日銀の利上げにより、今後、住宅ローンの変動金利が上がります。そのため、固定金利への借り換えを検討されている方も少なくないでしょう。本記事では今後の利上げ回数と返済額を試算し、変動から固定に借り換えたほうが得か損かの境界線を探ります。(住宅ローン・不動産ブロガー 千日太郎)
借り換えタイミングを逃すありがちな失敗
こんにちは、公認会計士の千日太郎です。
今回の日銀の政策金利の利上げに伴い、住宅ローンの変動金利が上昇傾向にあります。こうした状況下で、今、変動金利から固定金利へ借り換えるべきか否かの判断ポイントをお伝えします。
借り換え判断が遅れる方にありがちなのは、「変動金利のほうがまだ低いから」と現状に引っ張られ、借り換えのタイミングを逃してしまうことです。
また、変動金利の5年ルールは、住宅ローンの借り手である債務者を金利上昇から守ってくれるものですが、金利が上がっても5年間は毎月返済額に変化がないため、金利上昇の実感が伝わりにくくなっています。
2024年から現在まで3回の利上げが行われ、住宅ローンの基準金利はすでに2回引き上げられましたが、5年ルールの適用があるため、実際に毎月の返済額に影響してくるのは2029年からです。
【関連記事】>>日銀の追加利上げで「金利のある世界」の到来! 住宅ローンを変動金利で借りている人は5年ルールのツケを払えるか?
変動金利が上がると、総支払額は確実に増えます。一方で固定金利は、借り換えた時点で金利の天井は固定となります。つまり、「あと何回の利上げがあれば、固定金利へ借り換えた場合の総返済額と損得が逆転するか」が判断の決め手となります。
そこで、変動金利が今後どの程度上がると、借り換えた固定金利の総返済額を上回ってしまうのか。その具体的な境界線を検証します。一般的な住宅ローン利用者をモデルケースとし、以下の4ステップで分析していきます。
①変動金利が利上げ1回ごとに毎月返済額と総返済額にいくら影響するか
②フラット35借り換えの制度改定(子育てプラスなど)を踏まえる
③結局、「何回の利上げで変動と固定が逆転するのか」を数字で判定
④その回数の可能性を日銀の政策から探る
変動金利が利上げ1回ごとに毎月返済額と総返済額にいくら影響するか
まずは、借入額4,500万円、借入期間35年として、利上げが進むと毎月返済額と総返済額がどのような動きになるのかを整理しておきましょう。
変動金利は1.25%で2年の間に追加で+1%上がると想定
3年以上前(2023年以前)に住宅ローンを組んだ人ならば、これまでの利上げの結果、変動金利が1.00%前後という人が多いので、1.25%はやや高いと考える方がいるかもしれません。
これは、2025年12月の利上げが、2026年1月現在ではまだ反映されていないためです。2026年4月または5月には、銀行の金利の見直し月でさらに0.25%程度の引き上げが行われます。
つまり、金利1.25%は、過去に0.5%の変動金利で借りていた方が、利上げを3回受けたあとの水準という想定です。そこからさらに利上げが続くなら、1回ごとに0.25%ずつ積み上がることになります。
利上げ各段階での毎月返済額と総支払額への影響を試算
ここでは年に2回の利上げがあと2年間行われるという前提で試算します。つまり0.25%×4回で1.00%の引き上げという想定です。
変動金利が半年刻みで何年後に何%上がれば、毎月返済額と返済総額にいくらの影響が出るか、5年ルールのあり・なしで計算した結果が下表です。
5年ルールなしでは、利上げ0.25%(1回)ごとに毎月返済が約5,000円増えるイメージです。そのため、4回の利上げで1.00%ならば毎月返済額が約20,000円増えるイメージを持っておくことになります。
5年ルールありの場合は、毎月返済額と総支払額への影響額が大きくなります。これは5年間は金利が上がっても直前の毎月返済額が維持されるため、元本の減少ペースが落ちる分だけ利息の負担が増えるからです。
毎月返済額にすると、利上げ0.25%(1回)ごとに7,000円前後の影響額となっています。この「毎月〇千円×利上げ回数」というざっくりしたイメージを自分の借入金額で把握しておくと、家計への影響を掴むことができるでしょう。
とくに5年ルールの適用がある方は、現時点でこの計算をしておくべきです。現状は増えていなくても、2024年から2025年12月までの3回、0.75%の利上げによって、将来の毎月返済額が増えることはもう決定事項だからです。
これが、借り換えを考える分岐点となります。利上げ1回ごとに毎月返済増がいくら積み上がっていくのか?「あと〇回なら耐えられるがあと▲回は厳しいかも」という判断基準を持つことができるのです。
フラット35借り換え融資の制度改定
2026年3月からのフラット35の融資限度額の引き上げに当たって、借り換え融資における融資実行分から「子育てプラス」が利用可能となり、さらに借り換え期間の基準が35年から40年に延長されることになりました。
借り換えでも「子育てプラス」が利用可能に
子育てプラスは従来、新規借入のみが対象でしたが、借り換え融資にも適用できるようになります。子どもの数に応じてポイントが付与され、1人につき1ポイント(1ポイントは、0.25%引き下げ×5年間)となります。
ただし、ポイントが付与されるのは若年夫婦または子どもの数に応じたものだけで、住宅性能や維持保全に関するポイントは付与されません。
借り換え期間の延長で毎月返済額を軽くする選択肢が増えた
従来、借り換え後の期間は「80歳-借入申込時の年齢」と「35年-住宅ローンの経過年数(切り上げ)」のいずれか短い年数でした。しかし、後者の「35年」が「40年」に延長されることになりました。
そのため、条件によっては5年まで期間を延長することができ、これによって毎月の返済額を軽減できるようになります。
出典:フラット35「令和7年度補正予算に伴う【フラット35】の制度改正のお知らせ」
【関連記事】>>フラット35の金利、手数料を徹底比較! おすすめの銀行は?
変動金利からフラット35「子育てプラス」への借り換え
3年前に4,500万円、借入期間35年、0.5%の変動金利(元利均等返済ボーナス払いなし)で借りた方が、2026年1月のフラット35(買取型)2.08%へ、子育てプラスのポイント2で、当初5年間を0.5%引き下げて1.58%に借り換えたケースでシミュレーションをしてみましょう。
借り換えでもっとも痛いのは「借り換え直後に毎月返済が上がる」ことです。ただし、当初金利が下がれば、その痛みが減ります。金利の前提を整理すると次の通りとなります。
・変動金利(現状):3年前に0.5%。現在1.25%で将来は2.25%まで上がる(+1.00%)
・フラット35(借り換え・買取型):当初5年間1.58%。その後2.08%になる
シミュレーションから、総支払額はほぼ同じという結果になりました。具体的には、変動金利が6,180万円に対して、フラット35が6,215万円。30年規模で35万円の差となります。
ただし、この変動金利に5年ルールの適用があれば、総支払額は約50万円多くなるので逆転します。
つまり、今後2年で金利が0.25%×4回=1.00%上がるシナリオではほぼ同じ期待値になるということですね。
この結果が示すものは、借り換え判断の補助線です。変動が今後+1.00%程度の上昇では、フラット35(子育てプラスの2ポイント)と損得の期待値はほぼ同じです。
利上げが4回未満で止まるなら:損得で変動金利が有利。フラット35への借り換えは、損得ではなく利上げによるストレスからの解放の側面も。
利上げが4回程度で止まるなら:損得はほぼ同じ。フラット35への借り換えの動機は「天井を確定したいかどうか」になる。
利上げが4回を超えるなら:損得でフラット35への借り換えが有利になる。借り換え費用を超えるリターンが得られる。
「2年で4回の利上げ」は現実的か?日銀の政策から可能性を探る
逆転ラインが「4回で止まるか、超えるか」なら、4回が起きるかどうかを考えることになります。2025年12月の日銀会合の主な意見では、今後は数カ月に1回のペースで利上げを検討したい、という趣旨の委員の発言が記録されています。
つまり、年2回から3回の利上げが見込まれます。したがって、2年で4回という仮定は、日銀自身の示唆から逆算すると十分、射程圏内です。
さらに主な意見では、推計モデルの「1%下限」から距離を取ろうとする発言も見られます。中立金利の推計レンジが1%〜2.5%と幅がある中で、次に利上げすると下限の1%に達します。
日銀がその存在感を薄めようとしているのは、1%到達後も利上げを続ける余地を作るためと見ています。少なくとも「次の1回で終わる」とは考えていないということです。
まとめ
住宅ローンの借り換えの判断は、いまの変動金利と固定金利で判断すると、どうしても前者が得に見えるため、借り換え時期を逸してしまうおそれがあります。
そこで必要になるのが判断の補助線=つまり「あと何回の利上げで金利差が逆転するか」というポイントです。
2026年1月時点では、4回(+1%)までなら期待値はほぼ互角となり、5回以上ならフラットが有利になりやすい。逆に4回未満で止まるなら、借り換えは損得よりも「天井確定による安心」を買う選択になります。
なお、この補助線は、それを判断する時点の変動金利と借り換える固定金利の水準によって変わっていきますが、現在のところ長期金利が上昇傾向にあるため、固定金利は上がっていく傾向にありますね。
フラット35の借り換え制度の改定は3月融資実行分からとなりますので、先に審査に申し込んでおき、3月に向けてこの補助線を追っていくようにすれば、適切な判断ができるでしょう。
【関連記事】>>住宅ローンの変動金利が固定金利より損なのは、日銀利上げが何回までか? 本当の損得を試算!
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