住宅ローンの「団体信用生命保険(団信)」で、3大疾病補償などを検討している人は多いが、あまりにも種類が多いためどれを選んだらよいのか分からないだろう。そこでおすすめなのが、みずほ銀行、三菱UFJ銀行などが提供している、「がん団信」が付いているのに、保険料を抑えられ、さらに途中解約が可能な商品だ。
3大疾病保障などの上乗せ団信が人気
団体信用生命保険とは、借りた人が「死亡」したり、「指定された高度障害状態」になったりした場合に、その時点でのローン残高分が保険金として支払われ、その後の支払いが不要になる生命保険のこと。
民間の銀行の住宅ローンについては、借り入れの条件として団信への加入が定められていることが多く、保険料は金利に含まれているため、別途支払う必要はない。(住宅金融支援機構が提供する最長35年の固定金利住宅ローン「フラット35」は、加入が必須ではないが、大半の人は「団信込み」のフラット35を借りている。)
一方で最近は、どの民間銀行も「上乗せ団信(オプション、特約とも呼ぶ)」の開発を強化している。例えば「3大疾病保障」は、通常の無料の団信に、補償を上乗せすることができる。ガン、急性心筋梗塞、脳卒中という日本人の死因ベスト3の病気にかかったり、働けない状態になった場合、その時点でのローン残高相当の保険金が、残ったローンの支払いに充当される。
通常の団信が「死亡、高度障害」であるのに比べると、病気にかかったり、働けなくなっただけでも保険金が支払われるのだ。加入には一定の条件があるが、病気が気になる人にとっては、魅力的だろう。
「上乗せ団信」の保険金支払い条件は意外と厳しい
保険料が高く、途中解約ができない
しかし、「上乗せ団信」には様々な注意点もある。
第一に、保険金が支払われる条件のハードルが意外に高いということだ。「3大疾病保障付団信」の多くは、ガン(悪性新生物)と診断されればすぐに保険金が支払われるが、初期のガンである「上皮内ガン等」は対象外となる。
急性心筋梗塞や脳卒中は、発症しただけでは保険金は支払われず、60日~360日以上働けなかったり、一定の症状が続いたりすることが条件となる。
第二に、保険料が高いことだ。「3大疾病保障付団信」の場合、通常の団信に年0.3%の金利を上乗せするというのが一般的だ。例えば3000万円の借入残高があるとすると、単純計算で年間9万円(最大)も支払うことになる。
第三に、いったん加入すると、途中解約ができないものが多い。これは、保険料を金利に上乗せするためだ。途中でやめたらその分、金利を下げればいいように思うが、契約やシステムの関係で対応が難しいのが現状だ。
そこで、ファイナンシャルプランナーの深田晶恵さんはこうアドバイスする。
「疾病保障はつけないという選択肢ももちろんあります。もし、つけるのならば、私がおすすめしているのは、“当初は返済額分をカバーし、働けない状態が継続した段階でローン残高ゼロになる”タイプの保険です。さらに、“保険料を金利上乗せで支払うのではなくローン返済と別に月払いできる”タイプであることが望ましいです。いきなりローン残高がゼロになるわけではないため、その分保険料が安く、しかも金利上乗せではないので途中で外すこともできるからです」
みずほ銀行や三菱UFJ銀行の上乗せ団信なら
保険料が金利上乗せでないから、途中解約ができる
具体的には、みずほ銀行の「8大疾病保障」、「8大疾病保障プラス」や、三菱UFJ銀行の「7大疾病保障付住宅ローン 安心の保険料タイプ(保険料支払型)」などがあてはまる。
■みずほ銀行「8大疾病保障」
みずほ銀行の「8大疾病保障」は、ガン・急性心筋梗塞・脳卒中の3大疾患のほか、高血圧症・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎という5つの生活習慣病を対象とした団信だ。支払い条件は以下のようになっている。
-
・がん(上皮内がんを除く)と診断された場合、住宅ローン残高がゼロ円に
・病気やケガ(7大疾病・がん以外)により、いかなる業務にも従事できない状態が30日間の支払対象外期間を超えて継続した場合、毎月返済額を補償。それが1年間継続した場合は、住宅ローン残高がゼロ円に
つまり、がんは診断だけで住宅ローン残高がゼロ円になる。後述するように、無料で各種の団信を拡充する銀行が多いものの、がんと診断されただけで住宅ローン残高を全額補償してくれる無料の団信はないので、このオプション団信は魅力的だ。
そして、がん以外の7大疾病で、働けなくなった場合は最長1年間、毎月のローン返済が免除され、それでも同じ状況が続いていれば住宅ローン残高がゼロ円になる。
保険料は借り手の年齢、住宅ローンの借入残高、毎月の支払額などで決まる。例えば、35歳で加入し借入金額2000万円、借入期間35年、金利1.5%、元利均等返済の場合、みずほ銀行の「8大疾病保障」なら初回の保険料は月額477円、5年後でも月額703円で、最も高くなる25年後でも月額1844円と、非常に安い。
がんについては診断だけで補償されるが、そのほかの病気については、「働けない状態が長期間継続しなければ、ローン残高がゼロにならない」という仕組みであるため、保険料が安くなるのだ。
みずほ銀行の「上乗せ団信」の特徴 | ||
商品 | 保険料の払い方 | 途中解約 |
(1)団体信用生命保険(死亡+高度障害) | 無料(金利に含む) | 不可 |
(2)3大疾病保障特約付き団体信用生命保険 <(1)の上乗せ商品> |
金利に上乗せ (+年0.3%) |
不可 |
(3)8大疾病保障/8大疾病保障プラス <(1)の上乗せ商品> |
返済と別に月477円~※ | 可 |
※35歳加入、借入金額2000万円、借入期間35年、金利1.5%、元利均等返済の場合の初回保険料 |
保険料の支払い方法は、金利上乗せではなく、ローン返済とは別に口座から引き落としするため、将来、貯蓄が増えたり、ローン残高が減ったりして、住宅ローン返済に困るリスクが少なくなれば、途中解約することも自由だ。
【関連記事】>>みずほ銀行の住宅ローンの住宅ローンの金利・手数料は?
■三菱UFJ銀行「7大疾病保障付住宅ローン」
また、三菱UFJ銀行の「7大疾病保障付住宅ローン 安心の保険料タイプ(保険料支払型)」は、ガン・急性心筋梗塞・脳卒中の3大疾患のほか、高血圧症・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変という4つの生活習慣病を補償する。
補償内容は以下の通りだ。
-
・がんと診断されたら、住宅ローン残高が0円(上皮内がんを除く)
・脳卒中・急性心筋梗塞で入院したら、住宅ローン残高が0円
・4つの生活習慣病(高血圧性疾患・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変)で、就業障害が30日を超えて継続したら月額返済額を最大一年間補償。就業障害が一年30日を毛て継続したら、住宅ローン残高がゼロ円。
みずほ銀行よりも支払い範囲が広いのが特徴で、脳卒中・急性心筋梗塞で入院しただけでも住宅ローン残高が0円になるというのは魅力的だ。
「7大疾病保障付住宅ローン 安心の保険料タイプ(保険料支払型)」を、みずほ銀行と同様の条件でシミュレーションすると、初回の保険料は月額306円、5年後は月額646円で、最も高くなる25年後でも月額3904円だ。
三菱UFJ銀行の「上乗せ団信」の特徴 | ||
商品 | 保険料の払い方 | 途中解約 |
(1)団体信用生命保険(死亡+高度障害) | 無料(金利に含む) | 不可 |
(2)7大疾病保障付住宅ローン(金利上乗せ型) <(1)の上乗せ商品> |
金利に上乗せ (+年0.3%) |
不可 |
(3)7大疾病保障付住宅ローン(保険料支払い型) <(1)の上乗せ商品> |
返済と別に月306円~※ | 可 |
※ 35歳加入、借入金額2000万円、借入期間35年、金利1.5%、元利均等返済の場合の初回保険料 |
こちらもみずほ銀行同様、保険料の支払い方法は、金利上乗せではなく、ローン返済とは別に口座から引き落としするため、途中解約も可能だ。
【関連記事】>>三菱UFJ銀行の住宅ローンの金利・手数料は?
■アルヒは、上乗せ金利が低くても「がん保障」
なお、フラット35を提供するアルヒは、低金利のフラット35である「スーパーフラット」について、オプションの団信を比較的割安な金利上乗せで提供している。「がん50%保障プラン」は年0.05%上乗せ、「がん100%保障プラン」は年0.15%上乗せで提供している。
「がん100%保障プラン」ならがん診断給付金として、所定の悪性新生物(がん)と診断されると100万円、上皮内がん・皮膚がんと診断されると50万円が支払われる。
【関連記事はこちら!】
⇒「みずほ銀行の住宅ローンの住宅ローンの金利・手数料は?」
⇒「三菱UFJ銀行の住宅ローンの金利・手数料は?」
⇒「アルヒの住宅ローンの金利・手数料は?」
無料の団信なら、住信SBIネット銀行、auじぶん銀行
なお、無料の「全疾病保障」なら、住信SBIネット銀行、auじぶん銀行が注目だ。
auじぶん銀行なら、がんと診断されると住宅ローン残高が半分になる「がん50%保障団信」と、「全疾病保障」を無料で付けており、比較的、充実した保障内容だ。「全疾病保障」とは、精神障害を除く「すべてのケガ・病気」について、入院が継続180日以上の場合に、住宅ローン残高がゼロになるもの。
住信SBIネット銀行は、「3大疾病(がん、急性心筋梗塞、脳卒中)50%保障」、「全疾病保障(就業不能状態が1年間継続)」が無料で付帯している。
auじぶん銀行も、住信SBIネット銀行も、がんと診断されただけで、住宅ローン残高が半分になる。さらに住信SBIネット銀行は、「急性心筋梗塞」または「脳卒中」を発病し、60日以上所定の状態が継続したと判断される場合、または所定の手術を受けた場合に、住宅ローン残高が半分になる。無料の団信ながら、手厚い保障と言える。
なお、住信SBIネット銀行は、「就業不能保障(毎月の支払いを最大1年まで保障)」も付帯している。就業不能状態(被保険者本人の経験・能力に応じたいかなる業務にもまったく従事できない状態)になった場合、就業不能状態が継続している限り、最大12カ月まで、月々の住宅ローン返済を保障する。
【関連記事はこちら!】
⇒「auじぶん銀行の住宅ローンの住宅ローンの金利・手数料は?」
⇒「住信SBIネット銀行の住宅ローンの金利・手数料は?」
両銀行とも無料で付帯している「全疾病保障」は、就業不能状態の期間が1年以上と、長期でないと保険金が出ないため、実際に保険金が出るケースは少ない。ただ、無料で付帯している保障なので、ついていない銀行に比べるとお得と言えよう。
なお、上乗せ団信については、各銀行が様々な商品を投入しており、「加入しないといけない」と考えてしまうかもしれないが、家計の状況によっては疾病保障保険を付けないという選択もある。将来のリスクと、家計の状況を見比べた上で、「上乗せ団信」をうまく利用しよう。
【関連記事はこちら】>>「団体信用生命保険」徹底比較!住宅ローンでおすすめの団信は?
借入中のうつ病は、保障されない!
なお、注意したいのは、通常の団体信用生命保険だと、借入中に「うつ病」のような精神疾患にかかったとしても保障対象外となる可能性が高いということだ。
一応、通常の団体信用生命保険の支払い事由(死亡・高度障害)の中に「精神疾患」は含まれているが、以下のようにハードルは非常に高い。
・中枢神経系または精神に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの(食物の摂取、排便・排尿・その後始末、及び衣服着脱・起居・歩行・入浴のいずれもが自分ではできず、常に他人の介護を要する状態)
※住宅金融支援機構のフラット35の機構団信約款を一部改変
うつ病になり、働けなくなったとしても、食事、歩行さえも自分でできない状態にまでなる人は非常に少ない。うつ病になったとしても住宅ローンが免除される可能性は低いのだ。
もし、うつ病が心配であれば、民間の生命保険会社の「就業不能保障(精神疾患も保障するタイプ)」に加入するといいだろう。住宅ローン残高がゼロになるわけではないが、病状が悪くて働けない時期の毎月返済をカバーできる。就業不能保障でも精神疾患をカバーしていないタイプもあるので、確認しよう。
■保険相談サービス5社を比較
132銀行を比較◆住宅ローン実質金利ランキング[新規借入] |
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今回作成した「住宅ローン利用者口コミ調査」の調査概要は以下のとおり。
【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
有効回答数:822人
調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とするアンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。
【アンケートの設問】
Q1.金利の満足度は?
Q2.諸費用・手数料等は妥当でしたか?
Q3.団体信用生命保険には満足しましたか?
Q4.手続き・サポートには満足しましたか?
Q5.審査について、満足していますか?
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【回答の配点】
・各設問は5段階で回答してもらい、Q1なら以下のように配点。平均値を求めた。
満足している(5点)
どちらかといえば満足している(4点)
どちらともいえない(3点)
どちらかといえば不満である(2点)
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・総合評価については、各項目の平均値を全て合算。読者が重視する「Q1金利の満足度」については点数を3倍、「Q3団信の満足度」の点数を2倍として、点数の合計を50点満点とし、10で割ることで5点満点の数値を求めた。
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プロの評判・口コミ
淡河範明さん
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審査に関しては、めちゃくちゃ早いです。申し込んでから基本的には1ヶ月以内に融資実行ができるので、急いでいる場合にはありがたい。「今月中に融資して欲しい」とアピールすれば、審査がスムーズに運びやすいです。
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