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「浦安」エリアの中古マンションは“買い”か? 液状化リスクを抱える湾岸の街。ただし、財政健全度と都内へのアクセス力は全国トップレベル!

2019年11月18日公開(2019年11月18日更新)
ダイヤモンド不動産研究所

東京都に隣接する千葉県浦安市。東京湾に面し、交通の利便性の良さに加え、コンパクトな市内には東京ディズニーリゾートを擁しており、国内外からの来訪者も多い。中古マンションの販売中の物件数も多く、住み替えの選択肢の幅が広い。今回は、その不動産価値について分析しよう。(フリージャーナリスト・福崎 剛)

都心まで約16分で行ける抜群のアクセス力

 浦安市は千葉県の北西部に位置していて、東と南側が東京湾に面しており、北は市川市と接している。また、旧江戸川をはさんで東京都江戸川区の隣にあたり、千葉県内で最も東京に近い市町村が浦安市だ

 そんな立地も相まって、都内までのアクセスの良さは抜群だ。市内北部に地下鉄東西線が、市内南側にはJR京葉線が東西に伸びており、地下鉄東西線・浦安駅から大手町駅までは約16分、JR京葉線・新浦安駅から東京駅までは18分で、都内西部方面からのアプローチよりも断然早い。東京都心部へのアクセスを考慮すれば、浦安市は利便性で高く評価される。

 都内へのアクセスが良い反面、浦安駅と新浦安や舞浜と南北を結ぶ交通網には難点がある。公共交通機関としてバスが走っているものの、本数が多いわけではなく、市内の移動にマイカーを利用する市民は多い。

財政基盤の強い浦安市のまちづくり

 利便性での評価は高いが、住みやすい街なのか検証してみよう。

浦安市の財政健全度は全国トップレベル!(出所:PIXTA)

 浦安市は千葉県内では比較的狭い市町村で、人口は約17万人。三菱UFJ不動産販売が独自に算出している「住みよさランキング」では、千葉県内で総合評価11位、利便性6位で富裕度2位になっている。これらのことから、浦安には都心で稼ぐ高額所得者が多く住んでいると想像できる。

 特に注目すべきは、「財政健全度」で、千葉県内1位、全国でも5位にランキングされている点だ。浦安市にはいわゆる15~64歳の生産年齢にあたる層が多く、人口バランスが良いため、財政基盤がしっかりしているのだ。少子高齢化で人口減少が進む日本において、このように財政が豊かな市町村は貴重だ。

 財政基盤がしっかりしていれば、市内の行政サービスを手厚くすることができる。実際、浦安市では市内のインフラ整備のほか、学校給食の無償化など新総合計画を進めている。財政基盤を確認することは、住む場所を選ぶ上で非常に重要なことでもあるのだ。

 しかし、今後は人口減が否めず、2025年には市税収入が減少に転じると試算している。75歳以上の人口が増え、社会保障費の増加も見込まれている。しかし、こうした課題は、全国の市町村が抱えているため、浦安市だけが特別なのではない。

 浦安市には日本を代表する鉄鋼団地と東京ディズニーリゾートがある。鉄鋼産業と観光業は、将来的にも期待できる産業だ。今後は、これらの産業を基軸にして、活気あるコンパクトシティの実現をいかに目指すかによるだろう。現在も、水上シアターなどイベント空間の境川河口の整備や、公募美術展「浦安ビエンナーレ公募展」や自転車ロードレースの開催で、観光に力を入れて取り組んでいく姿勢を打ち出している。

 具体的な課題もある。浦安市の市民意識調査によると、市の取り組みに関して、不満足と感じている点では「道路整備・交通安全」が最も高い。市内バスの拡充や、自転車走行環境の整備、JR新浦安駅北口にバス停車スペースを設置するなどの対策が検討されている。また、埋め立て地が多いという地域性からか、震災対策も重視されており、水害から地域を守る自衛の「地域水防団」を設置も急ぎたい案件だ。※出典:浦安市「市政に関する市民意識調査報告書」平成30年3月

浦安エリアは中古物件が多く
お得な物件選びがしやすい環境!

 では、不動産としての特徴を見ていこう。浦安市には売り出し中の中古マンション数が多い。物件数が多いと、いろいろな物件を比較検討しやすい状況になり、需要供給のバランスが取れ、適正価格の物件が流通しやすくなる。つまり、買い手にとってメリットがあるエリアだといえる。ただし、市内それぞれのエリアによって売り出し中の物件数やその特徴が変わってくるので注意したい。

 市内の約8割が居住地域となっている浦安では、「浦安」「舞浜」「新浦安」という3つの駅を基点に住宅地が広がっている。

 特に「新浦安」駅エリアは、「売出し事例の多い駅」(ダイヤモンドオンライン)によると、首都圏でもトップクラスの物件数を誇っている。上位25駅の中では、千葉県で唯一ランクインしているのも注目だ。

売り出し中の物件が多い駅ランキング
(出典:ダイヤモンドオンライン)

 下町の風情が残った旧市街地にあたる「浦安」駅エリアは、中高層マンションや戸建て住宅が混在し、古い物件も珍しくない。

 また、埋立地エリアのJR京葉線「舞浜」駅や「新浦安」駅エリアは、道路や居住区画が整理されており、比較的大型マンションなどが多いのが特徴だ。

想像以上に大きい、浦安市の「液状化リスク」

 不動産を探すときに、立地条件や価格、間取りなど優先する条件がある。地震大国でもある日本だからこそ、安全性を考え災害に強い地形、地盤も考慮しておきたい。

千葉県 液状化 マップ
写真を拡大  千葉県液状化しやすさマップ「直下型震度5強の場合」(出所:千葉県WEBサイト)丸で囲ってある部分が浦安エリアにあたる

 液状化被害リスクは、埋め立て地が最も高いといわれ、浦安だけでなくタワーマンションが林立する豊洲、お台場周辺なども指摘されている。マンション自体は無事でも、周辺道路などが液状化する可能性も高く、電気・ガス・水道のインフラが遮断される恐れがある。

 浦安市は、2011年の東日本大震災で液状化被害を受けた。しかし、市全域が被害を受けたわけではなく、中町地域の美浜・弁天・海 楽・富岡地区や、新町地域と呼ばれる東京湾に最も近い臨海部など、埋め立てエリアで被害が起きている

 千葉県が発表している「液状化予測」によると、震度5強になれば、浦安市エリアは液状化しやすいとされており、マップはオレンジ色や赤色で塗りつぶされている。震度6になると、浦安市はほぼ液状化すると予測され、首都圏直下型地震に襲われた場合は、液状化が市全体に及ぶと考えられそうだ。

 ただし、この液状化予測マップには、液状化対策を講じた地盤なのかどうかは反映されていない。浦安市では、東日本大震災以降、埋め立てエリアを中心に「液状化対策事業」を行っており、2016年ごろまでの時間をかけて、地盤調査と対策を行っている。もしも、浦安エリアに不動産を持つのであれば、その土地が液状化対策を行ったかどうかの確認は必須だ。

旧市街地か、埋め立てエリアか?
地域差が大きい浦安の街

 浦安市は、以下の5つの地域に分かれている。

・元町地域(旧市街地エリア)
・中町地域(第一次埋立事業エリア)
・新町地域(第二次埋立事業エリア)
・工業ゾーン
・アーバンリゾートゾーン(東京ディズニーランド周辺)

 アーバンリゾートゾーンを除く「住宅地域」に関しては、密集した下町風情の残る元町地域と、それ以外の、埋め立て地で造られた人工的な街で構成されている。液状化のリスクを避けるのであれば、旧市街地の元町地域に絞って、物件選びをするのがいいだろう。

浦安 不動産 市街地エリア
埋め立て地エリアの住宅街は、道路整備もされ美しい景観だ。

 だが、旧市街地では、木造家屋が密集して道路幅が4m未満のところもあり、火災発生時など、緊急車輌の進入が出来ないというリスクもある。また、旧市街地エリアには大型マンションが少ないために、新浦安駅エリアと比べると販売物件数は多くない。

 埋め立てエリアである中町地域や新町地域はどうだろうか。こちらは道路整備も行われており、公共公園の配置や景観までもこだわっていて、美しい街のたたずまいをしている。起伏や坂道もなく、自転車や車での移動もスムーズだ。液状化対策をしてある土地も多く、東日本大震災以降、住民の防災意識も高くなっているといえるだろう。

浦安の土地価格相場は?

 浦安の土地価格相場はどうなっているだろうか。

■浦安市と周辺市町村の土地価格相場
・江戸川区 136.9万円/坪
・浦安市  122.1万円/坪
・市川市    69.7万円/坪
・印旛郡    9.2万円/坪
※住宅情報サイトSUUMOより抜粋(2019年11月現在)

 大手不動産ポータルサイトで調べると、浦安市の土地価格相場は、約122万円/坪で、隣の東京都江戸川区の約140万円/坪と比べると、少し割安感がある。しかし、同じ千葉県内でみると人気の高い市川市が約70万円/坪なので、こちらと比べると割高に感じるかもしれない。

 浦安市内エリア別の土地価格相場も見てみよう。

浦安市 土地価格
写真を拡大 浦安市の土地価値相場一覧(出所:国土交通省地価公示 のデータを基に編集部が作成)※建物を除く、土地の価格のみを提示

 旧市街地で元町エリアの「北栄」が108万円/坪、中町エリアの「美浜」「舞浜」がそれぞれ103万円/坪と112万円/坪となっており、この地域は他と比べても価格が高くなっているといえるだろう。

浦安エリアのマンション相場は? 

 実際に販売されている浦安の中古マンションから、いくつか事例として取り上げて比較してみよう。

 検索してみると、3LDKであれば、価格帯は約2500万円から約4000万円が多い。物件の傾向から、3LDKでもやや広めの物件を探す場合は、新浦安駅を基点に探すのがいいだろう。

 東西線浦安駅、JR舞浜駅、JR新浦安駅の中古マンションをそれぞれ見てみよう。

【東西線浦安駅】
・2LDK(約66㎡):4280万円(駅徒歩10分、築5年、5階建、総戸数38戸)
・3LDK(約62㎡):3490万円(駅徒歩10分、築30年、5階建、総戸数37戸)

【JR舞浜駅】 
・3LDK(約71㎡):3280万円(徒歩19分、築年数不明、8階建、総戸数48戸)
 
この物件の場合、駅まではバス利用が便利だ。

【JR新浦安駅】
2LDK(約65㎡):2980万円(徒歩4分、築年数約30年、9階建、総戸数約1000戸)
3LDK(約75㎡):3470万円(徒歩4分、築年数約30年、9階建、総戸数約1000戸)

 また、新浦安駅から徒歩17分のところに、2020年完成予定の新築マンションが分譲中で、こちらの物件は、3LDK・4LDK(約67〜92㎡)、4348万円〜6998万円だ。新築と中古物件を単純に比較することは出来ないが、参考になるだろう。

「2022年問題」による暴落リスクは非常に少ない

 浦安市の土地は、周辺の街と比べて「2022年問題」による影響が少なく、大きな値動きはないと考えられる。つまり、他の街よりも暴落リスクが少ない

 2022年問題とは、都市部に存在する農地で、「生産緑地」に指定されている土地に関することだ。生産緑地は宅地と異なり、農地扱いとなり課税は低い。この生産緑地は、1991年の「生産緑地法」によって指定を受けたものがほとんどで、その指定期間の効力は30年。つまり、2022年には生産緑地の指定が解除される。解除されれば、生産緑地の課税は宅地並みになるため、土地所有者は、市町村に生産緑地の買い取りの申し出ができるとなっている。

 ところが、財政難の多い市町村では、買い取る余裕がない状況だ。そうなれば都市部に宅地として大量の土地が不動産市場に供給されることになり、宅地の暴落が起きるリスクが懸念されている。これが2022年問題といわれるあらましだ。

 ところが、国土交通省の資料を見る限り、浦安市は2022年問題の対象から外れている。4分の3が埋め立て地で構成されていることもあるのだろう。つまり、市内での土地価格相場の暴落の不安はなさそうだ。

 東京オリンピック後にマンションが値下がりする、2022年問題で土地価格が暴落するというネガティブな話題が先行しがちだが、そうしたマイナス要因の影響が少ない地域や物件を選ぶこともよりよい選択肢になるのではないだろうか。そういう意味で、浦安市は条件のよい街のひとつに数えて問題ない

まとめ

 市の財政も全国で数えるほどの安定ぶりで、行政サービスへの満足度も高いと思われる浦安市。2022年問題で、不動産価値が暴落してしまうリスクも低い。ただ1点注意するべきなのは、地盤の強固さ、液状化対策が済んでいるかどうかだ。

 なんといっても、浦安エリアは都心部までのアクセス力が群を抜いている。東京都下の西部方面と比べても、利便性では優位だ。地下鉄東西線やJR京葉線の通勤ラッシュには苦労するだろうが、20分以内で都心へ通勤できるという利点は大きい。

 市内の交通利便性には多少課題が残るため、基点駅から家までの移動距離や交通手段(マイカーやバス)をどう考えるかで物件の選び方は変わる。東京に最も近い都市としてのアドバンテージを活かすのであれば、駅から近い物件選びを主眼に考えると良いだろう。

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