日銀は5月の金融政策決定会合で政策金利を0.5%のままに据え置きました。これにより住宅ローンの変動金利も据え置きとなりそうです。一方、固定金利は大幅な上昇があるかもしれません。このような状況の中で、住宅ローンの新規借り入れや借り換えを考えている方はどのような判断を行えばよいでしょうか。後悔しないための考え方を解説します。(住宅ローン・不動産ブロガー 千日太郎)
日銀は5月会合で利上げを見送り、住宅ローンへの影響は?

こんにちは、公認会計士で住宅ローン・不動産ブロガーの千日太郎です。
米国関税政策による景気下押しが鮮明になるなか、日銀は5月の金融政策決定会合で政策金利を0.5%に据え置き、追加利上げをいったん見送る姿勢を公式に示しました。
住宅ローンを変動金利で借りている人にとっては朗報です。「今のうちに固定金利へ借り換えるという選択肢もありか」と考え始めている方も多いでしょう。
一方で長期金利はふたたび上昇し始めており、住宅ローンの固定金利は上昇が予想されています。
現在は、これから住宅ローンを組む方にとっては、変動金利か固定金利のどちらにすべきか。また、変動金利で借りていて固定金利への借り換えを検討している方にとっても悩ましい状況です。そこで、後悔しない判断をするための方法を詳しく解説していきます。
変動金利の今後のシナリオ、利上げ再開か利下げか
まずは変動金利に影響する日銀の政策金利について、現状を確認しておきましょう。
4月以降、米トランプ大統領による追加関税の連発から、日本企業は輸出計画を見直し、株価も低下するなか、日銀は5月会合で政策金利 0.5%を据え置きました。しばらくは、様子見を続けざるを得ない、と利上げの一時停止を事実上宣言しています。
利上げ再開シナリオ
今後、円安が進み、輸入物価が再上昇し、加えて春闘賃上げがサービス価格へ波及すれば、物価2.0%超が定着するというシナリオです。
日銀は様子見をしつつも利上げ継続の姿勢を崩していません。来年初にも0.75%へ追加利上げする目があり、市場はその可能性を30%~40%程度織り込んでいると言われています。
最終的に日銀の当初の見込み通りに推移すれば、政策金利の到達水準は最低でも1.0%です。すると、5月時点の水準+0.5%ということになるうえ、この1.0%で止まるとは限らず、さらに上振れする可能性もあります。
利下げシナリオ
関税ショックが深刻化し、外需、企業マインド、エネルギー価格が失速するシナリオです。物価見通しが1.0%台に沈むなら、さすがの日銀も利下げへ政策の軌道修正(▲0.25%)せざるを得なくなります。現時点では可能性は低いと見られていますが、ゼロではありません。
主要銀行は、政策金利の変更をほぼ翌月に新規向けの変動金利へ反映させています。
ただし、みずほ銀行だけは半年ごとの内部判定(4月、10月)がルールになっています。仮に10月会合で利下げが決定した場合、みずほ銀行の判定基準は会合前の9月末の短期プライムレートであるため、3月に引き上げられた+0.25%が10月に適用されます。
他行は下げるのに、みずほ銀行だけ上げる、という逆転現象が起きる可能性があります。みずほ銀行の変動金利を検討している方は、この時間差を計算に入れておきましょう。
【関連記事】>>みずほ銀行の変動金利はなぜ0.15%しか上がらなかったのか? 住宅ローン金利見直しルールのカラクリを解説!
政策金利がどう動くかに注視する
現在の日銀の政策金利は上にも下にも動く踊り場に立っているというのが、金融市場のコンセンサスです。
上に行くなら、今のうちに低めの固定金利を選ぶ。すでに変動金利で借りている人は固定に借り換えるラストチャンスということになります。
下に行くなら、今後下がっていく変動金利を選ぶ。すでに変動金利で借りている人は勝ち組ということになります。
固定金利は長期金利の上昇により再び上昇か
住宅ローンの固定金利タイプに影響する長期金利は上昇傾向にあります。米国のインフレ懸念に加えて、日銀の国債買い入れ減による債券価格の低下を警戒しての動きです。
さらに5月の住宅金融支援機構債(機構債)の利回りは1.94%と前月比+0.29%の大幅上昇となりました。
フラット35の原価にあたる指標が一気に2.0%近くに達したのは、2011年3月以来のことです。
ただし、フラット35については、ここ最近は政策的に金利上昇を抑制する傾向が見られます。さすがに1カ月で+0.29%もの上昇になる可能性は低いと思われ、これまで同様に金利上昇を抑えてくることが期待できます。
一方、民間銀行の固定金利については長期金利や長期プライムレートと連動する銀行が多いため、6月からは大幅な引き上げが予想されます。特に、預金による資金調達が薄いネット銀行系の固定金利は、長期金利上昇局面で大幅に上がる傾向があります。
そのため、今のような長期金利上昇局面で固定金利を選択するなら、フラット35が有力な選択肢になってきますね。
【関連記事】>>住宅ローン金利上昇のいま「フラット35」が狙い目か? 2025年度はさらに金利引き下げが拡大!
固定金利派にとって、最後の割安ゾーンになる可能性
フラット35には「子育てプラス」という金利引き下げ制度があります。
子育てプラスは、子どもの数や住宅性能、維持保全体制に応じてポイントを付与し、1ポイントあたり年▲0.25%で5年間の金利引き下げを上限なしで受けられます。年間の最大引き下げは▲1.0%ですから、これを最大限に利用すれば、長期金利の上昇を打ち消してあまりある金利の引き下げが得られます。
ただし、この「子育てプラス」は新規借入が対象で、借り換えには対応していません。
その裏で動いたのがSBIアルヒです。4月実行分から「スーパーフラット借換」の金利を1.74%(団信込み、35年)まで引き下げ、団信加入なしなら1.46%という攻めの設定に動きました。
参考:SBIアルヒ株式会社「ARUHI スーパーフラット借換」2025年4月の融資実行金利の見直しについて
従来から▲0.05~0.10%のディスカウントで、「変動金利から固定金利へ逃げたい層」を取り込もうとしていることがわかります。
変動金利か固定金利か?判断の分かれ目
5月時点ではSBIアルヒのスーパーフラット9の金利が1.8%ですから、「子育てプラス」の年間最大▲1.0%を受けると、頭金1割で0.8%、団信加入なしなら0.52%となります。
これにより、当初の期間に限定すれば変動金利よりも低金利で固定できるケースがあります。
ただし、金利引き下げ期間が終われば1.8%に戻ります。これは現時点の変動金利よりも1.0%以上高い水準です。
そのときに変動金利がどうなっているかは、踊り場にいる現時点では誰にも分かりません。
【関連記事】>>住宅ローンの10年後の変動金利は1.493%〜2.892%まで上昇と予想! 12銀行を試算
借り換えのリスクを認識しておく
変動金利のほうが低ければ借り換えればいいと考えるかもしれません。
しかし、借り換えには、事務手数料(借入れ残高×2.2%)と諸費用(司法書士費用・印紙代・保証料)で数十万円かかります。これを残りの期間で回収できる保証はなく、その後に変動金利が上がる可能性もあります。
また、変動金利への借り換え後に金利が上がり、固定金利と同じくらいの水準になったら、借り換え費用が損になってしまいます。住み替えで早期完済しても、結局は借り換え費用が負担として残るリスクがあります。
フラット35の金利引き下げは前半のみであり、後半からは全期間固定金利並みの高さになるため、固定金利の保険コストが金利に上乗せされているという認識のもとで選ぶ必要があります。
住宅ローン完済までの居住期間を想定し、適切な金利タイプを選ぶ
固定金利には、将来金利上昇リスクを保険料として前払いする面があります。住み替えによって住宅ローンを早期完済すると、その保険料(固定金利部分)は十分に回収できません。
そのため、住宅ローン完済までの居住期間を想定し、適切な金利タイプを選ぶことが重要です。
推定の居住期間10年前後
この場合は変動金利がセオリーです。住宅ローン控除(控除率0.7%)によって利息負担が軽減されるため、金利上昇があっても0.7%のバッファーが働きます。
さらに変動金利の5年ルール適用で、上昇後も5年間は返済額が据え置かれるため、家計への圧迫を抑えられます。
推定の居住期間20年前後
居住期間が住宅ローン控除の13年を超え20年前後になると、0.7%のバッファーが切れる期間が長くなります。
加えて5年ルールの適用があっても、複数回の利上げで利息負担が増える可能性が高まります。ここからは固定金利の保険コストを支払ってでも、リスク回避を考慮すべきタイミングになります。
ただし、固定金利の毎月返済額が手取り月収の4割以下であることが前提となります。
推定の居住期間30年前後
長期的には全期間固定金利が合理的です。過去のゼロ金利時代を引きずる低金利水準であり、日銀も「金利ある世界」の正常化を目指しています。
ただし、実際に30年先まで同じ家に住み続けるかは不確実です。住宅金融支援機構の調査によると、2018年度に完済した債権の平均経過期間は15.7年となっており、借り換えや住み替えも考慮する必要があります。
住宅ローン選びでは、金利以外に自分の判断軸を持つことが大事
トランプ関税がもたらした世界経済不安を背景に日銀は利上げの様子見モードを続けていますが、先行きは読めません。そんな今こそ、自分の判断軸を持つことが重要です。
- ・この家にどのくらい住み続けるつもりか
- ・住宅ローン支払いに対する家計の余力
- ・金利変動に対する安心料としての固定金利コスト
これらを可視化し、数字で線を引くことで、合理的な結論へ導く補助線となります。金融市場の動向は誰にも予測できませんが、自分の判断軸を基に検討することが、後悔のない住宅ローン決断へのコンパスとなるでしょう。
【関連記事】>>住宅ローンの金利推移(変動・固定)は? 最新の動向や金利タイプの選び方も解説
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