不動産を購入する際、住宅ローンの借入額がいくらなら安心して返済できるのか? 今回は、世帯年収が700万円という、共働き夫婦ケースを試算した結果、5000万円までが限界で、ライフプランの変化があった場合のことを考えると4000万円以下が無難だという試算結果が出た。(ファイナンシャル・プランナー 菱田雅生)
世帯年収700万円の共働き夫婦が安心して借りられる住宅ローンはいくら?
今回は、共働き夫婦の高野さん(仮名)から相談があったと想定して試算してみた。結婚して数年経ち、通勤に便利で、賃貸よりも設備が充実している分譲マンションの購入を検討している。お互いに仕事が忙しいため、子どもを作る予定はなく、5年に1度の海外旅行を楽しみにしているそうだ。
なるべく広くて、いい立地の家を購入したいけど、住宅ローンの支払いで困ってしまったら意味がない。そこで、さまざまな家族構成、収入、資産状況で、資金繰りをシミュレーションしてみた。
シミュレーションでは、住宅ローン返済を含めた出費と、給料などの収入を細かく設定して、毎年の「年間収支」と「貯蓄残高」を計算した。これで、住宅ローンを安心して支払いできるのか、老後にいくらのお金が貯まるのか、などをチェックする。細かい前提条件は下記を見てほしい。
【家族構成】 ・夫32歳/年収400万円(40歳までは年2.0%増加、50歳までは年2.0%増加、50歳以降は増減なし、61歳からは年収半減) ・妻31歳/年収300万円(手取り240万円、ずっと増減なし)
【基本生活費】 240万円(年1.0%で増加)
【住居費】 144万円(購入前)
【保険料】 36万円
【その他出費】 ・その他支出60万円(年1.0%で増加)・5年ごとに旅行費用70万円支出予定
【貯蓄残高】 800万円(期待運用利回り年0.5%)
【住宅ローンの詳細】 4000万円(諸経費+160万円)のマンションを頭金600万円とローン3560万円(全期間固定金利1.5%、30年返済)で翌年購入。毎月12.3万円返済。住宅ローン減税を考慮(消費税増税なしと仮定)
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4000万円以下の物件を買えば
2459万円の貯蓄ができ、老後にゆとりができる
さまざまな物件価格でシミュレーションを作ってみたが、共働き夫婦は4000万円以下のマンションを買えば、将来的に家計面で大きな問題が発生する可能性が低いだろう。ただし今回の計算は、世帯年収約700万円に対して、毎年79万円くらいの貯金をしていたという倹約家の夫婦のケースだ。また頭金を600万円程度入れている。それだけの余裕がある夫婦ならば、4000万円程度のマンションを買っても、問題は起こりにくいと思われる。「年間収支」と「貯蓄残高」の推移については、下のグラフの通りだ。
住宅ローンは30年返済で組んだため、夫が62歳時には返済が終了する。それまで家賃は月12万円だったが、住宅ローンの返済は毎月12.3万円と大きく増えたわけではないので、28年後の貯蓄残高は2385万円ほどになる。
それだけ貯蓄があれば老後も安心だと断定できるわけではないが、夫婦それぞれが公的年金、企業年金などを受給できる状態であれば、何とかなる可能性の方が高いだろう。
とはいえ、もっと老後生活にゆとりを持たせたいと考えるなら、物件価格を3000万円程度まで引き下げると、住宅ローンの毎月の返済は8.7万円となり、30年後の貯蓄残高も4000万円に近づくことが予想される。
どのような老後生活を送りたいのかを、可能な限り早くから相談して決めておき、住宅取得計画を慎重に検討することが重要だろう。
ちなみに、物件価格を5000万円まで引き上げると、住宅ローンの毎月の返済は15.9万円に大幅アップし、途中で貯蓄が底をつくことはなさそうだが、30年後の貯蓄残高が1000万円ほどになってしまいそうなので、物件価格の引き上げはしないほうが無難だろう。
6000万円の物件だと、老後の資金はなくなり、借金をすることになる。今回、退職金は考慮していない試算だが、年金の支給開始まではまだ時間があることから、退職金は虎の子の資金として取っておくくらいの心づもりでいるのがいいかもしれない。
ライフプランが変わる可能性にも備えておくべき
マイナス金利の導入によって住宅ローンの金利もかなり下がってきた。それ自体は歓迎できることだが、いくら低金利であったとしても、借入金額を大きくしてしまうと、それだけ将来の家計の負担が大きくなる。
住宅ローン控除などの制度も住宅取得をサポートしてくれるありがたい制度だが、最も重要なのは、安心して返済していくことができるのかという点だ。今回のシミュレーション結果では、物件価格は4000万円以内にしておいたほうが無難だと考えられる。
また、今回はずっと夫婦共働きを続けるという前提でシミュレーションしたが、子供の誕生や共働きの終了など、ライフプランが大きく変わると、当然ながら家計の状況も大きく変わる。
少しでも妻の出産や退職の可能性があるなら、夫の収入のみで購入可能な物件にしておき、余裕がある間に繰り上げ返済を行うなど、ライフプランの大きな変化に対応できるように準備しておくことも重要だろう。
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今回作成した「住宅ローン利用者口コミ調査」の調査概要は以下のとおり。
【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
有効回答数:822人
調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とするアンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。
【アンケートの設問】
Q1.金利の満足度は?
Q2.諸費用・手数料等は妥当でしたか?
Q3.団体信用生命保険には満足しましたか?
Q4.手続き・サポートには満足しましたか?
Q5.審査について、満足していますか?
Q6.借り入れ後の対応に満足しましたか?
Q7.他の人にも現在の銀行を勧めたいと思いますか?
【回答の配点】
・各設問は5段階で回答してもらい、Q1なら以下のように配点。平均値を求めた。
満足している(5点)
どちらかといえば満足している(4点)
どちらともいえない(3点)
どちらかといえば不満である(2点)
不満である(1点)
・総合評価については、各項目の平均値を全て合算。読者が重視する「Q1金利の満足度」については点数を3倍、「Q3団信の満足度」の点数を2倍として、点数の合計を50点満点とし、10で割ることで5点満点の数値を求めた。
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プロの評判・口コミ
淡河範明さん
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