土地や住宅価格の高騰が止まらないが、かなり長い間上がり続けている。そろそろ、これからも上昇するのかについては懐疑的な見方が出てきた。新築戸建住宅や新築マンションはまだ上がり続けるけれど、土地価格や中古戸建住宅については近く下落するのではないかとする業界関係者が少なくないようだ。(住宅ジャーナリスト・山下和之)
中古マンションの価格は10年間で7割以上アップ
首都圏を中心に、マンション価格の上昇が続いている。図表1は2012年から2022年までの新築マンションの発売価格の平均、中古マンションの成約価格の平均を示している。
不動産経済研究所によると、新築マンションは2012年には4540万円だったのが、2022年は6288万円だから、10年間で38.5%上昇したことになる。
図表1 首都圏マンション価格の平均推移(単位:万円)
10年で4割近く上がったことになるが、実は中古マンションはもっと上がっている。
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)によると、首都圏中古マンションの成約価格の平均は2012年には2500万円だったのが、2022年は4276万円となった。この10年間の上昇率は実に約71%に達し、新築マンションの2倍近い上がり方になっている。
また、2012年は新築マンションに比べて約55%の価格水準だったのが、2022年には約68%に達した。中古マンションの最大のメリットといえば価格が抑えられる点であるが、その魅力が薄れてきている。これは中古マンション購入希望者の購入マインドを冷やすことが懸念される数字と言わざるを得ない。
しかし、それが後に触れるように、中古マンション価格の上昇がそろそろ終わり、下落に向かうのではないかと考える業界関係者が多いことにつながっているのかもしれない。
戸建て住宅はこの2年間で急激に上昇している
一方、戸建て住宅は東日本レインズによると、首都圏の成約価格の平均は図表2のようになっている。
図表2 首都圏戸建て住宅の成約価格の推移(単位:万円)
新築戸建て住宅は2012年の3419万円が、2022年は4128万円で、この間の上昇率は20.7%。中古戸建住宅は2917万円から3753万円で、28.7%の上昇だ。
どちらもマンションに比べると上昇率は低い水準にとどまっている。しかし、2020年までは横ばいに近い水準で推移しているが、この2年間の上がり方が際立っている。
この2年間に限れば新築戸建て住宅、中古戸建て住宅ともに年率1割近い上がり方で、この急激な上昇に消費者の購入マインドがついていけるのかと不安を抱くような数値といっていいのではないだろうか。
特に、中古戸建て住宅については、やはり安さのメリットが失われつつある。2012年には中古住宅は新築戸建住宅の85.3%の価格水準だったのが、2022年には90.9%まで上昇している。高くなりすぎたため、ブレーキがかかるのではないかという見方につながりそうだ。
現在の価格動向は上昇傾向にあるという見方が大勢
では、土地やマンション、戸建住宅などの相場はどう動いていくのだろうか。全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)が、会員のモニター企業を対象に実施したアンケートによると、3カ月前と比較しての現在の価格動向の評価は図表3のようになっている。
図表3 3カ月前と比較してどのように感じるか
土地価格については、「大きく上昇している」が1.2%で、「やや上昇している」が19.0%と、上昇の合計が20.2%に対して、「やや下落している」が8.7%、「大きく下落している」が0.8%で、下落の合計は9.5%だった。上昇の合計が、下落の合計を10.7ポイント上回っており、上昇とする見方が優勢だ。
同様に、中古戸建住宅についは、上昇の合計が25.7%で、下落の合計は12.4%で、上昇が13.3ポイント上回っている。
中古マンションも土地、中古住宅とほぼ同じような傾向で、上昇の合計が30.1%に対し、下落の合計は14.8%で、上昇が下落を15.3ポイント上回っている。
新築住宅では上昇が下落を大きく上回る
土地価格、中古戸建て住宅、中古マンションはいずれも上昇と下落の格差は10ポイント台だが、新築戸建住宅、新築マンションについては上昇が、下落を大きく上回っている。
新築戸建住宅は、上昇の合計が47.6%で、下落の合計が11.6%だから、上昇が36.0ポイントも多くなっている。
同様に、新築マンションは上昇が47.7%で、下落は6.0%だから、その差は41.7ポイントと、どちらも上昇と下落の差は30ポイント、40ポイント台で、上昇とみる不動産会社が圧倒的に多くなっている。
新築は、地価や建築費、人件費の高騰などが価格の押し上げ要因となっていて、上昇圧力が強く、価格が上昇しているとする不動産会社が多い。特に新築戸建て住宅については、「大きく上昇している」とする回答が5.1%とひときわ多くなっている点が注目される。
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土地価格は3カ月後には下がるとする企業が多い
以上のように、3カ月前に比べて現状の価格相場の見方は、土地価格、中古戸建て住宅、中古マンションでは上昇がやや優勢だ。新築戸建て住宅と新築マンションでは上昇が下落を大きく上回っているが、それが3カ月後の予測の違いにもつながっているようだ。
全宅連のモニター企業に、土地や住宅形態別に3カ月後の価格を予想してもらったところ、図表4にあるように、土地価格については「大きく上昇している」が0.4%、「やや上昇している」が16.1%で、上昇とみる不動産会社の合計は16.5%だった。
図表4 3カ月後はどうなると予測するか
それに対して、「やや下落している」は21.9%、「大きく下落している」が0.4%で、下落の合計は22.3%だった。差し引きすると下落が上昇を5.8ポイント上回っている。土地価格、現在は上昇しているものの、3カ月後には下がるのではないかとする不動産会社のほうが多い。
中古戸建て住宅も3カ月後は下落が優勢に
同様に、中古戸建て住宅の3カ月後の価格予測に関しては、「上昇している」とする企業の合計が19.6%で、下落の合計が23.5%と、下落が3.9ポイント多くなっている。土地価格と同様に、中古戸建て住宅は3カ月後には下がるだろうとする不動産会社のほうが多い。
さらに、中古マンションについても3カ月後には「上昇している」とする企業の合計は20.6%で、「下落している」とする企業の合計は18.0%となっている。かろうじて上昇のほうが多くなっているが、大差はなく、3カ月後の予測の見解が割れている。
しかし、新築戸建て住宅と新築マンションは3カ月前に比べての現在の価格が「上昇している」とする割合が高かったのと同様に、3カ月後の価格予測についても、「上昇している」とする不動産会社が、「下落する」とする割合を大きく上回っている。
新築住宅は3カ月後も価格の上昇が続く?
新築戸建て住宅では、3カ月の価格が上がっているとする合計が42.2%で、下がっているだろうとする合計は17.5%だった。上昇が下落を24.7ポイント上回っている。現在も上昇しているが、3カ月後も上がっているだろうと予測する不動産会社がかなり多くなっている。
新築マンションも3カ月後の価格が上がっているとする合計割合が38.7%で、下がっているとする企業の合計は13.4%で、差し引きすると上昇が下落を25.3ポイント上回っている。
総じて言えば、土地や中古住宅については、3カ月前に比べると価格は上昇しているが、3カ月後については下落とする企業のほうが多い。中古住宅は、特にマンションが新築以上のピッチで上昇しており、中古住宅の最大のメリットである新築に比べての価格の安さの魅力が失われつつある。
いずれは、価格上昇ピッチに曲がり角が訪れ、下落に向かうのではないだろうかとする不動産関係者が多いといっていいだろう。
新築住宅の購入は早めに、中古住宅の購入はしばらく様子見が得策か
しかし、新築住宅は、マンション、戸建て住宅ともに状況が異なる。不動産会社の用地取得が困難になっており、取得できても分譲住宅適地の土地価格が上がり、加えて資材価格や人件費なども高騰が続いている。価格低下の余地はほとんどなく、3カ月後も高くならざるを得ない。
以上をまとめると、今後の住宅市場においては、新築は上がり続けるが、中古は早晩ピークアウトする可能性が高まっているとする業界関係者が多いようだ。
この不動産会社の見方からすれば、新築住宅の購入を考えている人は、さらなる価格上昇の前に、早めに購入すべきかもしれない。しかし、中古住宅でいいのであれば、下落に向かう可能性があるので、いましばらくは様子見しながら、購入タイミングを考えてもいいのかもしれない。
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