日銀の0.25%利上げで政策金利は0.75%となりました。今後の住宅ローン金利はどうなるのでしょうか。本記事では、金融政策決定会合後の植田日銀総裁の会見での発言を深掘りし、その真意と住宅ローンの変動金利、固定金利、フラット35への影響を解説します。(住宅ローン・不動産ブロガー 千日太郎)
日銀が0.25%利上げで政策金利は0.75%に
こんにちは公認会計士の千日太郎です。
12月19日の日銀金融政策決定会合で0.25%の利上げが決定し、政策金利は0.75%になりました。しかし重要なのは、利上げした事実よりも植田日銀総裁が利上げ後に繰り返した「まだ緩和的」という評価です。これは安心材料にもなりますが、同時に、利上げ余地の宣言にもなり得ます。
住宅ローンを借りている方やこれから借りる方は、「変動金利にはいつ反映されるのか」「固定金利はなぜ先に動くのか」「フラット35はどこまで政策で守られるのか」が気になるところでしょう。
植田総裁の会見を読み解くと、住宅ローン金利の見通しは、今回の政策金利0.75%よりも、次の0.25%をどう織り込むかに移ったと言えます。
日銀の植田総裁は中立金利まで複数回の利上げを想定している
筆者の見解として、現在の植田総裁のスタンスは基本的にタカ派※寄りです。条件がそろえば利上げを進める。しかも今回は、「利上げできる状況にある」という認識が会見全体の発言からにじみ出ています。
※景気刺激策に消極的で金融緩和策を好まない人々。その反対をハト派という。
一方で、日銀としては長期金利の過度な上昇を避けたいという思いもあります。そこで植田総裁は、タカ派発言の中に保険として、ハト派的な表現も混ぜているのです。ポイントは、その保険がブレーキとも取れるし、次の利上げ余地とも取れるような構造になっている点でしょう。
会見後、市場は円安と長期金利の上昇(2.0%超)という反応を示しました。後述するように、円安は一見「ハト派」、長期金利上昇は「タカ派」です。つまり、市場が植田総裁の発言を両面で解釈し、方向感を取りづらくなっている状況というわけです。
「全会一致」と「30年ぶり」に特別な意味はない
今回の利上げは全会一致でした。委員から反対が全くでなかったという事実は大きいでしょう。さらに記者から「30年ぶりの水準」の歴史的意義を問われた際、植田総裁は「特別な意味はない」 とクールに答えています。
これは「0.75%が高い到達点」ではなく、通過点だという含みを持ちます。つまり、シンプルに0.75%で終わりではないということです。
中立金利「下限」まで距離がある
そして、今回の記者会見でもっとも注目すべきは、中立金利※との距離感でしょう。植田総裁は会見で次のように述べています。
※中立金利とは、日銀が金融政策で重視している指標で、景気を刺激も抑制もしない中立的な金利水準のこと。2024年8月に、日本の中立金利は1.0%~2.5%の範囲にあるとしている。
「中立金利の推計値の下限には、まだ少し距離がある」
「実質金利は極めて低い」
この言い回しは重要です。仮に中立金利の下限が1.0%で、政策金利が0.75%なら、差は0.25%です。
つまり、1回の利上げに相当するのですから、一般的な感覚として「距離がある」とは言えないのです。
ここで植田総裁があえて「1.0%に距離がある」と言わず、「中立金利の推計値の下限に距離がある」と言ったことには含みがあります。
記者からは「中立金利の推計値」が、日銀の公開しているデータの下限の1.0%であるという前提に立ってこの点をさらに追及されていました。しかし、植田総裁からは「あくまで推計値には幅がある」と返答しており、「距離がある」という発言を修正することはありませんでした。
つまり、筆者の解釈ではこうです。植田総裁の頭の中の下限は必ずしも1.0%ではない。中立金利までに1回ではなく、複数回の利上げを想定しているということです。
ハト派に見せて実はタカ派のサイン「引き締め効果のエビデンスがない」
植田総裁はこれまでマイナス金利政策の撤廃から利上げを重ねてきたことに言及し、その経済への影響について次のように語っています。
「利上げによってものすごく強い引き締め効果が出たわけでもない」
「金融緩和の度合いが急速に縮まっているエビデンスはない」
これは一見するとハト派の発言です。「まだ緩和的」「引き締めは強くない」と言っているからです。ただ、裏返すと「引き締め効果が強く出ていないなら、利上げ余地は残っている」という意味になります。
この発言は「利上げできない理由」ではなく、むしろ利上げを続けても直ちに強い引き締めにはならないという理屈づけとして機能します。為替市場がこれを利上げに消極的なハト派だと判断すると円安方向に振れます。
しかし同時に、債券市場が大きな利上げ余地だと読み取ると、長期金利が上がるというわけです。結果、今回のようなねじれが起きたのかもしれません。
賃上げと米関税の不確実性の位置づけが変わった
今回の会見で明確に変わったのが、「賃上げ」と「米関税の不確実性」の金融政策に対する位置づけです。
これまで両者は利上げの条件、または利上げを阻む要素として位置づけられてきました。しかし今回の会見では、利上げの積極的な根拠として語られ始めたという点です。
賃上げは「高確度」利上げ判断の条件から利上げペース判断へ
賃金について、植田総裁はかなり踏み込んだ発言をしました。「賃金上昇の持続は高確度で実現していく」という趣旨の説明です。
つまり、賃金の持続性を見極める段階から、実現する蓋然性が高い段階へ明確にシフトしています。ここが大きいのは、以前まで利上げ判断の条件だった「賃金が上がるかどうか」が、事実上弱まることです。
・2025年12月まで:利上げするかしないかの分岐点
・2026年から:利上げペースを速めるか緩めるかの判断材料
このように役割が変わっていくことの布石になっています。さらに中小企業についても、総裁は支店のヒアリングから「中小でも賃上げに前向きな動きがある」 と示しつつ、より小規模な層にバラつきが出る可能性があるとして注視する姿勢も示しました。ただし、これはタカ派に軸を置きつつ保険もかけるいつもの型と見ます。
また、記者から「2026年に物価上昇が鈍化し、2.0%を下回る局面でも利上げできるのか」と問われた場面では、総裁は「賃金が上がり、それが基調的物価に波及していくなら、利上げはあり得る」という趣旨で答えています。
ここで日銀が強調しているのは、ヘッドライン(見た目の物価)より、基調的物価 を重視するという姿勢です。見た目の物価が下がっても、賃金と基調が崩れなければ利上げは止まらないということです。ここはかなり利上げに前のめりな発言でしょう。
米国・関税不確実性は据え置き理由から利上げペース調整へ
以前は、米国不確実性は「利上げを見送る根拠」として機能していました。ところが今回は、賃金と同様に、役割が変わっています。
今回、米国の関税政策をめぐる不確実性について、日銀は「残るが低下」という評価に変えて利上げの根拠として採用しました。
・2025年12月まで:利上げ見送りの理由
・2026年から:利上げペース調整の要素(悪化しない限り利上げ継続)
つまり「不確実性は残る」という文言は保険として残しつつも、よほどのネガティブなデータとして顕在化しない限り、利上げを続けていく体勢になっているのです。
利上げが与える住宅ローンへの影響(変動金利、固定金利、フラット35)
では、住宅ローンへの影響です。変動金利は政策金利の影響をダイレクトに受けますが、銀行の金利見直し月までのわずかなタイムラグがあることに加えて、5年ルールの特性を理解しておく必要があります。
これに対して、固定金利は債券市場で形成される長期金利の影響を受けるため、利上げを織り込んで前倒しで上がっていく傾向があります。
ただし、フラット35は国策を反映して急激な金利上昇を抑える傾向があります。
変動金利の上昇は既存と新規の2層構造
政策金利の0.25%引き上げは、各行の基準金利に反映され、最終的には借り手の変動金利にも波及します。
ただし、多くの銀行では、基準金利の見直しは4月(または5月) に行われるため時間差が生じます。
さらに、5年ルールの適用がある場合、5年間は毎月の元利均等返済額が利上げ前の水準で維持されるため、体感としては5年遅れでやって来る感じです。
そして、6年目からの毎月返済額は、5年間返済が増えなかった分の帳尻を合わせるため、5年ルールの適用がないケースよりも高く上がるので注意が必要です。
一方で、新規借り入れについては別の論点があります。日銀の利上げが続くと銀行が見込むなら、引下げ幅(基準金利からの優遇幅)を縮めて実質金利を先に上げてくる可能性があります。
つまり、追加の利上げを見込んだ先回りの金利上昇となる可能性もあるのです。
12月の変動金利の水準+0.75%以上を想定する
そして「中立金利の下限まで距離がある」という総裁発言です。0.75%から複数回の利上げなら、政策金利は低くても1.25%まで進むシナリオを想定しておくべきです。
この場合、変動金利は2025年12月現在の水準より0.75%は上がるということになります。新規に借りる人であれば引下げ幅の縮小によって、借りるときの金利はさらに上昇している可能性があります。
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固定金利は長期金利の影響を受ける
固定金利は長期金利の影響を強く受けます。会見後に長期金利が2.0%を超えて推移しているなら、民間の固定金利は翌月(1月)に大きく上がる可能性が高まります。
長期金利上昇は、債券市場が総裁の発言を千日と同じく「タカ派」と見ているサインです。利上げの事実よりもこの点を直視する必要があります。
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フラット35は政府の政策意向がブレーキになる
しかし、フラット35は住宅金融支援機構が提供しており、政府の政策意向が反映され、急激な金利上昇局面では、相対的に上昇を抑える方向に働きます。
さらに利用促進策として、融資上限の引き上げ(8千万から1億2千万円に引き上げる議論がある)や、「子育てプラス」の借り換え適用拡大の議論など、制度面の拡充も進んでいます。金利だけでなく制度改正のタイミングを見て選択することをおすすめします。
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まとめ
今回の利上げ会見では、わかってはいても30年ぶりの水準ということで大きなショックを受けられた方も多いかと思います。しかし、数字そのものよりも、日銀がどこを見て政策判断をしているのかを丁寧に読み解く必要があります。
今回の利上げにより、住宅ローンの変動金利は2026年4月に引き上げられ、実際に返済に影響するのは7月からの銀行がほとんどでしょう。
金利はこれからも動きます。しかし、住宅ローンの借り換えやこれから借り入れを検討している方は、急いで結論を出す必要はありません。
住宅ローンは一度決めたら長い付き合いになります。その時々のニュースに振り回されるのではなく、落ち着いて選択することが大事です。
これからも必要なタイミングで情報を出していきますので、住宅ローンの判断材料として役立てていただければと思います。
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