2025年9月の金融政策決定会合で政策金利は据え置きでした。本記事では、会合後の植田日銀総裁の会見を深掘りし、政策金利の出口と今後の到達金利のシナリオを独自に予想しました。これを踏まえて、今後の住宅ローンの金利動向をフラット35、民間銀行の金利タイプごとに解説します。(住宅ローン・不動産ブロガー 千日太郎)
2025年9月の日銀会合、政策金利は据え置き

こんにちは、公認会計士の千日太郎です。
2025年9月に開かれた日銀の金融政策決定会合では、市場の予想どおり政策金利は、0.5%程度で据え置きでした。米国の関税政策による経済への不確実性を懸念したものですが、私は単純にハト派※とは見ていません。
※景気刺激策に積極的で金融緩和策を好む人々。その反対をタカ派という。
同時に、上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(J-REIT)の売却を決定しています。これは、黒田前日銀総裁時代の異次元緩和政策からの正常化に向けて舵を切ったものであり、いよいよ出口に向けた局面に入ったといえるでしょう。
ただ、全量を売却するには100年以上かかるとの試算です。それでも、市場に影響しない規模感で粛々と処理を進める姿勢は、正常化を前に進める強い意思の表れと見ています。
政情不安がある中で利上げを避けつつも、市場に対して利上げ姿勢を継続するというメッセージを残したということになります。(出典:日本銀行「当面の金融政策運営について 2025年9月19日」)
会合後の国内債券市場での新発10年国債利回りは、前日終値の1.600%よりも0.041ポイント高い1.641%で取引を終えています。
今回は、「金利据え置きでも利上げ継続」という市場とのコミュニケーションが反映されたものと見ています。
今後の利上げ時期による到達金利のシナリオ
ここからは、住宅ローンを検討している方に向けて、日銀の今後の利上げタイミングと到達金利(ターミナルレート)※と利上げ後の景気動向を予測します。
※金融引き締めを目的とした利上げサイクルの最終的な着地点となる政策金利水準を指す。
物価の上昇が本格化する前に利上げを始めるオンタイムであれば、回数を少なく抑えられ、金利も低く収まる可能性があります。
逆に利上げが遅れるビハインド・ザ・カーブの場合は、追加引き上げが必要になり、金利は上振れしやすくなります。
また、利上げが早すぎると景気が冷え込み、到達金利に達する前に打ち止めとなるケースも考えられます。
10月に利上げがある場合
10月に利上げが行われた場合、米国の関税政策などの悪影響が出なければ、オンタイムで対応できる可能性と、ビハインド・ザ・カーブである可能性の両方があります。この場合、到達金利は条件によって異なります。
物価が2%台前半で落ち着けば、政策金利は1.0%前後への引き上げにとどまる可能性が高いでしょう。逆に、インフレ圧力が続き、需要も強い状態が続けば、1.5%〜2.0%程度まで上限金利を引き上げざるを得ない展開も想定されます。依然としてやや広いレンジでの可能性が維持されると見ています。
そして、同じ10月利上げでも、米欧の景気悪化に巻き込まれて景気が早期に減速し関税の影響が強く出れば、その時点で利上げは打ち止めとなってしまいます。この場合は0.75%が上限になるでしょう。変動金利で実行予定の人には有利になります。
ただ、金融政策の正常化を目指している日銀としては避けたいと思っているシナリオの一つです。
12月~来年1月に利上げがある場合
一方で、12月や来年1月まで利上げが見送られた場合ですが、これもオンタイム寄りでしょう。
日銀が経済や物価情勢の展望で成長鈍化を予想している2026年度には少なくとも1回。回復が予想される2027年度にあと1〜2回の追加利上げが、1.0%〜1.5%のレンジに収まるとしています。これは、比較的可能性が高いと見ているシナリオでもあります。
むろん、このタイミングでも米国の関税による景気減速が大きく、利上げが打ち止めとなる可能性は残っています。関税はいったん米国民が負担し、企業の業績には遅れて影響してくるためです。
追加利上げができない場合
2026年度に入っても日銀がほとんど動くことができなければ、単発の小幅引き上げで終了し、政策金利の上限は0.75%にとどまる可能性もあります。
ただし、正常化へ向けての利上げ姿勢を維持している日銀としては、これだけは避けたいと思っているシナリオなので、可能性としては低いです。
日銀利上げシナリオと適合する住宅ローン金利タイプ
住宅ローンをこれから組む人にとって重要なのは、このシナリオがローン選択に直結する点です。
もし「早く利上げを行い、その後は1回程度で頭打ちになる」または「利上げできなくなる」シナリオが現実化すれば、変動金利型の住宅ローンが有利になるでしょう。短期的に金利が動いても、その後は横ばいになるため、低金利の恩恵を受けやすいからです。
反対に、「オンタイムで利上げが行われ、2年以内に2回以上利上げが行われる」または「利上げ開始が遅れ、その後4回以上にわたって金利が積み上がっている」展開になれば、フラット35のような全期間固定型のほうが安心です。長期的な支払いを安定させ、将来の追加利上げのリスクから家計を守れる点が強みになるでしょう。
こうしたシナリオを頭に入れて具体的な金利を見ることで、ご自身の住宅ローン選びの解像度がより上がることと思います。
10月の住宅ローン金利
こうしたシナリオを踏まえたうえで、10月の金利を見てみましょう。
フラット35は横ばい
9月19日発表の機構債(住宅金融支援機構債)※の表面利率は2.12%(前月比+0.04)に上がったため、フラット35の店頭金利も上がる可能性がありましたが、フラット35買取型の金利は1.89%のまま横ばいにとどまりました。
※フラット35は、住宅金融支援機構債という債権を発行して機関投資家に販売することで、資金調達を行っている。
住宅金融支援機構は、金利が過度に上がらないよう必要に応じて調整することがあります。マーケットから見るとかなり割安な金利になっています。
なお、フラット50(50年固定)は、フラット35に+0.10%程度の上乗せで1.99%。超長期でこの水準を固定できるメリットは小さくありません。
【関連記事】>>2025年10月の住宅ローン金利(フラット35、変動金利、10年固定)を予想! 金利の推移、今後の金利動向を確認しよう
ローンチスプレッド拡大:長期資金に“高めの要求利回り”
注目すべきはローンチスプレッド(機構債の表面利率と同時点の10年国債利回りの差)です。2025年春は約0.35%でしたが、現在は0.51%まで拡大しています。
これは、銀行や生命保険会社などの長期投資家が住宅ローン債券に対して、より高い利回りを要求しているサインです。言い換えれば、市場が将来の利上げを先取りしている状況です。
その結果、長期固定型の民間住宅ローンやフラット35の金利は、国債利回りが横ばいでも、相対的に上がりやすい状況が続きます。
民間金融機関の住宅ローン:変動型は横ばい、固定型はじわじわ上がる
10月の変動金利はおおむね横ばい状態です。ただし、みずほ銀行は主要行から約6カ月遅れで調整に入る独自ルールがあり、0.775%(+0.25%)に上がりました。(参考:みずほ銀行の変動金利はなぜ0.15%しか上がらなかったのか? 住宅ローン金利見直しルールのカラクリを解説!)
固定金利(10年・20年・30年)は、ローンチスプレッドの拡大により総じて上昇傾向にあります。8月から9月にかけても金利を上げた銀行が多く、9月から10月はもう一段の上昇がありました。
利上げ時期の本命は12月から来年1月、繰り上げ返済は焦らずに
最後に、現状の繰り上げ返済ですが、現行の低金利下においての効果は薄い状況。変動金利1.3%で50万円を繰り上げたとしても、年あたりの利息軽減は約6,500円にとどまります。もちろん累積効果はありますが、現時点で破綻回避のための借り換えや繰り上げを急ぐ局面ではありません。
不安を和らげるための安心材料として、固定金利や長期固定金利を選ぶ発想は一理あります。しかし、繰り上げ返済の是非は、キャッシュフロー余力、流動性確保、今後の収入不確実性とセットで判断しましょう。
【関連記事】>>住宅ローンの金利推移(変動・固定)は? 最新の動向や金利タイプの選び方も解説
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淡河範明さん
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