし)

 亀有・青戸地域は、葛飾区の西部に位置しています。JR常磐線亀有駅近辺および東端の中川沿いは微高地となっていますが、それ以外は0m台の氾濫低地となっているのが特徴です。

 下図に、亀有・青戸地域を流れる河川の位置関係を示します。

【図表6】亀有・青戸地域の河川の位置図

【亀有・青戸地域の河川の流路を辿る】

 亀有・青戸地域を流れている河川は中川だけです。

中川
埼玉県羽生市内から埼玉県八潮市を経て、葛飾区内の水元地域に流れ込み、金町・新宿地域とその対岸に当たる亀有・青戸地域内に流入。亀有・青戸の東端沿いを南下したあと、柴又・高砂地域へ流れ込んでいきます。

亀有・青戸地域の水害の歴史と危険性

 中川が流れる亀有・青戸地域では、東京都建設局の「区市町村別水害データ(葛飾区)」によると、1974年以降は水害の発生もほぼ中川流域の内水氾濫によるものです。

 流域も短く、件数としてはほかの地域に比べて少ないですが、ハザードマップによると、100年、200年に一度の大規模降雨時には、荒川、中川の氾濫による水害が予想されており注意が必要です。

 さらに、930hPa以下の大型台風が接近した場合は高潮などによる浸水が発生する恐れがあり、情報収集に努める必要があります。

「南綾瀬・お花茶屋・堀切地域」の川辺の住環境や水害の歴史

【南綾瀬・お花茶屋・堀切地域】
堀切・宝町2丁目・小菅(荒川・綾瀬川)、西亀有1丁目〜2丁目・東堀切・お花茶屋・白鳥1丁目〜3丁目(河川なし)
堀切花菖蒲園
初夏になると園内に花菖蒲であふれかえる堀切花菖蒲園。季節外にも葛梅、藤、冬桜、牡丹の花々を見ることができる。(出所:photoAC)

 南綾瀬・お花茶屋・堀切地域は、葛飾区の西端に位置しています。ほかの地域と同様、駅近辺は微高地になっていますが、標高は0m台氾濫低地部はマイナス標高となっています。
※南綾瀬とは、東京府南葛飾郡にかつて存在した町で、現在の葛飾区の西北部に位置していた。

 同地域の北端に当たる小菅4丁目で、ー0.2m。堀切・お花茶屋・宝町もー0m台。西端にある堀切菖蒲園はー1.2mと、南西に向かうほど低くなっています。

 下図に、南綾瀬・お花茶屋・堀切地域を流れる河川の位置関係を示します。

【図表7】南綾瀬・お花茶屋・堀切地域の河川の位置図

南綾瀬・お花茶屋・堀切地域の河川の流路をたどる】

 南綾瀬・お花茶屋・堀切地域には、荒川と綾瀬川の2つの河川が流れます。

荒川
埼玉と東京の都県境から足立区へ流れ、東武伊勢崎線の陸橋をくぐったあたりで、葛飾区南綾瀬・お花茶屋・堀切地域へ流入。東側を流れる綾瀬川と並走しながら、小菅、堀切の西端に沿って流れたのち、立石・四つ木地域と墨田区の区境を進んでいきます。

綾瀬川
足立区を南下し、葛飾区南綾瀬・お花茶屋・堀切地域へ流入。西側を流れる荒川と並走しながら、小菅、堀切の境を流れたのち、立石・四つ木地域へ進んでいきます。

南綾瀬・お花茶屋・堀切地域の水害の歴史と危険性

 東京都建設局の「区市町村別水害データ(葛飾区)」では、1974年以降のこの地域における水害の発生の多くが綾瀬川流域の内水氾濫によるものです。初期はいっ水によるものもありましたが、ほとんどは内水氾濫となっています。

 南綾瀬・お花茶屋・堀切地域は、葛飾区西部に位置するほかの地域と同様、大雨による荒川、中川の氾濫による浸水が想定されています。

 また、930hPa以下の大型台風が接近した場合の高潮などによる浸水が発生する恐れがあり、情報収集に努める必要がある地域です。

「立石・四つ木地域」の川辺の住環境や水害の歴史

【立石・四つ木地域】
青戸1丁目・立石・東立石(中川)、東四つ木(荒川・綾瀬川・中川) 四つ木(荒川・綾瀬川)、宝町1丁目(河川なし)

 立石・四つ木地域は、葛飾区の西部に位置しています。西端の川沿いは標高1m台の微高地となっていますが、それ以外はー0m〜1m台の氾濫低地となっています。

 京成電鉄押上線四ツ木駅近辺は1m台ですが、ほぼ全域にわたって0m台、ー0m台となっています。

 下図に、立石・四つ木地域を流れる河川の位置関係を示します。

【図表8】立石・四つ木地域の河川の位置図

【立石・四つ木地域の河川の流路をたどる】

 立石・四つ木地域には、江戸川、中川、綾瀬川の3つの河川が流れます。

かつしかハープ橋
中川と綾瀬川の合流地点近くにあるかつしかハープ橋。手前が綾瀬川、その先に中川が流れている。(出所:photoAC)

中川
葛飾区内の水元地域から金町・新宿地域と亀有・青戸地域の間を南下後、柴又・高砂地域を経て、立石・四つ木地域に流入。対岸の奥戸・新小岩地域の間を南西に蛇行しながら流れていきます。途中、綾瀬川と合流し対岸が奥戸・新小岩地域の西小岩になるあたりから西側を流れる荒川と併走するよう南西に向きを変え、奥戸・新小岩地域へ進んでいきます。

荒川
葛飾区内の南綾瀬・お花茶屋・堀切地域を経て、立石・四つ木地域へ流れ込みます。対岸の墨田区との区境を流れ、JR総武線の鉄橋を越えたあたりで東側を流れる中川と並走し、奥戸・新小岩地域へ進みます。

綾瀬川
葛飾区南綾瀬・お花茶屋・堀切地域から途中、西側を荒川と並走し、立石・四つ木地域へ流入。四つ木・東四つ木の間を流れ、首都高速中央環状線下を通過したところで中川へ合流します。

立石・四つ木地域の水害の歴史と危険性

 東京都建設局の「区市町村別水害データ(葛飾区)」では、1974年以降のこの地域における水害のほとんどが中川流域で発生しています。初期はいっ水によるものもありましたが、ほとんどが内水氾濫となっています。

 立石・四つ木地域は葛飾区西部に位置するほかの地域と同様、大雨による荒川、中川の氾濫による浸水が想定されています。

 また、930hPa以下の大型台風が接近した場合の高潮などによる浸水が派生する恐れがあり、情報収集に努める必要があるでしょう。

「奥戸・新小岩地域」の川辺の住環境や水害の歴史

【奥戸・新小岩地域】
奥戸(中川・新中川)、新小岩・西新小岩(荒川・中川)、東新小岩(中川)

 奥戸・新小岩地域は、葛飾区の南部に位置しています。中川、新中川沿いは0m台の微高地となっていますが、地域内中央部がー0m台の氾濫低地で占められています

 奥戸・新小岩地域は3つの川に囲まれており、それぞれの川沿いは微高地となっていますが、中央部、とくに新小岩のあたりは、ー0m台からー1m台となっています。また、奥戸の地名は亀有・青戸地域の青戸と同様、かつて港があったことを示しています。

 下図に、奥戸・新小岩地域を流れる河川の位置関係を示します。

【図表9】奥戸・新小岩地域の河川の位置図

【奥戸・新小岩地域の河川の流路をたどる】

 奥戸・新小岩地域には中川、新中川、荒川の3つの河川が流れます。

中川
葛飾区内の水元地域から金町・新宿地域、亀有・青戸地域、柴又・高砂地域を経て、奥戸・新小岩地域へ流入。奥戸・西新小岩・新小岩と対岸の立石・四つ木地域との区境を進んだ後、江戸川区へ流れ込んでいきます。

新中川
柴又・高砂地域の高砂1丁目にある新中川通水記念公園近くで中川から分流。高砂、細田、奥戸・新小岩地域の奥戸の間をゆるやかに南下し、江戸川区内へと流れ込んでいきます。

荒川
葛飾区内の南綾瀬・お花茶屋・堀切地域、立石・四つ木地域から奥戸・新小岩地域に流入し、西新小岩西端沿いに進み、総武線の鉄橋近辺で江戸川区へと流れ込みます。

奥戸・新小岩地域の水害の歴史と危険性

 東京都建設局の「区市町村別水害データ(葛飾区)」では、1974年以降のこの地域における水害の発生も、ほぼ中川流域の台風や集中豪雨による内水氾濫によるものです。

 ただ、近年はかつてほどの甚大な水害には至っていません。ハザードマップによると、中川、江戸川が氾濫しても、南部地域は浸水しない想定にはなっていますが、1000年に一度の大規模降雨時には、荒川が新小岩駅付近のJR総武線鉄橋部で氾濫した場合、広い範囲での浸水の可能性があるとされています。

 さらに、930hPa以下の大型台風が接近した場合は、高潮などによる浸水が発生する恐れがあり、情報収集に努める必要がある地域です。

【参考資料】葛飾区の洪水ハザードマップ

 葛飾区でマンションや一戸建てなどの不動産を購入する際、河川が氾濫した場合、どれくらいの被害が想定されるのかを「ハザードマップ」で確認しておくことが大切です。ここでは、葛飾区の洪水ハザードマップを紹介します。

荒川洪水ハザードマップ

 以下は、荒川が氾濫した場合の洪水ハザードマップです。

江戸川洪水ハザードマップ

 以下は、江戸川が氾濫した場合の洪水ハザードマップです。

中川洪水ハザードマップ

 以下は、中川が氾濫した場合の洪水ハザードマップです。

葛飾区を流れる河川の概要と駅の標高一覧

 ここからは、葛飾区を流れる河川の流路をたどります。

・江戸川(延長59.5km)
 江戸川は、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都の1都3県を流れる一級河川です。茨城県猿島郡五霞町と千葉県野田市の境界付近で利根川から分流し、千葉県と埼玉県を流れます。その後、葛飾区東金町8丁目付近から都内に入り、千葉県松戸市を対岸に南下。金町浄水場取水塔を越えたあたりで、柴又・高砂地域の柴又東端沿いを経て、江戸川区へ流れ込み、ふたたび千葉県市川市で東京湾に注ぎます。

 現在の江戸川の最下流部は、1919年に千葉県市川市稲荷木と東京都江戸川区篠崎町の境界付近にある江戸川水閘門から開削された江戸川放水路で、1965年からは江戸川放水路を江戸川と称し、もとの流れは旧江戸川と呼ばれることになりました。

・荒川(延長173.0km)
 一級河川の荒川は、その源を埼玉県秩父山地の甲武信ヶ岳に発します。秩父盆地を北流した後、埼玉県寄居町を経て、埼玉と東京の都県境を流れ、足立区において南へ向きを変え、東武伊勢崎線の陸橋をくぐったあたりで葛飾区南綾瀬・お花茶屋・堀切地域へ流入。東側を流れる綾瀬川と並走しながら、小菅、堀切の西端に沿って流れたのち、立石・四つ木地域へ流れ込み、対岸の墨田区との区境を流れ、JR総武線の鉄橋を越えたあたりで東側を流れる中川と並走し、奥戸・新小岩地域に流入します。その後、西新小岩西端沿いに進みJR総武線の鉄橋近辺で江戸川区へと流れ込みます。

 東京都北区において隅田川を分派し、その後、足立区で南流、葛飾区と墨田区の区境を過ぎ、江戸川区内を進み、江東区との区境で東京湾に注ぎます。

 現在の荒川の下流部は1913年から1930年にかけて、北区の岩淵水門から、江東区・江戸川区の区境の中川河口まで開削された荒川放水路でした。1965年から荒川放水路が荒川の本流となり、分岐点である岩淵水門より下流の以前からの河道は隅田川と呼ばれることになりました。

・綾瀬川(延長48.0km)
 一級河川の綾瀬川は利根川水系中川の支川です。埼玉県桶川市の田園地帯から発し、東から南東に向けて蛇行しながら流れていきます。埼玉県草加市で古綾瀬川、伝右川、足立区で都内に流入し南下。葛飾区南綾瀬・お花茶屋・堀切地域へ流入、西側を流れる荒川と並走しながら、小菅、堀切の境を流れたのち、立石・四つ木地域へ流入します。途中、西側を荒川と並走し、立石・四つ木地域へ流入し、四つ木・東四つ木の間を流れ、首都高速中央環状線下を通過したところで中川へ合流します。

 埼玉県越谷市蒲生愛宕町付近から発し草加市内で綾瀬川に合流する古綾瀬川は、かつての綾瀬川本流であったが、流れの屈曲が激しく、元禄年間(1688年〜1704年)に、日光街道沿いを流れる支流を拡幅したものが現在の綾瀬川の流路となっています。

・中川(延長81.0km)
 中川は、埼玉県羽生市街地の住宅地域に発する利根川水系の一級河川です。埼玉県内の古利根川(北葛飾郡)、新方川・元荒川(吉川市)、都内の大場川(葛飾区)など多くの河川の流れを集め蛇行しながら南下します。

 葛飾区内の高砂で新中川を分流、その後、西水元の西端に沿って足立区との区境を南下し、飯塚橋を越えたあたりで南水元へ。さらに金町・新宿地域に入り、ゆるやかに蛇行しながら南下します。新宿一丁目児童遊園を越えたあと、柴又・高砂地域へ流れ込み、高砂の西端沿いを進み、新中川通水記念公園近辺で新中川を分流。その後、立石・四つ木地域と奥戸・新小岩地域の西小岩になるあたりから西側を流れる荒川と並走するように南西に向きを変え、奥戸・新小岩地域へ進み、その後、江戸川区へ流れ込んでいきます。

・新中川(延長7.84km)
 一級河川の新中川は、柴又・高砂地域の高砂1丁目にある新中川通水記念公園近くで中川から分流し、高砂、細田、奥戸・新小岩地域の奥戸の間をゆるやかに南下し、江戸川区内へと流れ込みます。

 1939年、中川開削・改修を目的に東京府中川改修事務所が設置されたものの、計画は中止となりますが、1947年のカスリーン台風による東京東部の浸水したことにより、1949年、中川改修事務所が再開、中川放水路の開削が本格化。1963年に中川放水路は完成し、1965年、一級河川に指定され河川名を「新中川」に改称しました。

・大場川(延長16.8km)
 一級河川の大場川は利根川水系中川の支川です。埼玉県吉川市を流れる鍋小路用水路から発し、南下しながら同市内で西大場川・東大場川を、三郷市で第二大場川と合流して三郷放水路を伏せ越しで通過ます。さらに南下したのち西へ向かい、葛飾区と埼玉県境の近くで流向を変え、水元公園の北辺、小合溜に沿って流れ、中川に合流します。

鉄道路線駅所在地の標高一覧

 下表は葛飾区を走る鉄道路線の駅所在地の標高一覧です。

【図表13】葛飾区内を走る鉄道路線駅所在地の標高
 
標高 駅所在地
JR常磐線
亀有駅 0.7m 葛飾区亀有3丁目
金町駅 2.3m 葛飾区金町6丁目
JR総武線
新小岩駅 -1.1m 葛飾区新小岩1丁目
京成電鉄本線
堀切菖蒲園駅 -1.2m 葛飾区堀切5-1-1
お花茶屋駅 -1.1m 葛飾区宝町2-37-1
青砥駅 0.0m 葛飾区青戸3-36-1
京成高砂駅 1.8m 葛飾区高砂5-28-1
京成小岩駅 2.0m 江戸川区北小岩2-10-9※
京成電鉄成田空港線(成田スカイアクセス)
京成高砂駅 1.8m 葛飾区高砂5-28-1
京成電鉄押上線
四ツ木駅 1.4m 葛飾区四つ木1-1-1
京成立石駅 -0.5m 葛飾区立石4-24-1
青砥駅 0.0m 葛飾区青戸3-36-1
京成電鉄金町線
京成高砂駅 1.8m 葛飾区高砂5-28-1
柴又駅 2.2m 葛飾区柴又4-8-14
京成金町駅 2.5m 葛飾区金町5-37-9
北総鉄道北総線
京成高砂駅 1.4m 葛飾区高砂5-28-1
新柴又駅 1.9m 葛飾区柴又5-7-1
駅所在地は各鉄道会社ホームページ掲載住所に準じる
標高算出は「地理院地図(電子国土Web)」による
※京成小岩駅の駅所在地は江戸川区ですが、葛飾区との境界付近に位置しているため同区鎌倉地区南部の最寄り駅となります

 

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