2021年3月の住宅ローンの金利が上昇しそうです。これまでも注意すべしと言ってきたのですが、2月に入ってから長期金利が上昇し、銀行としても金利を上げる大義名分がそろってきています。なお、長期金利が上昇することによって、金利が上がりやすい住宅ローンもあれば、上がりにくい住宅ローンもあります。今日はなぜこのコロナ禍にあって「長期金利が上がるのか?」「金利上昇にどう対応すべきか?」についてお話しします。(住宅ローン・不動産ブロガー、千日太郎)
コロナ禍にあっても株価が高値を更新し続けていることも一因
こんにちは。ブロガーの千日太郎です。今回も住宅ローン金利の見通しについて書きたいと思います。
2020年12月15日から直近の2021年2月5日までの長期金利と日経平均株価の推移をみると、右肩上がりに上昇しています。
また、長期金利だけでなく株価も上昇しています。コロナ対策として巨額の財政出動と金融緩和で多額のマネーが市場にあり、それが雪崩を打って株式に投入されたのですね。いわゆるコロナ金融バブルです。
株式を購入する資金として国債を売るという動きもありますので、もともと長期金利は上がりやすい状況にあったと言えるのです。
今さら聞けない長期金利はどうやって決まっているか?
金融市場の長期金利と言えば一般的に10年国債利回りを言います。利回りとは投資額に対する1年間のもうけの割合をいいます。そして国債の価格が上がると利回りは下がり、国債の価格が下がると利回りが上がるという負の相関関係にあります。
例えば額面100円で券面利率2%の10年国債を100円で買った場合、100円の投資額に対して2円/年の利息がもらえますので、利回りは2÷100×100=2%です。
債券価格が90円に下がっているときに購入すると、利息だけでなく10年後の満期に額面の100円が償還されますから10円のもうけも得られます(キャピタルゲイン)。90円の投資額に対して2円/年の利息に加えて1円/年のキャピタルゲインがあるので、利回りは(2+1)÷90×100=3.33%です。価格が下がると利回りが上がるのです。
逆に債券価格が110円に上がっているときに購入すると、10年後の満期に額面の100円が償還されますから10円損します(キャピタルロス)。110円の投資額に対して2円/年の利息にマイナス1円/年のキャピタルロスがあるので利回りは(2-1)÷110×100=0.91%です。価格が上がると利回りが下がるのですね。価格が上がりすぎるとこの利回りがマイナスになることもあります。
金融市場の長期金利が上がっているということは、どういうことかというと、金融市場で取引されている10年国債の価格が下がっているということを意味するのです。
日銀の金融政策決定会合に過剰反応した投資家が債券を売っている
特に1月の終わりくらいから長期金利が上がっています。これは、1月29日に日銀が公表した金融政策決定会合での「現在0%程度に誘導している長期金利については、今後はある程度の変動を容認する」との発言に投資家が過剰に反応し、国債の売りが優勢になって債券価格が下がっているためです。
日銀は市場から直接多額の国債を指し値で購入することで、国債の価格を操作して長期金利を0%に維持するというイールドカーブコントロール政策を行ってきました。長期金利が上がりすぎず、また下がりすぎないように日銀がコントロールするという政策です。投資家としては、日銀が国債の価格を安定させてくれるのだという信頼のもとで、より安全資産として国債を安心して購入できるという効果もあったのです。
しかし、「長期金利の変動を容認する」ということは債券価格に対して行っているコントロールの手綱を緩めるということですね。それまでは長期金利が0%となる債券価格で日銀が買い取ってくれるのだろうという前提で国債を買っていた投資家が「そのうち日銀が買ってくれなくなるかもしれない…」と警戒感を強めたわけです。国債を持ちすぎていると、売りたいときに損してしまうかも…?と考えますよね。だったら「今のうちに持ちすぎている分を売っておこう」ということになり、債券の売りが優勢となって、債券価格が下がり、利回り(長期金利)が上がるという流れになっているのです。
長期金利が上がると民間金融機関が固定金利を上げる大義名分になる
金融機関は調達金利と融資金利の差益によってもうけを得ています。お金を商品にしていると考えれば、調達金利は商品の原価であり、融資金利は商品の売価です。そして、住宅ローンの10年固定や20年固定、30年固定などの固定金利の商品を貸すための資金は金融市場から10年から30年の長期金利で調達しているという建前があります。
【民間銀行の固定金利の決まり方】
そのため、今のように日銀の金融政策に対して過敏に反応した投資家たちが債券を売り、それによって長期金利が上がってしまうと、民間金融機関としては金融市場からの調達金利が上がるので、住宅ローンの固定金利も上げざるを得ないということで融資金利(売値)を上げる大義名分になり得るのです。
フラット35は金利上昇に対する保険となる
住宅ローンのフラット35(買取型)は、住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。
この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家たちは機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する傾向があるのです。そのため、長期金利が上がるとフラット35の金利も上がるという点では民間銀行の固定金利と似ています。
これに対して、民間金融機関が固定金利を決めるタイミングは前月末であり、さらにその後の金利動向に対する銀行の予想に加え、その銀行特有の営業方針によっても上下させることがあり、予想が困難です。つまり、市場の金利上昇幅よりも大きく固定金利を上げる可能性も否定できません。
この点、フラット35の金利は、前の月の20日前後に発表される機構債の表面利率でほぼ予想ができるため、民間金融機関とは違って何パーセント上がるか事前に把握できます。また住宅金融支援機構は営利を目的としていないため、民間金融機関でよく見られる不可解な金利上昇がほとんどないのがメリットです。
逆に、民間銀行は長期金利が上がっていても、利用者を集めるためにあえて金利を上げないということもあります。フラット35は良くも悪くもそうしたことがないのが特徴ですね。
民間金融機関の変動金利は上がらない
全ての住宅ローンの金利が上がってしまうのではなく、上がらない金利タイプもあります。それが「変動金利」です。変動金利は日銀が民間金融機関に融資するときの「政策金利」の影響を受けるといわれます。
【民間銀行の変動金利の決まり方】
長期金利は市場の投資家によって債券がいくらで取引されるかによって日々変動していますが、日銀の政策金利(無担保コール翌日物金利)は、文字通り日本銀行が政策として決める金利であり、2016年以降は、マイナス金利となっています。
このコロナ禍にあって日銀が政策金利を上げるということは考えにくいですから、下がることはあっても上がることはないでしょう。つまり、変動金利については固定金利とは目安になる金利が違うため、固定金利が上がっても変動金利は上がらない可能性が高いです。
まとめ~複数の異なる金利タイプで準備を
前回の記事では決算の3月に金利が上がる可能性があると予想していました。
【関連記事はこちら】>>バイデン政権とコロナ金融バブル下の2021年の住宅ローン金利動向を予想します!
2月までは金利を下げてきて、決算の3月になってから金利を上げた例は過去にも何度かあります。特に今回のケースでは民間銀行の固定金利が危ないです。今からでもフラット35、または変動金利で審査に出しておくことをお勧めします。
これはあくまでこの記事の執筆時点で千日太郎個人が予想していることにすぎません。実際の金利動向はその通りにならない可能性は大いにありえます。いずれにしても、複数の金融機関、異なる金利タイプで本審査を通しておくことが、想定外の事態に対する保険となります。
審査に出すのにはいろいろな書類が必要になりますが、そうした作業によって、100万円くらいの支払い額の違いが出てくることもあります。面倒がらずにぜひ実践してください。
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【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
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・総合評価については、各項目の平均値を全て合算。読者が重視する「Q1金利の満足度」については点数を3倍、「Q3団信の満足度」の点数を2倍として、点数の合計を50点満点とし、10で割ることで5点満点の数値を求めた。
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淡河範明さん
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