「買って住みたい街」といったランキングで上位に入ることが多い「船橋市」。複数の鉄道網が利用できるほか、ショッピングや住環境の良さで支持されている。そこで、船橋市の魅力を分析するとともに、不動産を購入した場合、資産価値はどうなっていくのかを占ってみよう。(フリージャーナリスト・福崎 剛)
複数路線が使える利便性の高い「船橋市」
近年、にわかに人気が高まっているのが千葉県の船橋市。全国的に知名度や人気の高い「吉祥寺」「恵比寿」「横浜」「目黒」あたりは地価が高く、資金的に余裕がなければ容易に購入できない現実もある。実際に買って住むとすれば、立地や価格、環境などのバランスの良さで選ぶしかない。そういう条件の中でポイントの高い街が、船橋駅を中心に発展する船橋市なのだろう。
魅力的なポイントの1つが、街の中心となる「船橋駅」の利便性で、複数の鉄道路線を利用できることにある。JR東日本、東武鉄道、そして京成電鉄の3社が使え、乗換なしで東京駅へは最短24分、日暮里までが26分、秋葉原まで30分となる。通勤、通学で不便を感じることはなさそうだ。また、「船橋」駅のすぐ隣の「西船橋」駅も東京のベッドタウンとして知られ、3社5路線(JR東日本・総武線、地下鉄・東西線、東葉高速鉄道)が乗り入れる主要駅で、東京へのアクセスは船橋駅と並び抜群だ。
地域で完結する生活圏
「住みやすい街」ランキングなどで上位にあげられる街には一つの傾向がある。比較的、地域完結の暮らしができるエリアであることだ。例えば、週末や休日には、わざわざ別の街に出かけなくても住んでいるエリアで事足りるという点だ。公営競馬場が2つもあるのもほかの街にはないポイントだろう。
船橋駅の北側には「東武百貨店」が直結し、「イトーヨーカドー」と連結するペデストリアンデッキは広くて待ち合わせもしやすい。一方、駅の南側は商業オフィスビルの「船橋FACE」があり、飲み屋街なども広がる。昨年閉店した西武跡地の再開発も期待されている。また海沿いにまで向かえば、「ららぽーとTOKYO-BAY」もあり買い物には便利だ。
実際、船橋市の「市民意識調査報告書」(平成26年度)によれば、「住みよい」「まあまあ住みよい」と回答した人を合わせると約77%になる。定住意識に関しても高く、52.4%が「住み続けたい」と答えている。
<引用データ:船橋市役所「平成28年3月船橋市人口ビジョン」(PDF)より>
船橋市が住みよい理由(回答数:1,037人) | |
鉄道など交通機関が多く、通勤・通学に便利だから | 68.8% |
商店などが近くにあり、日常の買い物に便利だから | 54.5% |
静かさなどの周辺環境がよいから | 16.6% |
親しみのある自然が残っているから | 9.5% |
近隣とのつきあいがうまくいっているから | 7.4% |
<引用データ:船橋市役所「平成28年3月船橋市人口ビジョン」(PDF)より> |
買って住みたい理由は、割安感のある地価
大手不動産情報サイト「SUUMO」が独自の調査で、船橋市と近隣の土地価格相場を比較している。これによれば、坪単価で市川市の半分強ほどの43.4万円。市川と船橋は、JR総武線でわずか10分、JR総武線快速であれば6分で移動できる。東京までの交通の利便性を考えたときに、この10分をどう考えるか。土地価格の坪単価が約半分近くになることを考慮すれば、船橋は「コストパフォーマンスがいい」と言わざるを得ないだろう。
出典:船橋市(千葉県)の土地価格相場情報 - SUUMO関東版より(2019年1月現在)
では、最新の「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」(平成30年)※1から船橋市の地価を調べるとどうだろうか。例えば、船橋市で告示地価が最高の地点は船橋駅と京成船橋駅の間にあり、どちらも徒歩1分程度の「本町4-3-20」で、㎡単価が130万円にもなる。
一方で、船橋駅から北に80mほど離れた駅前の「本町5-3-3」では約68万円/㎡になっており、丁目が少し違っただけで割安になることがわかる。船橋市の地下公示の全150件分を平均すると平均は約18万6,000円/㎡となる(坪単価で約61万円)。
ちなみに、この割安感が人気につながっていることもあり、「本町4-41-28」を例に、地価の変動を調べると、2017年に98万円/㎡だった地価が2018年には130万円/㎡となっており、約30%近い上昇となる。
次に、「西船橋駅」周辺を見てみよう。船橋より1駅分、東京駅寄りの西船橋では駅から60m圏内の「印内町599-3外」で約52万円/㎡となっており、駅から徒歩5分圏内の「葛飾町2-410-2外」でも28.5万円/㎡。通勤に地下鉄・東西線利用を考えているのであれば、西船橋は土地価格が魅力的だろう。
西船橋での地価相場の変動を見ると、駅から60m圏内の「印内町」を事例にすれば、約4.7%の上昇になる。つまり、船橋駅、西船橋駅の周辺は着実に地価が上昇傾向にある。割安感も充分で、今後も値上がりする余地はあると言っていいだろう。
※1 出典:国土交通省地価公示・都道府県地価調査
交通の要衝で、人口は2025年まで増加
住みやすい街として支持される船橋市は、現在63万人を超え、千葉県内では2番目に多い。人口増は2025年まで続き、その後は緩やかな減少へと転じると予想されている。東京のベッドタウンとしての認識があるものの、市内や千葉県内に勤務する人たちも半分近くいる。
船橋駅周辺は、もともと成田山参詣の宿場町で人の行き交う街だった。交通の要所だからこそ、当然のごとく商業も盛んな街だった。太平洋戦争で戦火をまぬがれたこともあり、焼け野原になった東京へ供給する物資が集積した時期もあった。そういう意味で、常に東京の近くに位置する重要なサテライトタウンだといえるのである。
<引用データ:船橋市役所「平成28年3月船橋市人口ビジョン」(PDF)より>
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買って住むなら、断然マンション!?
東京23区内で戸建てを購入するのは厳しいが、地価の割安な千葉になら建てられると勝手なイメージを持つ人も少なくないだろう。しかし、これから少子高齢化が進み、20年後には人口が下降する。そのことをふまえて住まい選びをするのであれば、交通と買物の利便性が住まい選びの重要なポイントになる。中心市街地に近い住まいを選ぶとすれば、分譲マンションも有力な選択肢になるだろう。
船橋市内には、分譲マンションが総戸数で64,848戸(2018年12月末現在)もある。ただし、2010年以降は分譲戸数が減少しており、年間の分譲戸数は1,000戸を切る年が多い。新築だけでなく、中古物件も含めて検討したほうが、住まい選びの選択肢は広がるだろう。
船橋市の分譲マンションの累計棟数(鉄筋コンクリート造) | ||
年 | 棟数 | 戸数 |
平成19年 | 38 | 3,958 |
平成20年 | 30 | 2,319 |
平成21年 | 14 | 1,800 |
平成22年 | 6 | 269 |
平成23年 | 5 | 480 |
平成24年 | 9 | 571 |
平成25年 | 7 | 1,395 |
平成26年 | 4 | 631 |
平成27年 | 10 | 1,068 |
平成28年 | 6 | 514 |
平成29年 | 7 | 540 |
合計 | 1,043 | 51,242 |
出典:船橋市役所公式サイト「船橋市分譲マンション台帳」 |
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子供の医療費は、1回300円の定額
少子高齢化のため、今はどの自治体でも子育て支援は手厚い傾向にある。船橋市では、医療費については無料にはならないものの、0歳から中学3年生までであれば通院1回300円、入院1日300円の負担で済む。また、調剤薬局に関しては無料で医療を受けることができる。子育てファミリーにとっての支援は充分だろう。
プロのスポーツ選手を輩出する公立高校
船橋市の教育環境は、千葉県内でも特色ある公立高校が存在する。1つは全国にその名を知られる公立のスポーツ名門校「船橋市立高等学校」だ。野球、サッカーでは全国大会出場や優勝の実績もあり、これまでにプロ選手を輩出している。
また、吹奏楽部も全国トップレベル。そして、「県立千葉高」「東葛飾高」と並ぶ“千葉県公立高校御三家”として県内屈指の進学校として有名な「県立船橋高校(通称、フナ高)」がある。地元に誇れる高校があることは、恵まれた教育環境が整っているといえるだろう。
住みたい理由は、行楽地や名所も多いこと
船橋は漁業や農業が身近に感じられ、都内と違って高層ビルがほとんどないため駅を離れると空が近い。そして自然豊かな公園があるのも魅力のひとつ。例えば、「御滝公園」は花見シーズンに、公園の周りを囲むソメイヨシノが咲き誇り、多くの市民の憩いの場として親しまれている。
また東京湾に面した干潟と浅海域の一部を公園として開放した「ふなばし三番瀬公園」も気軽に出かけられ、潮干狩りやBBQを楽しむこともできる。その広さは約1,800ヘクタール(1ヘクタール=1万㎡)に及び、およそ新宿区に匹敵するほど。干潟にはハゼ、アサリ、カニ、ゴカイなどの底生生物が多く生息して、いまもそのまま自然が残っている。テニスコートや野球場も公園内にあり、潮風を感じながら1日過ごせる希少なスポットでもある。
もう1つ子どもたちに人気の公園と言えば、「アンデルセン公園」。園内は5つのゾーンに分かれ、様々なアスレチック体験ができるほか、メルヘンゾーンでは童話にちなんだアトラクションも楽しめ、入園料はかかるが遊び飽きない。
大人の社交場としての「中山競馬場」の存在も船橋の魅力だろう。場内には広々とした芝生スタンドからのダイナミックな競馬観戦が楽しめるほか、カフェやショップのあるフロア、親子で遊べるチャイルドコーナーなども用意している。
参照:船橋市観光協会公式サイト 御滝公園/千葉県公式観光情報サイト ふなばし三番瀬環境学習館
防災意識の高さが安心を育む
東京湾に面していることもあり、地震等の災害面で船橋市はハザードマップを作成し、津波や浸水、液状化に関しての警鐘を鳴らしている。具体的なハザードマップは、首都直下地震モデルのうちの「東京湾北部地震」想定を基としており、予測結果でしかないが、地域によって液状化や浸水しやすい場所が住所で検索できる。
また、災害に備えた災害救援ボランティア講座を開催する公益社団法人「船橋SLネットワーク」が、万一の災害発生時にリーダー役となれる「災害セーフティーリーダー(通称:SL)」を養成するなど、日頃から防災意識も高い。気軽に参加できる防災訓練などのイベントも定期的に開かれており、参加しやすい環境が用意されている。参加することで、新たなコミュニティが生まれ、地域の安全や安心が育めるとして行政側も働きかけている。
いつ大震災がやってくるかわからない時代だからこそ、常々防災意識の高い地域でコミュニティを築いておくことも大切になる。そういう意味でも船橋市は災害に備えようという体制が整っている。
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※参照:千葉県防災ポータルサイト 公益社団法人SL災害ボランティアネットワーク(船橋SLネットワーク)
まとめ
船橋市は、市川市と比べられることが多く、従来は都心に近い市川市が注目されてきた。しかし、地価高騰の中で割安感のある船橋市が脚光を浴びているのである。「買って住みたい街」で上位にランクインするのも頷ける。ただし、人口のピークは2025年と見込まれており、不動産の資産価値は徐々に落ちていくことが予想されるだけに、「駅近」などの立地に特徴がある不動産を見極めることが重要だろう。
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