「金利ある世界」に突入し、住宅ローンの変動金利における将来の金利上昇リスクが不安で固定金利に変更したいと考えている方が増えてきました。本記事では、変動金利から固定金利に変更できるのか、チェックポイントや変更できない場合の考え方について、銀行員がわかりやすく解説します。(金融ライター・加藤隆二、現役銀行員)
自分の住宅ローンの金利タイプを確認する方法

金利の変更を考える前に、まずは自分が返済中の住宅ローン金利タイプを正確に把握することが重要です。確実なのは、住宅ローンの契約書や返済予定表で確認する方法ですが、それ以外でも確認する方法があるので、以下にまとめます。
住宅ローンの契約書の控え
住宅ローンは融資という金融機関との契約なので、重要な契約書類はかならず写し(または複写形式の「お客様控え」など)を渡されます。
契約書には金利タイプだけでなく、金利の見直し時期、特約条項などが詳しく記載されています。
控えとはいえ、契約時の重要な書類なので、土地や家の権利関係書類などと一緒に保管しているという方が多いようです。
返済予定表、返済明細
金融機関から定期的に送られてくる、今後の返済額の内訳(元金と利息の割合)や残高が記載された返済予定表にも、適用されている金利タイプなどが記載されています。簡単な表現しかされていない場合もあるので、この時は契約書で確認します。
金融機関の公式サイトで設定したマイページ
ネットバンクだけではなく、金融機関によっては自分専用のマイページが設定されています。ここで自分の金利タイプを確認できます。
そのほか、金融機関のコールセンターや店頭窓口でも確認することができます。
金利タイプの変更が可能かどうかを確認する
金利タイプの変更の可否は、当初の契約で決まっています。一般的に住宅ローンでは、借り入れしたときの契約に「金利タイプの変更に関する条項」というものが設けられています。
この条項には、どのような場合に金利タイプ変更が可能か、そのときにはどのような手続きが必要か、手数料はかかるのか、などが細かく記載されています。
住宅ローンは金融機関と利用者の間で交わす契約です。あなたが書類に契約の署名捺印(最近ではネットでのオンライン形式もありますが、その効力は署名捺印と同じです)したことで、契約を承諾したということになります。
つまり、「金利タイプの変更は可能」「金利タイプの変更は不可」「一定の変更だけは可能(たとえば変動金利だが固定期間タイプへの変更は銀行が認めれば可能など)」といった契約をあなたが承知したことになります。
契約内容で確認すべきポイント
金利タイプの変更について、具体的には以下のような点を契約から確認しておく必要があります。
金利タイプの変更
契約書で「金銭消費貸借契約証書(いわゆる借用金証書)」や「住宅ローン契約書」などに金利タイプの変更について定められています。「金利タイプの変更はできない」「銀行の承認があれば可能」と明記されている場合があります。
金利タイプの変更が可能な範囲
変動金利から固定金利、固定期間選択型から変動金利など、あらかじめ、住宅ローンの種類によって変更できる金利タイプの組み合わせが定められています。
金利タイプ変更のタイミング
変更が可能な場合でも、いつでも変更できるというわけではありません。金利の見直し時期に変更が可能、固定期間終了時には再選択(変更)が可能など、変更できるタイミングはあらかじめ決められています。
手数料について
金利タイプを変更するときは手数料を支払うのが一般的です。金額は金融機関によって異なりますが、数千円から1万円台などが中心になっています。また、店頭では有料、ネット経由なら無料といったケースもあります。
契約で金利タイプの変更が不可の場合
契約書を確認して、金利タイプ変更はできないと明記されていても、銀行員としては契約だからといって絶対に変更できないというものではない、だから諦めるのは早いと考えます。その理由は以下のとおりです。
・金融機関は住宅ローンで利息を得ているので、他の金融機関に借り換えられたら利息収入を失うことになる
・新規客を獲得するにはコストと労力が必要なので、既存客に借り換えられることは避けたい
もちろん上記の理由で変更が可能というわけではなく、金融機関の方針や個別の状況で結果は異なります。つまり、交渉の余地はあると知っておくことが大事です。
金融機関が変更に応じない場合
頑なに金利タイプの変更に金融機関が応じないケースもあります。その理由は以下のとおりです。
契約に厳格だから
金融機関によっては契約内容を厳格に履行することを重視し、例外的な対応を一切行わないことがあります。
借り換えられても構わないから
金利タイプ変更の顧客交渉は、対応する職員の労力や人件費などのコストもかかります。また特定の顧客だけに例外的な対応することで、他の顧客への影響を考慮したり、方針として住宅ローンに注力していない場合も応じてくれない可能性があります。
変更に一切応じないということは、借り換えをしたければどうぞご自由に、という姿勢の可能性もあります。その場合は、無理せず他の金融機関への借り換えを検討すべきでしょう。
「借り換え」も選択肢
金利タイプの変更が難しかった場合や提示された条件が希望に沿わない場合、検討すべき選択肢は他の金融機関への「借り換え」です。
ただし、保証料や担保の登記費用などの経費がかかるため、借り換えるメリットがあるかどうかをしっかりと見極める必要があります。
また、借り換える場合は審査があります。審査に通らなければ、借り換えはできません。
実際にあった金利タイプ変更の事例
ここからは、私が実際に対応したケースをもとに、金利タイプの変更や借り換えの事例を紹介します。
なお、紹介するケースの利率や残高、返済額などの数値は記事にするための仮想数値で、特定個人の実際の数値や情報ではありません。また、金利水準も現在のものとは多少違っている場合がありますので、あくまで参考にしてください。
変動金利から固定金利に変更できたAさん
Aさんは30代男性、家族は奥さんと子どもの3人家族です。10年ほど前に変動金利型の住宅ローンを借りました。金利が低い変動金利でスタートして、その後も低金利が続き、自分の選択に満足していました。
しかし、子供が生まれたことで、教育や子育ても含め将来を考え直して、将来の金利上昇リスクに不安を感じて固定金利に変更したいと相談されました。
当初の借入額3,000万円、変動金利型で年0.7%、35年返済ボーナスなし
毎月の返済は約8万円、ローン残高は約2,200万円
変更後
10年固定金利で年1.7%、毎月の返済は約9万円(毎月1万円の増加)
Aさんの契約上、変動金利から固定期間選択型への変更が認められていませんでした。しかし、将来の金利上昇に対する不安を訴えた結果、銀行は長期的な関係を考慮して社内で特別に検討し、変更を許可しました。
結果として、金利は1%上昇したものの、返済額が確定する固定金利を選択できたことで、精神的な安心感が得られました。毎月の返済額が10年間変わらないため、金利変動を気にせず家計の計画を組み立てられるようになり、教育費の準備もより具体的に検討できるようになったのです。
もちろん返済額は増えたものの、それ以上に、金利上昇リスクの解消が大きく、変更前の不安を払拭できたことに満足しています。
変更できなかったが借り換えで金利を下げたBさん
Bさんは40代の独身女性。通勤に便利な分譲マンションを購入し、5年前に変動金利型の住宅ローンを借りました。家計を見直す中で返済を減らしたいと、金利の引き下げを銀行に相談しました。
固定金利に変更したいという希望もあり、これら2つの希望を伝えましたが、話がなかなか進みませんでした。そこで、借り換えができないか、と私の銀行窓口に相談に来ました。
当初の借入額5,000万円、金利は変動金利型で年0.6%、35年返済ボーナスなし
毎月の返済額は約13万2,000円、ローン残高約4,348万円
借り換え後
変動金利0.3%に変更(あとで固定金利に変更も可能)
毎月の返済額は約12万6,000円(毎月6,000円の減額)
以前の銀行では純粋な変動金利型しか扱っておらず、固定金利や固定期間選択型への変更は契約上認められていませんでした。
金利上昇の不安を抱えるBさんは、何度もその銀行に掛け合いましたが契約で変更は不可能、諦めの境地へ。そこで、ほかの銀行で借り換えを検討。金利のある世界への移行を見据えた資産形成や家計の見直しをテーマにしたライフプランセミナーに参加したことが、背中を押すきっかけになりました。
当行の窓口にいらしたBさんは、変動金利での返済額の軽減と、将来、固定金利を選べる権利の両方を強く望んでいました。従来の契約では変更できない中、借り換えであれば金利と金利タイプのリセットが可能であることを説明し、返済シミュレーションを交えながら話を進めました。
その結果、当初は変動金利でスタートしつつ、固定期間選択型に切り替える権利を残しながら金利を0.6%から0.3%へ引き下げるという、二つの希望を同時に実現できました。
Bさんがもっとも喜んだのは、将来の金利上昇を心配せずに済むという安心感でした。デメリットはとくに感じておらず、むしろ返済額を減らしながら固定金利を選択できる可能性を得たことで、今後の資産形成にも前向きになれたと話しています。
まとめ
今回は変動金利から固定金利への変更は可能か?をテーマに解説してきました。金利タイプの変更でも借り換えでも、それぞれにメリット・デメリットがあり、必ずしもすべての人に最適な選択肢だとはかぎりません。
住宅ローンの借り入れは大きな金額が動く人生の一大イベントです。あわてて判断するのではなくしっかりと情報を収集し、納得のいく選択をしてください。
【関連記事】>>住宅ローン借り換えの定説が通用しない時代に! 金利差1%未満でもメリットがある理由を銀行員が解説
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淡河範明さん
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