2022年10月、地震保険料は埼玉など4県が約30%値上げ!全都道府県平均では0.7%値下げ

2022年7月31日公開(2022年9月8日更新)
福崎剛:フリージャーナリスト

2022年10月、地震保険料が改定となります。全国平均0.7%の値下げですが、都道府県や建物の構造区分によっては値上げとなる場合もあります。都道府県別・構造別の改定率について確認してみましょう。(フリージャーナリスト:福崎剛)

2022年10月、地震保険料が改定
各都道府県における改定率をチェック!

 2022年10月、地震保険料が改定されます。今回の改定では、全国平均0.7%値下げとなりますが、都道府県や建物の構造によっては、最大+29.9%の値上げとなります。

 それでは、都道府県と建物構造別の改定率を見ていきましょう。まずは、イ構造(マンションなど)の改定率です。

 イ構造の場合、全国平均で1.7%の値下げ。値上げとなるのは、茨城県、埼玉県、徳島県、高知県、福島県の5地域。そのうち福島県を除く4県は、+29.9%の値上げとなります。なお、全国で最も値下げ幅が大きい大分県では、38.1%の値下げとなります。

【2022年10月 地震保険料の改定率】
イ構造(マンションなど)


保険期間1年・保険金額1000万円の場合

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都道府県 保険料
改定前 改定後 改定率
北海道 7,400円 7,300円 -1.40%
青森県 7,400円 7,300円 -1.40%
岩手県 7,400円 7,300円 -1.40%
宮城県 11,800円 11,600円 -1.70%
秋田県 7,400円 7,300円 -1.40%
山形県 7,400円 7,300円 -1.40%
福島県 9,700円 11,600円 +19.60%
茨城県 17,700円 23,000円 +29.90%
栃木県 7,400円 7,300円 -1.40%
群馬県 7,400円 7,300円 -1.40%
埼玉県 20,400円 26,500円 +29.90%
千葉県 27,500円 27,500円 ±0%
東京都 27,500円 27,500円 ±0%
神奈川県 27,500円 27,500円 ±0%
新潟県 7,400円 7,300円 -1.40%
富山県 7,400円 7,300円 -1.40%
石川県 7,400円 7,300円 -1.40%
福井県 7,400円 7,300円 -1.40%
山梨県 11,800円 11,600円 -1.70%
長野県 7,400円 7,300円 -1.40%
岐阜県 7,400円 7,300円 -1.40%
静岡県 27,500円 27,500円 ±0%
愛知県 11,800円 11,600円 -1.70%
三重県 11,800円 11,600円 -1.70%
滋賀県 7,400円 7,300円 -1.40%
京都府 7,400円 7,300円 -1.40%
大阪府 11,800円 11,600円 -1.70%
兵庫県 7,400円 7,300円 -1.40%
奈良県 7,400円 7,300円 -1.40%
和歌山県 11,800円 11,600円 -1.70%
鳥取県 7,400円 7,300円 -1.40%
島根県 7,400円 7,300円 -1.40%
岡山県 7,400円 7,300円 -1.40%
広島県 7,400円 7,300円 -1.40%
山口県 7,400円 7,300円 -1.40%
徳島県 17,700円 23,000円 +29.90%
香川県 11,800円 11,600円 -1.70%
愛媛県 11,800円 11,600円 -1.70%
高知県 17,700円 23,000円 +29.90%
福岡県 7,400円 7,300円 -1.40%
佐賀県 7,400円 7,300円 -1.40%
長崎県 7,400円 7,300円 -1.40%
熊本県 7,400円 7,300円 -1.40%
大分県 11,800円 7,300円 -38.10%
宮崎県 11,800円 11,600円 -1.70%
鹿児島県 7,400円 7,300円 -1.40%
沖縄県 11,800円 11,600円 -1.70%
全国平均 11,123円 11,436円 -1.70%

  次に、 ロ構造(木造建築物など)の地震保険料改定率を見ていきましょう。

 ロ構造では、全国平均8.0%の値下げ。値上げとなるのは、茨城県、埼玉県の2地域で、値上げ幅は12.3%です。そのほかの都道府県では値下げとなり、値下げ幅が最も大きい大分県では47.2%の値下げとなります。

【2022年10月 地震保険料の改定率】
ロ構造(木造建築物など)


保険期間1年・保険金額1000万円の場合

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都道府県 保険料
改定前 改定後 改定率
北海道 12,300 11,200 -8.90%
青森県 12,300 11,200 -8.90%
岩手県 12,300 11,200 -8.90%
宮城県 21,200 19,500 -8.00%
秋田県 12,300 11,200 -8.90%
山形県 12,300 11,200 -8.90%
福島県 19,500 19,500 ±0%
茨城県 36,600 41,100 +12.30%
栃木県 12,300 11,200 -8.90%
群馬県 12,300 11,200 -8.90%
埼玉県 36,600 41,100 +12.30%
千葉県 42,200 41,100 -2.60%
東京都 42,200 41,100 -2.60%
神奈川県 42,200 41,100 -2.60%
新潟県 12,300 11,200 -8.90%
富山県 12,300 11,200 -8.90%
石川県 12,300 11,200 -8.90%
福井県 12,300 11,200 -8.90%
山梨県 21,200 19,500 -8.00%
長野県 12,300 11,200 -8.90%
岐阜県 12,300 11,200 -8.90%
静岡県 42,200 41,100 -2.60%
愛知県 21,200 19,500 -8.00%
三重県 21,200 19,500 -8.00%
滋賀県 12,300 11,200 -8.90%
京都府 12,300 11,200 -8.90%
大阪府 21,200 19,500 -8.00%
兵庫県 12,300 11,200 -8.90%
奈良県 12,300 11,200 -8.90%
和歌山県 21,200 19,500 -8.00%
鳥取県 12,300 11,200 -8.90%
島根県 12,300 11,200 -8.90%
岡山県 12,300 11,200 -8.90%
広島県 12,300 11,200 -8.90%
山口県 12,300 11,200 -8.90%
徳島県 41,800 41,100 -1.70%
香川県 21,200 19,500 -8.00%
愛媛県 21,200 19,500 -8.00%
高知県 41,800 41,100 -1.70%
福岡県 12,300 11,200 -8.90%
佐賀県 12,300 11,200 -8.90%
長崎県 12,300 11,200 -8.90%
熊本県 12,300 11,200 -8.90%
大分県 21,200 11,200 -47.20%
宮崎県 21,200 19,500 -8.00%
鹿児島県 12,300 11,200 -8.90%
沖縄県 21,200 19,500 -8.00%
全国平均 19,370 18,232 -7.75%

10月の改定では、長期契約割引率の見直しも

 2022年10月の改定で、地震保険料は全国平均で値下げとなります。その一方、長期契約の割引率も同時に改定され、5年契約における割引率がこれまでよりも引き下がり、実質的な値上げとなります。

 これは、保険料の計算に使用する長期係数が、近年の金利上昇を踏まえて変更されるからです。

【2022年10月 保険期間の長期係数の改定】
保険期間 2年 3年 4年 5年
改定前 1.90 2.85 3.75 4.65
改定後 1.90 2.85 3.75 4.70
出典:損害保険料算出機構

 年間保険料10,000円の地震保険を毎年更新し続けた場合、5年間の総保険料は10,000円×5=50,000円となるのだが、5年契約を結んだ場合は、長期係数を元にして計算するため、保険料が割引になるというものだ。

 例えば、2022年9月までに、年間保険料10,000円の地震保険を5年契約した場合、長期係数が4.65なので、保険料は10,000円×4.65=46,500円となります。

 ところが、2022年10月には長期係数が4.7に引き上がるため、同様の契約を結ぶと、保険料は10,000円×4.7=47,000円になり、これまでより500円の値上げとなります。

 保険料が高い場合は、割引の差額はさらに広がり、これまでよりも割引される金額が小さくなるというわけです。

地震保険の特徴と、補償範囲

 そもそも、地震保険とはどういった保険なのでしょうか。概要を確認していきましょう。

地震保険の補償内容

 地震保険は、地震が原因となって発生した損害を補償する保険です。地震の揺れによる建物や家財の損壊や、地震によって発生した火災や津波、噴火による損害も含まれています。

 なお、火災保険は、建物や家財の火災による損害などを補償するものです。そのため、地震が原因となって発生した火災や、津波による被害については、火災保険では補償されません。

【火災保険・地震保険の補償範囲】
損害の原因

火災保険 

地震保険
地震・噴火・津波 補償されない 補償される
上記以外 補償される 補償されない

 そのため、地震での損害に備えるためには、地震保険への加入が必須です。なお、補償の対象は「建物」と「家財」で、それぞれ契約が必要になります。

地震保険は火災保険とセットでの加入が必要

 地震保険は単独では加入できません。火災保険に加入していることが必要で、火災保険に付帯する形での契約となります。

 地震保険でかけることができる保険金額は、主となる火災保険金額の30~50%の範囲です。保険金額の上限は、建物は5,000万円、家財は1,000万円となり、それ以上の保険金額を設定することはできません。

 そのため、保険金が全額支払われたとしても、建物を再建するほどの金額ではありません。地震保険はあくまでも、生活再建のためにまとまった金額が得られる保険という立ち位置です。支払い途中の住宅ローンの軽減や、新しく住宅を立て直す際の資金として、また、使い道に制限はないので、当面の生活資金にすることもできます。

 なお、火災保険の契約期間の途中でも、地震保険に加入することができます。

地震保険金の支払いについて

 地震で損害を受けた際には地震保険金を受け取れますが、すべてのケースで保険金額の全額支払われるわけではありません。

 損害の規模によって受け取れる保険金額は変わります。全損の場合は最高で時価額の100%を受け取ることができますが、大半損の場合は60%、小半損の場合は30%、一部損の場合は5%となります。

【損害区分と地震保険金支払額】
損害区分 支払われる保険金額

受け取れる保険金額

(保険金1000万円の場合)

全損

地震保険金額の100%

(時価額が限度)

1000万円
大半損

地震保険金額の60%

(時価額の60%が限度)

600万円
小半損

地震保険金額の30%

(時価額の30%が限度)

300万円
一部損

地震保険金額の5%

(時価額の5%が限度)

50万円

 損壊の認定区分は、国によって定められています。建物の場合は、主要構造部がどれだけ損害を受けたか、もしくは、消失・流失した部分の床面積の比率に応じて、損害区分が分かれます。家財の場合は、家財全体の時価に対して、どれだけ損害があったか、という比率で分かれます。

【地震保険の損害区分と認定基準】
損害区分 建物の場合 家財の場合
全損

・主要構造部(軸組、基礎、壁、屋根等)の損害額が、建物の時価の50%以上

・焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の70%以上

損害額が家財全体の時価の80%以上
大半損

・主要構造部(軸組、基礎、壁、屋根等)の損害額が、建物の時価の40%以上50%未満

・焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の50%以上70%未満

損害額が家財全体の時価の60%以上80%未満
小半損

・主要構造部(軸組、基礎、壁、屋根等)の損害額が、建物の時価の20%以上40%未満

・焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の20%以上50%未満

損害額が家財全体の時価の30%以上60%未満
一部損

・主要構造部(軸組、基礎、壁、屋根等)の損害額が、建物の時価の3%以上20%未満

・建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmをこえる浸水を受け損害が生じた場合で、全損・大半損・小半損に至らないとき

損害額が家財全体の時価の10%以上30%未満

地震保険で使える税控除、割引制度

 また、地震保険には税控除や割引制度があります。

・地震保険料控除
・免震・耐震性能に応じた割引制度

・長期契約割引

地震保険料控除(最大5万円)

 支払った地震保険料は、最大5万円が所得税から控除となります。5万円に満たない場合は、全額が控除の対象です。

 控除を受けるには確定申告が必要です。確定申告書の「地震保険料控除」の欄に支払った保険料の金額を記入し、支払い金額や控除を受けられることを証明する証明書を用意します。ただし、年末調整で控除された場合は、その必要はありません。会社員の場合は、勤務先に申告するようにしましょう。

免震・耐震性能に応じた割引制度(最大50%の割引)

 地震保険には、建物の免震性能・耐震性能に応じた、保険料の割引制度があります。

【地震保険の割引制度】

割引の種類 割引率 適用条件
1.免震建築物割引 50% 対象建物が「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)に規定された免震建築物である場合
2.耐震等級割引 耐震等級3:50%
耐震等級2:30%
耐震等級1:10%
対象建物が品確法または「耐震診断による耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)の評価指針」(評価指針)に定められた耐震等級を有している場合
3.耐震診断割引 10% 対象建物が地方公共団体等による耐震診断または耐震改修の結果、昭和56年6月1日に施工された改正建築基準法における耐震基準を満たす場合
4.建築年割引 10% 対象建物が昭和56年6月1日以降に新築された建物である場合

 割引を適用するには、地震保険の加入時に、損保会社へ所定の確認資料を提出する必要があります。こちらから申請しなければ、割引が適用されないこともあるので、適用要件に当てはまる場合は、必ず申請するようにしましょう。

長期契約割引

 先ほども説明しましたが、地震保険は2年〜5年の長期契約をすると、年数に応じて保険料が割引となります。

 単年契約を何度も更新し続けるより、長期契約をしたほうがお得になるので、単年契約をしている人は見直したほうが良いでしょう。

地震保険は必要な保険なのか?

 地震保険料は、保険金額に比例して高くなります。さらに、都道府県や建物の構造によっても保険金額は異なります。最も保険料が高い地域(千葉県など・42,200円)と最も安い地域(鹿児島県・12,300円)では、年間29,900円もの差があります。※ロ構造(木造など)、保険金額1000万円、1年契約の場合

 地震保険料が最も高い地域の千葉県・東京都・神奈川県・静岡県のロ構造では、保険金額1000万円あたり年間42,200円(建物・家財の両方に加入すると、倍の年間84,400円)となります。なかなかインパクトのある数字です。

 割引制度や税控除があるとはいっても、地震保険料は高額になりがちであることには変わりありません。「必要あるのだろうか?」と思う人もいるのではないでしょうか。

 ここでは、なぜ地震保険が必要なのかについて解説します。

地震保険は、国(政府)と民間損保会社とが行う公共性の高い保険

 地震によって被害を受けた場合、当面の生活資金としてまとまったお金を手にすることができる地震保険は、今後の生活の大きな助けとなります。

 実は、地震保険は政府と民間の保険会社が共同で運営する公共性の高い保険であり、地震保険法に明記されている「地震等による被災者の生活の安定に寄与する」という点においては、かなり有用な保険であることには間違いありません。

 現在、1回の地震等で支払われる保険金の限度額は11兆7,000億円と決まっていますが、下図の通り、1,537億円を超える部分については政府がその大半(約99.9%)を負担することになっています。

 このように、実は地震保険は「加入者にとって非常に割の良い商品」であり、ほとんど補助金のような仕組みなのですが、そもそも地震保険に加入していなければ、保険金をもらうことはできません。

日本は世界有数の地震大国だが、地震保険加入率は約35%

 世界有数の地震大国である日本。2000年〜2009年の間に起きたマグニチュード6以上の地震のうち、20%が日本で発生しています。

 いつ何時起こるかわからない、予測不能な地震に対する備えとなるのが地震保険ですが、年々増加傾向にあるものの、世帯加入率(全世帯のうち地震保険に加入している世帯の率)は34.6%(2021年)と、それほど高い数字とは言えません。

【地震保険の世帯加入率】

 なお、地震保険は火災保険とあわせて契約するものです。火災保険に加入している人のうち、どの程度の人が地震保険に加入しているかを算出した、地震保険付帯率は、69.0%(2021年)と、約7割程度。それでも3割程度の人は、地震保険に加入していないということになります。

【地震保険付帯率】

地震保険付帯率
損害保険料算出機構>

 やはり、世間一般的に「地震保険は高い」というイメージが影響しているのかもしれません。 

それでも入っておいたほうがいい地震保険  

 今後30年間に震度6以上の地震が発生する確率は全国的に見てもかなり高く、特に南海トラフ沖ではマグニチュード8から9の巨大地震が今後30年以内に発生する確率は、なんと「80%」となっています。

 地域によって大きな差がありますが、南海トラフ沖での巨大地震はいつ起きてもおかしくないという状況です。

確率論的地震動予測地図
出典:地震調査研究推進本部 全国地震動予測地図2020年版

 保険料が高いように思うかもしれませんが、地震による損害に備えられるのは「地震保険だけ」です。こうした日本の状況を考えると、地震保険は必須の保険と言えるでしょう。

地震保険を見直す際の注意点

 今回の改定で、地震保険料が値上がりする都道府県に住んでいる人は、改定前に見直し、5年契約で再契約をすることをおすすめします。ただし、保険の残り期間と、途中解約した際に返還される保険料の額を確認しておきましょう。また、もし未加入の場合は、改定前に加入しておくのがおすすめです。 

 逆に、今回の改定で地震保険料が値下げとなる都道府県に住んでいる人は、長期係数の縮小とのバランスを検討する必要があるので、一度、損保会社に見積もりを取ってみましょう。

2022年10月は、火災保険料も同時改定

 地震保険は、主契約である火災保険に付帯(セット)しての契約となるため、保険期間は、基本的には火災保険の保険期間と一致させることになります。

 例えば、今回の地震保険料改定よりも後に満期を迎える火災保険を契約している場合、地震保険も火災保険と同じ契約期間であるため、次の更新では、改定後の保険料が適用されることになります。

 また、改定が行われる2022年9月までに火災保険が満期となる場合には、もちろん現在の料率がそのまま適用されます。

 現在、火災保険を月払いや年払いで契約していて、地震保険料が大幅値上げとなる地域に住んでいる場合、2020年9月までに現在の火災契約・地震保険をいったん解約して、契約し直すと、保険料を節約できる可能性が高くなります。

 まずは、現在契約している代理店や、無料一括見積もりなどで、10月以降の保険料を算出して、最もお得に加入できる方法を探すのがいいでしょう。

【関連記事はこちら】>>2022年10月、火災保険料は最大1.5倍の値上げも! 9月までが保険見直しのラストチャンス!

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