奈良県の治安ランキング！　犯罪が少なく安全に暮らせる市区町村はどこ？【2025年版】

奈良県では、市区町村によって治安状況に大きな差がある。近年は特殊詐欺の増加や犯罪の低年齢化など、犯罪の質的な変化も問題となってきている。そこで、警察庁と総務省の統計資料を元に奈良県内の市区町村別の治安ランキングを作成した。（監修：防犯アドバイザー京師美佳）

奈良県の治安ランキング(治安の良さ)は全国22位

　奈良県は治安の良さで全国22位。県内では221人に1件の割合で事件が発生している。

参考：警察庁『令和6年警察白書　統計資料』と統計局「人口推計（2023年（令和 5年）10月 1日現在）全国：年齢（各歳）、男女別人口 ・ 都道府県：年齢（5歳階級）、男女別人口‐」。犯罪遭遇率は「人口÷犯罪件数」で算出して全国ランキングを作成。総合ランキングは、すべての犯罪を含む刑法犯罪の発生率の低さで作成。

　奈良県では、知能犯の犯罪発生率が高い。

　2024年度は513件の詐欺被害が報告されており、被害総額は約46億円に及んでいる。なかでも、SNS型投資詐欺やロマンス詐欺の被害が目立ち、その額は約32億6,400万円に上る。出典：奈良県警察本部生活安全企画課「やまとの安全 令和6年中の詐欺被害」

　警視庁では、多くの国民が利用するSNSを悪用した犯罪が、体感治安の悪化を招く恐れがあると懸念されている。出典：警察庁長官官房「令和６年の犯罪情勢」

　こうした背景から、奈良県警察は2024年3月1日から安全・安心アプリ『ナポリス』を導入し、詐欺の手口と対策方法について周知を図っている。出典：奈良県警察「奈良県警察安全・安心アプリ「ナポリス」を運用開始」

奈良県の犯罪発生率の推移

　奈良県の犯罪発生率は1990年頃から低下傾向にあった。これは、他県の都市部に比べて人口流入が緩やかであったことと、地域社会における人的結束力が強かったことが考えられる。

　しかし、1995年頃から増加に転じ、2002年にはピークを迎えた。これはバブル崩壊後の経済的混乱や雇用不安など、複合的な要因が絡み合った結果と見られる。

　2002年以降は、警察による街頭防犯カメラの導入や、全国的な地域パトロール活動の実施、防犯教育の推進などが功を奏し、犯罪発生率は低下した。

　2020年以降は新型コロナウイルスによる経済的ダメージやインフレによる実質賃金の低下などの景気悪化により、ふたたび犯罪発生率は上昇傾向にある。　

【市区町村別】奈良県の治安ランキング（令和6年）

　奈良県で治安が良い市区町村はどこなのか。公的データをもとに、市区町村の治安ランキングを作成した。下記の地図は、犯罪遭遇率に基づき色分けしたものである。治安が良い順に「白（451人以上に1件）」「黄緑（301人～450人に1件）」「緑（151人～300人に1件）」「赤（0人～150人に1件）」で塗り分けた。

参考：人口1,500人以下の市区町村はランキング対象外。奈良県「推計人口調査」と奈良県警察「市町村別犯罪認知状況について」を。犯罪遭遇率は「人口÷犯罪件数」で算出。

治安がもっとも良い市区町村は「十津川村」

　十津川村は奈良県の最南端に位置し、日本一の面積（672.38平方km）を誇る村である。自然豊かな環境のため、キャンプや釣り、山歩き等を目的とする観光客が多く訪れる。出典：十津川村「十津川村 主要観光地入込情報 令和7年8月」

　十津川村は地域住民の結束力が強く、良好な治安が維持されている。

　管轄警察の十津川警察庁舎所長も「村は、人や環境が良いのでしょう。皆で地域を見守っておられる。人と人の横の繋がりもすごくある。そのおかげで治安が良いのかなと感じます」と述べており、コミュニティの強さが治安の良さに寄与していることがうかがえる。出典：奈良県「十津川2021年9月 第721号」

　また、十津川村ではツキノワグマを「絶滅のおそれのある地域個体群」として保護する一方、電気柵を設置するなどして人的被害が出ないよう工夫も凝らしている。出典：環境省「ツキノワグマの保護・管理に資する国交付金の確保について」

治安がもっとも悪い市区町村は「桜井市」

　桜井市は、三重県の熊野市や島根県の出雲市、フランスのシャルトル市などと交流を深めながら互いの発展を大切している市だ。出典：桜井市「友好都市・友好交流都市」

　しかし、市内ではSNS型投資詐欺やロマンス詐欺や特殊詐欺などが多発している。出典：奈良県警察「桜井警察署」

　とくにSNSを通じて親密な関係を築き、恋愛感情に訴えかけて金銭を騙し取るロマンス詐欺が目立つ。

　たとえば、会員制交流アプリで海外在住の医師を名乗る人物からフォローされ、メッセージのやりとりを始める。毎日やさしい言葉をかけられるうちに信頼するようになり、「あなたに会いに行くための入国手続きにお金が必要」と送金を依頼され、数十万円をだまし取られた事例が報告されている。出典：桜井市「広報わかざくら2025年8月号」

奈良県ではどのような犯罪が多い？どのような防犯対策が必要？

　奈良県では、窃盗、特殊詐欺などが多いが、どのような防犯対策を立てていくかを紹介していく。

窃盗

　奈良県では窃盗被害が目立っている。そのため、短時間停める場合でも施錠することが基本の対策となる。

　また、住居への侵入窃盗も多発している。地方では近所付き合いが深く、回覧板を置くために隣人が家に入れる慣習があり、鍵をかけない家庭が見受けられる。

　しかし、現代の防犯事情において戸締まりは必須だ。もし近隣との関係性を重視して締め出したと思われたくないのであれば、無施錠にするのではなく、信頼できる相手に合鍵を預ける方が安全といえる。

　侵入犯の発生時間帯は深夜0時から4時に多いが、朝や昼の時間帯も狙われている。幼稚園の送り迎えやゴミ出しなど、わずかな隙の鍵のかけ忘れが命取りとなる。出典：警察庁「令和5年 罪種別 発生時間帯別 認知件数」

　窃盗犯は、侵入さえできてしまえば、物色して逃げるまで合計10分程度で犯行を終えることができる。そのため、最初の侵入を防ぐことが何より重要である。

　データによると、侵入に5分以上かかれば約7割、10分以上かかれば約9割の泥棒が犯行を諦めるという。そのため、窓に「防犯フィルム」を貼ったり「補助錠」を取り付けたりして、侵入に時間をかけさせる工夫が極めて有効だ。出典：警視庁「住まいる防犯110番 侵入者プロファイリング～心理と行動③」

　これからマイホームの建築やリフォームを予定している方は、警察庁や国土交通省、経済産業省が建物部品関係の民間団体とともに設置した「防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」で防犯性能が高いと認定された「CPマーク」付きの建材を選ぶことを推奨する。ピッキングやこじ開けに対して、抵抗力を持つことが証明されているため検討してみてほしい。出典：警視庁「住まいる防犯110番 防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」

特殊詐欺

　奈良県内では、特殊詐欺の被害が相次いでおり、その手口は年々巧妙化・多様化している。被害を未然に防ぐためには、それぞれの対策を正しく理解しておく必要がある。

ロマンス詐欺・投資詐欺

　奈良県では、SNS型投資詐欺やロマンス詐欺が相次いでいる。出典：奈良県警察本部生活安全企画課「やまとの安全 令和6年中の詐欺被害」

　SNSで知り合い、親しくやりとりをしている相手から、事情があってお金が必要と言われた場合でも、決してお金を振り込まないことが大切だ。

 「SNSで知り合った異性と仲良くなってやりとりしていた人が、事情があってお金が必要と言っている場合でも、お金を振り込まないことが大切です。どうしてもお金を貸す場合は、直接会って手渡すことを徹底しましょう。お金の話が出たら、すべて詐欺だと疑うことで被害を防げます。

　人との繋がりを大切にすることは素敵なことですが、隣人との付き合いから投資詐欺に巻き込まれてしまう被害も相次いでいるため気をつけてください」（京師氏）。

架空請求詐欺

　パソコンの画面上にウイルス感染の警告を表示させ、復旧名目でサポート料を騙し取るサポート詐欺も多発している。

　突然のパソコンの警告音に驚いてしまうかもしれないが、まずは落ち着くことが大切だ。画面に表示された番号には連絡せず、使用しているパソコンメーカーの公式サポートセンターに電話をして対処法を仰ぐのが良い。

オレオレ詐欺

　オレオレ詐欺の手口は年々巧妙化しており、最近ではAI（人工知能）を用いた「ディープフェイク」技術により、合成した映像や音声を使って実の子どもになりすますケースも確認されている。

　画面越しに顔が見えたり、声が似ていたりしても信用するのは危険だ。「本人と直接対面するまでは、絶対にお金を渡さない」と固く決めておくことが、最も有効な対策となる。

闇バイト

　近年、青少年も特殊詐欺グループの標的となっている。「手軽に」「短時間で」「簡単に」稼げるという甘い言葉に乗せられ、特殊詐欺の「受け子」や「出し子」、あるいは強盗の実行犯といった、犯罪組織の「捨て駒」として利用される事例が報告されている。

 「自分の子どもを闇バイトから守るためには、一度でも関わればその後の人生がどうなるかを具体的に教えておくことが大切です。 指示されただけであっても、法的には『共同正犯』として扱われます。仮に極刑を免れたとしても社会復帰への道は閉ざされてしまうでしょう。こうした未来を伝えることが、最大の抑止力となります」（京師氏）。

住まなくなった家の放置は治安の悪化につながる

　近年、治安悪化を招く要因として問題視されているのが、長期間、人が住んでいない空き家や別荘などだ。

　例えば、管理が行き届かず、郵便物のたまり、庭の雑草が生い茂ったままだと空き巣に「留守の家」と思われて狙われる。 奈良県でも空き家率は年々増加しており、対策が急務となっている。

　適切な管理が難しいのであれば、売却して資産を有効活用するという選択肢は非常に有効だ。 「使っていない物件がある」「そろそろ手放したい」ときは、無料査定で市場価値を確認してみてほしい。