東京都心で行われている大規模な再開発とは一線を画す下町エリアでの再開発が進んでいる。都心への交通利便性の高い下町での再開発を「穴場エリア」として、紹介する。今回は「葛飾区の京成立石・青砥エリア」。物件の“先物買い”を検討するエリアとしても注目したい。(フリー記者・後藤利恵子)
目次
京成立石駅周辺が再開発で大きく変わる
再開発が進んでいるのは、京成立石駅周辺を中心として、「立石駅北口地区第一種市街地再開発事業」「立石駅南口東地区第一種市街地再開発事業」「立石駅南口西地区第一種市街地再開発事業」と、3本の計画が現在進行中である。

この開発は、老朽化した建物の建て替えや道路整備であるため、「吞んべ横丁」や「立石仲見世商店街」に代表される昭和の風景を残す商店街が次々と閉鎖となる。
一方で、防災力が強化され地域住民の利便性は大きく向上する。老朽化した店舗や低層住宅の多い下町というイメージは激変し、将来的な不動産価値が大きく上昇することも期待できる。

京成立石駅は都心へのアクセスが良好
京成立石駅は京成本線と京成押上線が乗り入れしており、かつ都心へのアクセスも良い。都内の主要な駅への所要時間は以下の通り。
・京成上野駅 約20分 京成青砥駅で京成本線に乗り換え
・日本橋駅 約25分 京成押上駅で都営浅草線に乗り入れ
現在、京成押上線では、四ツ木駅から青砥駅間の連続立体交差事業が進んでいる。この事業が完成すると、鉄道の高架化が実現。区間内11箇所の踏切がなくなり、交通渋滞が解消される。
また、線路で分断されていたまちが一体化されるという周辺地区の街づくりの大きな進展につながっていく。

京成立石駅北口エリアに、タワーマンションが建設
「立石駅北口地区第一種市街地再開発事業」の主な内容は以下の通りだ。
・大型複合施設の開発
・葛飾区役所の新庁舎建設
「立石駅北口地区第一種市街地再開発事業」の中心となるのが、2つの大型施設の建設である。
北口エリアの西側には、36階建て710戸の住宅を含む高層タワーが建設される。東側の建物は13階建て。2028年度には葛飾区役所が移転する計画だ。

古い木造建築の多い北口周辺地区では、地域の防災対応力が大きく向上することが期待されている。

京成立石駅の南側でも北口との一体開発が進行中
立石駅南口側では「立石駅南口東地区第一種市街地再開発事業」「立石駅南口西地区第一種市街地再開発事業」が進行中である。今回の開発により、街のにぎわいを創出し、かつ、防災性の強化を図ることを目的としている。
また、後述する京成押上線を高架化する連続立体交差事業と連携し、安全で安心な街づくりを目指している。
一方、南口でも北口エリア同様、店舗や住宅の再編にともない大型施設が誕生する。完成予定は2030年で、32階建て全440戸の住宅を有する複合施設だ。その隣には3階建ての店舗などが入る施設も建設される。

京成立石駅周辺の中古マンション価格相場は?
京成立石駅周辺の不動産価格はまだまだ控えめである。ある程度の築年数は経っているものの、3,000万円台後半から4,000万円台の中古マンションが多く見られる。また、駅徒歩5分から6分の場所に築浅の中古マンションもある。
主な中古マンションの価格相場(売り出し価格)を見てみよう。
ダイアパレス立石
築38年、13階建て、全196戸
交通:京成押上線 京成立石駅 徒歩15分
間取り:3LDK/66.61㎡(11階)
参考価格:4,280万円(坪単価:212万円)
(データはホームズの2025年6月6日時点)
日神パレステージお花茶屋
築18年、9階建て、全24戸
交通:京成押上線 京成立石駅 徒歩11分/京成本線 青砥駅 徒歩17分/京成本線 お花茶屋駅 徒歩8分
間取り:2LDK/55.88㎡(4階)
参考価格:3,799万円(坪単価:224万円)
(データはホームズの2025年6月6日時点)
スプレスター立石ステーションフロント
築5年、12階建て、全58戸
交通:京成押上線 京成立石駅 徒歩6分/京成本線 青砥駅 徒歩13分
間取り:1K/18.68㎡(8階)
参考価格:2,430万円(坪単価:430万円)
(データはホームズの2025年6月6日時点)
ただし、再開発に伴う供給予定の駅前分譲マンションの影響もあり、周辺中古相場は上昇傾向にある。京成立石駅の中古マンション売却価格相場は、191.1万円/坪、4,047万円(70m²換算)。前年比+5.5%となっている。
(データ:マンションレビュー 2025年5月時点)
今後、特に注目したい京成立石駅周辺の中古物件のポイントは以下の3つだ。
●京成青砥駅との中間地点など、利便性のよい静かな住宅街
●総戸数50〜100戸程度の中規模マンション
管理状態が良好で立地に優れた中古マンションであれば、将来的な値上がりや貸し出しニーズも見込めるだろう。
|
京成青砥駅周辺にも再開発の動き
京成立石の隣駅、京成青砥駅周辺でも再開発の話が持ち上がっている。ただ、京成青砥駅周辺では、かつて再開発計画が進められていたが、地権者間の合意形成や資金調達の問題から、計画が頓挫している。近年の葛飾区内各地域で再開発が活発化し、今後の再開発熱は高まるものと予想される。
また、青砥駅は京成本線と京成押上線の交差駅となることから、日本橋など都心の主要エリアにも直通でアクセス可能だ。成田空港・羽田空港へも乗り換えなしという鉄道利便性が大きな魅力となる。
京成青砥駅周辺は、区立小・中学校が徒歩圏に点在し、保育園の整備も進んでいる。さらに、葛飾区は子育て支援制度が比較的充実しており、医療費助成や学童保育も利用しやすい環境のため、ファミリー層の人気も高い。
京成青砥駅周辺の中古マンション価格相場は?
中古価格帯の面では京成立石駅周辺と同様、都心部と比べて割安感がある。駅徒歩10分圏の中古マンションで、ファミリー物件が4,000万円台の価格帯で手に入る。
物件の所在地によるが、京成青砥駅、京成立石駅ともに利用可能で、京成青砥駅から徒歩10分前後、京成立石駅から徒歩15分前後のエリアは両駅の再開発の利点を享受できる可能性がある。
ライオンズ青砥リバーフロントオアシス
築10年、8階建、全67戸
交通:京成押上線 青砥駅 徒歩11分/京成立石駅 徒歩14分
間取り:1 SLDK/56.48㎡(7階)
参考価格:4,280万円(坪単価:250万円)
(データはホームズの2025年6月6日時点)
アンビシャス青砥
築10年、15階建、全47戸
交通:京成押上線 青砥駅 徒歩10分/京成立石駅 徒歩24分
間取り:3LDK/75.87㎡(10階)
参考価格:4,780万円(坪単価:208万円)
(データはホームズの2025年6月6日時点)
京成青砥駅周辺の中古マンション売却価格相場は、176.9万円/坪、3,746万円(70m²換算)。2025年05月時点で前年比-0.76%となっている。
京成立石駅周辺が前年比+5.5%となっているのに対し、横ばいからやや下げているのは、再開発計画の進捗状況の違いと言えるのかもしれない。
京成立石・青砥エリアで中古マンションを探しているのなら、現時点では青砥駅周辺を狙うのもいいだろう。
|
葛飾区立石・青砥は不動産価格の上昇が期待できるエリア
葛飾区の立石や青砥は知名度こそ高くないものの、再開発事業と下町文化が共存するめずらしい街である。高層タワーの建つ駅前の大規模再開発で、5年~6年後に街は激変しているだろう。
したがって、今後、不動産価格の上昇も期待できるエリアだ。
将来的な不動産価値上昇の可能性に加え、防災力の向上、住みやすさ、交通利便性から見ても、注目すべき都内の穴場エリアになることは間違いない。
葛飾区の立石、青砥を物件を選ぶ際のエリア候補にぜひ加えてみてはいかがだろうか。
|
【関連記事】>>東京都葛飾区の中古マンション価格推移! 今後の相場は高騰する?
注目記事>>新築・中古マンション市場動向は? 注目物件や在庫状況など最新市況を不動産アナリストが解説
◆新築マンション人気ランキング |