住宅価格の高騰により住宅ローンの借入額も上昇しています。多額の住宅ローンを借りる際に選択肢となってくるのが、50年などの長期ローンやペアローンまたは収入合算ですが、どちらを選べばよいのでしょうか。賢い選択方法とその選択の順位について、公認会計士の立場から詳しく解説します。(住宅ローン・不動産ブロガー 千日太郎)
住宅価格の高騰で長期ローンやペアローンの利用が増えている

こんにちは、公認会計士の千日太郎です。
土地代や建築費の高騰を背景に、住宅価格の上昇が続いています。不動産経済研究所によると、東京23区の新築マンションの平均価格(2025年上半期)は1億3,064万円と前年同期比で20.4%上昇しています。
賃金の上昇を遥かに上回る住宅価格によって、住宅ローンの借入額も上昇しています。金融機関の審査基準では現実的に購入できる物件がなくなってしまうために、民間金融機関が繰り出してきたのが、まずペアローンや収入合算、そして最長50年の長期ローンです。
住宅ローン審査のスキームを考えれば、長期ローンでは毎月の返済額を低く抑えることで、融資額を増やすことができます。また、ペアローンや収入合算により収入額を増やすことで融資額を増やせます。
住宅金融支援機構によると、ペアローンまたは収入合算の利用は39.3%。若年層になるほどその比率は高く、20~29歳では77.1%となっています。
そして借入期間では、35年超え50年以内の割合は25.5%と、前回調査より4.6ポイント増加しています。
「長期ローン」と「ペアローンまたは収入合算」はどちらを優先すべきか
住宅ローンは借り手が金融機関を相手に行う取り引きであり、法的な契約関係を結びます。そのため、借り入れにかかる費用が増えるか減るか、契約条件が自分にとって有利か不利かをしっかり検討することが大切です。
借り入れにかかる費用が増えるか減るか
SNSなどでは「長期ローンは利息負担が増えるから避けるべき」という意見をよく見かけます。確かに借入期間が長くなれば、その分だけ利息の総額は増えます。これに対して、ペアローンまたは収入合算では、世帯単位で負担する費用は単独で借りる場合とほぼ変わりません。
期間が長い分だけ利息の費用が増える
ペアローンまたは収入合算
手数料の費用が若干増えることもあるが、ほぼ変わらない
ただし、費用が増えることのみをもって長期ローンを否定する理由にはなりません。なぜなら、借りる期間が長くなる分に払う利息であり、正当な対価として払うべきものを払っているだけだからです。
利息というのは法律上の期限の利益に対する対価です。期限の利益とは、特定の期限が到来するまで、債務を履行しなくてもよいという利益を指します。この利益は借り手にとっての利益です。債権者(金融機関)にその対価を払うというのが金融上の金利や利息なのです。
そして重要なのは、住宅ローンの金利は銀行が扱うすべての商品の中でもっとも低い水準だということです。値上げの直前に買いだめするという行動がありますが、安いうちにある程度多めに買っておくというのは、経済的に合理的な行動といえるわけです。もちろん借りすぎは禁物です。
【関連記事】>>50年ローンなら高額なマンションも購入できるが、返済負担は1500万円も増える!
契約条件が自分にとって有利か不利か
期間が長い分だけ「期限の利益」があるので借り手には有利。期間を短縮することは借り手の選択でいつでも可能
ペアローンまたは収入合算
連帯保証は債務者と同じ責任を負うため不利。後から連帯保証を外すことは原則できない
長期ローンは、返済期間を法的に長く設定できる点が大きなメリットです。さらに、必要に応じて契約者自身の判断でいつでも返済期間を短く変更できます。銀行側も原則として返済期間短縮の申し出を拒まず、場合によっては「短縮はお客さまの利益にもつながります」といったアドバイスを受けられることもあります。
また、契約変更をしなくても「期間短縮型」の繰り上げ返済を利用すれば、その分だけ返済期間を短縮できます。多くの銀行ではネットからの繰り上げ返済が手数料無料なので、費用負担を抑えつつ返済を早めることが可能です。
一方、ペアローンはそれぞれが債務者となって住宅ローンの契約をし、相互に連帯保証人となるものです。また、収入合算は片方が債務者となり、もう片方がその連帯保証人になるものです。
連帯保証は債務者とまったく同じ責任を負うことになる、いわば家庭から2人の人質を出すようなもの。債務者が不利を被る代わりに融資額を増やすという選択になるのです。
連帯保証のリスクは無視できない
ペアローンや収入合算による連帯保証は、離婚時における財産分与を複雑にします。夫婦関係が解消されても、銀行への返済義務は消えず、両者が責任を負い続けることになります。
この負担を解消するには、住宅を売却してローンを完済するしかありません。元パートナーと合意に至らなければ泥沼に陥ります。離婚率は約3組に1組と高いため、このリスクを無視できません。
また、住宅ローンは返済期間が長いため、将来、どちらかの収入が変動したり、一方が専業主婦(主夫)になる可能性もあります。にもかかわらず、ペアローンや収入合算の連帯保証は契約時に責任が固定され、借り手の意向で外すことは極めて難しいのです。
したがって、「ペアローンまたは収入合算」よりも「長期ローン」を選択すべしという結論になります。
【関連記事】>>ペアローンの典型的破綻事例と、別れた夫の手助けなしでも家を残せた稀有なケースを銀行員が報告
まずは長期ローンでの審査を要請する
銀行の立場からすると、長期ローンよりもペアローンや収入合算は有利な点が多いため、銀行は後者をお勧めするのが定石です。
そのため、通常の住宅ローンで希望額を借りられない人は、もれなくペアローンまたは収入合算になっているケースが多いのではないでしょうか。しかし、説明したようにペアローンまたは収入合算はリスクが大きいです。
その人の条件にもよりますが、長期ローンかペアローンまたは収入合算のどちらかだけでも、通常のローン契約よりは融資額を拡大できるので、 もし、通常の住宅ローンで借り入れ希望額に達しなかった場合、まずは長期ローンでの審査を要請するようにしてください。
また、こうした銀行の対応を客観的にチェックする意味でも、複数の金融機関に同時に審査に出しておくということは重要です。
1つの銀行にだけしか審査に出していないと、情報の非対称性から銀行の言いなりになるケースが多いのです。また、他の銀行で審査に通っていれば、借り手も心理的な余裕が生まれ、対等に交渉できる余裕も生まれます。
ペアローンか収入合算ならどちらを選べばいいか

長期ローンを優先しても、審査の結果によってはペアローンか収入合算が必要になるケースもあると思います。その場合、どちらを選ぶべきでしょうか。大きく2つの検討ポイントがあります。
団信の取り扱いの違い
団体信用生命保険(以下、団信)は、住宅ローンの債務者が死亡や高度障害状態となったときに住宅ローンがゼロ円となる保険です。民間銀行の住宅ローンでは加入が必須となる保険ですが、ペアローンと収入合算で取り扱いが大きく異なります。
それぞれが債務者なので、死亡や高度障害を負った方だけの住宅ローンがゼロ円になり、もう片方の住宅ローンは変わらず残る
収入合算
債務者となった方が死亡や高度障害を負った場合に住宅ローン全額がゼロ円となるが、連帯保証人となった方が死亡や高度障害を負った場合は住宅ローンの金額は変わらず残る
一般論として、夫婦の収入に格差がなく、両方がほぼ定年まで安定収入が続く見込みであれば、ペアローンが適合するでしょう。
共働き夫婦のどちらに不幸があっても、残ったほうで住宅ローンの返済を維持することができます。
一方で、夫婦の収入に格差がある場合や、一方がほどなくして専業主婦(主夫)となる見込みであれば、収入の多いほうを債務者とする収入合算が適合するでしょう。
債務者に不幸があった場合には、遺族が住宅ローンの返済を完全に免れて、そのまま家に住み続けることができます。
住宅ローン控除の違い
住宅ローン控除は、住宅ローンで家を購入した人を対象とする減税制度。年末のローン残高の0.7%を限度に債務者の所得税などの範囲内でキャッシュバックされるものです。対象者は住宅ローンの法律上の債務者の地位にある人であるため、取り扱いが異なってきます。
それぞれが債務者なので、それぞれの税金に対して住宅ローン控除を受けられる
収入合算
債務者となった方だけが住宅ローン控除を受けられる。連帯保証人は債務者ではないため、住宅ローン控除はない
これについても、一般論として収入に格差がなく、両者が住宅ローン控除の期間中まで安定収入が続く見込みであればペアローンが適合するでしょう。共働きのどちらもその収入に見合った住宅ローン控除の恩恵を受けられます。
収入に格差がある場合や、一方がほどなくして専業主婦(主夫)となる見込みであれば、収入の多いほうを債務者とする収入合算が適合するでしょう。その後の収入の増減による住宅ローン控除の恩恵の取りこぼしを少なくできます。
【関連記事】>>住宅ローン控除で儲ける方法とは?繰上返済のタイミングに注意して収支を最大化しよう
まとめ
住宅価格が高騰するいま、低金利のうちに長期ローンで借入枠を最大化することが、家計を守るために最優先すべきプランAです。
住宅ローンは80歳で完済という上限はありますが、返済期間が長いほど月々の負担は軽く、繰り上げ返済で短縮することも可能です。
一方、連帯保証は後から外せず、ペアローンや収入合算では万一の保障や住宅ローン控除の取り扱いが分かれるため、リスクと節税効果を十分に比較する必要があります。こちらを補完策としてプランBとしましょう。
共働き世帯が主流になった現在、ペアローンのデメリットは薄れつつありますが、持分割合や将来の転職や育休など、ライフプランとの整合が不可欠です。
あせらずに情報を集め、シミュレーションを重ねれば、長期ローンは心強い味方になります。住まいは人生の基盤です。住宅価格の上昇の勢いに気負わず、堅実な資金計画でマイホームを手にする一歩を踏み出してください。
【関連記事】>>住宅ローン50年時代の正しい処方箋とは? 常に繰り上げ返済を意識すべきだ
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淡河範明さん
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