東京都中央区の再開発「日本橋リバーウォーク」の完成で中古マンション価格はどうなる? 過去事例から10年後を予測!

2026年10月27日公開(2026年10月26日更新)
後藤利恵子:フリー記者・ライター

東京都中央区の日本橋周辺では、首都高速道路の地下化とともに、日本橋川沿いで複数の大規模再開発事業が進んでいる。これら5つの再開発区域と周辺一帯は「日本橋リバーウォーク」と呼ばれ、水辺を生かした新たなまちづくりが進められている。各地区の再開発と首都高の地下化によって、日本橋の街並みはどう変わるのか。また、中古マンション価格はどうなるのかを予想する。(後藤利恵子:フリー記者・ライター)

日本橋で進む大規模再開発

 東京都中央区の日本橋川周辺では、複数の大規模再開発事業が進んでいる。「日本橋リバーウォーク」は、これら5つの再開発区域とその周辺一帯を指すエリア名称だ。このエリアでは、官民が連携して日本橋川の水辺を生かした街づくりを進め、新たな「水都」の創出を目指している。

 こうした再開発と並行して進むのが、首都高速道路日本橋区間地下化事業だ。首都高の地下ルートは2035年度の開通、高架橋は2040年度の撤去完了を目指している。これは各地区の市街地再開発事業とは別の事業で、完成時期も異なる。

首都高の高架橋が撤去された後の日本橋川のイメージパース
首都高の高架橋が撤去された後の日本橋川のイメージパース(出典:日本橋リバーウォークエリアマネジメント「NIHONBASHI RIVER WALK ABOUT」)

 日本橋は江戸時代から、五街道の起点であると同時に水運を利用した商業・物流の中心地だった。しかし、1963年に日本橋区間で川の上に首都高速道路が開通してからは、水辺の景観は失われ、水都として栄えていた面影も薄れていった。日本橋川沿いの各再開発事業と首都高の地下化が進むことで、水辺の景観や歩行者空間が変わり、日本橋の「水都」としての魅力が再び高まることが期待される。

地下通路や舟運で高まる回遊性

 日本橋リバーウォークの周辺では、各地区の再開発にあわせて歩行者ネットワークの整備が進められる。東京駅・大手町駅と日本橋駅を地下通路で接続し、東京駅から八重洲、日本橋へと歩いて回遊しやすい街を目指す。

 さらに、日本橋川の舟運を通じ、築地や羽田方面とのつながりを充実させる構想も示されている。道路や地下通路だけでなく、水辺を生かした移動や滞在の選択肢が広がる点も特徴だ。

日本橋リバーウォークを構成する5地区の再開発事業

 日本橋リバーウォークと呼ばれるエリアには、次の5つの市街地再開発事業が含まれる。事業主体や整備内容、完成予定時期は地区によって異なる。

■ 日本橋リバーウォークを構成する5地区の再開発事業一覧

日本橋リバーウォークを構成する5地区の再開発事業一覧
(出典:日本橋リバーウォークエリアマネジメント「NIHONBASHI RIVER WALK PROJECTS」)
 
日本橋リバーウォークを構成する5つの再開発区域と周辺エリアのマップ
日本橋リバーウォークを構成する5つの再開発区域と周辺エリアのマップ
(出典:日本橋リバーウォーク プレスリリース「【お知らせ】日本橋川を中心とした5つの再開発区域とその周辺一帯エリア 『日本橋リバーウォーク』の情報発信を開始」)

 5地区の再開発では、高層ビルや商業施設などを整備するとともに、川沿いの広場や遊歩道、地下通路などの歩行者空間を充実させる。個別の事業を通じて、東京駅、八重洲、日本橋の回遊性を高めることが目指されている。

① 八重洲一丁目北地区(八重洲一丁目北地区第一種市街地再開発事業)
 同地区は南と北の街区に分かれ、南街区には高さ約218m、地上44階の超高層ビルが建てられる。また、南街区の東京駅側に整備される約1,000㎡の広場と、北街区の川沿いに誕生する親水空間が、東京駅から日本橋リバーウォークへと人を誘う玄関口となる。南街区は2029年度、北街区は2032年度の完成予定だ。

② 日本橋室町一丁目地区(日本橋室町一丁目地区第一種市街地再開発事業)
 同地区はA〜Dの4街区に分かれ、A街区には高さ約173m、地上34階の超高層ビルが建設される。オフィス、住宅、商業施設に加え、創薬などライフサイエンス産業を支援する施設も整備される。川沿いのB〜D街区には低層商業施設やプロムナードなどを設け、歩いて楽しめる水辺空間の創出を目指す。

③ 日本橋一丁目東地区(日本橋一丁目東地区第一種市街地再開発事業)
 5地区のなかでも、住宅の整備が計画されている点で注目される。同地区はA〜Eの5街区に分かれ、江戸橋南側のA街区には高さ約205m、地上40階、B街区には高さ約213m、地上51階の超高層ビルが建設される。オフィス・商業店舗だけでなく住宅(約568戸)やサービスアパートメントもつくられ、国際的なビジネス拠点となる。建築工事完了は2038年度(令和20年度)を予定している。川沿いには約2,000㎡の広場・緑地・眺望テラスも整備される予定である。

 多言語対応の医療施設や子育て支援施設なども計画されており、住む街、長期滞在する街を意識している。

日本橋一丁目東地区 2棟の超高層ビルのイメージパース​
日本橋一丁目東地区 2棟の超高層ビルのイメージパース​(出典:日本橋リバーウォークエリアマネジメント「NIHONBASHI RIVER WALK PROJECTS」)

④ 日本橋一丁目1・2番地区(日本橋一丁目1・2番地区第一種市街地再開発事業)
 同地区はA〜Dの4街区に分かれ、A街区には高さ約135m、地上25階、B街区には高さ約31m、地上7階の建物が計画されている。江戸時代に日本橋周辺が情報発信の拠点として栄えた歴史を受け継ぎ、文化体験施設や情報発信・交流施設、店舗などを整備する計画だ。

⑤ 日本橋一丁目中地区(日本橋一丁目中地区第一種市街地再開発事業)
 同地区はA・B・Cの3街区で構成され、全体街区は「東京ミッドタウン日本橋」と名付けられている(2026年9月末竣工、2027年秋グランドオープン予定)。B街区には、日本橋川沿いの遊歩道と商業施設、48戸の住宅からなる「日本橋リバーサイドテラス」が。C街区には、新しい日本橋のランドマークとなる、高さ約284m、地上52階の超高層ビル「日本橋野村三井タワー」が建てられる。

 オフィスのほか、商業施設、高層階(48〜51階)の賃貸レジデンス(71戸)、大型ホールなどのMICE施設、ヒルトンが運営する最上級ラグジュアリーホテル「ウォルドーフ・アストリア東京日本橋」(2027年秋開業予定)などが入居する。

 さらに地上には日本橋船着場・川沿い広場・遊歩道・オープンカフェなどが整備される。

C街区の高さ約284mの超高層ビルのイメージパース
C街区の高さ約284mの超高層ビルのイメージパース(出典:日本橋リバーウォークエリアマネジメント「NIHONBASHI RIVER WALK PROJECTS」)

日本橋駅周辺の中古マンション価格はすでに高水準

 日本橋エリアの中古マンションは、再開発の完成を待たず、すでに高い水準にある。日本橋駅周辺の中古マンション平均価格は、専有面積70㎡換算で1億3,960万円、三越前駅では1億5,237万円となっている(出典:LIFULL HOME'S「日本橋駅の中古マンション価格相場情報」「三越前駅の中古マンション価格相場情報」2026年10月1日時点)。

 実際の中古マンションの売り出し価格の一部を挙げると、以下のようになっている(価格は2026年10月1日時点)。

ザ・パークハウス日本橋大伝馬町
50.94㎡、1LDK、1億2,980万円(出典:LIFULL HOME'S)

ファミール日本橋グランスイートプラザ
70.13㎡、3LDK、1億8,900万円(出典:LIFULL HOME'S)

シティハウス日本橋
54.82㎡、2LDK、1億3,499万円(出典:マンションレビュー)

再開発で日本橋駅周辺の中古マンション価格はどこまで上がる?

 日本橋川沿いで進む複数の再開発事業と首都高の地下化によって、周辺の中古マンション価格にはどのような影響が考えられるだろうか。

過去の都心再開発(虎ノ門・麻布台/勝どき)の事例

 マンション価格は再開発だけでなく、低金利や建築費の高騰、都心マンション市場全体の価格上昇なども影響するため一概には言えないが、一つの指標としてみてみよう。

 虎ノ門・麻布台地区再開発周辺では、築10年・70㎡の中古マンション参考価格が都市計画決定前の7,983万円から1億5,146万円へと89.71%の上昇。勝どき五丁目地区再開発周辺では4,622万円から1億4,142万円へと205.94%も上昇している(出典:LIFULL HOME'S 住まいインデックス「虎ノ門・麻布台地区再開発 再開発事業周辺の物件価格 中古マンション 価格推移」「勝どき五丁目地区再開発 再開発事業周辺の物件価格 中古マンション 価格推移」)。

10年後の日本橋の坪単価予測は?

 日本橋駅の中古マンション相場を見てみると、平均坪単価は750万円、70㎡換算の平均売り出し価格は1億5,882万円だ(出典:マンションレビュー 2026年10月26日時点 ※算出元の不動産データサービスや集計対象条件によって相場価格には差がある)。

 また、日本橋駅の標準的な中古マンション(築10年・70㎡)の価格は、直近3年間で38.62%上昇(出典:LIFULL HOME'S「住まいインデックス」2026年10月26日時点)。供給制約が続けば、上昇基調が維持される可能性がある。

 日本橋は古くからオフィス・商業地として発展してきたため、まとまった住宅用地の確保が難しく、大規模マンションの新規供給は容易ではない。今後も住宅供給が限られる一方で、都心の住宅需要が堅調に推移すれば、既存の中古マンションの希少性が高まり、価格を下支えする要因となる可能性がある。

 さらに、再開発によって住宅地としての評価が大きく変わることも注目したい。日本橋は東京駅に近く交通利便性が高い一方、首都高の高架が日本橋川の景観や水辺の開放感を損なってきた。

 首都高地下化によってこの弱点が解消され、親水空間や遊歩道などが整備されれば、住環境の魅力が向上する。供給が限られるなかで住宅地としての評価が高まれば、中古マンション価格は押し上げられるだろう。

 ただし、日本橋エリアの中古マンション価格はすでに高水準にあり、住宅ローン金利や景気、不動産市況の影響も受ける。そのため、過去の都心再開発事例で見られた約90%や約200%という価格上昇率を、そのまま日本橋に当てはめることはできない。

 それでも、再開発の目処がつく10年後に平均坪単価が仮に1,000万円になったとしても、現在からの上昇率は約33%にとどまる。坪1,100万円なら約47%、坪1,200万円なら60%の上昇となる。

 70㎡換算価格でみると、坪1,100万円では約2億3,300万円、坪1,200万円なら約2億5,400万円となる。近隣エリアの参考値として有楽町駅の場合、ダイヤモンド不動産研究所のAI予測では、2034年時点の坪単価予測は10,979,990円(約1,100万円)となっている。

 東京駅至近という立地の希少性や、首都高地下化による住環境の改善、限られた住宅供給などを考慮すれば、日本橋エリアの中古マンション価格が10年後に坪1,100万~1,200万円程度まで上昇することも、十分に考えられるシナリオのひとつだ。

日本橋エリアのマンション購入で注意したい点

 ただし、再開発への期待だけでマンションを購入するのは注意が必要だ。日本橋エリアの再開発事業は地区ごとに完成時期が異なる。また、首都高速道路日本橋区間地下化事業では2040年度の高架撤去完了を目指している。期間中は工事による騒音や振動、交通規制などが発生する可能性があり、再開発に近い物件ほど影響を受けることが考えられる。

 さらに、住宅ローン金利の上昇や景気後退、不動産市況の変化によっては、再開発が進んでもマンション価格が想定通り上昇しない可能性もある。

 当然のことながら、購入時には「再開発エリアだから値上がりする」と考えるのではなく、駅からの距離や築年数、管理状態、眺望など、物件そのものの資産性を見極めることが重要だ。

まとめ

歴史を感じさせる日本橋三越本店建物前
歴史を感じさせる日本橋三越本店建物前(撮影:筆者)

 日本橋は、明治中期に建てられた日本銀行本店本館、昭和初期竣工の三井本館、大正期に建てられ昭和初期に増改築された日本橋三越本店本館など、重要文化財に指定された歴史的建造物が残る街だ。観光客の数も銀座などと比べるとさほど多くはなく、人の動きも落ち着いている。

 日本橋川沿いの5地区の再開発と首都高の地下化が進めば、歴史ある街並みと新しい都市機能、水辺の景観が共存するエリアへ変化することが期待される。街の全体像が見えるのは10年以上かかるが期待値は高く、今後マンション価格は周辺エリアを上回る上昇が予想される。

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