東京都千代田区と中央区にある、月額賃料100万円以上の高級賃貸マンションにはどのような物件があるのか? 過去10年間の賃貸履歴から、月額最高賃料と月額坪単価平均賃料の2つのランキングを作成した。(執筆:住宅評論家・櫻井幸雄、データ提供:マンション情報サイト『マンションレビュー』)
千代田区・中央区の高級賃貸マンション「賃料」ランキング
東京都内でも、純粋な都心=純都心と目されるのは、千代田・中央・港の3区だ。そのうち、港区内で高級賃貸マンションが多いのは、「港区の高級賃貸マンションランキング」でも明らかになった。では、残る2区、千代田区と中央区はどうだろう。
実は、千代田区と中央区の高級賃貸マンションの数は、意外に少ない。今回リストアップした月額賃料100万円以上の高級賃貸マンション数は、千代田区と中央区を合わせても20物件にすぎず、そのうち中央区内は1物件のみ。あれ、そんなものなの、と驚く人も出てくるだろう。
まずは、千代田区と中央区で過去10年間で賃貸実績が3件以上あった物件を、単純に家賃の高い順に並べてみた。
【千代田区・中央区】高級賃貸マンション
「賃料」ランキング・トップ6
順位 |
マンション名/概要 |
過去10年間での |
ライフルホームズで販売中の中古物件 |
---|---|---|---|
1位 |
パークマンション千鳥ヶ淵 階数:10階 間取り:3LDK(164.69㎡) 築年月:2004年6月 |
200万円 | |
2位 |
プルデンシャルタワーレジデンス 階数:37階 間取り:4LDK(247.72㎡) 築年月:2002年11月 |
194万円 | |
3位 |
千鳥ヶ淵ハウス 階数:11階 間取り:4LDK(231.37㎡) 築年月:2007年8月 |
170万円 | |
4位 |
ブランズ永田町 階数:14階 間取り:2LDK(178.34㎡) 築年月:2019年2月 |
150万円 | |
4位 |
北の丸スクエアザ・テラス 階数:25階 間取り:4LDK(210.69㎡) 築年月:2006年1月 |
150万円 | |
4位 |
ラ・メール三番町レジデンス 階数:11階 間取り:4SLDK(263.39㎡) 築年月:2009年9月 |
150万円 | |
抽出条件:賃貸実績が直近10年で3件以上、月額賃料100万円以上 |
想像以上に高級賃貸マンションが少ない中央区と千代田区。その理由は…
千代田区といえば、皇居が所在する場所で、番町・麹町という江戸時代から続く由緒ある高級住宅ゾーンがあり、東京駅近くのビジネス街、大手町も国会議事堂を中心にした永田町・霞が関も、実は千代田区アドレスだ。
一方の中央区には、銀座、日本橋がある。土地の値段が高い場所を探せば、それこそ山ほど出てくるのが、千代田区と中央区である。
にもかかわらず、高級賃貸マンションの数が少ないのは、住宅地としてふさわしい場所が少ないから、と考えられる。
千代田区の大手町はビジネス街で、霞が関は官公庁街、中央区の日本橋・銀座は商業の中心地。銀座通りの裏に入ると、一戸建てがあり、天気のよい日の午前中は芝生の庭で洗濯物を干している……というような光景は、何かのパフォーマンスでセットを組む以外、あり得ない。
住んでいる人が少ないので、スーパーマーケットも小児科のクリニックも少ない。だから、現実的に暮らしにくい場所が多く、千代田区と中央区で高級賃貸マンション(高額分譲マンションも)が見つかる場所は限られる。
千代田区の番町・麹町エリアを中心に、その周囲に位置する紀尾井町や平河町、九段南、九段北、富士見といった場所が思い当たる程度。
中央区にいたっては、江戸時代から続く由緒ある住宅地というと、築地や八丁堀のエリアで少し見つかる程度。人が多く住んでいる場所の大半は、下町エリアか、江戸時代以降の埋め立て地だ。
そもそも中央区は、多くのエリアがJR山手線の外側となる。100万円以上の家賃を払ってでも住みたい、と思わせる要素に乏しいエリアが多いのだ。
千代田区・中央区の高級賃貸マンション
「坪単価平均賃料」ランキング
では、千代田区と中央区の高級賃貸マンションを「坪単価平均賃料」で見てみよう。以下は全20物件中、トップ10の物件だ。
【千代田区・中央区】高級賃貸マンション
「坪単価平均賃料」ランキング・トップ10
順位 |
マンション名/概要 |
過去10年間での |
ライフルホームズで周辺物件を見る |
---|---|---|---|
1位 |
ザ・パークハウスグラン千鳥ヶ淵 築年月:2015年4月 調査した所在階:2〜11階 調査した間取り:2LDK〜3LDK(100.13㎡〜127.76㎡) 最低賃料・最高賃料:100万円/月・145万円/月 |
34,598円 | |
2位 |
パークマンション千鳥ヶ淵 築年月:2004年6月 調査した所在階:3〜12階 調査した間取り:2LDK〜3SLDK(146.31㎡〜269.46㎡) 最低賃料・最高賃料:105万円/月・200万円/月 |
29,678円 | |
3位 |
ブランズ永田町 築年月:2019年2月 調査した所在階:14階 調査した間取り:2LDK(178.34㎡) 最低賃料・最高賃料:150万円/月 |
27,805円 | |
4位 |
平河町森タワーレジデンス 築年月:2009年12月 調査した所在階:14〜21階 調査した間取り:1SLDK〜2LDK(128.9㎡〜158.19㎡) 最低賃料・最高賃料:100万円/月・120万円/月 |
24,851円 | |
5位 |
ブランズザハウス一番町 築年月:2016年11月 調査した所在階:11〜12階 調査した間取り:2LDK〜3LDK(161.89㎡〜175.13㎡) 最低賃料・最高賃料:109万円/月・135万円/月 |
24,382円 | |
6位 |
ラ・トゥール半蔵門 築年月:2004年1月 調査した所在階:3〜4階 調査した間取り:4LDK〜4SLDK(153.36㎡〜153.38㎡) 最低賃料・最高賃料:110万円/月・115万円/月 |
24,323円 | |
7位 |
プレミスト六番町 築年月:2017年8月 調査した所在階:16階 調査した間取り:2LDK(140.16㎡〜144.72㎡) 最低賃料・最高賃料:100万円/月・107万円/月 |
23,676円 | |
8位 |
北の丸スクエア ザ・テラス 築年月:2006年1月 調査した所在階:17〜25階 調査した間取り:3LDK〜4LDK(146.65㎡〜210.69㎡) 最低賃料・最高賃料:102万円/月・150万円/月 |
23,399円 | |
9位 |
プルデンシャルタワーレジデンス 築年月:2002年11月 調査した所在階:3〜37階 調査した間取り:3LDK〜4LDK(164.22㎡〜247.72㎡) 最低賃料・最高賃料:100万円/月・194万円/月 |
22,867円 | |
10位 |
ラトゥール千代田富士見 築年月:2011年2月 調査した所在階:5〜12階 調査した間取り:3LDK(149.4㎡〜149.94㎡) 最低賃料・最高賃料:100万円/月・105万円/月 |
22,347円 | |
抽出条件:賃貸実績が直近10年で3件以上、月額賃料100万円以上 |
>>千代田区・中央区「坪単価平均賃料」11位〜20位はこちら
200㎡以上の大型住戸が多い千代田区の高級賃貸マンション
今回調査でリストアップされた千代田・中央区内の高級賃貸マンションのうち、最も「賃料」が高かったのは、三井不動産レジデンシャルが三井不動産として住宅分譲を行っていた時代の分譲物件「パークマンション千鳥ヶ淵」(下のストリートビュー参照)。
分譲された住戸の一部が賃貸に出されているのだろう、約164㎡の3LDKが月額賃料200万円となっている。同マンションは、「坪単価平均賃料」では第2位だった。
一方、「坪単価平均賃料」が最も高かったのは、約113㎡が月額賃料145万円で賃貸に出ている「ザ・パークハウスグラン千鳥ヶ淵」(下のストリートビュー参照)だ。
こちらは、三菱地所レジデンスが近年分譲したもので、購入した個人もしくは法人が賃貸に出しているものと思われる。
「パークマンション千鳥ヶ淵」「ザ・パークハウスグラン千鳥ヶ淵」2つのマンションは近接している。いずれも、皇居を取り巻くお堀のうち、「千鳥ヶ淵」を正面に臨む場所。つまり、皇居の緑が目の前に広がる場所である。
最寄り駅は、東京メトロ半蔵門線の半蔵門駅、もしくはJR中央本線ほかの市ケ谷駅となり、駅からは10分前後歩くことになる。
決して交通利便性の良い場所ではなく、買い物も不便だ。にもかかわらず、超高級マンションとして分譲され、賃貸に出されたときも高い家賃となっている理由は、前述したとおり、「目の前に皇居の緑が広がる」環境の良さ、そして皇居に近いため、治安の良さを好む人もいるからだ。
都心のど真ん中にありながら、別荘地に住んでいるような住み心地を味わえることで、2つのマンションは高い人気を誇っている。
ちなみに、「パークマンション千鳥ヶ淵」のほうが10年以上古い建物になるが、家賃設定は高い。それは、ひと世代前のマンションであるため、ひときわ広い住戸があるためだと考えられる。
2015年頃から、都心の超高級分譲マンションでは、広くても200㎡クラスまでで、多くは120㎡くらいまでという動きが出た。そのくらいの広さのほうが、売却するにしろ、貸すにしろ、取り回ししやすいと考えられるようになったからだ。
この動きは、ひときわ広い賃貸住宅を求める人にとっては物足りないものとなった。その点、10年以上前は、300㎡クラスの住戸が売り出されていた。「パークマンション千鳥ヶ淵」の場合、最も広い住戸は335㎡で、200㎡台、300㎡台の住戸が多かった。今となっては希少な大型住戸となっているため、家賃が割高になっているのだと考えられる。
千代田区内の高級賃貸マンションの顔ぶれをみると、200㎡以上の大型住戸が多いことに気づく。港区内の高級賃貸マンションと比べると、買い物は不便だし、街の華やかさもない。しかし、街の落ち着きや夜の静けさは港区内よりも上。皇居や国会議事堂など日本の中枢エリアに近いため、治安が良いという利点もある。
そのように住環境の良さにほれ込む人が多いため、ひときわ広い賃貸マンションの人気が高い場所になっているのだと考えられる。
中央区で唯一ランクインした「隅田リバーサイドタワー」
千代田・中央区の高級賃貸マンションとして、13位に唯一、中央区所在でランクインしたのが「隅田リバーサイドタワー」(下のストリートビュー参照)。
もともとは外国法人のための賃貸マンションとして三菱倉庫が運営していた。現在は日本人でも賃借でき、大型住戸は家賃設定が高くなる。
最寄り駅は、東京メトロの八丁堀駅で、隅田川を眼下に望む住戸が多く、見晴らしが良い。この八丁堀エリアや月島エリア、晴海エリアは中央区内でも住宅が多い場所で、これまでも高額で分譲された超高層マンションがいくつもある。
それら高級分譲マンションが賃貸に出たら、賃料は高くなりそうだ。しかしながら、近年分譲されたマンションの専有面積は100㎡未満までで70㎡台の住戸が主体となる。
比較的コンパクトであるため、月額賃料が100万円になることはない。それが、中央区内で高額の賃貸マンションが少ない理由である。
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