新築、中古マンションの価格高騰が止まらないだけに、今のうちに買っておかないと、と焦っている人も多いのではないだろうか。しかし、注意が必要なのは金利動向だ。住宅ローンの利用者は相変わらず変動金利型を選ぶ人が多いが、近いうちに金利が上がるリスクが高まっている。住宅ローンは金利上昇リスクをよく理解し、対策を立てた上で利用する必要がある。(住宅ジャーナリスト・山下和之)
首都圏の新築マンション平均価格は8873万円
首都圏の新築マンション価格が上昇しており、特に東京23区の高騰ぶりがすさまじい。平均的な会社員の年収では手が届かないレベルになりつつある。
図表1は、不動産経済研究所の調べによる首都圏の新築マンションの平均価格だが、2023年上期には8873万円まで上がっている。2022年上期は6510万円だったから、前年比で36.3%の上昇だ。
図表1 新築マンションの平均価格の推移(単位:万円)
しかも、東京23区に限ると2023年上期の平均は1億2962万円と、1億円超えとなっている。2022年の8091万円から60.2%ものアップだ。
首都圏平均の8873万円のマンションを、873万円の自己資金、借入額8000万円で購入するとすれば、金利0.375%、35年元利均等・ボーナス返済なしの場合、毎月返済額は20万3279円に達する。
返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)をより安全な範囲といわれる25%以内に抑えるためには、976万円の年収が必要になる。
東京23区の1億2962万円の新築マンションなら、962万円の自己資金で1億2000万円を借り入れた場合、毎月返済額は30万4918円。返済負担率を25%とするには、必要年収が1464万円になる。
これでは、平均的な年収の会社員ではとても購入できないし、夫婦ともに高額所得者のパワーカップルでやっと購入可能といったレベルではないだろうか。
マンション価格はまだ上がるから「今が買い時」と考えている人が多い
しかも、新築マンションの価格上昇はまだまだ続くのではないかという見方が強い。
マンションを開発するための適地が減少しており、かろうじて見つかったとしても競争入札などで土地取得価格が高くならざるを得ない。
加えて、資材価格や人件費の高騰などで建築費も高くなっており、価格が上がる要素ばかりで、とても下がることは期待できない。
マンション情報サイトの「住まいサーフィン」を運営するスタイルアクトでは、四半期に一度、マンション購入希望者の意識調査を行っており、2023年7月の調査では、1年後のマンション価格について、66.8%の人が「上がる」とし、「横ばい」が26.9%で、「下がる」は6.3%だった。
圧倒的に今後も上がり続けると見る人が多い。3人に2人がマンション価格は「上がる」と考えているわけだ。
いまのうちに買っておかないといよいよ買えなくなってしまうと考えている人が増えているのかもしれない。
同じくスタイルアクトの調査では、マンションはいまが買い時だと思うかどうかという設問も設けてあるが、その結果は図表2のようになっている。
図表2 マンションは今が買い時だと思うか
「買い時」と「やや買い時」の合計は30.0%で、「どちらでもない」が42.2%、「あまり買い時ではない」「買い時ではない」の合計が27.8%だった。
買い時とする人の合計から買い時ではないとする人の合計を差し引いた「買い時DI※」は+2.2ポイントで、買い時と考える人がやや優勢という結果だった。
2023年4月の調査では「買い時DI」は-8.7で、2023年1月が-18.6だったから、買い時ではないと考える人のほうが多かったわけだが、ここへきて買い時だと思う人が増えている。
住宅ローンの金利上昇で、借入可能額が減るという不安感が強まる
その要因としては、価格面と金利面の先行きの見通しが影響しているのではないだろうか。
マンションの価格がさらに高くなって、このままでは買えなくなってしまうという不安感が高まると同時に、住宅ローン金利が上がって、いっそう買えなくなってしまう――という思いが強まっているとみられている。
周知のように、日本銀行は、2023年7月下旬の政策決定会合において、長期金利の上限をこれまでの0.5%から実質的に1.0%に引き上げる修正を行っている。
この調査時点ではその決定前だったものの、そうした変更が行われる時期が近づいているという観測が強まっていた。
実際、この修正を受けて、2023年9月の住宅ローン金利、固定金利型の指標といわれる固定金利期間選択型の10年固定の金利は、軒並み0.10%程度の上昇となった。
今後も固定金利型住宅ローン金利の上昇が続くと、購入希望者の間では、住宅ローンの返済負担が重くなり、借入可能額が減ってしまうのではないかという不安感が強まっている。
変動金利を選択している人は7割超に上昇
一方で、変動金利は上がっていない。短期金利が上がり、変動金利型が動き出すのはまだ先ではないかという見方が強いのだ。
住宅ローンには大きく分けると、長期金利に連動する固定金利型と、短期金利に連動する変動金利型がある。
いま上がり始めているのは長期金利に連動する固定金利型。短期金利が上がり、変動金利型が動き出すのはまだ先ではないかという見方が強い。
そのため、実際に住宅ローンを利用してマイホームを買っている人の大半は変動金利型を利用している。固定金利型に比べて金利が低く、しばらくは金利上昇のリスクはないとなれば、それも当然のことかもしれない。
住宅金融支援機構が住宅ローンを利用してマイホームを買った人を対象に調査したところ、図表3にあるように、72.3%の人が変動金利型を利用している。固定金利期間選択型は18.3%で、全期間固定金利型に至っては9.3%にすぎない。
図表3 住宅ローンを利用した人の金利タイプ
しかし、変動金利型の金利上昇はまだ先になりそうだからと安心していいのだろうか?
当たり前のことだが、住宅ローンの返済は20年、30年の長きにわたって続く。その間には変動金利型の金利上昇が必ずやってくる。
日銀の金融政策の実質的な変更を踏まえれば、短期金利も数年のうちには引き上げられ、変動金利型の金利も上がるという見方が強まっている。
変動金利上昇時には、返済額が25%増えるリスクも
変動金利型の住宅ローンは、借入後に市中の金利が上がると半年に一度適用金利が見直され、5年に1回、返済額も見直されることになっている。
金利が上がった場合、返済額が増えるが、増額率は25%までに抑えることになっている。逆にいえば、5年後には最大25%まで返済額が増えるリスクがあるということだ。
では、実際に金利が上がると、どの程度返済額が増えるのか、借入額5000万円で試算してみると、図表4のようになる。
図表4 変動金利が上昇した際の返済増額率
5年後も金利が0.375%のままなら返済額は12万7049円で変わらないが、金利が0.25%上がって0.625%になると毎月返済額は13万1792円と月額4743円増える。5年間はその返済額で変わらないので、5年間の返済額は0.375%の762万2940円から、790万7520円に増える。増額率は3.7%ということだ。
それが、0.50%上がって0.875%になると、毎月返済額は13万6647円で、1.00%上がって1.375%まで上がると14万6692円になる。
その先5年間の返済額は880万1520円と金額にして100万円以上、率にして15.5%も増えてしまう。
変動金利の金利上昇リスクを理解していない人が多い
1.00%の上昇だと、月額にすれば2万円近くの負担の増加だから、家計にも影響が大きいのではないだろうか。
しかし、住宅金融支援機構の調査によると、こうした変動金利型の金利上昇リスクを十分に理解しているとする人は多くない。半数近い人たちが、十分に理解しないまま利用しているという結果が出ている。
これまでは、超低金利が続いてきたため、変動金利型の金利が上がって、返済額が増えるといった事態はなかったので、問題にはならなかったが、今後はそうもいかないだろう。
実際に金利が上がったら、返済額がどの程度増えるのかまで事前にシミュレーションして、それでも大丈夫かどうかを考慮した上で資金計画を立てる必要がある。
マンション購入の際は、これまで以上に慎重な姿勢で住宅ローンの金利タイプ選びを考える必要があるだろう。
【関連記事】>>変動金利のリスクを知っていますか? 住宅ローン変動金利の新常識
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淡河範明さん
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