新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言は解除されたものの、依然として新規感染者数の多い状態が続いている。コロナ禍で収入減や失業などの心配をしている人も少なくないだろう。実際、住宅ローンを抱えている人の返済相談件数は3カ月で150倍も増えている。住宅ローンを延滞してしまうと、マイホームを手放すことにもなりかねないため、万一に備え、対策を頭に入れておくことが大切だ。(住宅ジャーナリスト・山下和之)
フラット35の返済相談件数は3カ月で2000件に!
新型コロナウイルス感染症の拡大に歯止めがかからず、経済活動を本格的に再開できるまでにはほど遠いのが現実で、コロナ倒産が依然として続いている。リストラの増加などで失業率も上昇している。失業しなかったとしても収入が減少したという人は多いのではないだろうか。
収入が減ったり、途絶えたりすれば家計の維持が難しくなってしまうが、住宅ローン返済のある人だとなおさらだろう。
実際、コロナ禍で各銀行・金融機関も住宅ローン返済の相談が急増しているといわれる。民間の銀行・金融機関はその数字などを公表していないが、フラット35を推進している住宅金融支援機構ではコロナ禍での相談件数を公表している。
【図表1】フラット35の返済相談件数の推移(新型コロナウイルス関連)
図表1のように、コロナ禍以前の2月には15件だった相談件数が、3月には214件に、そして4月には1158件と大幅に増え、5月も878件と高いレベルで推移していることが分かる。
そのため、万一にもそうした局面に遭遇したときにどうすればいいのか、いまのうちから対応策を頭に入れておくことが大切だ。
失業者は3カ月で39万人も増加している
コロナ禍の3月から5月までの住宅ローン返済の相談件数の累計は2250件にのぼり、2月の15件からおよそ150倍に増えている。また、その背景にある企業の倒産や失業者数も増加の一途をたどっている。
民間調査機関の帝国データバンクによると、図表2にあるように、3月末時点では、いわゆるコロナ倒産の累積件数は18件だったのが、6月30日には323件に増え、7月20日には364件に達している。
業種別にみると、最も多いのは「飲食店」の51件で、次いで「ホテル・旅館」が46件、「アパレル・雑貨小売店」「食品卸」が各22件など。都道府県別でみると、東京都が89件で最も多いものの、大阪府36件、北海道22件、福岡県12件など、倒産の波は全国に広がっており、いつわが身に降りかかってこないとも限らない。
【図表2】コロナ倒産の累積件数(2/29〜7/20)
また、総務省統計局の「労働力調査」によると、図表3にあるように2020年1月と2月の完全失業者数は159万人だったのが、コロナ禍が広がった5月には198万人に急増した。わずか3カ月の間に39万人もの失業者が増えた計算だ。
「労働力調査」における完全失業者というのは、仕事を失ってハローワークを通して次の仕事を探している人のことであり、失業しても、茫然自失となり仕事を探す気力も失っている人たちは含まれない。したがって、実際の失業者はもっと多いはずだ。
いずれにしろ、失業者が増えた結果、失業率は1月、2月の2.4%から5月には2.9%に上がっている。日本に比べて比較的簡単に従業員を解雇するアメリカの失業率は、6月には11.1%に達しているから、日本はまだマシなのだが、何とか雇用を維持してきた企業のなかでも、やがて堪えきれなくなる企業が出てくるかもしれない。
【図表3】完全失業者数と完全失業率の推移
住宅ローンを延滞すると、ますます窮地に陥る
もし仕事を失っても、倒産などの会社事情であれば、年齢や勤続期間などによって、90日から330日の間、雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)が出るが、それにしても会社員時代に比べれば収入は減少し、給付期間が終了すれば、収入はゼロになってしまう。
そうでなくとも、会社の業績悪化によって給与カットやボーナス支給停止などを行う企業が増えており、収入がゼロにならないまでも、大幅な収入減を余儀なくされる人も増えている。
しかし、返済原資がなくなって、住宅ローンを延滞すると大変なことになる。まず、待っているのが、優遇金利適用の除外。多くの人は、住宅ローンの優遇金利制度を利用して、店頭表示金利よりかなり低い金利の適用を受けているはずだが、その金利引き下げがなくなってしまうのだ。
延滞が続くと任意売却や競売に付されることに
たとえば、現在の大手銀行などの変動金利型住宅ローンの店頭表示金利は2.475%(2020年7月)だが、実際には優遇金利によって0.3%台から0.6%台の金利で借り入れている人が多いだろう。それが、延滞が発生すると店頭表示金利の2.475%に適用金利が上がり、毎月返済額は以下のように増加する。
【変動金利0.6%】
毎月返済額:7万9208円
延滞により適用金利が上がると
↓
【変動金利2.475%】
毎月返済額:10万6846円
毎月返済額が2万7638円も増加!
延滞するほど困っているのに、その上返済額が増えてはまさに泣きっ面に蜂、弱り目にたたり目と踏んだり蹴ったりだ。
結果、延滞が続くと銀行は保証会社から住宅ローン残高相当の代位弁済を受け、債権者は保証会社になり、厳しい取り立てが始まる。返済できないと、任意売却を求められたり、競売にかけられたりして、マイホームを失ってしまうことになる。
そうならないためには、返済が厳しくなった段階で、延滞する前に銀行・金融機関に相談するのが賢明。現在は、コロナ禍で返済に困っている人が増加しているため、金融庁でも銀行などに住宅ローン借入者からの返済に関する相談があれば、柔軟に対応するように厳しく指導している。それにより、条件変更などによって当面の返済額を減額するなどの救済策が適用され、返済を継続しやすくなっている。
現在は、“3密”を避けるために、電話やインターネットでの相談にも応じているところが多いので、とにかく借入先の銀行・金融機関に相談してみる必要がある。
【関連記事はこちら】>>住宅ローン延滞が6カ月以上なら自宅を失う可能性も! ローン破綻を避けるため、返済困難なら早めに銀行に相談を
相談した人の半数以上が返済方法の条件変更に成功している
相談の結果、返済方法の変更によって返済額を減額できた件数も増えている。図表4にあるように、4月は198件だったのが、5月には1006件に達している。5月までの相談件数の累計2265件に対して、承認件数は1206件だから半数以上の人は、条件変更に応じてもらえていることになる。相談から実行までには一定の期間がかかるから、今後はこの割合も高まっていくのではないだろうか。
【図表4】返済方法変更の承認件数(新型コロナウイルス関連)
では、実際に条件変更によって、どんな対応が可能なのだろうか。住宅金融支援機構では、図表5のように「返済特例」、「中ゆとり」、「ボーナス返済の見直し」の3つを挙げている。
【図表5】コロナウイルスの影響による住宅ローン返済方法の変更メニュー
「返済特例」では、収入ダウンなどの一定条件を満たす場合、返済期間を最長15年延長し、最大3年間は元金を据え置いて、利息の支払いだけにすることができる。
借入額3000万円、金利1.3%、35年元利均等・ボーナス返済なしの毎月返済額は8万8944円だが、これを3年経過後に15年間延長すると、毎月返済額は6万6204円にダウンする。また、元金据置きだと3万256円に減少する。これなら、何とか返済を継続できるという人もいるだろう。
「中ゆとり」は、再就職先が見つかるまで、あるいは収入が回復するまでの一定期間のみ、返済額を減額できる制度だ。
「ボーナス返済の見直し」は、ボーナスが減ったり、なくなったりした場合、ボーナス返済をなくして毎月返済だけにする、ボーナス返済の割合を少なくするなどの対応が可能になる。この冬のボーナスも不安という人は、早めに見直したほうがいいだろう。
救済策を頭に入れておき、万一のときはすぐに行動しよう
とはいえ、これらの猶予策はあくまで緊急避難であり、返済免除ではない。「返済特例」で返済期間を延長すれば、当面の返済額は減っても、完済までの総返済額は増加する。したがって、収入が回復した段階で、元の返済期間に戻すなどして、できるだけ返済特例による総返済額増加を抑えるようにするのが賢明だ。
いずれにしても、こうした救済策があることを頭に入れておき、万一のときにも速やかな行動を取れるようにしておくのがいいだろう。延滞してしまってからでは、手遅れになる可能性もあるので、十分に注意しておきたい。
【関連記事はこちら】>>住宅ローンの「借り換え」と「条件変更」、金利を引き下げるなら、どちらが早くて楽なのか?
132銀行を比較◆住宅ローン実質金利ランキング[新規借入] |
132銀行を比較◆住宅ローン実質金利ランキング[借り換え] |
【金利動向】おすすめ記事 | 【基礎】から知りたい人の記事 |
【今月の金利】 【来月の金利】 【2024年の金利動向】 【変動金利】上昇時期は? 【変動金利】何%上昇する? |
【基礎の8カ条】 【審査】の基礎 【借り換え】の基礎 【フラット35】の基礎 【住宅ローン控除】の基礎 |
新規借入2024年12月最新 主要銀行版
住宅ローン変動金利ランキング
※借入金額3000万円、借入期間35年で試算
- 実質金利(手数料込)
- 0.413%
- 総返済額 3218万円
- 表面金利
- 年0.284%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%
- 保証料
- 0円
- 毎月返済額
- 75,045円
①「がん・4疾病50%+全疾病+月次返済保障」が無料!
②住宅ローン金利優遇割ならダントツの低金利
③三菱UFJ銀行とKDDIが立ち上げたネット銀行。ネット申し込みで、全国に対応
- 実質金利(手数料込)
- 0.512%
- 総返済額 3271万円
- 表面金利
- 年0.375%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%+33000円
- 保証料
- 0円
- 毎月返済額
- 76,229円
①注文住宅なら、分割融資に対応でお得
②手数料不要の「借入時負担ゼロ型」は、将来住み替えを考えている人におすすめ
③中古物件でもリフォーム資金含めて借り入れが可能
- 実質金利(手数料込)
- 0.531%
- 総返済額 3281万円
- 表面金利
- 年0.390%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%+55000円
- 保証料
- 0円
- 毎月返済額
- 76,426円
①「団信革命」は要介護まで保障も
②自社商品なら、最大3億円まで借り入れOK!
③【期間限定】WEB完結金利優遇キャンペーン実施中。変動金利が年0.390%~
-
住宅ローン利用者口コミ調査の詳細を見る
-
今回作成した「住宅ローン利用者口コミ調査」の調査概要は以下のとおり。
【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
有効回答数:822人
調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とするアンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。
【アンケートの設問】
Q1.金利の満足度は?
Q2.諸費用・手数料等は妥当でしたか?
Q3.団体信用生命保険には満足しましたか?
Q4.手続き・サポートには満足しましたか?
Q5.審査について、満足していますか?
Q6.借り入れ後の対応に満足しましたか?
Q7.他の人にも現在の銀行を勧めたいと思いますか?
【回答の配点】
・各設問は5段階で回答してもらい、Q1なら以下のように配点。平均値を求めた。
満足している(5点)
どちらかといえば満足している(4点)
どちらともいえない(3点)
どちらかといえば不満である(2点)
不満である(1点)
・総合評価については、各項目の平均値を全て合算。読者が重視する「Q1金利の満足度」については点数を3倍、「Q3団信の満足度」の点数を2倍として、点数の合計を50点満点とし、10で割ることで5点満点の数値を求めた。
132銀行の住宅ローンを比較 >>返済額シミュレーションで、全銀行の金利を一気に比較・調査
|
- 年収に対して安心して買える物件価格は?
-
- ・年収200万円で妻が妊娠中の家族の上限は1600万円!?
- ・年収250万円の単身者の上限は1800万円!?
- ・年収300万円の4人家族の上限は1800万円!?
- ・年収350万円の2人家族の上限は2100万円!?
- ・年収400万円の単身者の上限は2500万円!?
- ・年収450万円の4人家族の上限は2000万円!?
- ・年収500万円の4人家族の上限は3000万円!?
- ・年収600万円の3人家族の上限は3500万円!?
- ・年収600万円の40代独身の上限は3000万円!?
- ・年収700万円の共働き夫婦の上限は5000万円!?
- ・年収800万円の3人家族の上限は4500万円!?
- ・年収1000万円の30代4人家族の上限は5000万円!?
- ・年収1000万円の40代4人家族の上限は3500万円!?
- ・年収1000万円の50代夫婦の上限は3000万円!?
※サイト内の金利はすべて年率で表示
プロの評判・口コミ
淡河範明さん
auじぶん銀行の魅力は、業界トップクラスの変動金利です。変動金利が大好きな人なら、最上位にすすめたいですね。最大2億円まで借りられるのも大きなポイントです。
審査に関しては、めちゃくちゃ早いです。申し込んでから基本的には1ヶ月以内に融資実行ができるので、急いでいる場合にはありがたい。「今月中に融資して欲しい」とアピールすれば、審査がスムーズに運びやすいです。
団信では「がん・4疾病50%保障団信」が無料で付いているので、通常の団信より手厚いと言えます。通常、保障を厚くするのであれば、金利を上乗せする必要がありますが、無料でつくのは魅力です。