勤続年数、年収など、住宅ローンの審査基準について、主要17銀行を比較した。会社員・公務員などの給与所得者の審査基準や、借入可能額をシミュレーションしてみた。ぜひ、「審査が甘い、通りやすい銀行」を見つけてみよう。
住宅ローン審査で重視するのが、年収、勤続年数
住宅ローンの審査は通常、以下の2段階で行われる。
- ・仮審査(事前審査)
- ・本審査
その上で、借入の可否を含めた、次の項目を決定する。信用力がなければ高い金利が適用されることもある。
- ・借り入れの可否
- ・借入可能額
- ・金利(信用力がないと高くなることも)
- ・保証料の金額(信用力がないと高くなることも)
この審査の際に重要なのが「審査基準」だ。年収、勤続年数、職業、勤務している会社の規模、業績、担保となる不動産の価値、家族構成など100項目以上をチェックする。各銀行は審査基準については一部を公表しているものの、細かい審査基準や手順は公開しておらずブラックボックスになっている。しかし審査基準の一部を公開しているので、それを参考に審査基準を確認していこう。
特に「前年度年収」「勤続年数」は、銀行にとって住宅ローンを貸す人の返済能力を測る重要な指標となる。
各銀行が融資の際に重要視する項目を見ると、「勤続年数」を95.6%の銀行が重要視しており、「年収」は95.7%の銀行が重視、「雇用形態」は76.6%の銀行が重視しているなど、雇用や収入に関する項目が上位に位置している(出典:国土交通省調べ「民間住宅ローンの実態に関する調査」)。
住宅ローンの返済に問題が起きないよう、こうした指標は高めの数値を求めるのが従来の銀行の考え方だった。
それでは、会社員・公務員などの給与所得者(一部銀行は正社員に加えて契約社員もOK)、個人事業主に分けて、各銀行の年収、勤続年数の審査基準を見ていこう。
なお、「前年度年収」は、「手取り額」ではないので注意しておこう。総支給額、額面金額などと呼ぶこともある。税金などの各種控除が引かれる前の金額で、これを基に住宅ローンの審査が行われる。
給与所得者の年収、勤続年数の条件は?
(1)ネット銀行 年収は厳しく見る反面、勤続年数は不問
新規参入してきたネット銀行の住宅ローン審査基準(会社員・給与所得者)を見ていこう。
従来の審査基準にとらわれず、「勤続年数」や「(前年度)年収」を下げて、審査を甘めにしている銀行も存在する。各行の商品説明書からこうした審査基準をまとめたのが下表だ。
銀行名 | 給与所得者 | |
---|---|---|
勤続年数 | (前年度)年収 | |
― | 200万円以上 | |
― | 200万円以上 | |
― | 400万円以上 | |
― | 400万円以上 | |
6カ月以上 | 100万円以上 | |
2年以上 (契約社員もOK) |
300万円以上 | |
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― | ― | |
安定かつ継続した収入がある人 | ||
※「-」は約款に記載されていない。 |
ネット銀行は、「勤続年数」は、基本的に問わないか、1~2年以上からと短い銀行が多い。つまり、ネット銀行は勤続年数はあまり問わないものの、「(前年度)年収」による単純な返済能力を中心にみているといえる。
その中で、イオン銀行の審査基準は、「(前年度)年収」が「100万円以上」と低いのが特徴だ。一方、PayPay銀行は、転職したばかりのサラリーマンでも申し込みは可能だ。主要ネット銀行の審査基準を見ると、勤続年数が最低でも2年、3年なければ申し込みすらできないという銀行があるのに比べると、間口は広い。
なおこの基準は、申込時に必要な「最低限の基準」だ。クリアできているからといって必ず満額で借りられるわけではないので注意したい。
(2)大手銀行 勤続年数から、安定した雇用状態を確認
では、大手銀行の住宅ローン審査基準(会社員など給与所得者)がどうなっているのか見てみよう。
銀行名 | 給与所得者 | |
---|---|---|
勤続年数 | (前年度)年収 | |
安定した収入がある人 | ||
― | ― | |
― | ― | |
1年以上 | 100万円以上 | |
1年以上 | ― | |
安定した年収が見込まれる人 | ||
1年以上 | 150万円以上 | |
(JAバンク埼玉)詳細を見る
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1年以上 | 150万円以上 |
※「-」は約款に記載されていないため要問合せ。 |
大手銀行の住宅ローンは、「勤続年数」を基準として入れている銀行が多い。つまり、大手銀行は、年収よりも「勤続年数」などによる安定した雇用状態を中心に見ているのだ。転勤したばかりといった人にはハードルが高いので、転職前に借りておいてもいいだろう。
とはいえ、りそな銀行は、大手銀行では最も審査基準の緩和に積極的な姿勢を見せている。勤続年数が「1年以上」、(前年度)年収が「100万円以上」から審査対象になるため、審査基準は甘め。
「雇用形態も年収も厳しい状況にあるが、大手銀行で借りたい」という人にはおすすめだ。
独立行政法人の住宅金融支援機構が提供している「フラット35」も審査が厳しくない住宅ローンとして有名だ。「(前年度)年収」の基準はなく、基準は返済比率(年間返済額÷年収)だけなので、年収はいくらでも借りられる。
年収400万円未満なら返済比率30%以下、年収400万円以上なら返済比率35%以下に収まっていれば大丈夫だ。
たとえば、前年の年収が200万円なら、年間返済額60万円(毎月返済額5万円)以下であれば借りられる可能性が高い。また、「勤続年数」の縛りもないので、転職してすぐでも申し込める。
その代わり、全期間固定の金利しかないので、金利は少し高め。さらに、頭金が10%以上ない場合は、高い金利が適用される。メリットばかりではないのだ。
また、地方においては、地方銀行、信用金庫、労働金庫(ろうきん)などのシェアが高い。こうした金融機関は、審査能力がそれほど高くなく、比較的審査が甘めだ。ただし、ネット銀行などに比べると金利が高いというデメリットもある。
個人事業主やフリーランスは厳し目
個人事業主(フリーランス、自営業)などの住宅ローンの審査基準を見ていこう。個人事業主はその収入の不安定さから審査基準が厳し目に設定されていることが多い。
銀行名 | 個人事業主 | |
---|---|---|
事業年数 | (前年度)年収 | |
3年 | 100万円以上 | |
― | 200万円以上 | |
2年以上 | 300万円以上 (2年平均) | |
― | 400万円以上 | |
― | 400万円以上 | |
― | ― | |
安定かつ継続した収入がある人 | ||
原則、利用不可 | ||
安定した収入がある人 | ||
― | ― | |
― | ― | |
3年以上 | 100万円以上 | |
― | ― | |
安定した年収が見込まれる人 | ||
【ARUHIスーパーフラット5、6、6.5、7、7.5、8、借換、通常のフラット35】 ・年収400万円未満は総返済負担率30%以下 ・年収400万円以上は総返済負担率35%以下 【ARUHIスーパーフラット8,5、9】 ・総返済負担率20%以下 |
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3年以上 | 150万円以上 | |
(JAバンク埼玉)詳細を見る
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3年以上 | 200万円以上 |
※「-」は約款に記載されていないため要問合せ。 |
個人事業主(フリーランス、自営業)の場合、多くの銀行は実際には3年以上の事業年数を求めることが多く、3期分の決算書の提出を求められる。銀行によっては、3期のうち、1期でも赤字決算だと融資が難しいというケースもある。明確な審査基準を打ち出していない銀行も多く、ともかく銀行に相談してみるのがいい。
「士業など資格を活かした独立」
「専門的な分野でフリーランスとして活動を始める」
というケースでは、個人のネームバリューや実績があり、一定数の顧客が見込めるといった事情を考慮してくれることもあるが、期待は禁物だ。
なお、業界でトップクラスの低金利を誇るPayPay銀行は、個人事業主だと利用できない。
【関連記事はこちら】>>自営業・個人事業主でも住宅ローンを借りられる銀行は?14銀行の年収・事業年数(審査基準)を比較
「年収」「勤続年数」はあくまで目安
大手銀行の住宅ローンなら審査が甘い!?
銀行にとって重要なのは、あくまで「融資した住宅ローンを長期にわたって返済できる人か否か」だ。そのため、年収、勤続年数といった審査基準は目安に過ぎず、数字を満たしているからといって必ず融資が受けられるというわけではない。「ホームページに掲載されている審査基準を満たしていたのに、審査に落とされた」というケースは結構あるのだ。
ホームローンドクター代表・淡河範明氏はこう語る。
「金融機関のホームページの商品概要内で公開している審査基準はごく一部だけだということはあまり知られていません。
ほかにも審査基準が多数あり、審査の可否はそれらを加味して総合的に決められます。落とされた原因は教えてくれないので、『条件を満たしているのに何で?』と困ってしまう人は多いはずです」
逆に、審査基準を満たしていなくても、融資を受けられることがある。
大手銀行や地方銀行、信用金庫などは、ネットでの申込みだけではなく、むしろ対面による契約が中心であるため、事情を話せば融通が利く可能性がある。
たとえば、転職によって一時的に審査条件がクリアできていなくても、転職先の財務内容に問題がなく、安定した収入が見込めると判断されれば住宅ローンの融資を受けられる場合がある。
金利を少し上乗せといった譲歩案を出してくれるケースもある。審査が甘いというわけではないが、借りられる可能性は高い。
一方、ネット銀行は対面ではないため、書類審査のみの場合も多く、融通があまり利かないので注意が必要だ。
審査に落とされた理由がどうしても思い当たらなかったり、確実に融資を受けたい場合は、銀行に聞いてもなかなか教えてくれないので、住宅ローンに詳しいファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するのもいいだろう。
「審査をクリアできるか不安だ」というのなら、最初から複数の銀行に住宅ローンを申し込んでおき、審査が通ったもののなかから最良の住宅ローンを選ぶという方法もおすすめだ。
ただし、あまりにも多くの銀行に同時に申し込むと不自然なので、3銀行くらいに留めておくのがベターだろう。
住宅ローンの借入可能額はいくら?
最後に、実際の住宅ローンの借入可能額の目安はいくらぐらいなのか、年収からシミュレーションしておこう。
全期間固定金利の「フラット35」の場合、審査上の返済負担率(年収に占める返済額比率)を公表しており、年収によって毎月の返済額の上限が決まる。以下が返済負担率だ。
- ・年収400万円未満:返済負担率30%以下
- ・年収400万円以上:返済負担率35%未満
以上の返済負担率から「毎月の返済額の上限」が決まったら、借入期間、金利を設定すれば、借入可能額が求められる(計算方法は下記関連記事参照)。
フラット35の場合、他の借り入れがなく特段の問題がなければ審査をクリアできるので、下記が借入可能額(上限)となる。
◆フラット35の住宅ローンの借入可能額(年収別) | ||
年収 | 借入可能額(目安) | 月々の返済額 |
200万円 | 1,543万円 | 5.0万円 |
300万円 | 2,314万円 | 7.5万円 |
400万円 | 3,599万円 | 11.7万円 |
500万円 | 4,499万円 | 14.6万円 |
600万円 | 5,399万円 | 17.5万円 |
700万円 | 6,299万円 | 20.4万円 |
800万円 | 7,199万円 | 23.3万円 |
900万円 | 8,000万円 | 25.9万円 |
1,000万円 | 8,000万円 | 25.9万円 |
※新規借入、35年固定金利は1.86%(頭金10%以上)、借入期間35年としてシミュレーション。ボーナスなし、別途手数料等が必要。フラット35の借入限度額は8,000万円。住宅金融支援機構「年収から借入可能額を計算」を参照。2024年12月調査 |
年収が多く、借入期間が長いほど、借入可能額が多いことがわかるだろう。
また民間の銀行の場合、フラット35寄りは審査が厳しいので、これよりは借入可能額が少なくなる傾向がある。
下記記事のシミュレーションでは、民間銀行のケースも計算しているので参考にしてほしい。
【関連記事】>>「借入可能額シミュレーション」は、年収、借入期間だけを入力すれば、わずか10秒で、「借入可能額(借入上限、目安)」を計算
銀行ごとの「審査基準」を比較 |
132銀行を比較◆住宅ローン実質金利ランキング[新規借入] |
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淡河範明さん
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