住宅ローン審査で「お断り」になる本当の理由を現役銀行員が解説します。審査落ちの回答は「総合的な判断により」のひと言ですが、現場では必ず「ここがダメだった」という決定打があります。年収や勤続年数だけではない、シビアな銀行の視点を3つのケースとともに深掘りします。(金融ライター・現役銀行員 加藤隆二)
住宅ローン審査で「総合的判断」と言われる本当の理由
住宅ローン審査で「総合的判断」という理由で審査落ちするケースがあります。なぜ銀行は「年収が足りない」「この借り入れが原因だ」とはっきり言わないのでしょうか。その業界事情を紐解いていきましょう。
否決の理由を教えるのは「部外秘の審査基準」を教えることになるから
銀行が否決理由を秘匿する最大の理由は、審査の基準をブラックボックス化するためです。
たとえば「審査落ちの原因は消費者金融の利用履歴です」と伝えれば、「その履歴さえ消せば通るのか」と偽装や隠蔽で対策を講じられる恐れがあります。そのため個別の否決理由は教えられないのです。
それでも突っ込んで理由を聞かれた場合には、一般論として「借入時や完済時の年齢が高すぎる」「他の借り入れが多い」「収入が不安定、または起業したばかり」「購入希望物件の担保価値が低い」といった例を挙げることもあります。
こうした事情があれば、返済能力やリスクの面から審査が難しくなる可能性があります。心当たりがある場合は、借入金の整理や借入額の見直し、あるいはペアローンや収入合算での申し込みを検討してみてください。
AIで審査は効率化されたが、断り方が以前より難しくなった
現代の審査はAIによるスコアリング(自動判別)がメインとなり、人間による判断はあくまで最終チェックにとどまります。スコアリングで弾かれた場合、私たち銀行員にも「なぜAIがダメと言ったのか」の細かなロジックが見えないこともあります。
「AIがダメと言っているのでごめんなさい」とは言えませんので、「総合的判断」という言葉で包括せざるを得ないのです。ちなみに筆者の知っているある銀行では、行員が「AIで審査否決となりましたので、ダメです」とお客さまに言ってしまいトラブルになったケースがあります。
銀行は「融資の謝絶」に神経を使う
銀行員である私が言うのも心苦しいのですが、この「総合的判断」という表現は銀行にとってとても便利な言葉なのです。
なぜなら「〇〇がダメだから」「〇〇が足りないから」という具体的理由も含めて「総合的に判断した結果なので申し訳ございません」と、断る根拠をざっくりとぼやかして説明したことになるからです。
融資はお金が必要なニーズに応えるサービスです。応じられれば問題ありませんが、断られれば誰だっていい気分はしません。
そのため、住宅ローン審査でも事業資金融資でもお断り(銀行など金融業界では「謝絶」と表現します)するときは、担当だけでなく上司も含めて面談の場を設け、契約内容や結論に至った経緯をできる限り丁寧に説明するのが原則です。
ちなみに現在、住宅ローンで台頭しているネット銀行は実店舗がなく電話やオンラインで取引が完結しますので、審査結果の通知もメールやマイページへのログインで確認する形が一般的です。
お断りも同様に電話やメールで行われますが、これはネット銀行(正式には「ネット専業銀行」)の基本姿勢であり、謝絶の対応が不誠実なわけではありません。
ケース1:年収800万・勤続10年でも落ちた理由【勤務先の将来性】
ここまでは、銀行が否決理由を明かさない理由についてお話ししてきました。一方、長年この仕事をしていると、否決されるパターンには明確な共通点があることに気がつきます。
Aさんは勤続年数は10年、年収は800万円です。また自己資金も2割を用意しており、いわゆる「属性」には特別な問題もないと思われました。しかし結果は「否決」だったのです。
Aさんは「なぜ自分が?審査に落ちたのか?」と納得がいかない様子でしたが、我々が「総合的判断」の裏に隠した理由は、彼の「勤務先の将来性」にありました。
銀行は審査で「現在と未来」まで見ている
銀行員が審査時に見るのは、単に今の年収だけではありません。「その年収をローン完済するまでの35年間、安定して維持できるのか」という可能性を評価するのです。
Aさんの勤める企業は県内でも名の知れた老舗の製造業でした。住宅ローンのAI審査で否決の結果が出たのですが、この場合は勤務先の企業規模が小さいという理由で、将来性に不安要素があるとして否決になったと推測されます。
ここで、読者の中には「審査しているのに『推測されます』ってどういうこと?」と疑問に感じた方がいらっしゃるかも知れません。そこで「AI審査」について少し解説を加えます。
【解説】住宅ローンのAI審査では個人属性より「勤務先」を重視する傾向がある
現在の住宅ローン審査は、AI(人工知能)を活用した自動化が進んでおり、これを一般に「AI審査」あるいは個人の属性を数値化して評価する仕組みから、別名「スコアリング審査」などと呼んでいます。
AI審査では、年齢・年収・勤務先・勤続年数といった項目を、ビッグデータの解析による「モデルケース」と比較します。言ってみれば「ローンの通信簿」をつけるような形で、基準を上回っているかどうかを客観的に判定するのです。
このAI審査で重要視されるのが勤務先のステータスで、その判断基準のひとつが会社の「資本金」なのです。
ビッグデータを基にしたAI審査とは言え、正確に将来を予測することは困難です。しかし、資本金が大きければ会社が存続し続ける可能性の高さの目安になっているのです。
またこれと同様に、AI審査では勤務先の評価に明確な序列が存在しており以下のようになっています。
<AI審査における職業別の序列>
公務員・教職員
「倒産のリスクがない」という点から、最上位になっています。
上場企業
資本金や企業規模の大きさと、厳しい上場基準をクリアしているという社会的な信頼性と透明性が高く、公務員に次ぐ高評価となります。
一般企業
「資本金〇〇億円以上〇〇億円未満」「資本金1,000万円未満」など、金融機関ごとの基準によって細かく区分されます。当然ながら資本金が小さいほどランクは低くなります。
※これはあくまで一般的な銀行のケースです。AI審査の基本的な仕組みがこうなっています。
このように個人の属性以上に「所属する組織の安定性」が審査結果を左右するのがAI審査の特徴です。
ケース2:年収1,200万円でも落ちた理由【歩合給の落とし穴】
次に紹介するのは、営業職として毎年の成果を上げているBさんのケースです。昨年の年収は1,200万円と高所得に属する人です。
昨年の年収による住宅ローンの返済比率は審査通過レベルでしたが、審査結果はあえなく「否決」。その理由は、その「年収の中身・内容」にありました。
高給でも歩合制やインセンティブは不安定だと考えるのが銀行
Bさんは個人住宅やアパートを手がける大手ハウスメーカーの営業社員でした。そして年収1,200万円の内訳はほとんどが歩合給だったのです。
歩合給は景気動向や個人の成績によって激しく変動します。そのため銀行は審査において、こうした歩合給を「確実な収入」とは見なしません。具体的には、以下のような引き直し(ディスカウント)を行います。
<歩合給やインセンティブのある年収の計算方法>
- ・複数年分の平均値で計算する(昨年のピーク時は無視)
- ・歩合給部分に一定の係数(たとえば50%など)を掛けて減額評価する
- ・基本給のみで返済比率を算出する(基本給と歩合給・インセンティブに分かれている場合)
「安定」こそが最強のステータス
計算方法は銀行によっても異なりますが、多くの銀行では上記の「複数年平均」を用いています。
そしてBさんの場合、平均で引き直した年収は500万円となり、希望する借入額に対して返済比率が基準を大きく超えてしまったのです。
これは一昨年に営業不振と体調不良も重なり年収が300万円台だったからで、返済比率だけでなく年収の上下動が激しい点も不安定要素として審査の足を引っ張ってしまいました。
住宅ローン審査の視点では、年収が数千万円あっても来年の保証が無い人より、年収は一定で倒産の恐れのない大企業勤務や公務員の方が「貸しやすい」相手となるのです。
ケース3:頭金1,500万円でも落ちた理由【資金の出所不明】
最後は、少し珍しいCさんのケースです。若くして1,500万円もの自己資金(頭金)を用意していたCさんは、年収とのバランスも良好でした。
しかしCさんは「総合的判断」により否決となってしまったのですが、理由は「自己資金の出所が証明できなかったこと」にあります。
「見せ金」は自己資金・金融資産とは見なされない可能性も
Cさんの通帳を見ると、住宅ローン申し込みの前月に1,500万円が現金で預け入れられていました。
理由を尋ねると、「コツコツ貯めたタンス預金です」との説明でした。とはいえ1,000万円以上の金額を、しかも現金で預け入れしていた点に不自然さを感じました。
「決して怪しんでいるわけではなく、もう少し詳しく知りたいのですが?」と投げかけたところ、じつは親から現金でもらったお金だとわかったのです。
銀行員の経験として、子どもや孫が自宅を建てるときに家族が資金援助をするのは良くあるケースです。しかし、これらは「資金のプレゼント」として金額によっては贈与税の対象になります(※非課税制度などの特例有り)。
エビデンスなき資金は「ない」ものと同じ
親からの援助であっても、広義で自己資金とも捉えられます。しかしそのいっぽうで、住宅ローン申し込みの前月に突然お金が「降って湧いた」ような動きは審査で警戒されます。
Cさんの場合は本人の年収や勤務先などの属性が弱く、AI審査でも通過ラインギリギリだったこともあり、親からの援助は自己資金として捉えにくく審査落ちになってしまいました。
住宅ローン審査で見落としがちな2つの「落とし穴」
3つのケースを見てきましたが、実はこれ以外にも「えっ、そんなことで?」と思われるような否決の理由があります。ここでは、一般的にはあまり知られていない「審査の裏側」を少しだけ明かしましょう。
落とし穴1. スマホ機種代金分割払いも借金?
これは携帯電話やスマホの普及に伴い増えてきた事例です。現在は端末代金が数十万円する高価なものも多く、通話料金と一緒に支払っている人も多いと思います。
しかし、過去に携帯料金の引き落としが遅れていると、個人信用情報(CIC、JICCなど)に「延滞」などネガティブな情報が蓄積されている可能性があります。携帯端末の機種代金分割払いは「割賦販売」として個人信用情報の記録対象になるからです。(※通話料金は割賦販売ではないため記録されません。水道料金や税金も同様です)
自分では「携帯料金の支払いが数回遅れたくらい」とかるく思っていても、そこに端末代金の分割払いが含まれていた場合、カードローンの滞納と同様な記録が残り、住宅ローン審査にもマイナスに働くことになります。
落とし穴2. カードローンやキャッシングは「枠・ワク」を持っているだけでマイナス
消費者金融のカードを持っている、あるいは銀行のカードローン枠を作っている場合も、住宅ローンを申し込む際には注意が必要です。
なぜなら借入残高がゼロであっても、カードローンやキャッシングの利用可能枠があるだけで「いつでも借金ができる状態」と見なされるからです。返済比率の計算方法は銀行により異なりますが(空き枠全額を借入中とみなす、空き枠の一定割合で計算するなど)、いずれにせよ審査上のマイナス要因となります。
住宅ローンに限らず、使わないローンカードやクレジットカードは解約して整理しておくことをオススメします。
まとめ:住宅ローン審査を通過するために準備すべき3つのこと
住宅ローン審査とはたんなる「年収の足し算引き算」ではありません。銀行が「総合的判断」という言葉で包み隠しているのは、「長期間、一回も滞りなく返済し続けられる根拠があるか」に集約されます。
これから住宅ローンを申し込む場合、以下の3つのポイントを見直してください。
「透明性」を確保する
自己資金はかならず通帳に記録が残る形で蓄えましょう。
「安定性」をアピールする
歩合給が多い、あるいは転職直後といった場合は、準備金を多めに用意するとか、ペアローンや収入合算利用を検討してみましょう。
「身辺整理」を徹底する
使っていないクレジットカードの整理、スマホ代の支払い遅延の確認。こうした「小さなほころび」を事前に塞いでおくことが重要です。
住宅ローンは、銀行との「信頼の契約」です。銀行が何を見ているのか正しく理解することで、審査における「総合的判断」という壁は乗り越えられるでしょう。
【関連記事】>>住宅ローン審査は「銀行員を味方につける」が鉄則! 3つの心得とNG例を現役銀行員が解説
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淡河範明さん
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