7月の日銀会合で追加利上げはあるか? 住宅ローンの変動金利上昇前の2つの兆候とは

【第95回】2024年6月26日公開(2024年6月26日更新)
千日太郎:住宅ローン・不動産ブロガー

植田和男日銀総裁は、6月の政策決定会合の記者会見で「条件がそろえば7月にも金利を上げる可能性がある」と述べましたが、果たして住宅ローン変動金利は上がるのでしょうか。本記事では、変動金利が上がる前に見られる兆候について解説します。それは日銀、民間銀行がそれぞれすでに見せているのです。(住宅ローン・不動産ブロガー 千日太郎)

植田日銀総裁は7月にも短期政策金利を上げる可能性を示唆

2024年7月に金利は上がるか?
2024年7月に金利は上がるか?(出所:PIXTA)

 こんにちは、公認会計士の千日太郎です。

 日銀は3月の金融政策決定会合でマイナス金利政策を解除しましたが、6月会合まで短期政策金利を0%~0.1%で据え置いています。

 住宅ローンを変動金利で借りている、または借りる予定の人にとっては、短期政策金利の動向が気になりますね。植田総裁は6月会合後の記者会見で「条件がそろえば7月にも短期政策金利を上げる可能性がある」と述べています。

 個人的には、日銀が7月に政策金利を上げる可能性は低いと見ていますが、変動金利が上がるなら、その前に察知しておきたいものです。

民間銀行の兆候:融資金利を上げる前に預金金利を上げる

 多くの民間銀行は、住宅ローンの変動金利を低金利に設定して利用者を集めていますが、その背景には銀行業ならではの思惑があります。

 銀行業では、預金業務で預かったお金を融資業務で貸し出すことで利ザヤを得るのが利益の源泉です。預金がなければ貸すお金がないわけですから、融資業務だけを頑張ってもダメなのです。

 銀行は、まず預金利息を魅力的にして多くの預金を集め、その後に伸びる事業を行っている会社にお金を貸すことで、よりもうかると考えるわけです。

業績好調なメガバンクは変動金利を急いで上げるような状況にない

 直近のメガバンクの業績は絶好調です。三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3メガバンクのグループは、それぞれ純利益を1兆4907億円、9629億円、6789億円計上しました。

 三菱UFJ銀行と三井住友銀行は過去最高益を更新し、みずほ銀行も過去最高に迫る水準です。2025年3月期も各グループが最高益を更新する見通しと報じられています。

 そのため、特にメガバンクは、仮に7月に日銀が追加の利上げを行ったとしても、確実に他行も変動金利を上げる確信がなければ、自行の変動金利を上げないとみられています。

 住宅ローンの変動金利を上げれば金利収入が増えるものの、他行への借り換えや預金者の流出で利益が頭打ちになるからです。

 5月に住信SBIネット銀行が変動金利の店頭基準金利を上げた背景には、預金を集めて貸す伝統的な銀行業務よりも、証券業(信用取引の手数料収入)がメインであることが大きいでしょう。

変動金利を上げても預金者が逃げないような状態をつくる

 つまり、多数派を占める伝統的な民間銀行が変動金利を上げる前の段階として、変動金利を上げても預金者が他行へ流れていかないような状態を作るだろうと見ています。

 預金者の利便性を増やすために電子マネーの利便性を追求しているのは、三井住友銀行の「Olive」です。しかし、利便性やサービスなどは数値でわかりにくいですし、期間限定のキャンペーンも一時的です。安定してわかりやすい兆候としては預金金利を上げることでしょう。

 三菱UFJ銀行は昨年から定期預金の金利を引き上げ、さらにスマホで新規口座開設・10万円定期預金で1万円還元のキャンペーンを開始しています。また、普通預金に関しても、同じく三菱UFJや三井住友銀行、みずほ銀行などの大手や地銀も0.001%から0.02%と直接的に預金金利を上げて預金の獲得に乗り出しています。

 民間銀行は、預金金利が上がれば、ある程度貸出金利が上がっても仕方ないという状態を作ることが先決になるのです。

日銀の兆候:7月会合で国債買い入れ減額計画を決定

 日銀は3月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)を解除しましたが、毎月6兆円程度の国債買い入れを続けています。6月の会合で国債の買い入れ減額を決め、7月会合で詳細計画を決定する予定です。

 国債の買い入れ減額は、直接的には長期金利に対する政策のように思われるためノーマークかもしれませんが、目に見えない形で短期金利に影響します

 日銀による国債の買い入れは金融緩和政策として行われてきましたが、6月の日銀政策決定会合で、この国債買い入れも減額するということなので、事実上の金融引き締めに移っていく予告をしたということです。

 分かりやすく言い換えると、7月からは短期政策金利が上がってもおかしくないということです。

市場関係者の意見を確認するもう一つの目的とは?

 ただし、千日太郎の個人的な予想では、7月会合で短期政策金利が上がる可能性は低いとみています。短期政策金利を上げると景気を冷やすリスクが高いためです。

 実際、日銀が3月にマイナス金利政策をやめた後、5月には住信SBIネット銀行とイオン銀行が変動金利を上げました。この状態で、次に日銀が追加利上げを行うと、金融緩和が終わったものと判断する銀行が増えて、場合によっては全銀行が横並びで金利を上げてしまう恐れがあるのです。

 多くの民間銀行は3月の日銀利上げを金融引き締めではなく金融緩和政策を継続するということを理解しており、三井住友信託銀行は4月の変動金利を下げ、SBI新生銀行は4月からキャンペーン金利を開始しています。

 日銀は市場関係者の意見を確認したうえで7月会合で今後1~2年間の国債買い入れ減額計画を決める予定ですが、千日太郎としてはこれを文字通り「意見を聞いて計画を決める」とは見ていません。

 うがった見方かもしれませんが、今後1~2年をかけて国債の買い入れを完全にやめるシナリオもあると見ています。

 市場関係者を呼ぶ目的はそれに対する反応を見るということにあり、さらに一つの目的は、過去に日銀が買った国債が満期償還されていき、マネタリーベース(市中に流通するお金)が減少し、自然な形で市場の短期金利も上がっていくシナリオを市場関係者に伝達することと見ています。 

 つまり、「日銀が予定したXデーに利上げをして変動金利が上がるのではない」というシナリオです。

金利上昇は7月から起算して1~2年のスパンを要する

 植田総裁は6月会合後の記者会見で、「条件がそろえば7月にも短期政策金利を上げる可能性がある」と述べましたが、事実上、7月に短期政策金利を上げられる条件がそろう可能性は極めて低いということになります。

 さすがに日銀総裁の口から「たぶん7月には上がらないよ」とは言えないだけでしょう。

 マネタリーベースの減少で徐々に金利が上がるというのは、言い換えると流通しているお金が少なくなって、その少ないお金を借りるためのコストが高くなるということです。すぐに効果が出ないので、ある程度のスパンで観測していく必要があるわけです。

 国債の買い入れを減額すれば、そこからマネタリーベースが減少傾向へ振れていくわけですから、理論的には市場でお金を借りようとする人の金利も上がっていくことになります(ここでは同じ条件の人で借りられる住宅ローンの上限が下がるとか、最優遇の低金利の住宅ローンを借りられる人の条件が厳しくなる、なども広い意味での金利の上昇とします)。

 今のところは、同じ条件の人で借りられる住宅ローン借入額の上限は上げる傾向が続いています。住宅ローンの最長返済期間を35年から40年や50年に拡大しているのは、その例と言えますね。新たに借りる(または借り換える)場合の変動金利は低金利競争で横ばいが続いていますが、日銀はこれがまず自然に上がっていくことを想定しているのです。

 新たに借りる人向けの変動金利の上昇が観測されるまでの期間も、1~2年を要するだろうということでもあります。

まとめ~7月に追加利上げはないと予想

 6月の日銀会合では、国債買い入れ減額の方針が決定され、事実上の金融引き締めがスタートすることになります。ただし、この目的は欧米型の金融引き締めではなく、黒田バズーカに象徴されたような異次元の金融緩和政策を正常化し、緩和的でありながらも「金利のある世界」に戻すことにあるというのは変わらないでしょう。

 あくまで千日太郎個人の見解ではありますが、7月に追加利上げはないと見ており、これから変動金利で借りている人の金利が短期的にドンドン上がるということはないので安心してよいと思います。

 ただし、植田日銀総裁はこれからは短期政策金利を操作する「普通の金融政策」を行っていくと発言しており、そのためにはあと複数回の利上げが必要になります。

 住宅ローン返済は長期にわたるものです。変動金利を選ぶということは、金利が上がるたびに、返済にどれほど影響するか? そして総額はいくら増えるのか? をその都度試算する必要があるので、よく考えて選ぶことが重要です。

【関連記事】>>住宅ローンの金利上昇リスクにどう対応すべきか? リスクを軽減するコツも紹介

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