住宅ローン金利の上昇にともない、「借り換えをすると本当に得なのか?」といった疑問を持っている方が増えてきているのではないでしょうか。実は、これまで金利差1%以上などと言われていた定説は、この金利上昇下で覆されそうです。本記事では、現在の住宅ローン借り換え事情について、銀行の内情も交えながら解説します。(金融ライター・加藤隆二、現役銀行員)
銀行は住宅ローンの借り換えを積極的に勧めていない

日銀のゼロ金利解除以降、金利は上昇局面に入り、住宅ローンの金利も上昇が始まっています。そこで、まず現在の住宅ローンの借り換え事情について、銀行の内情を踏まえて解説していきます。
金利が上昇局面になった現在でも、銀行内部では以前と変わらず、「借り換え」と言う声は聞こえていません。
少なくとも私の勤務する銀行では、住宅ローンの借り換えを推進しろといった指示やノルマはありません。
他の金融機関においても同じ状況だと思われます。その理由は、借り換えを推進するよりも新規の住宅ローンの営業をしたほうが得だからです。
銀行が借り換えを積極的に勧めない理由は、主に2つあります。
対象者が限定的で多くないから
理由のひとつは、借り換えの対象者が限られていることです。長く続いた低金利の影響で、すべての人が借り換えのメリットを享受できるわけではないのです。
少ないターゲットに力を注いでも意味がないと、銀行では借り換えに対して消極的になっています。
以前より儲からなくなったから
もうひとつの理由は、借り換えによる銀行の儲けが少なくなったからです。低金利下では住宅ローンの金利も史上最低レベルを更新してきました。
そのような金利でも、住宅ローンは30年以上など長期にわたり利息収益が期待できるので、儲かる商売と考えられてきました。しかし、異次元の低金利状態が続き、預金を元にローンを貸している銀行では、利鞘の縮小に反して人件費などの経費がかさみ、今の住宅ローンで金利キャンペーンなどの低金利はほとんど儲けなしの状態です。
このように銀行収益も厳しくなる環境下で、住宅ローンの借り換え客を獲得しても、以前に比べると儲からなくなってきたのです。
そのため、銀行は借り換えを「労多くして実り少し」として積極的に推進していないのです。
それに加えて、取り引き中の顧客が他の金融機関で借り換えをしないよう、銀行のサイトなどでは遠回しに「借り換えをしないほうがよい」といったコラムも見受けられます。
住宅ローン借り換えの「定説」は本当か?
最近、ネット上では、住宅ローンを借り換える判断の目安のひとつとして、「今のローンとの金利差が1%以上あり、ローンの残高は1,000万円以上で、残りの返済期間が10年以上残っていないなら借り換えしてもメリットは出ない」といった記述を多く見かけます。
これが最近の記事でよく見かける「定説」です。
もちろん、間違いというわけではありませんが、あくまでこれは低金利だった過去の話です。
また、近年の土地価格の上昇や建築費の高騰で、住宅価格が以前より高くなっており、必然的に住宅ローンの借り入れ額も増大しています。
このような環境下で、この定説は必ずしも当てはまらないようになったと銀行員の私は思っています。
下記のシミュレーションは、借り換えの定説に当てはまっており、借り換えメリットが大きいです。
当初借り入れ額3,000万円、35年返済、金利1.5%、毎月返済額14万4,763円(ボーナスなし)
15年目の現在残高の2,171万445円を金利0.5%で借り換えた場合(金利差1.0%)
毎月返済額
(借り換え前)14万4,763円→(借り換え後)9万5,031円
=借り換えにより毎月返済額が4万9,732円減る
総返済額
(借り換え前)3,474万3,155円 →(借り換え後)2,280万7,479円
=借り換えで差し引き1,127万1,476円総返済額が減る(借り換えによる総返済額減少2,280万7,479円ー借り換えにかかる諸費用66万4,200円)
では、金利差はもっと小さいけれど、借り入れの残高が多い、定説に当てはまらない場合はどうなるでしょうか?
当初借り入れ額1億円、35年返済、金利1.0%、毎月返済額28万2,285円(ボーナスなし)
15年目の現在残高の6,138万596円を金利0.7%で借り換えた場合(金利差0.3%)
毎回返済額
(借り換え前)28万2,285円 →(借り換え後)27万3,787円
=借り換えで毎月8,498円返済額が減る
総返済額
(借り換え前)6,774万8,496円 →(借り換え後)6,570万8,812円
=借り換えで差し引き34万5,884円総返済額が減る(借り換えによる総返済額減少203万9,684円ー借り換えにかかる諸費用169万3,800円)
このように、金利差が0.3%でも毎月の返済額が少なくなるなど、借り換えの効果は発生すると考えられます(ただし、金利が最後まで変わらないという前提です)。
【関連記事】>>住宅ローンの借り換えの進め方、注意すべきポイントとは? 銀行員が基礎から解説!
住宅ローン借り換えのメリット・デメリット
ここからは、借り換えのメリットとデメリットを整理して、それらを踏まえた上で借り換えのタイミングについて考えてみましょう。
借り換えのメリット
借り換えには、主に以下のようなメリットがあります。
毎月の返済額を減らせる場合がある
借り換えることで今よりも金利が下がるので、毎月返済額が減り家計に余裕ができます。
金利タイプを変更できる
住宅ローンによっては一度契約してしまうと、金利種類を変更できない商品もあります。たとえば、変動金利タイプは金利は低いですが、途中で固定金利に変更することはできません。
ただし、他の金融機関に借り換えれば、新しい住宅ローンで金利タイプを選び直すことができます。
団信を見直せる
住宅ローンには団信(団体信用生命保険)という保険がセットされています。住宅ローンの契約者が死亡または高度障害状態になると保険金が支払われ、ローンが完済される仕組みです。
また、がんや成人病など特定の病気になると保険金が支払われるものや、持病などで一般の団信に加入できない人でも要件を緩和して加入できる可能性のあるタイプなどもあります。
原則として住宅ローンの団信は借り入れをするときに選択して、その後は変更できません。しかし、借り換えをすれば、新しいローンで団信も再選択できるのです。
借り換えのデメリット
では、デメリットを見てみましょう。
借り換えには諸費用がかかる
登記費用や事務手数料などの諸費用がかかります。経費を上乗せして借り換えもできるので、そうすれば自己負担は減りますが、せっかく減った借金に手数料を上乗せして借り換えることで、結局、借金が増えてしまう結果になることもあります。
借り換えた銀行で金利がどうなるか不透明
今の金利に不満があるから借り換えをするわけですが、借り換えた新しい銀行の金利が今後どうなるのかわからないという不安要素があります。
【関連記事】>>住宅ローン借り換えの注意点を知らないと後悔する! 5つの得する条件とは
借り換えのタイミングはいつか?
では、金利上昇局面の現在では、借り換えのタイミングはいつなのかを考えてみましょう。
たとえば、金利が下がった場合に、他行が低金利で借り換えしてくれるという案内があればチャンスと言えるでしょう。
しかし、現在の状況では金利が上がることはあっても大幅に下がることは考えにくいです。
では、自分の収入が下がったときはどうでしょう? もちろん収入が減少すればローン返済の負担は大きくなるので、借り換えをして返済額を下げるべきかもしれません。
しかしながら、収入が下がっているということは、借り換えるローンの審査に通過できる確率が下がることを意味します。もし、審査に通らなければ借り換え自体が絵に描いた餅になってしまいます。
このように借り換えのタイミングはなかなかつかみどころがありません。
しかし、私は銀行員の経験から「結局、借り換えのタイミングは本人が決める」ことだと考えています。
つまり、「毎月の返済額が1000円でも減るなら借り換えたい」と思うのなら、その人にとってその時が借り換えるタイミングなのです。
また、「変動金利のままではこれからどんどん金利が上昇するから固定金利で借り換えたい」と考えたなら、それがその人にとってのタイミングと言えます。
【関連記事】>>住宅ローンの変動金利にした人は、借り換えなければ金利は下がらない! 高いまま固定されている可能性あり
借り換えるメリットがあるかをシミュレーションする
借り換えのタイミングがいつなのかは、ここまで説明した通り、それは人それぞれなのです。住宅ローンは自分が返していくもので、他人と比べて損得や勝ち負けはありません。
しかし、借り換えようか悩んだときに大事なのは、借り換えには諸費用が必要なので(前出)金利を比較するときには諸費用まで含んだ実質金利で表示してくれるシミュレーションの利用が便利です。この記事が読者の方々の参考になれば幸いです。
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淡河範明さん
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