不動産を購入する際、住宅ローンの借入額がいくらなら安心して返済できるのか? 今回は、頭金を準備したタイミングでマンション購入を検討しはじめた、年収600万円の3人家族。資金シミュレーションを作成したところ、3500万円がギリギリという試算結果が出た。それ以上の物件を買うとなると、妻のパート収入等も必要になりそうだ。(ファイナンシャル・プランナー 菱田雅生)
年収600万円の3人家族が安心して買える家はいくら?
シミュレーションでは、給料などの収入と、住宅ローン返済などの出費を推計して、毎年の「年間収支」と「貯蓄残高」を計算した。これで、住宅ローンを安心して支払いできるのか、老後にいくらのお金が貯まるのか、などをチェックする。細かい前提条件は下記を見てほしい。
今回は、40代の村田夫婦(仮名)から相談がきたと想定して試算する。夫の年収は600万円で、妻は専業主婦。夫婦の間には10歳の子どもが1人おり、これから進学費用を含めた教育費がかかってくる年齢だ。家を買うために頭金を貯めており、ある程度貯蓄ができたところで、購入を検討している。
【家族構成】・夫42歳/年収600万円(50歳までは年2.0%増加、50歳以降は増減なし、61歳から半減)
・妻40歳、専業主婦
・子供10歳
【基本生活費】150万円(年1.0%で増加)
【住居費】150万(購入前)
【教育費】中学までが公立、高校以後は私立(大学は文系)で試算
【保険料】24万円
【その他出費】40万円(年1.0%で増加)
【貯蓄残高】1000万円(期待運用利回り年0.5%)
【住宅ローンの詳細】3500万円(諸経費+140万円)のマンションを頭金800万円とローン2840万円(全期間固定金利1.5%、20年返済)で翌年購入。毎月返済額13.7万円。住宅ローン減税を考慮(消費税増税なしと仮定)
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物件価格3500万円までが上限
それ以上だと子供の教育費で貯蓄が底をつく可能性も
さまざまな物件価格でシミュレーションを作ってみたが、ギリギリのラインが物件価格3500万円程度。そこまでであれば、将来的に家計面で大きな問題が発生する可能性は低いだろう。ただし、村田さん夫婦は世帯年収が600万円と言っても、これまで1年に82万円くらい貯蓄してきたという節約家であり、頭金は800万円を入れている。下のグラフは、3500万円の物件を買った場合の、「年間収支」と「貯蓄残高」の推移だ。
住宅ローンは20年返済と比較的、短期間で組んでいるため、夫が63歳時には返済が終了する。現在の家賃は月12.5万円で、マンション購入後の住宅ローンの支払額は13.7万円だ。夫が60歳時の貯蓄残高は1200万円台にしかならない。60歳以降も働き続けることは可能だろうが、61歳以降は年収が減少する可能性が高く、63歳時にようやくローンが終わり、その後の短い期間で十分な貯蓄を準備するのが厳しいとすると、やはり3500万円の物件はギリギリのラインだと考えるべきだろう。
今回は退職金をゼロ円と仮定しているが、子どもの教育費が増大する可能性もあるだけに、退職金を過度にあてにしないようにしたい。
もっと老後生活にゆとりを持たせたいと考えるなら、物件価格を3000万円程度まで引き下げると、60歳時の貯蓄残高も1300万円を超える。
さらにゆとりを持たせるなら、2500万円あたりまで物件価格を引き下げるのもひとつの方法だ。毎月の返済額は8.7万円となる。
ちなみに、物件価格を4000万円まで引き上げると、毎月の返済額は16.2万円に膨らみ、子どもの教育費がかさむ時期に貯蓄が底をつく可能性が高くなる。3500万円でも老後にゆとりが持てるかどうか微妙な水準なので、物件価格の引き上げは避けるべきだろう。
妻が働くかどうかで資金計画は大きく変わる
今回の試算では、妻は専業主婦で一切働かないという前提で計算している。これが、毎月5万円、年間60万円のパート収入が期待できるとすると、資金計画は大きく変わってくる。当然のことではあるが、年間60万円だと、10年間で600万円、20年間で1200万円もの収入増となる。
妻がパートをしていて、購入する物件価格3500万円でシミュレーションしてみると、60歳時点の貯蓄残高は2400万円近くになり、老後生活への安心度合いはかなり違ってくると言える。
あらためて、将来どのような老後生活を送りたいのか、今後の子どもの教育にどの程度お金をかけたいのか、パートなどで働きたいという思いはあるか、などといったことを冷静に話し合った上で購入する物件価格を検討していくことが重要だろう。
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今回作成した「住宅ローン利用者口コミ調査」の調査概要は以下のとおり。
【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
有効回答数:822人
調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とするアンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。
【アンケートの設問】
Q1.金利の満足度は?
Q2.諸費用・手数料等は妥当でしたか?
Q3.団体信用生命保険には満足しましたか?
Q4.手続き・サポートには満足しましたか?
Q5.審査について、満足していますか?
Q6.借り入れ後の対応に満足しましたか?
Q7.他の人にも現在の銀行を勧めたいと思いますか?
【回答の配点】
・各設問は5段階で回答してもらい、Q1なら以下のように配点。平均値を求めた。
満足している(5点)
どちらかといえば満足している(4点)
どちらともいえない(3点)
どちらかといえば不満である(2点)
不満である(1点)
・総合評価については、各項目の平均値を全て合算。読者が重視する「Q1金利の満足度」については点数を3倍、「Q3団信の満足度」の点数を2倍として、点数の合計を50点満点とし、10で割ることで5点満点の数値を求めた。
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淡河範明さん
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