住宅ローンの支払いが苦しい時に、家計をラクにする方法のひとつが「借り換え」だ。低金利化が進んでいる現在、より低い金利の住宅ローンへ借り換えることで、毎月の支払いを大きく引き下げることができる。より長期間の住宅ローンに借り換えることも有効だ。ただし、一度でも延滞してしまうと借り換えはほぼ無理になるので、早めの対応を心がけたい(監修:優益FPオフィス)。
低金利の現在は借り換えチャンス
誰でも転職や失業、病気入院などによって収入が大きく減少したり、出産や子供の教育費の増大などによって支出が大きく増大したりする。借入時の計画通りにはいかず、住宅ローンの支払いが家計を圧迫することもあるだろう。そこで、家計をラクにする方法のひとつが借り換え。金利が低下してきた現在は、大半の人に借り換えメリットがある千載一遇のチャンスだ。
「不況でローン返済が苦しいので、何とかならないかという相談はよくあります。無駄な出費を見直したり、生活そのものを切り詰めたりするのも重要ですが、借り換えで金利を引き下げて、支払額を減らすというのは確実で効果も高い手段の一つです」
こう話すのは、優益FPオフィス代表取締役で、住宅ローンアドバイスを得意とする佐藤益弘氏だ。家計の見直しでは、住宅ローンの借り換えが有力な選択肢の一つというわけだ。
実際、住宅金融支援機構の『2015年度 民間住宅ローン借換の実態調査』では、実際に借り換えを行った人のうち53.3%が、借り換えの理由として、「返済額が少なくなるから」を挙げている。「月々の返済額を少なくしたい」「家計に占める住宅ローンの負担を減らしたい」というニーズは非常に高い。
この5年間で35年固定金利が1%以上下落しており、
借り換えで支払額をカットできるチャンスが到来
では具体的にどうすれば、家計はラクになるのだろうか。
2011年に住宅ローンを借りた人が5年後の現在、借り換えるケースをシミュレーションしてみよう。当初の借入額は3000万円、35年固定金利を選択して、金利は2.49%(2011年6月金利)とした。毎月の支払額は10.7万円、総支払額は4498万円だ。現時点で、借入残高は2714万円まで減少している。ここでは3パターンの借り換えを検討してみよう。下表のように、5年前に比べて、金利は相当安くなっている。
◆借り換えで、毎月支払額は3.7万円減少!(当初借入額3000万円のケース) | |||
借入条件 | 借入期間 | 毎月の支払額 下段は減少額 |
|
5年前に借りた 住宅ローン |
2.49% (35年固定金利) |
30年 (残り) |
10.7万円 |
↓ ↓ ↓ | |||
借り換え(1) | 1.00% (30年固定金利) |
30年 | 8.7万円 ▲2.0万円 |
借り換え(2) | 0.50% (変動金利) |
30年 | 8.1万円 ▲2.6万円 |
---|---|---|---|
借り換え(3) | 0.50% (変動金利) |
35年 | 7.0万円 ▲3.7万円 |
※変動金利は、今後も金利変化なしと仮定 |
5年前に3000万円借りて、毎月返済額月10.7万円なら
変動金利&返済期間延長で、月3.7万円減額
まずは、「借り換え(1)」は同じ固定金利で借り換えるケース。現在、30年の固定金利(20年超固定金利を含む)は1%程度(2016年8月現在)となっている。仮に、金利が1.00%の住宅ローンに借り換えるだけで、金利は1.49%も安くなる。残りの返済期間と同じ30年で借り換えた場合、毎月返済額は8.7万円となり、2.0万円も安くなる。総支払額は3785万円となり、現在の住宅ローンを継続した場合に比べて、713万円も少ない。
借り換えでかかる諸経費は30万〜280万円程度だが、総支払額は、それ以上に減少しているので、借り換えを検討したいところだ。
「借り換え(2)」のように、変動金利を選択するとさらに毎月の支払額が小さくなる。現在の変動金利は金融機関によっても違うが、約0.5%と非常に安い。返済期間30年、今後も金利が上昇しない前提だと、毎月返済額は8.1万円と、2.6万円も安くなる。総支払額は3566万円となり、現在のローンを継続した場合に比べて、932万円も少ない。
最後が、「借り換え(3)」で、変動金利にしたうえ、ローン期間を伸ばすケース。残り返済期間は30年だったが、借り換え時に35年で借りるというもの。金融機関としてはリスクが増加するので嫌がることが多いが、交渉次第で認められることもある。これで毎月返済額は7.0万円となり、借り換えで3.7万円も軽減される。総支払額は3601万円となり、現在のローンを継続した場合に比べて、896万円少ない。
とはいえ、あまり返済期間を延ばしすぎるのも問題がある。サラリーマンであれば定期収入がなくなる60歳以降に、多額の返済を負担するのは大変だ。またフラット35を始めとした多くの住宅ローンが、80歳までに完済するのを義務付けている。借入期間が35年であれば、45歳が上限となる。民間の金融機関だと、さらに借入条件が厳しく、完済時の年齢を低く設定していることもあり、返済期間を延長するのは慎重にしたほうがいいだろう。
【関連記事はこちら!】
⇒「住宅ローンの『完済時年齢』を主要15銀行で比較!多くの銀行が80歳未満まで条件を緩和」
また、借り換え(2)、借り換え(3)のケースは、見た目上は返済額が減少する。しかし、変動金利が上昇した場合には、毎月支払額が増加することになるので、把握しておこう。
金利上昇については、大半の金融機関は、「5年特約」という、返済金額に関するルールを持っている。いわゆる「激変緩和措置」というもので、変動金利が上昇しても、5年間は毎月の返済額を当初のまま据え置いてくれる。さらに、5年後の返済額見直しも25%アップまでに抑えられる。ただし、この特約が発動しても、金利が減免されるわけではない。問題の先送りでしかなく、将来の支払額が増えるだけだ。結局は返済しないといけず、下手をすれば「老後破産」に陥りかねない。
毎月支払額が減少したからといって散財するのではなく、差額を貯金したり、繰上返済したりすることで、自己防衛することも必要だろう。
もう一つ気をつけたいのは、一度でも延滞していると他の金融機関への借り換えはほぼ無理になってしまうことだ。延滞記録がある人はきちんと返済してくれない可能性が高いため、借り換えの対象外になっていることが多い。資金繰りが苦しくなりそうだったら、早めに借り換えを検討するのがいいだろう。
残りの返済期間が短くて借り換えが難しい年配者は、
借りている金融機関に条件変更の相談をする手も
一方で、借り換えが厳しいケースもある。
「私が受ける相談者で多いのは、若い人より年配者ですね。ローンの残り期間は10年以内と短いことが多いのですが、収入が減って生活が苦しく、毎月の支払額を減らしたいという内容です。借り換えができるとしても返済期間が短いのであれば、諸費用を差し引いてプラスになるかどうか疑問ですし、そもそも収入が少なくなっているので借り換えができるかも分かりません。こういう場合は、家計の支出をチェックして、支出を切り詰めるしかありません。それでも生活が成り立たないようであれば、条件変更を金融機関に申し入れるという手もあります」(佐藤氏)。
住宅ローンの返済が本当に苦しい場合は、ファイナンシャルプランナーに相談してみるほか、借り入れている金融機関に直接、相談するのがいい。金融機関側も住宅ローンが貸し倒れになっては困るため、嫌がらずに相談に乗ってくれることが多いので、恐れずに実行してみよう。
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⇒「リバースモーゲージで「老後破産」を防ぐ!自宅に住みながら老後資金を手に入れよう!残った住宅ローンの完済にも利用可能」
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今回作成した「住宅ローン利用者口コミ調査」の調査概要は以下のとおり。
【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
有効回答数:822人
調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とするアンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。
【アンケートの設問】
Q1.金利の満足度は?
Q2.諸費用・手数料等は妥当でしたか?
Q3.団体信用生命保険には満足しましたか?
Q4.手続き・サポートには満足しましたか?
Q5.審査について、満足していますか?
Q6.借り入れ後の対応に満足しましたか?
Q7.他の人にも現在の銀行を勧めたいと思いますか?
【回答の配点】
・各設問は5段階で回答してもらい、Q1なら以下のように配点。平均値を求めた。
満足している(5点)
どちらかといえば満足している(4点)
どちらともいえない(3点)
どちらかといえば不満である(2点)
不満である(1点)
・総合評価については、各項目の平均値を全て合算。読者が重視する「Q1金利の満足度」については点数を3倍、「Q3団信の満足度」の点数を2倍として、点数の合計を50点満点とし、10で割ることで5点満点の数値を求めた。
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プロの評判・口コミ
淡河範明さん
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