2021年1月から、【フラット35】リノベの適用条件が大幅に緩和され、格段に使いやすくなる。リノベーション済みの中古住宅を買うときはもちろん、中古住宅を買ってリノベーションを行えば、ほとんどの物件で住宅ローン金利が0.5%も引き下げられるなど、メリットが大きい。これにより、当初12年間の返済負担額が170万円近く軽くなるケースもあるので、ぜひとも注目しておきたい。(住宅ジャーナリスト・山下和之)
2021年1月から利用しやすくなる
【フラット35】リノベ
住宅金融支援機構が民間銀行・金融機関と提携して実施している住宅ローンの「フラット35」。最大の魅力は、全期間固定金利型で、借入後に金利が上がっても適用金利が変わることがない点。変動金利型のメガバンクの店頭手続きにおける最優遇金利は0.5%台からと低い水準だが、借入後に金利が上がると返済額が増えてしまう、金利上昇リスクがある。
この変動金利型に比べると、「フラット35」は金利がやや高くなっている。とはいっても、1%台前半の金利で利用でき、過去の住宅ローン金利水準からすれば、依然として超低金利である点は変わらない。
しかも、「フラット35」には各種の金利引き下げ制度があり(図表3参照)、それを利用すれば1%未満で利用できるので、変動金利型と比べても遜色ないレベル。それでいて、借入時に完済時までの金利が確定するのだから、安心感がある。
その「フラット35」の金利引き下げ制度のなかでも、最も引き下げ幅が大きいのが、【フラット35】リノベだが、2021年1月からその利用条件が緩和され、格段に利用しやすくなるというのだから見逃せない。
【フラット35】リノベ(金利Bプラン)の適用条件が大幅に緩和される
【フラット35】リノベというのは、不動産会社などがあらかじめ性能向上リフォームしている物件を取得するときや、中古住宅を購入して自分でリノベーションを行うときなどに利用できる住宅ローンだ。
金利引き下げ幅は0.5%で、その引き下げ期間が10年の「金利Aプラン」と、引き下げ期間が5年の「金利Bプラン」がある。ただ、これまでは適用条件が厳しかったため、なかなか利用が進まなかった。一定の予算枠はとっているのに、年間の利用件数が数百件にとどまっており、宝の持ち腐れ状態になっていた感がある。
そのため、2021年1月から適用条件の緩和を行って、利用を促進しようということになった。図表1にあるように、「金利Aプラン」の条件はこれまでと大きな変更はないのだが、「金利Bプラン」の条件が大幅に緩和される。
図表1 【フラット35】リノベの適用条件(2021年1月から)
金利引き下げ幅は0.5%!
ほとんどの物件で適用可能に
これまでの【フラット35】リノベ(金利Bプラン)は、
①省エネルギー性は断熱等性能等級4の住宅など
②耐震性は耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2の住宅または免震建築物
③バリアフリー性は高齢者等配慮対策等級3以上の住宅
④耐久性・可変性は劣化対策等級3の住宅で、かつ、維持管理対策等級2以上の住宅
などのうち、いずれか1つを満たす必要がありハードルが高かった。これは、住宅性能表示制度のなかでも高い等級が求められていたためだ。
それが、2021年1月からは、図表1にあるように、等級表示がなくなって、金利が0.25%引き下げられる【フラット35】Sの条件をクリアできればOKということになる。
どれくらい利用しやすくなるかといえば、現在、「フラット35」の申請件数のうち【フラット35】Sが9割前後を占めているから、ほとんどの物件がクリアできるレベルと考えていいだろう。
それでいて、金利引き下げ幅は【フラット35】Sの0.25%ではなく、0.50%になるのだからメリットは計り知れない。
当初5年間の返済負担額が大幅に減少する
では、【フラット35】リノベが利用できれば、どれくらい負担が軽減されるのか。当初5年間の金利を引き下げる【フラット35】リノベ(金利Bプラン)と、【フラット35(リフォーム一体型)】(※)で比較してみよう。借入額3000万円と5000万円の場合で試算したのが図表2だ。
※【フラット35(リフォーム一体型)】は、中古住宅を購入してリフォームする際に利用できる通常の【フラット35】のことで、金利引き下げはないが、リフォーム内容にかかわらず適用可能。なお、2020年12月末で借り入れ申し込み受付が終了する。
図表2 【フラット35】リノベ(金利Bプラン)は当初5年間でどれくらいお得になる?
【フラット35(リフォーム一体型)】の2020年9月の金利は1.32%。借入額3000万円だと、毎月返済額は8万9233円で、当初5年間の総返済額は535万3980円になる。
それが、【フラット35】リノベ(金利Bプラン)を利用して、当初5年間の金利引き下げ幅が0.50%になると、適用金利は0.82%に下がるため、毎月返済額は8万2192円に減少する。【フラット35(リフォーム一体型)】に比べて、毎月7041円の軽減で、5年間で見ると42万2460円も負担が軽くなる。
これが、借入額5000万円になると、負担軽減効果は毎月1万1734円に増えて、5年間の総返済額は70万4040円もお得になる。これを利用しない手はないだろう。
「フラット35」の金利引き下げ制度と併用可能
「フラット35」には、図表3にあるようにさまざまな金利引き下げ制度があり、それぞれ併用できるケースもある。
たとえば、子育て支援や地域活性化の施策を実施している自治体でマイホームを取得するときには、【フラット35】子育て支援型・【フラット35】地域活性化型が適用され、当初5年間の金利が0.25%引き下げられる。
これに、金利が0.25%引き下げられる【フラット35】Sを併用すると、金利引き下げ幅は、0.25%+0.25%で0.50%になる。
図表3 「フラット35」の各種金利引き下げ制度
【フラット35】リノベとの併用で、金利引き下げ期間が延長される
同様に、【フラット35】リノベも、【フラット35】子育て支援型・【フラット35】地域活性化型との併用が可能だが、単純に引き下げ幅を加算すると、0.50%+0.25%で0.75%に達する。2020年9月の金利で計算すると、0.5%(返済期間15年~20年の最低金利1.25%ー0.75%)で、民間の銀行・金融機関が提供する変動金利型の住宅ローンよりも低くなってしまう。
これでは民業圧迫の声が高まるのは避けられない。そのため、金利引き下げ幅は0.50%のままで、金利引き下げ期間を2年間延長。それぞれの引き下げ期間は以下のようになっている。
- 【フラット35】リノベ(金利Aプラン)は12年間
- 【フラット35】リノベ(金利Bプラン)は7年間
0.50%の金利引き下げが12年間も続く
そこで、この【フラット35】リノベ(金利Aプラン)の適用を受けられる物件で、【フラット35】子育て支援型・【フラット35】地域活性化型と併用して、当初12年間、金利が0.50%引き下げられる場合のメリットを見てみよう。
図表4にあるように、借入額3000万円の場合、当初12年間の毎月返済額は7041円少なくなる。12年間の総負担額でみると、101万3904円も軽くなる。
さらに、借入額が5000万円になると、毎月返済額は1万1734円少なくなって、12年間の総負担額でみると、168万9696円と170万円近くも得する計算だ。
【フラット35】リノベは、
予算金額が設定されている
これまで、中古住宅の購入で「フラット35」の金利割引きを受けるのはハードルが高かった。しかし、2021年1月からは、【フラット35】リノベ(金利Bプラン)なら、改修さえすればほとんどの物件で5年間、0.5%の金利割引きが受けられる。
なお、【フラット35】リノベは、設定されている予算金額に達する見込みとなった場合、受け付け終了となる。条件が緩和されるのは2021年1月からだけに、中古住宅を取得してリノベーションを考えている人、あるいはリノベーションされた中古住宅の取得を考えている人は、そろそろ準備に入り、1月に実施されたらすぐにでも利用できるようにしたい。
なかでも、自分でリノベーションしようと考えている場合には、リノベーションの打ち合わせや設計などに一定の期間がかかるだけに、早めに行動を起こしたほうがいいかもしれない。
【関連記事はこちら】>>中古住宅のリノベーション費用は、住宅ローンで借りれば低金利! 実質金利ランキング(新規借入)で徹底比較しよう
132銀行を比較◆住宅ローン実質金利ランキング[新規借入] |
132銀行を比較◆住宅ローン実質金利ランキング[借り換え] |
【金利動向】おすすめ記事 | 【基礎】から知りたい人の記事 |
【今月の金利】 【来月の金利】 【2024年の金利動向】 【変動金利】上昇時期は? 【変動金利】何%上昇する? |
【基礎の8カ条】 【審査】の基礎 【借り換え】の基礎 【フラット35】の基礎 【住宅ローン控除】の基礎 |
新規借入2024年11月最新 主要銀行版
住宅ローン変動金利ランキング
※借入金額3000万円、借入期間35年で試算
- 実質金利(手数料込)
- 0.459%
- 総返済額 3242万円
- 表面金利
- 年0.329%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%
- 保証料
- 0円
- 毎月返済額
- 75,629円
①「がん・4疾病50%+全疾病+月次返済保障」が無料!
②住宅ローン金利優遇割ならダントツの低金利
③三菱UFJ銀行とKDDIが立ち上げたネット銀行。ネット申し込みで、全国に対応
- 実質金利(手数料込)
- 0.512%
- 総返済額 3271万円
- 表面金利
- 年0.375%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%+33000円
- 保証料
- 0円
- 毎月返済額
- 76,229円
①注文住宅なら、分割融資に対応でお得
②手数料不要の「借入時負担ゼロ型」は、将来住み替えを考えている人におすすめ
③中古物件でもリフォーム資金含めて借り入れが可能
- 実質金利(手数料込)
- 0.531%
- 総返済額 3281万円
- 表面金利
- 年0.390%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%+55000円
- 保証料
- 0円
- 毎月返済額
- 76,426円
①「団信革命」は要介護まで保障も
②自社商品なら、最大3億円まで借り入れOK!
③【期間限定】WEB完結金利優遇キャンペーン実施中。変動金利が年0.390%~
-
住宅ローン利用者口コミ調査の詳細を見る
-
今回作成した「住宅ローン利用者口コミ調査」の調査概要は以下のとおり。
【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
有効回答数:822人
調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とするアンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。
【アンケートの設問】
Q1.金利の満足度は?
Q2.諸費用・手数料等は妥当でしたか?
Q3.団体信用生命保険には満足しましたか?
Q4.手続き・サポートには満足しましたか?
Q5.審査について、満足していますか?
Q6.借り入れ後の対応に満足しましたか?
Q7.他の人にも現在の銀行を勧めたいと思いますか?
【回答の配点】
・各設問は5段階で回答してもらい、Q1なら以下のように配点。平均値を求めた。
満足している(5点)
どちらかといえば満足している(4点)
どちらともいえない(3点)
どちらかといえば不満である(2点)
不満である(1点)
・総合評価については、各項目の平均値を全て合算。読者が重視する「Q1金利の満足度」については点数を3倍、「Q3団信の満足度」の点数を2倍として、点数の合計を50点満点とし、10で割ることで5点満点の数値を求めた。
132銀行の住宅ローンを比較 >>返済額シミュレーションで、全銀行の金利を一気に比較・調査
|
- 年収に対して安心して買える物件価格は?
-
- ・年収200万円で妻が妊娠中の家族の上限は1600万円!?
- ・年収250万円の単身者の上限は1800万円!?
- ・年収300万円の4人家族の上限は1800万円!?
- ・年収350万円の2人家族の上限は2100万円!?
- ・年収400万円の単身者の上限は2500万円!?
- ・年収450万円の4人家族の上限は2000万円!?
- ・年収500万円の4人家族の上限は3000万円!?
- ・年収600万円の3人家族の上限は3500万円!?
- ・年収600万円の40代独身の上限は3000万円!?
- ・年収700万円の共働き夫婦の上限は5000万円!?
- ・年収800万円の3人家族の上限は4500万円!?
- ・年収1000万円の30代4人家族の上限は5000万円!?
- ・年収1000万円の40代4人家族の上限は3500万円!?
- ・年収1000万円の50代夫婦の上限は3000万円!?
※サイト内の金利はすべて年率で表示
プロの評判・口コミ
淡河範明さん
auじぶん銀行の魅力は、業界トップクラスの変動金利です。変動金利が大好きな人なら、最上位にすすめたいですね。最大2億円まで借りられるのも大きなポイントです。
審査に関しては、めちゃくちゃ早いです。申し込んでから基本的には1ヶ月以内に融資実行ができるので、急いでいる場合にはありがたい。「今月中に融資して欲しい」とアピールすれば、審査がスムーズに運びやすいです。
団信では「がん・4疾病50%保障団信」が無料で付いているので、通常の団信より手厚いと言えます。通常、保障を厚くするのであれば、金利を上乗せする必要がありますが、無料でつくのは魅力です。