住宅ローン金利の上昇局面で、金利を低く抑えているのが「フラット35」。本記事では、「フラット35」が今後、どのくらいまで金利を抑えられるのか、賢い「フラット35」の活用法、2025年度の金利引き下げ制度の拡大について解説します。(住宅ローン・不動産ブロガー 千日太郎)
市場金利の上昇に対して「フラット35」の金利は抑えられている
こんにちは、公認会計士で住宅ローン・不動産ブロガーの千日太郎です。
日銀は今年3月に開かれた金融政策決定会合で金融緩和政策の現状維持を決定しました。政策金利を据え置いた主な理由は、トランプ関税が世界経済と日本経済に与える影響を見極めるためです。
大方の予想通りの結論ですが、3月19日時点の長期金利は1.5%を超える高い水準で推移しています。これは、利上げの継続姿勢に変化がないためです。
つまり、今後の住宅ローン金利も上昇が続き、住宅購入希望者にとっては逆風となるということです。
このような金利上昇のなか、住宅ローンの金利上昇を抑えているのが「フラット35」です。
そこで今回は、「フラット35」のかしこい利用法と2025年度の金利引き下げ制度の拡大情報について解説していきます。
なぜ「フラット35」は金利上昇を抑えられているのか
まずは、日銀のマイナス金利政策が解除された直後の2024年4月から直近までの長期金利(10年国債利回り)、機構債の表面利率、「フラット35」(買取型、21-35年固定の最頻出金利。金利引き下げ制度利用前の金利)の金利推移をグラフにしました。

2024年5月から2025年3月にかけて、長期金利は089%から1.42%に、0.53%も上昇しています。
また、機構債の金利も0.5%と長期金利と同じくらいに上昇しています。しかし、「フラット35」は1.83%から1.94%へ、わずか0.11%の上昇に抑えられているのがわかります。
次に、民間銀行(りそな銀行、みずほ銀行)の35年固定金利と「フラット35」の金利推移を比較してみました。

2024年に長期金利が下がったタイミングでは、民間銀行の35年固定が低金利だったこともあるのですが、2024年12月には完全に逆転して「フラット35」が最低金利になっています。
金利のもっとも低かった2024年9月と直近の2025年3月との差では、りそな銀行が0.71%も上昇しているのに対して、「フラット35」はわずか0.12%の上昇に抑えられています。
民間銀行の住宅ローンは長期金利の影響を受けて上下します。対象にした期間の長期金利の上下幅は0.6%ほど。上昇幅が大きいように見えるりそな銀行としても、おおむねセオリー通りの金利を付けているに過ぎないのです。むしろ異常なのは「フラット35」のほうなのです。
「フラット35」の仕組み
「フラット35」は、国が100%出資する独立行政法人である住宅金融支援機構が取り扱う住宅ローンです。
一般的な「買取型」では、民間の金融機関が窓口となり、住宅金融支援機構が住宅ローンの債権を買い取るという仕組みになっています。
また、「保証型」もあり、これは民間の金融機関が債権者で、住宅金融支援機構が債権を保証するという仕組みです。つまり、民間金融機関は回収できなくなるリスクを負わない仕組みになっています。
ただし、「フラット35」の財源は税金ではありません。住宅金融支援機構は住宅ローンの債権を証券化したもの(機構債)を、機関投資家に販売することで資金を集めています。回収リスクを負うのはマーケットの投資家というわけですね。
フラット35(買取型)のスキーム図

つまり「フラット35」の金利は、機構債の表面利率に住宅金融支援機構の証券化コストと法人の運営コストを乗せて決定しているということです。
住宅金融支援機構はどこまで「フラット35」の金利上昇を抑えられる?
前述した「フラット35」の金利水準では、住宅金融支援機構が損をこうむっているのでは?と思われるかもしれません。
住宅金融支援機構の2023年度の決算発表によると、経常収益は2,854億3,700万円、当期純利益は775億8,000万円でかなり利益率が高くなっています。つまり、まだまだ金利の上昇を抑える余裕はあるということですね。
参考資料:住宅金融支援機構「統合報告書2024資料編」
住宅金融支援機構は民間金融機関のように、利益が圧迫されたからといって住宅ローンの金利を上げることはしません。
ただし、これ以上は下げられないというラインはあります。それは、機構債の表面利率です。
なぜなら、前述したように機構債を販売した資金で住宅ローンを貸すというスキームをとっているからですね。明らかに赤字となるような水準で住宅ローンの金利を設定することはできないのです。
その機構債の表面利率が直近の3月19日に発表されており、1.82%です。そのため4月の「フラット35」はこれ以下になることはありません。
参照:住宅金融支援機構「発行実績 - 月次債 (2025年3月19日現在)」
つまり、住宅金融支援機構が「フラット35」の金利を抑えるとはいっても、機構債の表面利率による限界があるわけです。
その機構債を購入するのはマーケットの投資家ですから、その投資家が取引する基準が分かればいいということになります。
2025年3月19日の機構債の条件決定日の長期金利が1.5%、機構債の表面利率が1.82%なので、0.32%のスプレッドがあるということです。この幅は直近の1年間であまり変動がありません。
つまり、住宅金融支援機構がギリギリまで金利上昇を抑えることができる金利のラインと、マーケットの投資家が機構債を買ってくれる金利のラインが交差するところは、長期金利プラス0.3%ということになります。
ちなみに、2025年3月は長期金利プラス0.5%で「フラット35」の金利が決まっています。限界に対して、今のところは0.2%の余裕が残っている状態ですが、この0.2%には、機構の管理コストや販売コストが含まれますので、ギリギリまで上昇を抑える前に限界が来る可能性もあるでしょう。
【関連記事】>>来月の住宅ローン金利(フラット35、変動金利、10年固定)を予想! 金利の推移、今後の金利動向を確認しよう
「フラット35」の金利をもっと下げる、かしこい借り方とは
今のように長期金利が上昇局面にある環境下では、「フラット35」が割安に金利を固定できる選択肢ですが、前述したように金利上昇を抑えるのにも一定の限界があります。
そこで、「フラット35」の金利を下げる方法および、金利の引き下げ制度を併用することで、金利上昇の影響を減らす手法について紹介しましょう。
その手法とは以下の通りです。
②金利の引き下げ制度を利用し、当初期間の金利を下げる
①団信不加入を選択し、掛け捨ての生命保険に加入する(若い人向け)
団信(団体信用生命保険)は、民間の住宅ローンでは必須となっていますが、「フラット35」では団信不加入を選択できます。
これによって、団信込みの金利から0.2%の引き下げとなります。
団信の保険料は金利に組み込みとなっており、病気のリスクが高い年齢の人も、病気のリスクが低い年齢の人も同じ金利です。
つまり、リスクの低い若い人は相対的に高い金利を負担していることになるわけです。
住宅ローンを組む年齢の中央値よりも若い人(30代前半まで)であれば、団信不加入とし、別途、掛け捨ての生命保険に加入することで、金利に組み込みとなった団信のコストよりも低コストで住宅ローンの残高をカバーできるわけですね。
SBIアルヒのスーパーフラットという「フラット35」(保証型)では、団信不加入とすることで0.28%の引き下げになり、さらに団信不加入のメリットが増えます。
「フラット35」(保証型)の商品の中には、頭金を多く入れることによってさらに金利が引き下げとなるものがあり、SBIアルヒや住信SBIネット銀行などがそうした保証型の「フラット35」を取り扱っています。
先入観を持つことなく、自分にとって有利になる方法を選択してください。
②金利の引き下げ制度を利用し、当初期間の金利を下げる
子育て世帯であれば、2024年2月からスタートした「フラット35」の金利引き下げ制度である「子育てプラス」を利用することをおすすめします。
子育て世帯や若年夫婦世帯を対象に獲得ポイントに応じて当初の期間、最大で年1%の引き下げになります。
今後も日銀の想定どおりに利上げが続けば、今の変動金利と上下関係が逆転する可能性もありますね。
「子育てプラス」の対象となるのは、以下のいずれかの条件を満たす世帯です。
1. 子育て世帯 → 申し込み時に18歳未満の子どもがいる世帯
2. 若年夫婦世帯 → 夫婦いずれかが40歳未満の世帯
このいずれかに該当すれば、「子育てプラス」による金利の引き下げを受けることができます。
「子育てプラス」では、家族構成や物件の住宅性能、管理修繕体制、エリアに応じてポイントを獲得し、その合計ポイントによって引き下げとなる金利と期間が決まります。
家族構成 → 子ども1人あたり1ポイント、子どものいない若年夫婦は1ポイント
住宅性能 → 住宅性能に応じ1~4ポイント
管理修繕 → 長期優良住宅や管理計画認定マンションなどは1ポイント
エリア → 地域活性化や子育て支援・空き家対策など1~2ポイント
1ポイントにつき5年間、年0.25%の引き下げになります。年間の最大引き下げ幅は年1%です。
たとえば、合計4ポイントであれば当初の5年間は年1%の引き下げとなり、合計5ポイントでは当初の5年間は年1%の引き下げ、その後6年目から10年目までは年0.25%の引き下げとなります。
獲得できるポイントに上限はありません。理論的には35年間ずっと年1%の引き下げを受けることもできます。
子育て世帯に該当しない場合でも、購入する物件の住宅性能、管理修繕、エリアによって得られるポイントの合計で金利の引き下げがあります。ただし、獲得できるポイントは4ポイントが上限になっています。
【関連記事】>>「フラット35子育てプラス」の1%金利引き下げで、住宅ローン金利上昇も怖くない?
2025年度の「フラット35」制度改正で金利引き下げが拡大
そして、ありがたいことに2025年度には金利引き下げ制度がさらに拡大します。
まず、フラット35「中古プラス」がスタートします。
2025年4月以降の物件検査申請分から、良質な中古住宅を取得する場合に「フラット35」の借入金利が当初5年間0.25%引き下げとなります。
指定の検査箇所について目視で確認できる範囲において、劣化などがないことを確認するだけなので、受けられる中古住宅の範囲はかなり広いです。
また、2025年4月以降の物件検査申請分から、「フラット35 リノベ」でリフォーム工事金額の要件がなくなり、適用を受けやすくなります。
そして、2025年10月以降の資金実行分からは、【フラット50】の融資対象住宅の範囲が広がります。
長期優良住宅に加えて、予備認定マンション、管理計画認定マンションの取得でも使えるようになります。
このように、ここ最近は金利引き下げ制度の拡大と対象となる住宅の緩和が続いているので、ぜひ活用することをおすすめします。
「フラット35」は、今おすすめできる固定金利タイプの代表格
今のように、金利ある世界への過渡期において割安な固定タイプを選ぶなら、公的融資の「フラット35」は非常に有力な選択肢になります。
金融市場の長期金利に連動してはいますが、民間銀行よりも金利上昇が緩やかになる傾向があり、急な上昇局面でも比較的安定した水準にとどまることが期待できます。
とくに「子育てプラス」などの制度を活用できる方は、当初5年から10年の金利が大きく引き下げられ、民間の変動金利並み、あるいはそれ以下になるケースもあります。
金利が本格的に上がりきっていない今こそ、固定金利を低水準で確保できる最後のチャンスかもしれません。
【関連記事】>>フラット35の金利、手数料を徹底比較【最新版】 おすすめの銀行は?
132銀行を比較◆住宅ローン実質金利ランキング[新規借入] |
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プロの評判・口コミ
淡河範明さん
りそな銀行の住宅ローンは、まず金利設定がかなりチャレンジングです。期間固定金利の場合、固定期間終了後も当初の金利優遇がずっと大きいままなので、金利は低いですね。そのため借り換えをするならメリットが大いにあります。
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