住宅ローンは「毎月返済して完済すれば終わるもの」と思われがちです。しかし現実には、死亡や離婚など、予期せぬ形で終わりを迎えるケースも少なくありません。本記事では、こうしたケースに直面する以前に知っておきたい準備や注意点について解説します。(金融ライター・加藤隆二、現役銀行員)
契約者の死亡により団信で住宅ローンが完済するケース

住宅ローンの契約時に団体信用生命保険(以下、団信)に加入しておくと、契約者が死亡または高度障害になった場合に、その時点の住宅ローン残高相当額が保険金として支払われローンが完済されます。
ただし、契約に当たって説明を受けるのですが、手続きや注意点を十分に理解できていないケースも少なくありません。
団信は頼りになる制度ですが、注意すべき点が3つあります。
1.団信によるローン完済には手続きが必要
筆者が勤務していた銀行に、住宅ローンの契約者であったAさんが急逝されたと奥様から連絡が入りました。葬儀や各種手続きに追われる中で、ローンを一人で返せないのではという不安を抱くようになったとのこと。
本件のように、ローン契約を夫婦どちらかの一方に任せていた場合、具体的な契約内容や手続きを把握していないケースが多く見られます。団信は、本人の死亡で自動的に適用されるものではなく、残された家族が手続きをする必要があります。
団信は、預貯金や不動産の相続手続きとはまったく異なる手続きとなります。一般的な相続の手続きは、相続人全員の合意形成(遺産分割協議)が必要になるなど、時間を要します。
しかし、団信の手続きは、ケースにより異なることもありますが、基本、相続人の代表者のみでも進めることができます。まずは、ローンを契約している銀行に連絡することが大事です。
2.口座凍結と予期せぬ延滞
ローン名義人が死亡すると、まず、銀行の預金口座が凍結されます。これは相続人がお金を引き出すのを防ぐための措置で、同時に住宅ローンにも影響を与えます。
団信で最終的にローンは完済されますが、保険金が支払われるまでには通常1〜2カ月かかります。その間に返済日が訪れると残高不足と同じ扱いになります。その結果、延滞扱いになってしまうのです。
もちろん、最終的には保険金で元金と延滞した期間に発生した利息(遅延損害金)も合わせて支払われるのが一般的です。しかし、何らかの理由で団信の手続きが大幅に遅れると、補償範囲を超えてしまい、その分を家族が負担することがあります。
このような事態を避けるためにも、名義人の死亡後は、すみやかに銀行へ連絡を入れ、団信手続きを早急に進めるようにしましょう。
3.告知義務違反という最悪のシナリオ
団信は生命保険の一種であり、加入時には健康状態や病歴を正しく申告する義務があります。もし虚偽や隠し事があれば、保険金が支払われないという事態になります。
たとえば、持病を隠して加入し、その病気が原因で死亡した場合です。保険会社は保険金の支払いの審査のため、健康保険の利用履歴や通院記録を詳細に調べます。その結果、虚偽申告が発覚すれば保険金は支払われません。
家族には数千万円の住宅ローンがそのまま残ります。家を手放すことになる可能性すらあります。
こうした調査は、加入したときの本人の同意に基づいています。したがって、調査に際して家族の同意を得るようなことはなく、また、調査に反対を申し立てても拒むことはできません。
実際に、虚偽の告知で融資が実行され、後に発覚して家族や銀行の双方を巻き込む大きなトラブルに発展したケースがあります。最終的に住宅は売却され、担当した銀行員も処分を受けました。
告知義務違反は、家族に計り知れない負担を残します。家族を守るためにも、名義人当人は、団信に加入する際には嘘偽りなく申告するようにしてください。
【関連記事】>>住宅ローンにがん団信は付けるべきか? 団体信用生命保険の基本を銀行員が解説
別居や離婚という状態になって、返済が滞るケース

離婚や別居は珍しくなくなりました。関係が破綻した後、残った住宅ローンが重い鎖となってしまうケースもあります。
さまざまな理由で別居、さらには離婚となった場合。話し合いで「家のローンは名義人が払い続ける」との約束で、登記簿謄本(家の名義)もローンの名義もそのまま。この場合、残った家族は家を失わずに済みます。
しかし、当初は返済が続いていても、名義人に新しい家族ができれば返済が滞りがちになるのが現実です。
返済が滞れば、銀行からの督促は残った家族のもとに今まで通り送られてきます。銀行は夫婦が離婚した事実を知らず、名義人の元に送り続けるしかないのです。
私が経験したケースでも、支払い遅延の督促が強まる中で名義人本人と連絡が取れず、家族が相談に来ることが多々ありました。銀行は事情を聞きつつも、基本的には契約に基づき処理を進めるしかありません。延滞が続けば、代位弁済や競売へ進むのが原則です。
そもそも、住宅ローンの契約には「契約者や物件の状況に変化があれば銀行に届け出る」義務があります。これを怠れば、全額一括返済を求められる(期限の利益の喪失)こともあります。
そのため、名義人が別居や離婚などで転居、転出したときは、すみやかに銀行に届け出ることが重要です。
ローンが残っている場合は、公正証書を作成する
離婚時の不動産に関する取り決めは決して当事者間の口約束で済ませるべきではありません。弁護士や司法書士などの専門家を交えて、公正証書※を作成し法的に拘束力を持たせることです。
※公正証書:私人(個人または会社その他の法人)からの嘱託により、公務員である公証人がその権限に基づいて作成する公文書のこと
作成した公正証書に「支払いが滞った際には裁判手続きを経ることなく名義人の給与や財産を差し押さえる」といった記載事項があれば強制執行も可能になります。
夫婦やパートナーとの別居、離婚の場合は、冷静に法的な手続きを進めることが大切です。とくに住宅ローンが残っている場合、相手の善意に頼らず、事務的かつ法的に整理することが残った家族の生活を守る最善の方法です。
【関連記事】>>住宅ローンの督促、取り立ての実態は?銀行員が語るリアルな取り立て現場
ペアローンまたは連帯債務のローンが離婚で終わるケース
家族形態の変化や働き方の多様化により、住宅ローンの商品自体も変わってきています。代表的なのは以下の3つです。
- ・ペアローン:共働き夫婦がそれぞれの名義で借りる
- ・連帯債務:一方が主債務者、もう一方が連帯債務者となる
- ・共有名義:一人が借入れ人、もう一人が自己資金で持ち分を共有する
力を合わせて手に入れたマイホームも、両者の関係性が変化すると状況が異なってきます。共有や連帯という足かせが、新しい人生への再スタートを阻むケースも少なくありません。
離婚しても返済義務はなくならない
ペアローンは婚姻関係と無関係な契約なので、離婚しても返済義務は残ります。一方が滞納すれば、相手に「連帯保証人」として請求されます。また、共有名義の不動産は相手の同意がなければ売却もできず、解決は難航します。
・相手の持ち分を買い取る:単独でローンを組める収入と銀行の再審査が必要
・第三者に売却し清算:もっともシンプルだが、オーバーローン時は自己資金で補填が必要
・負担付き贈与:片方が住み続け、もう一方の持分とローンを引き継ぐ方法。税務上の課題あり
・持ち分のみを専門業者に売却:安価になりやすく、相手との新たなトラブルのリスクも
いずれも専門家の助言なしに進めることは極めて困難です。弁護士や専門家を交えて冷静に解決策を探ることが、ことの重大化を避けるための鍵となります。
【関連記事】>>離婚したのに保証人を外してくれない!住宅ローンの連帯保証人のリスクが分かる苦いエピソード
まとめ
住宅ローンには、予期せぬ死亡や夫婦関係の変化で起きるリスクが潜んでいます。いざという時のために、団信については契約者の家族もその内容や手続きについて確認しておきましょう。夫婦でローンを組む際は、ペアローンや連帯債務など、それぞれのメリット、デメリットをよく確認しておきましょう。
住宅ローンは、死亡や離婚どちらの場合も、契約内容の正しい理解と早めの銀行への連絡、そして必要に応じて専門家に相談することが生活と住まいを守る重要なポイントです。
【関連記事】>>住宅ローンの融資額を増やすなら「50年長期ローン」「ペアローン」のどちらがいい? 銀行が教えてくれない正解を解説!
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淡河範明さん
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