植田和男日銀総裁は、6月の政策決定会合の記者会見で「条件がそろえば7月にも金利を上げる可能性がある」と述べましたが、果たして住宅ローン変動金利は上がるのでしょうか。本記事では、変動金利が上がる前に見られる兆候について解説します。それは日銀、民間銀行がそれぞれすでに見せているのです。(住宅ローン・不動産ブロガー 千日太郎)
植田日銀総裁は7月にも短期政策金利を上げる可能性を示唆
こんにちは、公認会計士の千日太郎です。
日銀は3月の金融政策決定会合でマイナス金利政策を解除しましたが、6月会合まで短期政策金利を0%~0.1%で据え置いています。
住宅ローンを変動金利で借りている、または借りる予定の人にとっては、短期政策金利の動向が気になりますね。植田総裁は6月会合後の記者会見で「条件がそろえば7月にも短期政策金利を上げる可能性がある」と述べています。
個人的には、日銀が7月に政策金利を上げる可能性は低いと見ていますが、変動金利が上がるなら、その前に察知しておきたいものです。
民間銀行の兆候:融資金利を上げる前に預金金利を上げる
多くの民間銀行は、住宅ローンの変動金利を低金利に設定して利用者を集めていますが、その背景には銀行業ならではの思惑があります。
銀行業では、預金業務で預かったお金を融資業務で貸し出すことで利ザヤを得るのが利益の源泉です。預金がなければ貸すお金がないわけですから、融資業務だけを頑張ってもダメなのです。
銀行は、まず預金利息を魅力的にして多くの預金を集め、その後に伸びる事業を行っている会社にお金を貸すことで、よりもうかると考えるわけです。
業績好調なメガバンクは変動金利を急いで上げるような状況にない
直近のメガバンクの業績は絶好調です。三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3メガバンクのグループは、それぞれ純利益を1兆4907億円、9629億円、6789億円計上しました。
三菱UFJ銀行と三井住友銀行は過去最高益を更新し、みずほ銀行も過去最高に迫る水準です。2025年3月期も各グループが最高益を更新する見通しと報じられています。
そのため、特にメガバンクは、仮に7月に日銀が追加の利上げを行ったとしても、確実に他行も変動金利を上げる確信がなければ、自行の変動金利を上げないとみられています。
住宅ローンの変動金利を上げれば金利収入が増えるものの、他行への借り換えや預金者の流出で利益が頭打ちになるからです。
5月に住信SBIネット銀行が変動金利の店頭基準金利を上げた背景には、預金を集めて貸す伝統的な銀行業務よりも、証券業(信用取引の手数料収入)がメインであることが大きいでしょう。
変動金利を上げても預金者が逃げないような状態をつくる
つまり、多数派を占める伝統的な民間銀行が変動金利を上げる前の段階として、変動金利を上げても預金者が他行へ流れていかないような状態を作るだろうと見ています。
預金者の利便性を増やすために電子マネーの利便性を追求しているのは、三井住友銀行の「Olive」です。しかし、利便性やサービスなどは数値でわかりにくいですし、期間限定のキャンペーンも一時的です。安定してわかりやすい兆候としては預金金利を上げることでしょう。
三菱UFJ銀行は昨年から定期預金の金利を引き上げ、さらにスマホで新規口座開設・10万円定期預金で1万円還元のキャンペーンを開始しています。また、普通預金に関しても、同じく三菱UFJや三井住友銀行、みずほ銀行などの大手や地銀も0.001%から0.02%と直接的に預金金利を上げて預金の獲得に乗り出しています。
民間銀行は、預金金利が上がれば、ある程度貸出金利が上がっても仕方ないという状態を作ることが先決になるのです。
日銀の兆候:7月会合で国債買い入れ減額計画を決定
日銀は3月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)を解除しましたが、毎月6兆円程度の国債買い入れを続けています。6月の会合で国債の買い入れ減額を決め、7月会合で詳細計画を決定する予定です。
国債の買い入れ減額は、直接的には長期金利に対する政策のように思われるためノーマークかもしれませんが、目に見えない形で短期金利に影響します。
日銀による国債の買い入れは金融緩和政策として行われてきましたが、6月の日銀政策決定会合で、この国債買い入れも減額するということなので、事実上の金融引き締めに移っていく予告をしたということです。
分かりやすく言い換えると、7月からは短期政策金利が上がってもおかしくないということです。
市場関係者の意見を確認するもう一つの目的とは?
ただし、千日太郎の個人的な予想では、7月会合で短期政策金利が上がる可能性は低いとみています。短期政策金利を上げると景気を冷やすリスクが高いためです。
実際、日銀が3月にマイナス金利政策をやめた後、5月には住信SBIネット銀行とイオン銀行が変動金利を上げました。この状態で、次に日銀が追加利上げを行うと、金融緩和が終わったものと判断する銀行が増えて、場合によっては全銀行が横並びで金利を上げてしまう恐れがあるのです。
多くの民間銀行は3月の日銀利上げを金融引き締めではなく金融緩和政策を継続するということを理解しており、三井住友信託銀行は4月の変動金利を下げ、SBI新生銀行は4月からキャンペーン金利を開始しています。
日銀は市場関係者の意見を確認したうえで7月会合で今後1~2年間の国債買い入れ減額計画を決める予定ですが、千日太郎としてはこれを文字通り「意見を聞いて計画を決める」とは見ていません。
うがった見方かもしれませんが、今後1~2年をかけて国債の買い入れを完全にやめるシナリオもあると見ています。
市場関係者を呼ぶ目的はそれに対する反応を見るということにあり、さらに一つの目的は、過去に日銀が買った国債が満期償還されていき、マネタリーベース(市中に流通するお金)が減少し、自然な形で市場の短期金利も上がっていくシナリオを市場関係者に伝達することと見ています。
つまり、「日銀が予定したXデーに利上げをして変動金利が上がるのではない」というシナリオです。
金利上昇は7月から起算して1~2年のスパンを要する
植田総裁は6月会合後の記者会見で、「条件がそろえば7月にも短期政策金利を上げる可能性がある」と述べましたが、事実上、7月に短期政策金利を上げられる条件がそろう可能性は極めて低いということになります。
さすがに日銀総裁の口から「たぶん7月には上がらないよ」とは言えないだけでしょう。
マネタリーベースの減少で徐々に金利が上がるというのは、言い換えると流通しているお金が少なくなって、その少ないお金を借りるためのコストが高くなるということです。すぐに効果が出ないので、ある程度のスパンで観測していく必要があるわけです。
国債の買い入れを減額すれば、そこからマネタリーベースが減少傾向へ振れていくわけですから、理論的には市場でお金を借りようとする人の金利も上がっていくことになります(ここでは同じ条件の人で借りられる住宅ローンの上限が下がるとか、最優遇の低金利の住宅ローンを借りられる人の条件が厳しくなる、なども広い意味での金利の上昇とします)。
今のところは、同じ条件の人で借りられる住宅ローン借入額の上限は上げる傾向が続いています。住宅ローンの最長返済期間を35年から40年や50年に拡大しているのは、その例と言えますね。新たに借りる(または借り換える)場合の変動金利は低金利競争で横ばいが続いていますが、日銀はこれがまず自然に上がっていくことを想定しているのです。
新たに借りる人向けの変動金利の上昇が観測されるまでの期間も、1~2年を要するだろうということでもあります。
まとめ~7月に追加利上げはないと予想
6月の日銀会合では、国債買い入れ減額の方針が決定され、事実上の金融引き締めがスタートすることになります。ただし、この目的は欧米型の金融引き締めではなく、黒田バズーカに象徴されたような異次元の金融緩和政策を正常化し、緩和的でありながらも「金利のある世界」に戻すことにあるというのは変わらないでしょう。
あくまで千日太郎個人の見解ではありますが、7月に追加利上げはないと見ており、これから変動金利で借りている人の金利が短期的にドンドン上がるということはないので安心してよいと思います。
ただし、植田日銀総裁はこれからは短期政策金利を操作する「普通の金融政策」を行っていくと発言しており、そのためにはあと複数回の利上げが必要になります。
住宅ローン返済は長期にわたるものです。変動金利を選ぶということは、金利が上がるたびに、返済にどれほど影響するか? そして総額はいくら増えるのか? をその都度試算する必要があるので、よく考えて選ぶことが重要です。
【関連記事】>>住宅ローンの金利上昇リスクにどう対応すべきか? リスクを軽減するコツも紹介
132銀行を比較◆住宅ローン実質金利ランキング[新規借入] |
132銀行を比較◆住宅ローン実質金利ランキング[借り換え] |
【金利動向】おすすめ記事 | 【基礎】から知りたい人の記事 |
【今月の金利】 【来月の金利】 【2024年の金利動向】 【変動金利】上昇時期は? 【変動金利】何%上昇する? |
【基礎の8カ条】 【審査】の基礎 【借り換え】の基礎 【フラット35】の基礎 【住宅ローン控除】の基礎 |
新規借入2024年12月最新 主要銀行版
住宅ローン変動金利ランキング
※借入金額3000万円、借入期間35年で試算
- 実質金利(手数料込)
- 0.413%
- 総返済額 3218万円
- 表面金利
- 年0.284%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%
- 保証料
- 0円
- 毎月返済額
- 75,045円
①「がん・4疾病50%+全疾病+月次返済保障」が無料!
②住宅ローン金利優遇割ならダントツの低金利
③三菱UFJ銀行とKDDIが立ち上げたネット銀行。ネット申し込みで、全国に対応
- 実質金利(手数料込)
- 0.512%
- 総返済額 3271万円
- 表面金利
- 年0.375%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%+33000円
- 保証料
- 0円
- 毎月返済額
- 76,229円
①注文住宅なら、分割融資に対応でお得
②手数料不要の「借入時負担ゼロ型」は、将来住み替えを考えている人におすすめ
③中古物件でもリフォーム資金含めて借り入れが可能
- 実質金利(手数料込)
- 0.531%
- 総返済額 3281万円
- 表面金利
- 年0.390%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%+55000円
- 保証料
- 0円
- 毎月返済額
- 76,426円
①「団信革命」は要介護まで保障も
②自社商品なら、最大3億円まで借り入れOK!
③【期間限定】WEB完結金利優遇キャンペーン実施中。変動金利が年0.390%~
-
住宅ローン利用者口コミ調査の詳細を見る
-
今回作成した「住宅ローン利用者口コミ調査」の調査概要は以下のとおり。
【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
有効回答数:822人
調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とするアンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。
【アンケートの設問】
Q1.金利の満足度は?
Q2.諸費用・手数料等は妥当でしたか?
Q3.団体信用生命保険には満足しましたか?
Q4.手続き・サポートには満足しましたか?
Q5.審査について、満足していますか?
Q6.借り入れ後の対応に満足しましたか?
Q7.他の人にも現在の銀行を勧めたいと思いますか?
【回答の配点】
・各設問は5段階で回答してもらい、Q1なら以下のように配点。平均値を求めた。
満足している(5点)
どちらかといえば満足している(4点)
どちらともいえない(3点)
どちらかといえば不満である(2点)
不満である(1点)
・総合評価については、各項目の平均値を全て合算。読者が重視する「Q1金利の満足度」については点数を3倍、「Q3団信の満足度」の点数を2倍として、点数の合計を50点満点とし、10で割ることで5点満点の数値を求めた。
132銀行の住宅ローンを比較 >>返済額シミュレーションで、全銀行の金利を一気に比較・調査
|
- 年収に対して安心して買える物件価格は?
-
- ・年収200万円で妻が妊娠中の家族の上限は1600万円!?
- ・年収250万円の単身者の上限は1800万円!?
- ・年収300万円の4人家族の上限は1800万円!?
- ・年収350万円の2人家族の上限は2100万円!?
- ・年収400万円の単身者の上限は2500万円!?
- ・年収450万円の4人家族の上限は2000万円!?
- ・年収500万円の4人家族の上限は3000万円!?
- ・年収600万円の3人家族の上限は3500万円!?
- ・年収600万円の40代独身の上限は3000万円!?
- ・年収700万円の共働き夫婦の上限は5000万円!?
- ・年収800万円の3人家族の上限は4500万円!?
- ・年収1000万円の30代4人家族の上限は5000万円!?
- ・年収1000万円の40代4人家族の上限は3500万円!?
- ・年収1000万円の50代夫婦の上限は3000万円!?
※サイト内の金利はすべて年率で表示
プロの評判・口コミ
淡河範明さん
auじぶん銀行の魅力は、業界トップクラスの変動金利です。変動金利が大好きな人なら、最上位にすすめたいですね。最大2億円まで借りられるのも大きなポイントです。
審査に関しては、めちゃくちゃ早いです。申し込んでから基本的には1ヶ月以内に融資実行ができるので、急いでいる場合にはありがたい。「今月中に融資して欲しい」とアピールすれば、審査がスムーズに運びやすいです。
団信では「がん・4疾病50%保障団信」が無料で付いているので、通常の団信より手厚いと言えます。通常、保障を厚くするのであれば、金利を上乗せする必要がありますが、無料でつくのは魅力です。