子育て世帯の住宅取得を支援するため、長期固定金利の住宅ローン「フラット35」の金利優遇策が盛り込まれました。これによって民間銀行の固定金利タイプの住宅ローンにも少なからず影響があり、金利引下げ競争が勃発する可能性もありそうです。(住宅ローン・不動産ブロガー 千日太郎)
4月の超長期固定金利タイプは大幅低下
政府が3月31日に公表した少子化対策のたたき台の中で、長期固定金利の代表的な商品である住宅ローン「フラット35」の金利優遇策が盛り込まれました。「どのくらい下がるのか?」「いつからなのか?」は未定ですが、金融情勢にかかわらず、政策的に金利を下げるということですから期待できますね。
その影響をみるため、まずは住宅ローンの超長期固定金利(35年固定金利)の推移を確認しておきましょう。
3月上旬には米シリコンバレーバンクなどの中堅銀行の経営破綻にヨーロッパではクレディスイスの経営危機が続き、世界的な金融不安から長期金利が急低下しました。これを反映して、3月から4月にかけての住宅ローンの超長期固定金利は大幅に低下しています。
子育て支援によるフラット35の金利優遇策の話が出てきたのは3月末ですが、これ自体はいつから実施されるかは未定です。
住宅ローンの固定金利は、長期金利の影響を受けるという建前があります。3月から4月にかけての金利低下は、主として米欧発の金融不安から長期金利が大幅に低下したことを反映したもの、とも考えられるでしょう。
事実、日本の長期金利はそれまで、日銀が長期金利の上限としている0.5%を超える水準で推移していましたが、3月の後半にかけて0.2%台まで下がっていました。
植田日銀新総裁への期待で、日本だけ長期金利が上昇
しかし、4月に入ってからの日本の長期金利は再び上昇し、再び上限の0.5%を試すかのように0.45%を超える水準で推移しています。これに対して米長期金利は右肩下がりに低下しており、全く逆方向に動いています。
国際通貨基金(IMF)が4月11日に公表した最新の世界経済見通しでは、2023年の世界経済成長率は2.8%と前回から0.1ポイント引き下げ、2024年の見通しも0.1ポイント下方修正しています。米中堅銀行の破綻に端を発した金融システムへの不安から、金融面での逆風が大幅に強まる展開になった場合は、2023年の世界の経済成長率が1%程度まで下振れする可能性も示唆しています。
そのため、米国のように長期金利は下がるのが普通なのです。
日本だけが上昇している背景には日銀植田新総裁が金融引き締め(金利引き上げ)政策へ転換するという見込みがあるのだと思います。当の植田総裁は4月10日の就任会見で黒田日銀の金融緩和政策を2%の物価目標達成までは継続すると明言しているのですが、金利は全然下がらないですね。
この後、4月27日には植田日銀初の金融政策決定会合が控えていますが、ここで植田総裁が緩和から引き締めに180度転換する可能性は極めて低いでしょう。植田日銀としては言うべきことは言っています。それで金利が下がっていないということは、他に材料が出てこない限りこのまま0.5%に近い水準で推移する可能性もあります。
長期金利が高止まる中でフラット35はどう動く?
こうした長期金利の動向に対して、フラット35(買取型)は、10年国債の利回り(長期金利)に連動する傾向があります。
下図のように住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家たちは機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動しがちです。
つまり、機構債の表面利率が決まる時点で長期金利が高止まりを続けると、フラット35の金利も高い水準にならざるを得なくなるでしょう。政府の子育て支援策によって、今後フラット35の金利引き下げ方針が決まっていますが、施行される前の段階で実行となった人にさかのぼって金利引き下げを適用する可能性は低いと思います。
では、子育て支援策のスタート前に、長期金利が高くなってしまったタイミングで住宅ローンの実行となった人は運が悪かったと諦めるしかないのでしょうか?
私はまだ方法はあると思います。それは民間の超長期固定金利にも保険をかけておくことです。
民間の超長期固定金利はどう動く?
民間の超長期固定金利も長期金利の影響を受けるという「建前」があります。つまり、フラット35の金利が上がるような長期金利の上昇局面では、民間の超長期固定金利も上がってしまうと考えられています。
しかし、民間の住宅ローンは住宅金融支援機構のフラット35とは違って、マーケットから集めたお金をほとんどそのまま貸すというスキームにはなっていません。住宅ローンは銀行の販売する商品であり、その金利は商品の価格です。つまり各銀行がどんな金利をつけるかは、最終的に各銀行の営業方針によって決めるのです。
銀行の立場になって考えてみましょう。現状では、将来的に子育て世帯向けにフラット35の金利が引き下げになる方針が決まっています。支援の対象となる子育て世帯には所得制限が設けられない方針だといわれています。つまり、民間銀行が喉から手が出るほど欲しい高所得の若い共働き夫婦(優良顧客)がフラット35に流れてしまいそうな状況なのです。
ですから子育て支援が始まる前に、フラット35の金利がたまたま高くなってしまったタイミングというのは、民間銀行にとって自行の超長期固定金利をアピールする最適なタイミングなのです。つまり、フラット35の金利が上がったときこそ、民間銀行は超長期固定金利を下げてでも優良顧客を取りたいというインセンティブが働くわけですね。
現在のところ35年の超長期固定金利に力を入れているのは、冒頭に挙げた中ではりそな銀行、みずほ銀行、三菱UFJ銀行の3つのメガバンクです。これらの銀行が低金利競争をしており、フラット35の金利動向を意識している間はこれらの銀行でも審査を通しておくことがリスクヘッジになると見ています。
まとめ~金利決定方針の異なる住宅ローンでリスクヘッジ
植田新総裁は就任会見で金融緩和の継続を表明していますが、裏読みしてサプライズでの金融引き締めが近いと見る人がかなりいるようですね。そうした植田新総裁による出口戦略(金融引き締め)が強めに意識されているので、長期金利は高止まりとなっています。私としては、国内需要に根ざす2%インフレは「そう簡単な目標ではない」というのが植田氏の本音ではないかと思います。
これから住宅ローンを借りる人にとっては、先の読みにくい環境が続きそうです。なお、当記事は現時点で入手可能な公開情報を参考にして、千日太郎個人の考える今後の予想ですから、その後の状況変化によって予想が変化していくものですし、そもそも私の予想が外れる可能性も大いにあり得ることです。
早い段階で一つの金利タイプ、一つの金融機関に決めてしまい、その後の情報収集を怠っていると、割高な金利で住宅ローンを借りざるを得なくなってしまいます。複数の金利タイプ、金融機関で審査を通しておくのが基本ですが、本記事でお勧めしたように、公的融資と民間というように、金利決定方針が異なる住宅ローンで複数通すのが今の情勢では有効だと思います。
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【調査概要】
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【回答の配点】
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淡河範明さん
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