不動産を購入する際、住宅ローンの借入額がいくらなら安心して返済できるのか? 2回目となる今回は、年収400万円・単身者の場合の資金繰りをシミュレーションする。正社員として働いている女性が単身者用のマンションを購入する場合、2500万円までは安全圏という試算結果が出た。「家賃よりも住宅ローンの支払いが少ないから購入する」という人は多いが、実は隠れた出費があるので、気を付けたいところだ。(ファイナンシャル・プランナー 菱田雅生)
年収400万円の正社員OLが安心して借りられる住宅ローンはいくら?
今回は、35歳の千香さん(仮名)から相談があったという想定で試算した。正社員として働いているが、資産形成のためにも現在住んでいる賃貸をやめて、単身用の住宅を購入しようと考えている。今の仕事は気に入っているので、このまま定年まで働くことを想定して、いくらの不動産なら無理なく購入できるのか、資金シミュレーションを作成して調べてみた。
なるべく広くて、いい立地の家を購入したいけど、住宅ローンの支払いで困ってしまったら意味がない。そこで、さまざまな家族構成、収入、資産状況で、資金繰りをシミュレーションしてみた。
【家族構成】 女性、35歳独身/年収400万円(40歳までは年1.5%増加、50歳までは年1.0%増加、50歳以降は増減なし、61歳以降は年収半減。参考は賃金国造基本統計調査)
【基本生活費】 120万円(年1.0%で増加)
【住居費】 108万円(賃貸マンション暮らしで、月9万円)
【保険料】 24万円
【その他出費】 40万円(年1.0%で増加)
【貯蓄残高】 600万円(期待運用利回り年0.5%)
【住宅ローンの詳細】 翌年に購入。諸費用100万円、頭金500万円、借入金額2100万円。金利1.5%、借入期間25年。住宅ローン減税を考慮(消費増税はナシと仮定)
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2500万円のマンション購入であれば、
老後の貯蓄残高は549万円に
様々な物件価格で資金シミュレーションを作ってみたが、千香さんの場合は、2500万円程度のマンションであれば、将来的に家計面で大きな問題が発生する可能性は低そうだ。下のグラフは、「年間収支」と「貯蓄残高」の推移だ。
住宅ローンは35歳から25年返済で組んでいるため、60歳には返済が終了する。住宅ローンの支払額は月8.4万円。このくらいなら順調に貯金も増やせて、30年後の貯蓄残高は549万円になっている。ただし、今回のシミュレーションは退職金を考慮していないので、退職金があればもう少し貯蓄残高が増える計算になる。
なお、気をつけたい点がある。千香さんは年収400万円としているものの、結構な節約家であり、毎年33万円くらい貯蓄する生活をしていた。貯金は600万円あり、住宅ローンの頭金として500万円を入れる予定だ。もし、千香さんのケースを参考にするのであれば、かなりの節約家であることを割り引いた方がいいかもしれない。
マンション価格が3000万円だと、
支払ができず、借金を背負うことに
では、もっと高額なマンションを購入すると、どうなるのか。
仮に、3000万円のマンションを購入したと試算すると、毎月の返済額は10.5万円となり、30年後の貯蓄残高はマイナス146万円になってしまう。マンション購入前の貯蓄残高は600万円だったから、貯蓄を取り崩して借金をしていることになり、健全とはいえない。
購入すると、住宅ローン以外にも
固定資産税や管理費などの支払いが発生する!
身の丈に合わない高額なマンションを購入してしまうケースは結構、発生している。それは、マンションディペロッパーが、「家賃と同等の住宅ローンの返済額で家を購入できます」と宣伝していることにも原因があるようだ。
千香さんが現在住んでいる、賃貸マンションの家賃は月9万円。一方、2500万円のマンションを購入した際の住宅ローンの支払額は月8.4万円。一見、支出が減ったように見える。家賃とあまり変わらない額の返済でマンションを手に入れられるのなら、将来の資産として家を買ってもいいと思いがちだ。
だが実際は、マンション購入に伴い、固定資産税が毎月1万円程度、マンション管理組合への管理費と修繕積立金が毎月1.5万円程度、合計で月2.5万円程度の新たな出費が発生する。結局、住居費は合計で毎月11万円程度かかることになり、毎月の支払額は約2万円増えることになる。
さらに、管理費と修繕積立金は、マンションが老朽化すればするほど高騰して行くだろう。住宅ローンを変動金利型や固定期間選択型で借りた場合も、住宅ローンの返済が増える可能性がある。今回はシミュレーションに入れなかったが、こうした隠れたコストを忘れてはいけない。
住宅ローンを借りる上で最も重要なのは、安心して返済できるのかどうかという点。特にマンションを購入した後の住居費は、「住宅ローンの返済+固定資産税+管理費等」となることに気をつけよう。もし、マンション購入後の住居費が従来の住居費を超えてしまい、さらに今まで貯金もあまりできていなかったという人は、どこまで出費を削減できるか考えておくのがいい。例えば、千香さんは毎年、生命保険に24万円支払っていたので、これをカットするかスリム化するなどの対策が考えられるだろう。
また、今回はずっと独身で働き続けるという前提でシミュレーションしているが、結婚や出産など、ライフプランが大きく変わると、当然ながら家計の状況も変わる。将来的にその物件を売却したり、賃貸に出したりする可能性があるなら、物件選びの段階で、値下がりがしにくい、立地条件のいい売却しやすい物件にするなどの検討も必要だ。
もし、売却する場合は、売却したお金で住宅ローン残高を一括で返済するのが通常だが、安くしか売れず、足りない分を貯蓄で穴埋めできない場合は、売るに売れないという厳しい状況になることもある。そうならないよう、あらかじめ頭金を多く入れておくか、余裕のあるうちに繰り上げ返済を実行して、残高を減らすことも検討しよう。
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今回作成した「住宅ローン利用者口コミ調査」の調査概要は以下のとおり。
【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
有効回答数:822人
調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とするアンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。
【アンケートの設問】
Q1.金利の満足度は?
Q2.諸費用・手数料等は妥当でしたか?
Q3.団体信用生命保険には満足しましたか?
Q4.手続き・サポートには満足しましたか?
Q5.審査について、満足していますか?
Q6.借り入れ後の対応に満足しましたか?
Q7.他の人にも現在の銀行を勧めたいと思いますか?
【回答の配点】
・各設問は5段階で回答してもらい、Q1なら以下のように配点。平均値を求めた。
満足している(5点)
どちらかといえば満足している(4点)
どちらともいえない(3点)
どちらかといえば不満である(2点)
不満である(1点)
・総合評価については、各項目の平均値を全て合算。読者が重視する「Q1金利の満足度」については点数を3倍、「Q3団信の満足度」の点数を2倍として、点数の合計を50点満点とし、10で割ることで5点満点の数値を求めた。
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プロの評判・口コミ
淡河範明さん
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